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公開:1958
監督:Stanley Kramer
出演:Tony Curtis、 Sidney Poitierほか
範疇:ドラマ/囚人/人種問題
私の評価 :☆☆1/2
【Part 1】
屋外労働を終えた囚人を乗せて、夜間の豪雨の中を刑務所にひた走るトラック。対向車を避けたものの、トラックは道路下に転落し、二人の囚人が逃走します。
『手錠のまゝの脱獄』という邦題ですが、壁に穴を開けたり、床下にトンネルを掘るなどの“脱獄”ではなく、単なる“逃亡”ですね。“手錠”にしても、よくお目にかかる両手を拘束するタイプではなく、二人の人間の片腕だけを1mほどの鎖で繋いだものです。映画の中で、知らせを聞いた誰もが驚くことに、鎖で繋がれているのは白人と黒人の組み合わせです。彼等の反応からして、これは非常に希なケースで、普通は白人同士、黒人同士を繋げるようです。逃亡囚追跡の責任者であるシェリフは「どうせ五マイルも行かないうちに二人で殺しあいをやるだろう」とタカをくくっています。
監督のStanley Kramer(スタンリイ・クレイマー)は「メッセージ映画の旗手」とも呼ばれた人で、一本一本、何らかのインパクトあるメッセージが含まれています。この映画では人種的偏見にスポットを当てています。鎖に繋がれた二人のうち、黒人はSidney Poitier(シドニイ・ポワティエ)、白人はTony Curtis(トニイ・カーティス)が演じます。この白人役は、先ずMarlon Brando(マーロン・ブランド)に話が行ったものの、身体が塞がっていて駄目。Kirk Douglas(カーク・ダグラス)、Gregory Peck(グレゴリイ・ペック)などが候補になった後、この前年'Sweet Smell of Success'『成功の甘き香り』でシリアス・ドラマに好演したTony Curtisが選ばれたのだそうです。
二人は先ず言葉の問題で反目し合います。白人が黒人を"nigger"と呼ぶと、黒人は「今度"nigger"と云ったら、お前を殺す」と檄高します。「"boy"とも呼ぶな」と注文をつけます。白人は「俺はどう呼ばれても平気だけどね」と云いますが、白人を蔑視する言葉はそう強烈には響かないので、そりゃあ平気でしょう。
二人が逃げたい方角は違うし、お互いが我慢ならないので、一刻も早く鎖を切りたい。しかし、それまでは四六時助け合わなくてはならない。このジレンマが痛烈です。そして、ついに鎖が切れた時、何が起るのか?
この映画に出て来る湿地は"swamp"(スワンプ)と呼ばれています。ミシシッピ州やアラバマ州、ルイジアナ州などによく見られる湿地帯です。会話の中に「ニューオーリンズのマルディ・グラの祭りに行ったことがある」うんぬんというやり取りが出て来ます。また、泥棒を捕まえた村人が、すぐリンチで絞首刑にしようとします。以上のような要素から、これは“南部もの”に入るのですが、実際にはアメリカのどこであってもいいような話になっています。事実、ロケは全てカリフォーニアで行なわれました。
追っ手の連中は、何かというと「足が痛い」だの「疲れた」とか云って休みたがります。'The Wild Bunch'『ワイルドバンチ』の追っ手のような凄みがありません。おまけに、一人は年中ラジオを大音量で鳴らしています。そういう意味では、のんびりした情けない連中として描かれているわけで、南部の人間への偏見があるように思えます:-)。
(February 26, 2001)
【人種問題関連】
・To Kill a Mockingbird『アラバマ物語』 (1962)
・Black Like Me(未公開)(1964)
・In the Heat of the Night『夜の大捜査線』 (1967)
・The Liberation of L.B. Jones『L・B・ジョーンズの解放』 (1970)
・A Soldier's Story『ソルジャー・ストーリー』 (1984)
・Sudie and Simpson(未公開)(1990)
・The Tuskegee Airmen『ブラインド・ヒル』 (1995)
・A Family Thing『ファミリー/再会のとき』 (1996)
・Once Upon a Time...When We Were Colored(未公開) (1996)
・Nightjohn(未公開)(1996)
・Miss Evers' Boys(未公開)(1997)
・Rosewood『ローズウッド』 (1997)
・Remember the Titans『タイタンズを忘れない』 (2000)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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