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公開:1984
監督:Norman Jewison
出演:Howard E. Rollins Jr.、Adolph Caesar、Art Evans、Denzel Washingtonほか
範疇:戯曲の映画化/ドラマ/軍隊/犯罪捜査/ミステリ/人種差別
私の評価 :☆☆
【Part 1】
原作はピューリッツアー賞受賞の戯曲。同じ作者が脚色を担当。監督は'In the Heat of the Night'『夜の大捜査線』(1967) のNorman Jewison(ノーマン・ジュイスン)。偶然とは云え、『夜の大捜査線』に似たシチュエーションが興味深い。
1944年、第二次大戦中のルイジアナ州。陸軍基地がある小さな町の酒場でPatti LaBelle(パティ・ラベル)がブルースを歌っている。相当酔いのまわった初老の軍曹が店を出て、千鳥足で基地へ戻って行く。ブルースが終る頃、軍曹は基地近くで何者かと対峙していた。突如、拳銃が彼を狙い、二発の弾丸が彼の命を奪う。
当時、まだ人種間の垣根は高く、黒人兵は一つの兵舎にまとめられており、殺された軍曹はその黒人兵士達の監督官だった。K.K.K.の仕業だろうというのが多くの見方だったが、内部の犯行という線も捨てられず、黒人兵士達は全員禁足処分となる。
ワシントン D.C.からハーバード・ロー・スクール卒の大尉が事件の糾明にやって来る。基地の誰もが予想しなかったことに、この大尉は黒人だった。基地司令官、白人の大尉などは「黒人の尉官を見るのは初めてだ」とHoward E. Rollins Jr.(ハワード・E・ロリンズ)演ずる大尉に面と向って云い、「黒人が白人を取り調べることは出来ない」と主張する。Howard E. Rollins Jr.は「これはワシントン D.C.直接の命令であり、基地司令官がどうこう云える筋合いではない」と突っ撥ねる。
とはいえ、彼は黒人兵舎の調査からスタートする。Art Evans(アート・エヴァンス)、Denzel Washington(デンゼル・ワシントン)などから、殺された軍曹の人となりや、怨恨関係などを聞き出す。先ず分ったことは、軍曹は非常に優秀な黒人野球チームを率いていて、このまま勝ち抜けばヤンキースとの親善試合に出られるほどだった。ただし、軍曹は部下に慕われるような性格ではなく、自分が黒人でありながら部下を"nigger"(黒んぼ)と呼ぶような性格ゆえに反感を持たれていたことも分る。黒人兵舎の人気者はLarry Riley(ラリィ・ライリィ)だった。彼はホームラン・バッターであり、ジャズ歌手でありギター弾きでもあった。そのLarry Rileyはどうなったのか?
軍曹が死んだ晩、白人の将校二人が軍曹と話していたという噂を聞き込む。基地司令官は黒人が白人将校を取り調べるのを渋る。Howard E. Rollins Jr.は「逮捕ではなく、質問するだけだ」と説得し、将校クラブで二人と話す。その内容は明らかに二人が軍曹殺害を示唆するものであった…。
『夜の大捜査線』同様、黒人捜査官に白人達が慌てふためきます。ハーバード・ロー・スクール卒というのが凄い。「親が金持ちなのか?」と白人大尉が聞くと「只の郵便配達だ」と答えます。奨学金で卒業した優秀な生徒であることを意味します。Howard E. Rollins Jr.はプライドが高く、敬礼しない兵士や"sir"をつけない返事を許しません。この辺も『夜の大捜査線』の黒人刑事に近いものがあります。
逆に黒人の尉官を初めて受け入れた黒人兵士達は大喜びです。特に、大尉の滞在中の運転や雑用を仰せつかった黒人伍長の興奮は微笑ましい。
戯曲は'Negro Ensemble Company, Inc.'という劇団が初演し、大成功だったものだそうです。多くの俳優が舞台から映画にそのまま移行したようです。Denzel Washingtonもその口のようですが、断言は出来ません。彼はこの映画までは主にTVに出演しており、まだまだ無名でした。しかし、最近の彼の演技と同じレヴェルを既に披露しています。
黒人大尉を演ずるHoward E. Rollins Jr.は、'Ragtime'『ラグタイム』(1981)でアカデミー助演男優賞候補になり、'For Us, the Living' (1983)でミシシッピ州の公民権運動リーダーMedgar Evers(メドガー・エヴァーズ)を演じ、1988年〜1993年にかけてTVシリーズ'In the Heat of the Night'『夜の大捜査線』でVirgil Tibbs(ヴァージル・ティッブズ)刑事を演じました。
殺された軍曹はヴェテランのAdolph Caesar(アドルフ・シーザー)が演じています。カットバックで何度も登場します。この年のアカデミー助演男優賞候補になりました。
異人種間の緊張関係、黒人の人種内の緊張関係、軍人達の上下の緊張関係、それらがない交ぜになって進行します。この映画以降に主演級になった多数の黒人俳優達のアンサンブルが見事。
冒頭で素晴らしいブルースを聞かせるPatti LaBelleと、ギターの弾き語りをする兵士Larry Rileyは、共にプロの歌手でそれぞれ自作自演を披露しています。どちらの演奏も聞きごたえ十分。なお、オリジナルの音楽はHerbie Hancock(ハービィ・ハンコック)の担当ですが、映像を観ながらライヴ・レコーディングしたそうです。『死刑台のエレベーター』のMiles Davis(マイルス・デイヴィス)みたいですね。
(June 04, 2001)
【人種問題関連】
・The Defiant Ones『手錠のまゝの脱獄』 (1958)
・To Kill a Mockingbird『アラバマ物語』 (1962)
・Black Like Me(未公開)(1964)
・In the Heat of the Night『夜の大捜査線』 (1967)
・Sudie and Simpson(未公開)(1990)
・The Tuskegee Airmen『ブラインド・ヒル』 (1995)
・A Family Thing『ファミリー/再会のとき』 (1996)
・Once Upon a Time...When We Were Colored(未公開) (1996)
・Nightjohn(未公開)(1996)
・Miss Evers' Boys(未公開)(1997)
・Rosewood『ローズウッド』 (1997)
・Remember the Titans『タイタンズを忘れない』 (2000)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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