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The Sound and the Fury

『悶え』

[Video]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema ONLINE」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1959
監督:Martin Ritt
地域:ミシシッピ州
出演:Yul Brynner、Joanne Woodward、Margaret Leighton、Stuart Whitman、Ethel Waters、Jack Wardenほか
範疇:原作もの(William Faulkner)/ドラマ/没落旧家/娘の成人

私の評価 :☆

【Part 1】

邦題は何やら日活ロマン・ポルノみたいですが、歴としたノーベル賞作家William Faulkner(ウィリアム・フォークナー)の純文学の映画化。William Faulknerの作品は難解というのが相場ですが、この映画の原作'The Sound and the Fury'『響きと怒り』は特に難解とされています。

監督Martin Ritt(マーチン・リット)は、同じ作家原作の'The Long, Hot Summer'『長く熱い夜』(1958)を撮ったばかりで、“文芸路線”の勢いに乗っていた頃。彼は“南部もの”を多く手掛けています。

Yul Brynner(ユル・ブリンナー)は'The King and I'『王様と私』(1956)、'Anastasia'『追想』(1956)、'The Brothers Karamazov'『カラマゾフの兄弟』(1958)など、これまたシリアス路線を歩んでいる最中でした。この映画には頭を剃らずに出演しています。

看板はYul Brynnerに譲っていますが、この映画の本当の主人公はJoanne Woodward(ジョアン・ウッドワード)です。まだ学校に通わされているものの、女性として成熟しかけていて、早く恋したり愛されたりしたい年代を達者に演じています。

[the South]

ミシシッピ州の小さな町Jefferson(ジェファスン、架空の町)。Compson家は旧家だったが落ちぶれて、大邸宅も今は一見廃屋風だった。当主で気の弱い男John Beal(ジョン・ビール)は酒びたりの日々を送っていた。彼の弟(亡き父の後妻の連れ子)のYul Brynnerは冷血、非情な男だったが、この家を守るために町の服飾店を切り盛りしいた。John Bealの妹Margaret Leighton(マーガレット・レイトン)は、16年前にJoanne Woodwardを産み落とすと出奔して行方不明になっていた。彼女は定期的にJoanne Woodwardの養育費を送って来ていたが、その金は全てYul Brynnerが管理していた。

John Bealには弟Jack Warden(ジャック・ウォーデン)がいた。盲目で言葉を喋れず、知恵遅れ。もう中年だが、精神は少年のままでストップしていた。彼は家政婦の黒人Ethel Waters(エセル・ウォーターズ)の配慮で雇われている、杖代わりの黒人少年と仲良く遊ぶのが好きだった。

Joanne Woodwardが学校を抜け出して帰宅する。Yul Brynnerは邪険に彼女を車に乗せ、学校に送り返す。しかし、彼が去った後、Joanne Woodwardは学校を背に、町へ遊びに出掛けてしまう。丁度、謝肉祭の時期とあってカーニヴァル(移動遊園地や見せ物小屋)の一行が設営を始めていて、宣伝の楽隊が賑やかに通りを行進していた。Joanne Woodwardはカーニヴァルの作業員Stuart Whitman(スチュアート・ホイットマン)に一目惚れ。女たらしStuart Whitmanも悪い気はしない。

長く失踪していたMargaret Leightonが町に戻って来て、Yul Brynnerに会う。Yul Brynnerは「今頃、何しに来た」と剣もほろろ。「娘に会いたい」という願いを聞いて、夜の9時まで彼女を広場のベンチで待たせる。しかし、Joanne Woodwardを同乗させた車で彼女の前を通過しただけで、満足な母娘の対面をさせない。

翌日、Margaret LeightonはYul Brynnerの店に出向く。ついに彼は「家に行け」と云う。その日、やっとJoanne Woodwardは母と対面出来た。母に「叔父(Yul Brynner)は悪魔だ。私を助けて」と頼むが、母は無関心だった。

Stuart WhitmanがJoanne Woodwardを訪ねて来る。彼女にウィスキーを呑ませ、キスする。彼女はStuart Whitmanの口説きにうっとりする。ふと気づくと、無表情なJack Wardenが耳を澄ませて聴いていた…。

原題'The Sound and the Fury'『響きと怒り』はシェイクスピアの'Macbeth'『マクベス』の台詞から取られています。

Joanne Woodwardは「女性として成熟しかけている」どころか、実際には29歳ですから十分成熟していて、美しさも最高の頃です。そんな年齢にしては、若い娘をそれらしく演じていて違和感はありません。

彼の西部劇しか知らない人はびっくりするほど、Yul Brynnerもよくやっています。一寸煙草の吸い過ぎではありますが:-)。

Jack Wardenは'12 Angry Men'『12人の怒れる男』(1957)の二年後の作品。Yul Brynnerの服飾店の共同経営者Albert Dekker(アルバート・デッカー)は'East of Eden'『エデンの東』(1955)でJames Dean(ジェイムズ・ディーン)に豆栽培の資金を融通した人物。

Joanne Woodwardとその母親役Margaret Leightonは二人とも上手に南部訛りで喋ります。他の人物はそう顕著ではありません。南部訛り、没落した旧家、黒人の家政婦、スパニッシュ・モス…これらは南部らしいとは云え、物語全体として舞台が南部でなければならない必然性は感じられません。逆に云えば、人物像や状況に南部らしさが強くないということです。これでは意味がありません。

(September 14, 2002)



【William Faulknerもの一覧】

The Story of Temple Drake『暴風の処女』(1933) Miriam Hopkins主演
Intruder in the Dust(未公開)(1949) David Brian主演
The Long, Hot Summer『長く熱い夜』(1958) Paul Newman主演
The Sound and The Fury『悶え』 (1959) Yul Brynner、Joanne Woodward主演
The Reivers『華麗なる週末』(1969) Steve McQueen主演
Tomorrow(未公開)(1972) Robert Duvall主演

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema ONLINE」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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