Golf Tips Vol. 122

Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)のフォワード・プレス

Michelle Wie(ミシェル・ウィ)の2009年の飛躍と、Tour Championship 2009におけるPhil Mickelson(フィル・ミケルスン)の勝利に貢献したのはDave Stockton(デイヴ・ストックトン)のパッティング指導でした。Michelle WieはDave Stocktonのメソッドの一つである《素振りせずにパット》を実践していましたし、Phil Mickelsonは《必ずフォワード・プレスせよ》と《ボールを低く転がせ》を忠実に実行していました。

[Stockton]

で、Dave Stocktonの本を読み返してみましたが、何と「フォワード・プレス」だけで6ページ半(図解を除けば3ページ半)もあります。いかに彼がフォワード・プレスを重要視しているかが解ります。

'Dave Stockton's Putt to Win'
by Dave Stockton with Al Barkow (Simon & Schuster, Inc., 1996, $22.00)

「私は4°〜5°のロフトがあるパターを薦める。昔、グリーンが今のようにツルツルでなかった頃、パターのロフトは芝に沈んでいるボールを即座に浮上させ、スムーズに転がすための役割を果たしていた(今はもうその必要はない)。私はそのロフトをストローク開始前のフォワード・プレスに用いる。フォワード・プレスはリズミカルなパッティングにとって不可欠なものだ。

実際には私のストロークは、フォワード・プレスと左手のオーヴァラップさせた人差し指のプレッシャーを僅かに増すことの組み合わせ動作によって開始される。その二つを同時に行なうのがベストと感じている。もしその動きを分割するのであれば、指に圧力を加えることを先に行なうべきだと思う。二つの動作が複雑過ぎるというのであれば、指のことは忘れてフォワード・プレスだけでストロークを開始してよい。フォワード・プレスはストロークの一部なので、これは絶対に欠かせない。

どれだけの量のフォワード・プレスをすべきか。もしパターに充分なロフトがあれば、アドレスした際にパターのフェース面が見える筈だ。そのフェースが見えなくなる角度が適切なフォワード・プレスの量である。

フォワード・プレスは、例えばパターの6°のロフトを1〜2°(あるいはゼロ・ロフト)にするものだ。マイナスのロフトは不可である。マイナスのロフトはボールを地面にめり込ませ、次いでぴょんと飛び上げる。【編註:ボールがバウンドすると方向は乱れ、距離も減る】これはフォワード・プレスをやり過ぎている証拠である。

ゴルフの難しいところは、静止しているボールを打つことだ。野球やテニスのように、動いているボールに反応するわけではない。フォワード・プレスはワッグルに似て、静止した状態からストローク開始までの間にリズミカルな流れを作り出すものだ。これはビリヤードでキュー(突き棒)をしごく動作と同じでもある。どちらも打つ前にテンションを和らげ、リズミカルなテイクアウェイへと導いてくれる。このプロセスを欠くと、下手なゴルファーはアドレスで凍り付いてしまい、硬直しギクシャクしたストロークを始めるしかない。

《バックストロークの開始はフォワード・プレスである》と考えよ」

私が使っているTwo Barマレットはフェースのロフトが1°です(メーカーの話だと一般的には3〜5°とのこと)。ボールとパターが接触した後、普通はロフトによってボールがある程度の距離を横滑りしてから、やおら回転を始めるのですが、このパターは横滑りを防ぎ最初からボールが転がるように設計されているのです。ということは、普通のパターのようにフォワード・プレスをしない方がよいということになります。フォワード・プレスはパターのロフトを確認してから採用すべきです。

本日、Navistar LPGA ClassicのTV中継で確認しましたが、Michelle Wieはフォワード・プレスしていません。また、次項で触れる「乗馬スタイルのように両膝を左右に広げるスタンス(O脚風)」もしていません。女子プロがO脚風アドレスをするのは、ちと格好悪いとも云えますが:-)。

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(October 02, 2009)


バンカー・ショットとパッティング

バンカー・ショットとパッティング、双方には共通点があります。10秒以内に答えを云って下さい。

1…、
2…、
3…、
4…、
5…、
6…、
7…、
8…、
9…、
10! ハイ、では答えをどうぞ。

正解は「どちらも下半身を動かさないのがベスト」です。どうでしたか?

トーナメントのTV中継を観ていて、プロのバンカー・ショットのスロー・モーションの映像を見せられることがあります。解説者は必ず「御覧なさい、彼の下半身は全く動いていません」と云います。確かに完全に静止しています。私は何度もこういう解説を聞きながら、最近までその重要性に気づきませんでした。

バンカーでは、スウィング軌道と手首を返さない(ロフトを活かす)ことだけに集中し、下半身のことは考えていませんでした。ある時、バンカー内で素振りしている最中、ふと下半身に目を向けると、明らかに両膝がターゲット方向に送り出されていました。ピッチやチップと同じように…。そこでTV中継の解説を思い出し、下半身をどっしり構え、完全に動かさない決意でスウィングしてみました。素晴らしいバンカー・ショットが実行出来ました。ザックリやホームランを出さない秘訣は、この静止した下半身にあると思いました。

昔の人が「バンカー・ショットは手打ちでいい」と云ったのは、「手で打て」というよりも「フル・スウィングのように下半身を動かしてはいけない」ということだったのではないでしょうか。それがいつの間にか半分に削られ、「手打ちでいい」だけになってしまい、下半身を静止させるべきことは忘れ去られてしまったのでは?

