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Freedom Song

『フリーダム・ソング』

[Video]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:2000, Turner Network Television (TNT)
監督:Phil Alden Robinson
地域:ミシシッピ州
出演:Danny Glover、 Vicellous Reon Shannon、Vondie Curtis-Hallほか
範疇:ドラマ/TV映画/人種問題/公民権運動

私の評価 :☆☆☆

【Part 1】

[MS]

これはCATV向けに作られたTV映画ですが、ヴィデオにもなっています。もし見掛けたら、是非御覧下さい。私はTVで二回観ましたが、毎回感動させられました。

1961年頃のミシシッピ州の田舎町。公民権は成立したものの、まだこの町の白人達の差別は旧態依然で、食堂やバス停の待合室、図書館などへの黒人の立ち入りは拒否されます。ある日、イリノイ州からオーガナイザーがやって来て、積極的運動を展開することになります。Danny Glover(ダニイ・グローヴァー)は一人息子の高校生Vicellous Reon Shannon(ヴァイセラス・リオン・シャノン)を失いたくないため、運動には近づけたくないのですが、血気盛んな息子はオーガナイザーVondie Curtis-Hall(ヴォンディ・カーティス・ホール)の到着を英雄の降臨のように考えます。ところが、オーガナイザーの作戦は非暴力、無抵抗、選挙名簿への登録の推進という地味なもので、猪突猛進タイプのShannonはがっかりします。しかし、彼の同級生たちはオーガナイザーを支えて地道な運動を開始。

後にShannonも加わり、サポーターも増え、運動は成功への一途を辿るかに見えましたが、過激な黒人蔑視の白人が運動の中心人物を射殺するという挙に出てから、黒人の大人たちは恐怖のため運動から遠ざかってしまいます。しかし、高校生たちは怯みません。軽食堂でサービスを要求したsit-in(座り込み)で逮捕された学生の一人が退学処分になると、独自に町役場への抗議の行進を開始します。オーガナイザー、サポーター達は自力で立ち上がった高校生たちのパワーを制止することが出来ず、止むなく共にゴスペルを歌いながら役場へと向います。先頭に立っていた高校生、サポーター達数十名が逮捕され、運動は大きな危機に直面します…。

サポーター達が高校生に非暴力、無抵抗主義の特訓をする場面が壮絶です。黒人の大人達が白人の役を勤めて黒人の高校生一人一人をいたぶるのです。「Nigger!(黒ん坊め!)」などの言葉による攻撃、頭にケチャップや牛乳をかけたりする嫌がらせ。煙草の煙やツバを吐きかけたりもします。高校生たちはこれに耐えなければなりません。さらに、暴力から身を守る方法、傷ついた仲間への攻撃をかばう訓練もします。黒人同士でこんなことまでしなければならない、悲しさ、辛さが伝わって来ます。

TV映画と馬鹿に出来ない、上出来で感動的な一作だと思います。

(February 18, 2001)


【背景説明】

1950年代に「ブラウン対教育委員会」という公教育の場における人種差別撤廃を求める裁判があり、最高裁は1954年に人種差別は違憲とする判決を下しました。しかし、黒人差別が根強かったアメリカ深南部(主にミシシッピ州、アラバマ州、ルイジアナ州、ジョージア州)では、最高裁判決の影響は微々たるもので、司法省の後押しによって学校の門戸が僅かに開かれただけ。日常生活における差別はほとんど旧態依然でした。

この映画の父親Danny Gloverは、第二次大戦のヨーロッパから帰還したようです。アメリカでは差別されていた黒人も、戦地では白人と連携して命をかけて戦いましたし、ヨーロッパ人は黒人への偏見はありませんでした。黒人兵士たちは手柄も立て、白人との平等な生活を期待して帰還したわけです。ところが、待っていたのは相変わらず黒人差別の横行する南部での生活でした。Danny Gloverはガソリン・スタンドを経営しながら改革に取り組もうとしますが、K.K.K.による脅迫やガソリン・スタンドがボイコットされるなどで追いつめられ、家族の身の安全だけを考える引っ込み思案の男になってしまいます。

1955年にアラバマ州の州都Montgomery(モンガメリ)で、キング牧師に率いられたバス・ボイコット(バス車内での人種差別撤廃を求めた運動)が一年後に勝利を納め、ガンジーの影響を受けたキング牧師の非暴力、無抵抗による運動はアメリカ各地に広がって行きます。

この映画の舞台が1961年に設定されているのは、この頃に公民権運動の重要な動きがあったからです。1960年にノース・キャロライナ州で、黒人大学生数名がデパートの軽食堂でサービスを要求しました。食堂の人種差別を止めさせようというsit-in(座り込み)で、これはテネシー州やミシシッピ州にも飛び火しました。この映画のsit-inは、ノース・キャロライナ州の出来事の報道を模倣したものです。ミシシッピ州の州都Jackson(ジャクスン)のレストランで、男女学生たちが白人たちからケチャップなどを頭からかけられている有名な写真があります。

当時の大統領はJ.F.K.で、司法長官はロバート・ケネディでした。ロバート・ケネディは人種差別撤廃に熱心でしたから、この映画のように司法省の役人やU.S. Marshal(連邦執行官)を各地に派遣して、最高裁判決を現実のものとするため努力していました。

1961年、映画でも紹介されているFreedom Rides(フリーダム・ライズ)という運動がありました。これは最高裁判決が実を結んでいるかどうか検証するという目的で、北部から深南部まで白人と黒人大学生の混成部隊が長距離バスで旅をするというものでした。アラバマ州ではバスにダイナマイトが投げ込まれて炎上し、ミシシッピ州の州都Jacksonでは学生たちは全員逮捕され、最終目的地だったルイジアナ州New Orleans(ニュー・オーリンズ)までは到達出来ませんでした。

キング牧師らの運動は「選挙権獲得」に向けられました。当時、深南部で選挙権を持つ黒人は白人数百名に一人という具合で、選挙権を得ようとする黒人には様々な迫害や嫌がらせが加えられました。白人たちが、映画のように馬鹿げた問題で登録を拒否したのも事実です。この映画のオーガナイザーの次の目的地は、ミシシッピ州のデルタ地帯です。もう迫害はなくなりましたが、現在もなおこの運動は続いています。

(July 31, 2005)





【公民権運動関連】

Crisis at Central High『アーカンソー物語』 (1981)
For Us, the Living(未公開)(1983)
Eyes on the Prize(未公開)(1987)
The Long Walk Home『ロング・ウォーク・ホーム』 (1990)
Separate But Equal『裁かれた壁〜アメリカ・平等への闘い』(1990)
The Ernest Green Story(未公開)(1993)
The Vernon Johns Story『怒りを我らに』 (1994)
4 Little Girls(未公開)(1997)
Ruby Bridges(未公開)(1998)
Selma, Lord, Selma(未公開)(1999)
Crazy in Alabama『クレイジー・イン・アラバマ』 (1999)
Boycott『ボイコット/キング牧師の闘い』(2001)
The Rosa Parks Story『ローザ・パークス物語』(2002)
Sins of the Father『父と罪 重き告発』(2002)

公民権運動・史跡めぐり

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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