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The Liberation of L.B. Jones

『L・B・ジョーンズの解放』

[Video]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1970
監督:William Wyler
地域:テネシー州
出演:Lee J. Cobb、Roscoe Lee Browne、Lola Falana、Lee Majors、Yaphet Kottoほか
範疇:原作もの/ドラマ/人種差別/保安官の犯罪

私の評価 :☆

【Part 1】

監督のWilliam Wyler(ウィリアム・ワイラー)は'Roman Holiday'『ローマの休日』(1953)、'The Desperate Hours'『必死の逃亡者』(1955)、'Friendly Persuasion'『友情ある説得』(1956)、'The Big Country'『大いなる西部』(1958) 、'Ben-Hur'『ベン・ハー』(1959)などの傑作を生み出した巨匠。

その後、'The Children's Hour'『噂の二人』(1961)、'The Collector'『コレクター』(1965)、'How to Steal a Million'『おしゃれ泥棒』(1966)、'Funny Girl'『ファニー・ガール』(1968)などの話題作群を作り、この『L・B・ジョーンズの解放』は彼の遺作です。

テネシー州。列車に一組の新婚らしきカップルが乗っている。男はLee J. Cobb(リー・J・コッブ)演ずる田舎弁護士の甥で、Lee J. Cobbの法律事務所のパートナーとして着任する途中だった。列車にはYaphet Kotto(ヤフェット・コットー)演ずる前科者も乗っていた。彼は葉巻の箱にピストルを忍ばせている。三人は同じ町で降りる。

出迎えたLee J. Cobbは若いカップルを事務所に案内する。甥と連名の看板、甥のための立派なオフィス。カップルは感激する。その時、一人の依頼人が待っていた。Roscoe Lee Browne(ロスコー・リー・ブラウン)演ずる黒人葬儀屋のL.B.ジョーンズである。彼は妻と離婚したいので、Lee J. Cobbに代理人になってくれと頼む。Lee J. Cobbは多忙を理由に断る。

Lee Majors(リー・メジャース)演ずる甥の弁護士は、当地での初仕事としてL.B.ジョーンズの件を扱いたいと提案する。Lee J. Cobbは何故か自分で担当することにし、L.B.ジョーンズに伝える。妻は離婚に同意していた筈だったが、急に意思を変更する。夫の目の前に浮気の相手が来る。Anthony Zerbe(アンソニー・ザーブ)演ずる保安官助手だった。L.B.ジョーンズは怒りに燃えてLee J. Cobbの事務所に走り、「今すぐ離婚したい!」と頼む。Lee J. Cobbは「火曜日に行動開始だ」と伝える。

Lee J. Cobbは保安官事務所に行き、保安官助手Anthony Zerbeに「妻が離婚に同意しないと、裁判で浮気の相手の名前が出る。それが警官ならクビだろう。火曜日の朝までに何とかしろ」と助言する。Anthony ZerbeはL.B.ジョーンズの妻を説得するが、彼女はあくまでも拒否。男は女を殴り飛ばす。むしゃくしゃした彼は、Arch Johnson(アーチ・ジョンソン)演ずる保安官の協力で、パトカーを要請した黒人娘を車に乗せ、無理矢理凌辱する。

甥Lee Majorsは、伯父が依頼人の黒人のために働くのでなく、単に「白人だから」と依頼人でもない保安官助手を護ろうとするのを見て人種差別主義者だと感じる。「有力者として、あなたは旧態依然の町を変える力がある。火曜日には私も法廷に傍聴に行って、あなたがどこまで依頼人のために働くか見たい」と告げる。

Yaphet Kottoは、以前に彼を半殺しの目にあわせた保安官Arch Johnsonを殺しに戻って来たのだった。非番の日に干し草刈りの車を運転するArch Johnsonに近づき、ピストルの狙いを定める…。

この記事の冒頭に二つの段落に分けて記した作品群は、非常に意味深長です。最初の一群は“大作”、“巨篇”が多く、内容もアカデミー賞の対象に相応しいものばかり。後段の一群はガラッと変わって、どちらかと云えば軽いタッチの小篇、変化球が多い。そういう傾向のところへ、突如人種問題を正面から取り上げた暗い『L・B・ジョーンズの解放』です。いくらWilliam Wylerが多芸で、一作毎に異なるジャンル、スタイルを見せた監督だといっても、この変化は急激です。どうしてこうなったのか、謎です。想像もつきません。

Lee J. Cobbは'12 Angry Men'『12人の怒れる男』(1957)から13年後で、彼特有のギラギラした憎たらしさが失くなっています。そのため逆に南部の良識人である温和さが漂よい、なおかつその良識人も人種差別から抜け出せないという現実の表現を達成しています。

Roscoe Lee Browneは可も無く不可も無し。Yaphet Kottoは活き活きと演じています。特に育ての親(老婆)との再会シーンは秀逸。彼が冒頭で白人の保安官助手の訊問を受ける時、絶対に相手と目を合わせません。これは白人と直接目を合わせると「生意気だ」、「敵意がある」と見做された長い歴史があるからのようです。

(August 08, 2001)



【人種問題関連】

To Kill a Mockingbird『アラバマ物語』 (1962)
Black Like Me(未公開)(1964)
In the Heat of the Night『夜の大捜査線』 (1967)
・The Liberation of L.B. Jones『L・B・ジョーンズの解放』 (1970)
A Soldier's Story『ソルジャー・ストーリー』 (1984)
Sudie and Simpson(未公開)(1990)
The Tuskegee Airmen『ブラインド・ヒル』 (1995)
A Family Thing『ファミリー/再会のとき』 (1996)
Once Upon a Time...When We Were Colored(未公開) (1996)
Nightjohn(未公開)(1996)
Miss Evers' Boys(未公開)(1997)
Rosewood『ローズウッド』 (1997)
Remember the Titans『タイタンズを忘れない』 (2000)


Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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