2003年に発行された週刊朝日百科Golf Lesson『坂田信弘の最新100レッスン』No.25では、バンカー・ショットの特集で8ページ費やされています。坂田氏は「バンカー・ショットは手打ちではない」とまでは云っていますが、下半身については一言も触れていません。アメリカのTV中継解説との大きな違いです。

さて、最初の問題に戻りますが、パッティングでも下半身を動かさないことが重要です。パット名人Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)は「私は大きな筋肉は身体を静止させるために使い、ボールを推進させるためには手と指を用いる」と云っています。彼はストロークの間に左脚が直立するのを防ぐため乗馬スタイルのように両膝を左右に広げ(O脚風)、それによりびくともしない基盤を作って身体を静止させているそうです。

私にもバンカーで不動の下半身を作り出せるなら、パッティングでも同じことが出来る筈です。これを今後の課題にしようと思いました。

(October 02, 2009)


Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)のストローク

Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)のTour Championship 2009優勝に貢献した、パット名人Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)のストローク法。

[Stockton]

'Dave Stockton's Putt to Win'
by Dave Stockton with Al Barkow (Simon & Schuster, Inc., 1996, $22.00)

「バックストロークはストローク軌道について考える場合には、あまり重要なものではない。これは奇妙に聞こえるかも知れないが、ターゲット・ラインの外側にパターを引こうが内側に引こうが、好きなようにすればよい。要は、フォワードストロークの際にパター・フェースがターゲット・ラインにスクウェアでありさえすればいいのだ。

私は普通やや外側にパターを引き、フォワードストロークでスクウェアに戻す。Ben Crenshaw(ベン・クレンショー)やBilly Casper(ビリィ・キャスパー)などは若干インサイドに引き、スクウェアに戻している。どちらにしても、これらの方法は直感的であり、機械的な動作ではない。

ストレートに引き、ストレートに出すストロークは、ボールに完璧なオーヴァー・スピンを与えようとするものだ。しかし、これは練習が必要で、意図して努力しなければならない機械的動作である。

私は僅かなフックスピンを与えるのを好む。ラインを逸れるほど強いものではないが、充分に地面を噛んで転がる程度のフックスピンである。

バックストロークでは微かに"hooding"(フッディング)させることを薦める。"hooding"とはフェースをクローズにすることではない。パターフェースをかぶせ気味に(若干地面を向くように)することだ。しかし、角度はごく僅かである。これは肩主体のパッティングをする人々が、パターフェースをアドレス時の状態に完全に復元してインパクトを迎えようとするのとは異なる点である。【編註:アドレスはどちらも同じだが、こちらは"hooding"させたインパクトになるのが相違点】

Ben CrenshawやPhil Mickelsonらはもっと風変わりなストロークをする。スウィング・ドアの開閉のように、バックストロークでフェースを少しオープンにし、インパクトでスクウェアにする。Ben CrenshawやPhil Mickelsonならその団扇で煽ぐような動作を完璧に遂行出来るとしても、一般のゴルファーには無理である。フェースを終始完全にスクウェアに保とうとするストレート・パッティングもかなりの努力が必要だ。"hooding"の方がずっと安全で簡単な方法である。

私はバックストロークで僅かに手首をコックする。しかし、アンコックはせず、最後まで手首のコックを保持する。アンコックすると、ボールを低く転がすのでなくアッパーに叩く結果になり、危険極まりない。肩主体のストロークを志向する人々は大きな筋肉だけ使って、手首や手などの小さな筋肉は使いたがらない。ゆえにそのメソッドでは、バックストロークもフォワードストロークも振幅が大きくならざるを得ない。これは調節が難しいテクニックである。私は大きな筋肉は身体を静止させるために使い、ボールを推進させるためには手と指を用いる」

つまり、Dave Stocktonに云わせれば(最近私がトライしている)インサイド→スクウェアのパッティングは「常人には困難」だそうなので諦めることにしました。多くのプロが実践し、私もずっとやっていたストレート・パッティングは「機械的過ぎて駄目」だそうです。両者の中間のアーム・パッティングには触れられていません。この本が執筆された当時、アーム・パッティングはまだ多くのプロに採用されていなかったのでしょう。試してみると"hooding"動作はストレート・パッティングに近いように思えます。ひょっとするとDave Stocktonあたりがアーム・パッティングの源流なのかも知れません。

試してみると、"hooding"させた時にはロング・パットも成功する確率が高い。ただし、左手主導でフォワード・ストロークした場合です。右手でパチンと弾いたりすると失敗します。リズムに乗ってスムーズにストロークすることが大事です。

私の場合、左肘がお腹を擦るようなバックストロークをしながら"hooding"させ、ターゲットにスムーズに押し出すといい結果が得られます。

彼の《ボールを低く転がせ》ほかのtipは、以下の記事を御覧下さい。

Dave Stocktonの技法
続・Dave Stocktonの技法
続々・Dave Stocktonの技法
Dave Stocktonのパットの応急手当て
Dave Stocktonの秘密
Dave Stocktonのパッティング練習法
Dave Stocktonの 2mのパットの秘訣
Dave Stocktonの練習ストローク無用論

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(October 05, 2009)


グリップ圧で左右に打ち分ける

《グリップ圧を強くすると、ボールはやや右方向に向かって飛ぶ》(スライスではない)
《グリップ圧を弱くすると、ボールはやや左方向に向かって飛ぶ》(フックではない)

上のtipsはこのサイトを始めたごく初期に学んだことで、別に目新しいことではありません。しかし、私にとって役に立つようになったのは最近のことです。

・例1

私が通っているコースのNo.16(262ヤード、パー4)は、短いのですが谷越え、右に松の巨木、その後ろに松林が連なっている上、フェアウェイは右から左に傾斜しているという難しいホールです。フェアウェイのド真ん中に打ってニコニコしながら行ってみると、ボールは良くて左のラフ、悪くてもっと左の灌木地帯に転げ込んでいたりします。

ある時、たまたま右の松をかすめたボールがフェアウェイ右に飛びました。驚いたことに、ボールは二打目がウェッジで充分な距離に届いてました。フェアウェイ右は固い裸地のようになっていて、ボールがかなり転がるからです。「これを利用しない手はない」と思い、その後いつも右を狙うのですが、凄いフックがかかってフェアウェイ左に行くか、右を狙い過ぎて松の巨木に激突…ということの連続でした。

