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公開:1997
監督:John Singleton
出演:Jon Voight、Ving Rhames、Esther Rolle、Michael Rookerほか
範疇:実話の映画化/ドラマ/人種差別/大量虐殺
私の評価 :☆☆1/2
【Part 1】
日本で発売されたヴィデオには『惨劇のローズウッド/自由への脱出』という題名もあるようです。アメリカでは"Rosewood"という言葉だけで“惨劇”に結びつくほど有名のようで、うちのカミさんは無惨な虐殺、焼き討ちが正視出来ないと、借りたヴィデオを観ようとしませんでした。たった数日で、黒人のコミュニティが焼かれ、全ての黒人が殺されたり逃げ出したりしなければならなかったという、ひどい実話なのです。
1922年12月31日木曜日、フロリダ州ローズウッド。ここは黒人のコミュニティで、野菜も作れるような肥沃な土地。ここへ流れ者のVing Rhames(ヴィング・レームズ)が馬とライフル、長外套でやって来る。第一次世界大戦でドイツを舞台に闘ったという古強者である。5エーカーの売り地のオークションの看板を見て、そこを買って腰を落ち着けようという気になる。小学校の若い女教師Elise Neal(エリゼ・ニール)と親しくなり、彼女の世話でローズウッドの顔であるDon Cheadle(ドン・チードル)の家に滞在する。大晦日の屋外ダンス・パーティで、二人の男女はすっかり打ち解ける。
Jon Voight(ジョン・ヴォイト)は、ローズウッドの唯一の白人で雑貨屋の主人。彼は後妻を迎えたが、家庭がうまくいっていなくて、店員の黒人女性と朝っぱらから交わるような男。5エーカーの売り地を買って、後妻にパン屋を開かせようと考えている。
1923年1月1日金曜日。ローズウッドから5km離れた隣町サムナー。ここは製材工場の町で、工場主が商店や賃貸住宅を牛耳っていて、白人労働者達はローズウッドの黒人達より貧しい。Fanny(ファニィ)という若妻が、夫が製材所で働いている間に浮気をしている。Fannyは男を威圧するような態度を取り、逆に足蹴にされ、身体中痣だらけにされる。夫の目をごまかせないので何かテを打たなくてはならない。黒人女中二人が事実を知っているものの、誰も黒人の証言など相手にしないと分っている。Fannyは一芝居打つ。家の外へ出て「黒人の大男に強姦された!」と叫ぶ。
オークションではJon VoightとVing Rhamesの一騎討ちとなり、1エーカー当り60ドルまで達し、Ving Rhamesが落札かと思われたが、そこへ「白人女性が黒人に強姦された」というニュースが届き、オークションは中断。シェリフを始め、町中の白人が犯人捜索に乗り出す。
犬三頭が嗅覚で突き止めた先は黒人青年の家。彼は縛り首寸前になるが出まかせで「鍛冶屋が犯人だ」と告げ口したため、鍛冶屋が縛り首になる。ローズウッドの黒人達はDon Cheadleを中心に、白人の暴虐に抗議しようとする。Ving Rhamesは争いに巻き込まれたくないと、数日町を離れることを決意。彼をアテにしていた黒人達はがっかりする。
1月2日土曜日。常々サムナーの貧乏白人達はピアノを持っているような豊かな黒人Don Cheadleを妬んでいた。白人を恐れない不敵な態度も気に入らない。リンチの興奮の余勢をかって、暴徒はローズウッドのDon Cheadle家に押しかけ、彼に「出て来い!」と怒鳴る。Fannyの女中をしている母親が表に出て、「Fannyを痛めつけたのは白人だ」と説明しかけるが、暴徒の発砲で殺されてしまう。母親を失ったDon Cheadleも二人の白人を殺したため、家を焼き討ちされてしまう。これが引き金となって、ローズウッドの黒人の家には全て火がつけられ、見つかった黒人は皆殺しという事態に発展する…。
物語はこの後日曜日、月曜日と続き、暴徒は血に飢えたように黒人たちを探し廻ります。これが実話だというのですから、実に恐いアメリカの暗い過去です。
さらに凄いのは、これが以後60年間誰にも知られない秘密として隠されていたことです。他の土地へ逃げおおせた黒人達は、白人達の追撃を恐れて名前を変え、ひっそりと隠れ住んだのでした。1982年にローカル紙の記者が、元ローズウッドがあった地域について記事を書こうとし、一人も黒人がいない事実を不思議に思い、調査してみる気になりました。そして浮かび上がって来たのが、1923年の惨劇です。生存者数人から聞き出したリポートが、初めてローズウッドの事件を世に伝えるもので、これはCBS TVの'60 minutes'でも放送されました。
生存者の一人だったある母親は、毎年クリスマスになるとこの恐怖の数日間について子や孫に語って聞かせました。彼女が亡くなった時、子供の一人がフロリダ州を相手に訴訟を起こし、当時のローズウッド住民への賠償を勝ち取りました。CBS TVは再び'60 minutes'で事件の成り行きを紹介しました。
この映画の製作者達は、「黒人は恐怖心から、白人は恥じる心からこの事件を忘れたがっている。町が一つ消えたというローズウッドの規模は異常だが、実は同じ根を持つ事件はアメリカのどこででも起っていることだ。我々みんながローズウッドの事件を直視する必要がある。それが映画製作の動機だった」と語っています。
(April 24, 2001)
【人種問題関連】
・The Defiant Ones『手錠のまゝの脱獄』 (1958)
・To Kill a Mockingbird『アラバマ物語』 (1962)
・Black Like Me(未公開)(1964)
・In the Heat of the Night『夜の大捜査線』 (1967)
・A Soldier's Story『ソルジャー・ストーリー』 (1984)
・Sudie and Simpson(未公開)(1990)
・The Tuskegee Airmen『ブラインド・ヒル』 (1995)
・A Family Thing『ファミリー/再会のとき』 (1996)
・Once Upon a Time...When We Were Colored(未公開) (1996)
・Nightjohn(未公開)(1996)
・Miss Evers' Boys(未公開)(1997)
・Remember the Titans『タイタンズを忘れない』 (2000)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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