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The Story of Temple Drake

『暴風の処女』

[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1933年
監督:Stephen Roberts
地域:ミシシッピ州
出演:Miriam Hopkins、William Gargan、Jack La Rue、Guy Standing、Irving Pichelほか
範疇:Faulkner(フォークナー)もの/サスペンス/判事の放縦な孫娘/弁護士/ギャング/裁判

私の評価 : ☆

【Part 1】

ノーベル賞作家William Faulkner(ウィリアム・フォークナー)原作の映画の一つ。

映画は俳優の顔と役名を紹介する静止画で始まります。何やらサイレント映画のような趣向。実際、映画は(字幕こそないものの)サイレント映画のような運びで進行します。

少壮弁護士William Gargan(ウィリアム・ガルガン)は、高齢の判事から「君はどうして私の孫娘Miriam Hopkins(ミリアム・ホプキンズ)と結婚しないのかね?」と問われる。William Garganは「判事、私は彼女からフラれたのです。彼女に云わせると、私は真面目過ぎる朴念仁だそうです」と答える。判事は「もう一度結婚を申し込みたまえ。君のような頼りがいのある男に、あの娘を任せたいんだ」と云う。

判事の孫娘Miriam Hopkinsはバーで男たちに囲まれてはしゃいでいる。家に戻る途中、彼女は男とキスする。

家では判事主催のパーティが行なわれていた。弁護士William Garganは再度Miriam Hopkinsに求婚するが、「私は子供の時はあなたと結婚したかった。今もあなたを好きだけど、結婚なんて考えられない」と断られる。

パーティの席で顔見知りの若い男を見掛けたMiriam Hopkinsは、「どこかに連れてって!」と頼み、男は酔っ払い運転で町を離れる。道に倒木があり、車は横転し、二人はオープンカーから抛り出される。黒装束の不気味なギャングJack La Rue(ジャック・ラ・リュ)と、銃を持ったやや足りない青年James Eagles(ジェイムズ・イーグルズ)が現われ、二人を廃屋となった農家に連れて行く。雨が降り出し、嵐となる。

廃屋では数人の男が酒を呑んでいた。大男Irving Pichel(アーヴィング・ピチェル)がMiriam Hopkinsに興味を示すが、その妻が夫を遠ざけMiriam Hopkinsに寝床を与える。Miriam Hopkinsと男の妻が暗闇で話していると、Jack La Rueが忍び込んで来る。銃を持った青年James Eaglesもやって来る。妻がランプを点けると、バツの悪いJack La Rueは出て行く。青年は、「あんたを護ってやる」とMiriam Hopkinsに云う。

翌朝。Miriam Hopkinsは納屋で干し草の上に寝ており、銃を持った青年James Eaglesが入り口で座っているが、彼は舟を漕いでいる。Jack La Rueが忍び込んで来て、Miriam Hopkinsが騒ぐ。止めに入ろうとした青年をJack La Rueがピストルで射ち、Miriam Hopkinsを犯す。

Jack La Rueは車でMiriam Hopkinsを町の娼窟に連れ込む。彼は彼女に「お前はおれに夢中だ。ここに滞在したい筈だ」と云い、Miriam Hopkinsは「ノー」と云う。

廃屋で青年の死体を発見した大男Irving Pichelは、「シェリフに伝えなきゃ」と云って町へ行くが、そのまま殺人犯として逮捕され裁判にかけられることになる。判事はWilliam Garganを法廷弁護士に指名する。留置場にピストルの弾丸が撃ち込まれ、Irving Pichelはそれを「話せば殺す」というメッセージとして受け止め、黙秘し続ける。弁護士William Garganは大男の妻からJack La Rueの名を聞き出し、彼に会いに行く。すると、行方不明だったMiriam Hopkinsがいるではないか…。

この映画を放映したケーブルTVのTCM(Turner Classic Movies)によれば、この映画は暴力、セックスに満ちたWilliam Faulknerの原作'Sanctuary'『サンクチュアリ』に基づくもので、映画公開後凄まじい批判に曝され、その後ずっと再公開されていなかったそうです。「第一回TCMクラシック・フィルム・フェスティヴァル」で上映され、観衆に大受けだったと云われています。しかし、当時の検閲で脚本を大巾にカットされ、完成した映画もずたずたにされたようで、露骨な性描写はありませんし、暴力も現在の基準からすれば大したことはありません。

冒頭に書いたように、ほとんど無声映画のような演出・編集なので、この映画を観通すのはかなり苦痛です。私は途切れ途切れに観て、ほぼ一ヶ月ぐらいかけてしまいました。“William Faulknerもの”ならどうしてもこの「大全集」に入れなければいけない…という義理の感覚で見終えただけで、これが何でもない一作なら投げ出していたところです。

先ず、このヒロインに感情移入出来ません。私の尺度で云えばあまり魅力的とも云えない顔立ち、見境なく男たちと遊び歩く役柄。こんな女の運命なんか、私にはどうだっていいので、先を観たくなる気になれないのです。事実、彼女は自分を犯した男の傍で数日暮らしており(監禁されていたわけではない)、誰もが信じられないような行動をします。

この映画で唯一印象的なのはギャングを演ずるJack La Rueです。凶暴で衝動的な性格ですが、常に黒の三つ揃い、黒のソフト、黒皮の靴を身につけており、チェインスモーカーです(煙草だけは残念ながら白)。ギロリと動く目も派手で、舞台で映えそうな俳優です。

蝋燭の光りだけの廃屋の室内がやけに明るく、しかも光りが揺らめきもしないとか、ギャングが投げ出したピストルを手にしたヒロインが、安全装置も解除せずに弾丸をぶっ放してギャングを射殺するとか、今の映画作法からすれば非常に幼稚な仕事ぶりです。

同じ原作を映画化した'Sanctuary'『サンクチュアリ』(1961)という映画もあるのですが、そちらはVHSもDVDも出ておらず、観ることは叶いません。

この映画に関するPart 2はありません。

(March 13, 2012)


Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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