やっと「フックになるのはグリップが緩過ぎるからだ」…と気づきました。ある日、ドライヴァーのグリップをややきつめに握り、手首を返さずターゲット・ラインに沿った高めのフィニッシュを心掛けたボールは、右の松の巨木を越えて狙い通りの場所に飛んで行ってくれました。2オンのパー。

・例2

No.18(342ヤード、パー4)も谷越えです。ここもフェアウェイが左に落ち込んでいて、谷底からの急激な上りの二打目は、(グリーン手前には大きなバンカーが待っていることもあり)残り150ヤードなのに200ヤードと思って打たないと乗りません。

「例1」に似ていて、このホールもフェウェイ右端は裸地に近い固い地面なので、ここに打てば距離も伸び、二打目も1クラブ足す程度でグリーンに乗せられます。ところが、私の毎回の試みはこれまた失敗続きでした。上の「例1」に成功した同じ日、続けて「グリップをきつめに握る」テクニックを使ったところ、ボールはフェアウェイ右の狙った場所に着地、ゴロゴロ真っ直ぐ長く転がって、残り130ヤード地点にまで達してくれました。バンカー越えの砲台グリーンなので、1クラブ足して6番アイアンで打ったボールは、ピンに1.5メートルにつき、バーディ。このホールでのバーディは初めてでした。

以上は、どれも「こっちに打ちたい!」という例ですが、左に危険(林やO.B.など)があって「左には打ちたくない!」という場合もグリップをきつめに、右に危険があるならグリップを緩めに(ボールは左めに飛ぶ)…という風に使えます。同じように、右ドッグレッグではグリップを緩めにして、右の林に近づかないように出来ます。

(October 08, 2009)


Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)のグリップ

Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)のTour Championship 2009優勝に貢献した、パット名人Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)のパッティング・グリップに関する考察。

[Stockton]

'Dave Stockton's Putt to Win'
by Dave Stockton with Al Barkow (Simon & Schuster, Inc., 1996, $22.00)

「ソフトな転がりを生み出すには、ボールを転がす強さの感覚を持つ必要がある。パッティングにおいて最も重要なのは両手を通して得られる感覚をコントロールすることである。両手はボールを推進させるクラブと唯一繋がっている部分だ。どれだけ多く感覚を確保出来るかは、どうクラブを持つかにかかっている。

最大限に感覚を得るという理由から、私はパターをフィンガーで、しかも可能な限り多くのフィンガーで握るべきだと考える。指は身体の中で最も敏感な部分であり、パターヘッドの重みの感覚を伝えてくれ、ストロークの間、パターヘッドがどの位置にあるかも教えてくれる。

現在、肩主体のストロークが流行している。その流儀を実践する人々は、手や手首などの小さな筋肉と神経を無にしようとする。そのテクニックの一部は、パームでパターを握れというものだ。だが、皮の厚い掌を通してパターヘッドの感覚を充分に得ることなど不可能だ。

パッティングにおいては小さな筋肉を使うべきである。パターのグリップ部分は、左手の人差し指の三番目(先端から数えて最後)の膨らみを横切り中指・薬指・小指のタコが出来る部分に沿って、若干の角度をもって握られる。

右手は全部の指の三番目(先端から数えて最後)の膨らみでパターを握る。こうすることによって最大限の感覚が得られ、完全に手をコントロール出来るようになる。

左手の甲は平らな形でターゲットを向く。右手の甲はターゲットの真反対を向く。双方は鏡像のように向かい合っている。両方の親指をパター・グリップの正面中央で下向きに当てる。

ゴルファーの多くは全ての指を隙間無くくっつけてパターを握る。私は、下手投げでボールを投げる時のように、それぞれの指をやや広げて握る(特に右手)。広げることによって感覚を増大させ、パターのコントロールも良くなる。

私は左手の人差し指が右手の小指の上に置かれる『逆オーヴァラップ・グリップ』を推奨する。これは左手主導の精確なストロークを可能にしてくれる。左手の人差し指を伸ばし、右手の三本の指全てにかけるグリップをする人がいるが、それはテンションを作り出してしまう。パッティングにおいてテンションは敵である。

グリップ・プレッシャーはいい感覚を得る決定的な要素だ。特に距離のコントロールに影響するのだが、短いパットの成功・不成功の鍵でもある。簡単に云えば、パターを持った時、プレッシャーやテンションを感じるべきではない。パターは、小鳥を逃がさぬように殺さぬように両手で包む感じで握る。あるいは、誰かがあなたの手からパターをするっと抜くことが出来るような軽いプレッシャーである。

パターヘッドがあまりにも重いと、上のように軽く握ることは出来ない。きつく握ると感覚が得られなくなる。私はどちらかと云えば軽いパターを用いる。重いパターに振り回されるのでなく、私がパターをスウィングしたいからだ」

なお、Dave Stocktonはレフトハンド・ロー(クロスハンデド)のグリップがツァーで成功していることを認め、「(自分で採用するつもりはないが)両肩を水平にし、その結果左手主導のストロークになることからも、レフトハンド・ローのパッティングは最良の方法と云えるだろう」と述べています。

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(October 11, 2009)


簡単ロブ

インサイド⇔インサイドのパッティング・コーチとして成功し、最近はショート・ゲーム全般のインストラクターとなっているStan Atley(スタン・アトリィ)のロブ・ショット。

'Simplifying the lob shot'
by Stan Atley with Matthew Rudy ('Golf Digest,' October 2009)

「掬い打ちでボールを上げようとオープンスタンスで右肩を下げるのではなく、安全確実なバンカー・ショットのセットアップをすべきである。

1) 両足を肩幅に開く。
2) 背骨は左に傾ける。
3) 両手はややボールの後方(これがロフトを増す)。
4) 腕は極力動かさず、グリップエンドを身体の前に保ったまま、グイッ!と大胆にコックする。
5) インパクトにかけて急速にアンコックする(これがボールを宙に上げる原動力)。
6) 左肘が身体に沿って擦るようなスウィングで、左手首が甲の側に折れるままにする(手首が凹形になる)。
7) フィニッシュではクラブフェースが空を向いているように(それがロフトを活かした証拠である)。

