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The Ernest Green Story

(未)

[Video]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1993
監督:Eric Laneuville
地域:アーカンソー州
出演:Morris Chestnut、CCH Pounder、Gary Grubbs、Ossie Davis、Omar Goodingほか
範疇:TV映画/実話の映画化/人種差別/高校の人種統合

私の評価 :☆

【Part 1】

1954年、連邦最高裁は「人種を分離した教育は憲法違反」との判決を下した('Separate But Equal'参照)。しかし、その後南部における公教育の人種統合は、保守的な政治家、市民団体などの抵抗により遅々として進まなかった。アーカンソー州の州都Little Rock(リトル・ロック)では、NAACP(National Association for the Colored People=全国黒人地位向上協会)が、九名の男女高校生を黒人の学校から白人の学校へ転入させることを考える。女生徒六人、男生徒三人。その中でMorris Chestnut(モリス・チェスナット)演ずるErnest Green(アーネスト・グリーン、16歳)はたった一人の最上級生だった。

[the South]

当時、黒人を蔑視する風潮は依然強く、聖職者ですら「黒人は劣った人種であり、不道徳である。白人と一緒に教育すべきではない」と知事に進言するほどだった。アーカンソー州知事Orval Faubus(オーヴァル・フォーバス)は三選を狙っていたため選挙民の声を無視出来なかった。南部の他の州知事からも「一歩も退くな」という激励の電話があった。

Little Rock Central High School(リトル・ロック・セントラル高校)での編入式。NAACP役員や父兄と共に校長の説明を受ける。授業には全て参加出来るが、その以外のチーム・スポーツ、サークル活動、生徒会活動、マーチング・バンド、軽音楽バンドなどには参加出来ないと宣告される。テナー・サックス奏者のErnest Greenはがっかりだった。

早速K.K.K.などからの投石、電話攻撃が開始された。生徒達は黒人牧師の指導で、キング牧師がガンジーの影響で強く信奉する非暴力の精神を学ぶ。

1957年9月4日の初登校日、早朝から知事命令を受けた州兵がセントラル高校を固めた。NAACP役員は生徒を集団として引率することにしたが、Elizabeth Eckford(エリザベス・エックフォード、15歳)には電話連絡出来なかったため、彼女だけ単独で登校してしまう。学校の周囲には大勢の白人が集まっていた。彼等はElizabeth Eckfordに気づくと「アフリカに帰れ!」というプラカードを突きつけ、「セントラル高校は白人専用!」と連呼した。彼女は州兵は黒人生徒を群衆から守ってくれるために配備されたものと思い「校内に入れてくれ」と頼むが州兵は銃を交差させて通せんぼし、戻れという仕草をするだけだった。彼女は悪罵の中を悄然とバスで帰宅する。残る八人も州兵に阻まれ、校内に入れず引き返した。

アイゼンハワー大統領がTVで演説し、「最高裁判決が守られていない。私の指示も無視された」とし、1,200人の空挺部隊をもって中央高校を支配下においた。この日以降、生徒達は教室内を除く全ての校内活動で兵士達に守られることになった。

しかし、1957年11月、空挺部隊は去った。同時に白人の生徒達からの迫害が開始された。黒人女子生徒に食べ物が投げられ、教科書は蹴飛ばされ、Ernest Greenのロッカーの中は滅茶苦茶にされ、シャワー・ルームにガラス片が撒かれた。

Ernest Greenの前途は暗澹だった。彼の物理の教師は彼に最低の点を与え、卒業出来ない恐れがあった。NAACP役員は「卒業さえすればミシガン州立大への奨学金が得られる。とにかく卒業しなきゃ」とハッパをかける。Ernest Greenの祖父は「これは憲法が保証する権利を行使する演習なのだ。お前たち若者は歴史を作っているのだ」と励ます。しかし、白人生徒の嫌がらせは増える一方で、ついに転校を決意する女子生徒が出てしまう…。

CATV用に作られたディズニィのTV映画ですが、'Ruby Bridges'(1998)や'Selma, Lord, Selma'(1999)同様、非常に良心的に作られています。IMDbに「私の母はこの当時、この高校に通っていた。彼女は『起った出来事はこの映画の通りだった』と云っている」という読者投稿が掲載されていますので、かなり事実に忠実に描かれているようです。

Elizabeth Eckfordの実際の写真を御覧下さい。サングラスをかけ、半袖の白ブラウスに50年代の少女らしい楚々とした裾模様のスカートをはいて、ノートを抱えています。その背後に中年の婦人団体がついて歩いていて、大口を開けて彼女を罵っています。映画のElizabeth Eckfordもそっくり同じデザインのスカートをはいています。私はこれだけで感動してしまいました。このスカートはこの日のために彼女自身が縫った手製だったそうです。この地元民による黒人少女いびりはTVニュースで流され、全米の同情を集めました。Elizabeth EckfordはLittle Rock事件のシンボルとなり、今でもその勇気が讃えられています。

現在、Elizabeth Eckfordの役をやりたがる人は沢山いるでしょう。しかし、彼女に罵声を浴びせる役など誰がやりたがるでしょう。この映画の群衆は業界用語で云う「ガヤ」(後ろでガヤガヤ云うだけのパートタイマー)なのでしょうが、彼等も真剣にレッドネックになり切って大声を出し、拳を振りかざしています。アメリカ人はテーマのためなら、こういう憎々しい役も見事に演じます。クレディット・タイトルに名前が出る人も出ない人も。これも感動ものです。

空挺部隊に守られた九人の学生が登校する場面では、Mahalia Jackson(マハリア・ジャクスン)のゴスペル'Take My Hand O Precious Load'がダブって感動的です。名歌手の助けを借りるのは監督のズルですけどね:-)。

Ernest Greenの友人を演ずるOmar Gooding(オマー・グッディング)はCuba Gooding Jr.(チューバ・グッディング二世)の実弟。演技も似ています。

Ernest Greenの祖父を演ずるOssie Davis(オシー・デイヴィス)は、この映画では俳優ですが、監督・制作もすることがある多才な人物。Malcolm X(マルコムX)やキング牧師の弔辞を読んだこともある有名な人です。

(August 17, 2002)



【公民権運動関連】

Crisis at Central High『アーカンソー物語』 (1981)
For Us, the Living(未公開)(1983)
Eyes on the Prize(未公開)(1987)
The Long Walk Home『ロング・ウォーク・ホーム』 (1990)
Separate But Equal『裁かれた壁〜アメリカ・平等への闘い』(1990)
The Vernon Johns Story『怒りを我らに』 (1994)
4 Little Girls(未公開)(1997)
Ruby Bridges(未公開)(1998)
Selma, Lord, Selma(未公開)(1999)
Crazy in Alabama『クレイジー・イン・アラバマ』 (1999)
Freedom Song『フリーダム・ソング』(2000)
Boycott『ボイコット/キング牧師の闘い』(2001)
The Rosa Parks Story『ローザ・パークス物語』(2002)
Sins of the Father『父と罪 重き告発』(2002)

公民権運動・史跡めぐり

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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