驚きました。実はこれ、私の“超変則ロブ”にほとんどそっくりなのです。違うのは1〜3で、私はオープンスタンス、背骨は中央、両手はボールのやや前方です。しかし、その後はほぼ同じ。特にターゲット・ラインに沿ってコックするのがポイントで、方向性がグンと良くなります。腕が身体を擦るのも同じで、ズボンの右ポケットに余分のボールが入っているとスウィング軌道が乱れて失敗するほどです。

私の場合、左手首を甲の側に折るのではなく、手首を過激に返します。Stan Atleyのフィニッシュの写真はクラブが腰よりも低めですが、私の“超変則ロブ”は両手が胸の高さでターゲットを指しています。手首を返しているので、クラブフェースは空を向きません。

 

Stan Atleyのやり方を試してみましたが、「背骨を左に曲げ、両手をボール後方に置く」というのは、双方の角度がジグザグになり自然とは云えないように感じました。しかし、「ロブ入門」の段階で試すにはいいと思います。

(October 14, 2009)


Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)のセットアップ

Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)のTour Championship 2009優勝に貢献した、パット名人Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)のパッティング・セットアップに関する詳細。

[Stockton]

'Dave Stockton's Putt to Win'
by Dave Stockton with Al Barkow (Simon & Schuster, Inc., 1996, $22.00)

「スタンスというものは、ストロークの間身体が動くことを防止するためのものだ。難しいのは、自分が身体を動かしていることに気づかないことである。

身体を動かすことは、棒っ切れでボールを打つスポーツ全部に付き物であり、ゴルフもまた例外ではない。フルスウィングで身体を動かす人は、パッティングでも身体を動かし易い。中でもフォワード・ストロークで左右の膝をターゲット方向に送り出す人が多い。ストロークの間じゅう、左膝は完全に静止させること。

結果を見たくて(心配して?)頭を動かす人も多いが、これは意思の力で克服するしかない。

私は、短いパットでは両踵の間を25〜36センチ広げて立つ。長いパットでは、大きいストロークをするため踵の間を10〜15センチに狭くして立つ。

体重の60%はターゲット側にかける。そして、その体重は踵ではなく爪先にかける。前につんのめらないよう、本能的に身体は静止状態を保とうとする。踵に体重をかける人はバックストロークでターゲットラインのインサイドに引く傾向があり、インパクトの後ストレートに(ターゲットラインにスクウェアに)動くべきパターをプルしがちである。

正しい体重をキープするには、アドレスで両脚を弓状に(O脚風に)することだ。馬に跨がっている感じ。私は靴の外側の縁で立つほど、脚を弓なりにする。こうすることによって、ストロークの間に左脚が直立するのを防ぐことが出来、びくともしない基盤によって身体を静止させることが可能になる。

ボール位置は、左足内側とスタンス中央の間のどこかで、プレイヤーにとって快適な一点。ミスしやすい人はスタンス中央に近い方がベター。頭はボールの真上に置く。

アライメントは、ほんの少しオープン。

腰(股関節)から上半身を屈め、背中は出来るだけ真っ直ぐに伸ばす。膝は適度に柔軟に。

手とパター・シャフトの位置は身体の中心(胸の真ん中かベルト・バックルの位置)に置く。もし、手が右にあると、右手主導のストロークになってしまう。

また、手はアドレス時に高めに構えること。パットを左にミスする人は、特に手を高くすべきである。

両肩を結ぶ線は、アドレス時に地面と水平であるべきだ。

パットの前の素振りは不要である。折角決めたラインやボールがカップインするイメージ、打つ強さのフィーリングなど全てを素振りの最中に失ってしまい、想念がパッティングの機械的動作に集中してしまう。また、素振りに時間をかけるとテンションが増す結果ともなる」

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(October 17, 2009)


パワフルなボール位置は左肩先前方

「正しい位置でティーアップすれば、飛距離を10ヤード増やせる」という副題がついた記事。

'Tee the ball in the power position'
by Chuck Evans ('Golf Magazine,' October 2009)

「ドライヴァーのボール位置は『左足内側の前方』と一般に云われる。しかし、ドライヴァーのボール位置を決めるに当たって最も重要なのは、ボールがスウィング弧の最低点(かその直前)であるべきだということだ。そしてその位置は左肩の突端の外側である。左肩は、スウィングの最低点を示す指標であるだけでなく、最大のパワーが作り出される中心点でもある。ボール位置を定める際には、足のことは忘れて、肩に注目すべきである。

インパクトで、左手首が左肩先の前方になるようなボール位置にアドレスする。もし、ボール位置がそれを越えた地点だとパワーは得られない。クラブが上昇気味の減速しかかった状態でボールとコンタクトするからだ」

(October 21, 2009)


プラムボブはおやめなさい

Jim "Bones" Mackay(ジム・“ボーンズ”・マッカイ)は、1992年以降Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)のキャディを務めています。グリーンの読みについてはPhil Mickelsonの信頼も厚く、意見を求められるとパッティング・アドレスの体勢をとって読む姿が印象的。

'10 Rules'
by Jim "Bones" Mackay with Guy Yokom ('Golf Digest,' October 2009)

「TV中継を観ていればお分かりだろうが、20年前に較べるとプラムボビングをするツァー・プロはごく少なくなっている。以前は誰もがプラムボビングに慣れっこだったが、現在の衰退からすると、あれは使いこなすのが難しいか、役に立たないのだと思われる。

まだプラムボビングにこだわるプロもいるが、Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)、Tiger Woods(タイガー・ウッズ)、Phil Mickelsonなどがあれに頼ったことはないし、彼らよりパットが上手い人間はいない。だから、あなたが現在プラムボビングをやっていないのなら、手を出すべきじゃない」

(October 21, 2009、訂正January 01, 2017)


Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)のストロークの長さ

「Dave Stocktonのストローク」に追加さるべき「ストロークの長さ」。

[Stockton]

'Dave Stockton's Putt to Win'
by Dave Stockton with Al Barkow (Simon & Schuster, Inc., 1996, $22.00)

「重要なことは、バックストロークとフォワードストロークの長さは同じだということだ。私は短いバックストロークに長いフォワードストロークというメソッドは好まない。

人々は『短いバックストロークなら身体が動かない』とか、『短いバックストロークだとインパクトで加速出来る』などと云うが、この手のストロークはボールに急速なパンチや打ち上げるようなインパクトを与える。多くの場合、ボールを強く打ち過ぎる。

私はPhil Mickelson(フィル・ミケルスン)やBen Crenshaw(ベン・クレンショー)の長く締まりのないバックストロークも推奨しない(たとえ、それがフォワードストロークと対の長さだとしても)。このタイプにはインパクトでの減速という危険があるからだ。名前を挙げた二人の場合は、その方式でずっとやって来たわけだし、人並みはずれたタッチを持っているから問題はない。だが、週に一回か二回しかプレイしない一般のゴルファーにはマスター出来るわけがない。

多くのゴルファーはパターを余りにも長く引く。その主な原因は、彼らがボールをスタンスの遥か前方(ターゲット方向)に置くからだ。そして、かなり短いフォワードストロークをしがちである。

バックストロークもフォワードストロークも同じ早さでパターを動かすこと」

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(October 24, 2009)


二つの反発力

 

最近のメタルウッドやハイブリッドのフェースは高反発力設計になっています。私の周囲のシニアたちの多くはその反発力を活かしたスウィングをしており、PGAツアー・プロのように目一杯のパワーを使ったスウィングはしていません(というか、出来ない)。

最近、私の練習ラウンドで二種類のスウィングを試してみました。一つは「飛ばそう!」と思って目一杯の身体と腕の力で「ヒット」するもの。もう一つはヒットするのではなく、身体の捩り・解(ほど)きによる「スウィング」だけを使って腕の力のヒット力を除外したものです。ボールの着地点へ行ってびっくりしました。

「ヒット」したボールはフェアウェイ左1メートル外のラフに掴まっており、「スウィング」したボールは20ヤードも前方のフェアウェイのド真ん中にありました。「ラフに掴まればショートして当然」なのですが、「ヒット」すると方向も乱れるのでラフに行ってしまったのだと考えるべきだと思いました。プロはスウィングとヒットの総合力で飛ばしているのでしょうが、アマチュアの多くにとって「ヒット」の要素は諸悪の根源のようです。

アイアンのフェースには反発力はありません。アイアンではボールを圧し潰し、ボールの反発力を使うしかありません。

プロの中にはeasy(エフォートレス)にアイアン・ショットを打っているように見える人がいます。私も一度ならずそういうスウィングをしてみたことがあるのですが、飛距離が激減しました。easyに見えても、プロはディヴォットを取ってスウィングしているので、ボールはしっかり圧し潰されて反発力が生まれているわけです。私のようにディヴォットを取らずに地面を払うような打ち方だと、クラブヘッドのスピードでもってボールを圧し潰すしかありません。力加減が難しく、先ず距離が不安定になり(前後する)、インパクトの際のフェースの向きにも影響します(左右にブレる)。インストラクターたちが「アイアンではディヴォットを取れ」と口を酸っぱくして云う理由が分ります。

 

現在の私は、ドライヴァーとハイブリッドは力まずにヘッドの反発力を使い、アイアンはビシッと打ってボールの反発力を使う…のがベストで、これを反対にしないように気をつけないといけません。

(October 24, 2009)


正しいルックアップ法

ルックアップ(=ヘッドアップ)は「悪」とされているので、「正しいルックアップ法」などあるわけが無いと思われるでしょうが、実はあるのです。ここでは主にパッティングについて書きますが、フル・スウィングでも同じことです。

ヒントになったのはパッティングの際のラインの確認法です。アドレスしてからカップを見る時、首を曲げて(起して)見てはいけないのです。これでは目線の角度が狂ってしまい、正しく判断出来ません。正しいライン確認法は、ターゲットラインに両目を揃えたまま首を(軸は静止させたまま)左に回転させるのです(横目で見る感じになる)。

私が発見した「正しいルックアップ法」は、上と同じように《ターゲットラインに両目を揃えたままルックアップする》というもので、こうするとパターフェースの角度は変化せずラインにスクウェアにフォワード・ストローク出来ます。

私はこれまでに何度か自分のフォワード・ストロークでオープンになってしまう上半身(特に肩)について書いていますが、このルックアップ法を使うとオープンになりません。右肩がラインの真上に落ちることになるので、フェースはスクウェアに保たれます。

ルックアップしないで済めばそれが最善ですが、ルックアップする癖がある場合は(往々にして私がこれ)、《ターゲットラインに両目を揃えたままルックアップする》のが正しい方法です。

(October 29, 2009)


バンカー・ショットに関する警告

'They still work!'
by Eden Foster with Michael Walker Jr. ('Golf Magazine,' September 2009)

この号の'Golf Magazine'『ゴルフ・マガジン』誌は、創刊50周年を記念して多彩な回顧特集を組んでいます。その一つは同誌創刊号に掲載されたtipsを再掲し、現役のティーチング・プロEden Foster(イーデン・フォスター)が「現在でも通用するtipか否か」を検証するという面白い趣向。ドライヴァー・ショットからパッティングまで六つのtipsが取り上げれています。そのバンカー・ショットに関する記事は月一ゴルファー必読です。

創刊号の記事は当時のツァー・プロAl Besselink(アル・ベッシリンク)によるもので、「クラブフェースを寝せて最高にオープンにし、クラブのリーディング・エッジをナイフの刃のようにする。そのセッティングでボールの数インチ後ろをカット打ちのように打ち抜く。これはプロにとっても技術より度胸を必要とするショットである」という内容。

現在でもTV中継などで解説者たちは「御覧なさい。彼(彼女)はサンドウェッジのフェースを極端にオープンにしています」などと云います。当然ながら、プロは素晴らしいスウィングをし、バンカーから脱出するだけでなくピン傍に見事に寄せたりします。しかし、以下のEden Fosterの解説を読み、われわれはプロの真似はしない方が無難なようです。

「Al Besselinkの理論は100%正しい。ただし、これはハンデが1か2のゴルファーにだけ可能な方法である。週末ゴルファーには無理難題だ。

今やハンデ別にバンカー・ショットを教える時代となっている。私の生徒の中のトップ・クラスには上のような方法を教えるかも知れないが、中級クラスには『少しだけクラブフェースをオープンにするだけで、あとは通常のスウィングをしろ』と教える。このレヴェルのゴルファーがフェースをフルに開いてボールの後ろをカットするように打とうとしたりしたら、永久にバンカーを脱出出来ないのは間違いない。

 

50年前、バンカー・ショットは今よりとてつもなく難しく、誰もがバンカーを避けようとしていた。現在、アプローチ・ショットをミスするならラフよりもバンカーが好まれる時代である。その理由は、コース・コンディションと道具の違いだ。今やハイハンデの者でさえバンカーを恐れず、脱出は可能であることを知っている」

[icon]

実は私もTV解説者の言葉を真に受け、フェースを極端に開いてショットしたことがあります。ボールは真上にぴょんと跳び上がり、すぐまた元のライに戻りました。まるで漫画みたい。《バンカー・ショットでは不動の下半身、そして右手を返さないこと》…これだけ覚えていれば充分のようです。

(November 08, 2009)


Yips(イップス)治療法

ショートゲーム専門インストラクターDave Pelz(デイヴ・ペルツ)が救いの手を差し伸べる、絶望からの脱出。

'Putt Like The Pros'
by Dave Pelz with Nock Mastroni (HarperPerennial, 1989. $13.50)

'Dave Pelz's Putting Bible'
by Dave Pelz with James A. Frank (Doubleday, 2000, $30.00)

「短いパットを時々ミスするということは誰にでもよくあることであり、あなたがYipsを患っていることにはならない。しかし、パットする前からそのパットをミスするだろうと感じているとすれば、あなたは立派なYips病患者である。この病気を治す処方箋は以下の通り。

・別なグリップ、別なパター、別なメソッドを試せ

 良いストロークを練習する前に、これまでとは異なるグリップやパター、メソッド(ストローク法)を試してみる価値はある。

・ストロークを改善せよ

 ストロークの機械的動作のどこに故障があるかを発見し、正しい方向に修繕せよ。

・良いストロークを繰り返せ

 改善されたストロークを長期的なマスル・メモリに記憶させるには20,000回のストロークが必要である。それまでは古い悪しきストロークが甦って来ることを覚悟せよ。一日の練習時間を30分(100ストローク)として週に五日練習した場合、約九ヶ月で20,000回を達成することになる。

・カップを忘れろ

 いいストロークを身につけるための練習をする際、カップをターゲットとしないこと。カップを狙わなければミスする恐怖も湧いて来ない。

・メンテ期間中のラウンドではスコアを無視せよ

 20,000回達成以前は良いストロークをすることだけ考え、ストロークの結果(スコア)を気にしないこと。気にするとYipsから抜け出すことは出来ない。成功・失敗にとらわれずリラックスしてプレイすべし。

・Yipsのトラウマにめげるな

 良いストロークの練習20,000回を達成したからといって、すぐ抜群の成果を期待してはいけない。Yipsのトラウマ(精神的外傷)が潜在意識に刻み込まれているため、しばらくはYipsが続く可能性がある。それにめげずに良いストロークを継続し、その良い転がりを脳にデモンストレーションして見せる。やがて転機が訪れ、どんどんパットに成功し自信も付いてくることは間違いない」

(November 11, 2009、改訂June 03, 2015)


抗Yips(イップス)剤

こちらは中堅インストラクターTodd Sones(トッド・ソーンズ)が処方する解毒剤。

'Lights-Out Putting'
by Todd Sones with David DeNunzio (Contemporary Books, 2000, $22.95)

「プレイヤーがストロークの際に過剰に加速したり、短いバックストロークや強く不安定なフォワードストロークをしたりするようになるとYipsになりがちである。Yipsほど挫折感を抱かせるものはない。しかし、抗Yips剤がないわけではないので、希望を捨ててはいけない。

セットアップの仕方、アライメント、使用パターなどが正しいという前提に立っての話であるが、Yips治療薬は、両腕から緊張を取り除き、良いテンポでスムーズな加速をすることに尽きる。

次の練習をするとよい。グリーン上のボールの後ろ6インチ(約15センチ)のところにコインを一個、さらにボールの前6インチにもう一個のコインを置く。ストロークする際、後方のコインまで確実にパターを動かし、前方のコインで停止する(少しなら通過してもよい)。これは正しいテンポを構築するための、バックストロークとフォワードストロークの長さを一致させる訓練である。6インチに慣れたら、次第に間隔を広げて行き、最長18インチ(約46センチ)までの訓練を行なう。

右手のグリップ圧が強過ぎるのもYipsの原因となる。両手のグリップ圧は同じでなくてはならず、フィンガーでなくパームでなくてはならない。フィンガーで握ると右手首の自由度が高くなり過ぎ、パターフェースのコントロールが(特にバックストロークにおいて)難しくなってしまう。ストロークの長さのコントロールは、唯一腕と肩の大きな筋肉に任せた場合に可能になる。それ以外の方法では、バックストロークとフォワードストロークの長さの不一致とムラのある加速を生み出すだけである」

(November 14, 2009、改訂June 03, 2015)


不動の下半身を築く

パッティングにおいて「不動の下半身」は不可欠です。土台(下半身)が揺るげば家(上半身)が揺るぎます。上半身がふらつけばパターフェースもスクウェアでなくなります。「不動の下半身」にするため、以下のように様々な工夫がなされています。

・X脚で立つ

Arnold Palmer(アーノルド・パーマー)の有名なパッティング・スタイル。

'My game and yours'
by Arnold Palmer (Simon and Scuster, 1965)

「スウェイするとミスは必定である。だから私はknock-knee(X脚)で立つことにしている。両膝をくっつけると、動かそうとしても不可能な程ガッチリと立てる感じがする」

・O脚で立つ

Dave Stockton(デイヴ・ストックトン)の「乗馬スタイル」。

 

'Dave Stockton's Putt to Win'
by Dave Stockton (Simon & Schuster, Inc., 1996)

「正しい体重をキープするには、アドレスで両脚をO脚風にすることだ。馬に跨がっている感じ。私は靴の外側の縁で立つほど、脚を弓なりにする。こうすることによって、ストロークの間に左脚が直立するのを防ぐことが出来、びくともしない基盤によって身体を静止させることが可能になる」

・両足の内側に体重を置く

Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)が新著で明らかにした方法。

'Putting My Way'
Jack Nicklaus with Ken Bowden(John Wiley & Sons Inc., $25.95, 2009)

「単に『じっとしてろ』と自分に云い聞かせても、たやすく静止出来るわけがない。私は両足の内側(あるいは両足の親指の付け根)に体重をかけるようにしている。私はこれを『ボールの上に錨を下ろす』と呼んでいる。また、左踵に通常より多めに体重をかけてアドレスすることも、いい助けとなっている」

この記述はDavid Write, Ph.D. ('Golf Tips,' June 2001)の記事「Jack Nicklaus(ジャック・ニクラス)の全盛時代、彼は狭いオープン・スタンスで、大半の体重を右足にかけていた」と完全に相反しています。他人より本人の言葉を信ずべきでしょうが…。

・広いスタンスを取る

Padraig Harrington(パドレイグ・ハリントン)や Kenny Perry(ケニィ・ペリィ)のような、まるでドライヴァーを打つようなスタンス。二人とも2008年、2009年と大活躍し、数々優勝していますから、広いスタンスによるパッティングの効果を疑うことは出来ません。

'Ask Pelz'
Dave Pelz ('Golf Magazine,' June 2009)

「広いスタンスを取る理由は、ストロークの間中下半身を不動にし、パターを後退・前進させる際に正しいプレーンを保てることだ。Padraig Harringtonは両肩をターゲットラインにきちんと揃えており、レフトハンド・ローのグリップが完璧にマッチしている」

しかし、ショートゲームの達人だったPaul Runyan(ポール・ラニャン)は次のように述べています。

'The Short Way to Lower Scoring'
by Paul Runyan with Dick Aultman (Golf Digest/Tennis, Inc., 1979, $9.95)

「あまりにも広いスタンスはスウェイの原因となり、ストロークの軌道とパターフェースに悪い影響を与える。あまりにも狭いスタンスはバランスを崩し易かったり、過度の直立姿勢によってボールから離れ過ぎてしまう」

較べてみましたが、私はドライヴァーを打つ時も肩幅を越えないスタンスなので、それを越えるような広いスタンスは落ち着かない思いをします。Jack Nicklausの方法はポスチャーこそ違え、Arnold PalmerのX脚に似たコンセプトだと思います。X脚では否応なく両足の内側に体重がかかるからです。私は元々軽いO脚なのでX脚にするのは窮屈で駄目ですが、Jack Nicklausの方法なら実行出来ます。しかし、それもDave Stocktonの「乗馬スタイル」を凌ぐものではありません。O脚に「乗馬スタイル」が向いているということもありますが、とにかくガッチリした基盤を構築出来、上半身が揺れることはなくなります。「乗馬スタイル」というのは頭では妙な格好に思えますが、鏡を見ると別にそれほど風変わりなポスチャーでもありません。

(November 23, 2009)


Steve Stricker(スティーヴ・ストリッカー)のtips

世界ランキングでTiger Woods(タイガー・ウッズ)、Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)に続き第三位のSteve Stricker(スティーヴ・ストリッカー)が公開する五つのtips。

'How to save shots'
by Steve Stricker with Ron Kaspriske ('Golf Digest,' December 2009)

「・ドライヴァー

フェアウェイをキープするコツは、いいリズムであることを発見した。今年、私はゆっくりしたテイクアウェイをし、ダウンスウィングを始める前にバックスウィングを完了させることによってフェアウェイをキープした。バックスウィングを完了させたかどうかは、身体の左サイド(主に左肩)がボール位置を超えたかどうかで判断出来る。これは鏡の前で練習が可能だ。

・アイアン・プレイ

私は高いボールを打つタイプだが、それは風の強い日にはトラブルの因になる。そういう日には“ノックダウン・ショット”が最適だ。これは“パンチ・ショット”とは違う。1クラブ長いクラブを選び、ボール位置はスタンス中央から少し後方に置いて3/4スウィングをするが、必ず前腕部を返すこと。ここがパンチ・ショットと異なる点だ。このショットはグリーンを狙う正確なショットとしてだけでなく、インパクトの前後で手がクラブヘッドをリードしてソリッドにボールを打つテクニックとして習得されたい。

・ピッチング

私はほとんどコックしないシンプルを旨としたピッチングをする。これは練習時間の少ないアマチュアに向いている。プロの中にはコックによって距離と高さを調節する者もいるが、コックを使わない方が正確である。もし、距離と高さを変えたいのであれば、ロフトの異なるクラブを使うか、ボール位置をスタンス後方に移すべきだ。最少のコックによるスウィングを変えるべきではない。

・チッピング

チップする際、私はあまりコックしない。コックしないでクラブヘッド・スピードを作り出すために、ラフからのチップをバンカー・ショットのように行なう。これはホームランを恐れるアマチュアに最適だ。加速することはチップ・ショットの鍵である。ターゲットにオープンに足を開き、オープン・フェースのアドレス、両足を結ぶラインに沿ってスウィングする(結果的にアウトサイド・インになる)。フェースを開くのでボールは高く上がり、ソフトに着地する。だから、強めに打つべきだ。

・パッティング

 

私はストレートなバックストローク、ストレートなフォワード・ストロークのパッティングをする。私はメカニックス(身体的動作)を単純にして、ラインとスピードに集中する。動作の焦点は左腕の動きにある。両肩と両腕で形成される三角形を崩さず、1ユニットとして動かす。これはフェースをターゲットにスクウェアに保ってくれるストロークだ」

最後のパッティングですが、写真ではSteve Strickerは両腕を突っ張ってはおらず、自然にゆるやかに折っています。現在の私は左腕を真っ直ぐ伸ばしたレフトハンド・ローのスプリット・ハンズ(右手はパター・グリップ末端を持つ)です。Steve Strickerのスタイルと比較すると、我田引水ですが私のスタイルの方がアドレスの形が崩れず、左腕主導のストロークがし易いです。

(November 26, 2009)


85%がアマ・サイドにミスする事実

Tiger Woods(タイガー・ウッズ)のスウィング・コーチだったHank Haney(ハンク・ヘイニィ)が語る「ブレイク(曲がり具合)への対処法」。原文では"pace"、"speed"となっている部分を、ここでは「強さ」と云い替えています。

[Haney]

'The Only Golf Lesson You'll Ever Need'
by Hank Haney with John Huggan (HarperCollins Publisher, 1999, $25.00)

「パットを成功させようと思うなら、打つ強さとラインの両方を正しく計算しなくてはならない。多くのアマチュアはブレイクの予測に多くの時間をかけるものの、どれだけの強さでボールを打つべきかを考慮しない。ブレイクはパットの強さと不可分である。強く打てばブレイクは少なくなるし、弱く打てばブレイクは大きくなる。

一般的に云って、大方のゴルファーは充分なブレイクを見込まない。統計によれば全パットの85%がカップより低い方にミスしているそうだ。あなたは自分が考えたブレイクより4〜6倍のブレイクを見込むべきだ。この数字は大き過ぎるように思えるだろうが事実である。次回、あなたがブレイクのあるパットに直面した場合、『これだけブレイクを見込めば充分だ』と考えても、85%の人々もそのように考えて低い方にミスしている事実を思い起こすべきである。だから、考えた量より以上のブレイクでプレイせよ!85%という確率をぶち破れ。高い方からならボールがカップに転げ込む可能性はあるが、低い方からは絶対にない。低い方が“アマ・サイド”と呼ばれる所以である。

充分にブレイクを見込まない場合、あなたは本能的に強く打ってボールをラインにキープしようとする。これはボールを蹴飛ばしているに等しい。特に早いグリーンでは常に最高のブレイクを見込むこと。こうすれば可能な限りソフトにパットすることが出来る。

パッティングの強さは、同時に次のパットの距離を決定する。全てのパットを成功させられる人はいないのだから、必ず次のパットを考えるのが現実的というものだ。

全てのグリーンに傾斜が存在する。コース設計家はその傾斜によって水はけをよくするのだ。ストレートなパットはあり得るが、平らなグリーンというのはあり得ない。あるとすれば、それは死んだグリーンである。排水の方向は様々だ。手前に向かっているかも知れないし、横かも、あるいは奥かも知れない。ボールもその方向にブレイクする」

【参考】「Dave Pelzのパットに関する驚くべき事実」(tips_15.html)

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(November 29, 2009、改訂December 08, 2015)


あるときは片目のプロ・ゴルファー

LPGAのNo.1プレイヤーLorena Ochoa(ロレーナ・オチョア)のパット練習tip。

'Train your eye'
by Lorena Ochoa with Rafael Alarcon and Topsy Siderowf ('Golf Digest,' December 2009)

「私に特有のミスは、かなり左を狙ってしまうことだ。それは利き目(私の場合、右目)を有効に使っていない場合に起る。

その対策として、私は練習のとき眼帯を左目に着けることにした。これは利き目に頼ったセットアップとストロークを強制することになる。眼帯を着けることによってアライメントが正確になるので、頭を動かしたりする理由も無くなる。

私は頭を廻す(起すのではない)ことによって利き目をターゲットラインに沿わせる。頭を起すとパターフェースの向きを変えてしまい易い(以前の私はそうしがちだった)。

私はこの眼帯による練習を10フィート(約3メートル)以内のパットで行なう。コースでは眼帯無しでも利き目がアライメント決定の主役となり、余計な動きを最少限に留めてくれる」

(November 29, 2009)


パットでは距離こそ命

Tiger Woods(タイガー・ウッズ)のスウィング・コーチHank Haney(ハンク・ヘイニィ)の「パッティングでは距離を重視せよ」という記事。原文では"pace"、"speed"となっている部分を、ここでは「強さ」と云い替えています。

[Haney]

'The Only Golf Lesson You'll Ever Need'
by Hank Haney with John Huggan (HarperCollins Publisher, 1999, $25.00)

「どれだけの距離を打つべきかは、パッティングの中で最も軽視されている分野である。距離のコントロールに注目する人はほとんどいないし、ゆえにそれがアマチュアの最大の弱点であっても驚くにはあたらない。

あなたがどのパットもソリッドに打てないことと、不安定なストロークを常に微調整しないといけないと感じていることを認識すべきだ。例えばトゥで打てばボールは満足に転がらない。それを何度も繰り返すと、次のパットで3メートルもオーヴァーさせてしまったりする。それもこれも、ボールをソリッドに打てないことが原因である。一旦、ソリッドなパッティングが出来るようになると、あなたのフォーカスはパットの強さに向かう。

Dave Pelz(デイヴ・ペルツ)は機械を使ってパッティングの実験をした。カップまで3メートルの距離で機械の成功率はたった50%であった。彼が機械を調節し、ボールがカップを43センチほどオーヴァーする強さで打たせると、成功率は90%に跳ね上がった【註参照】。結論は明らかだ。あなたもカップを30センチほど越える強さで打つべきなのだ。少なくとも平らな地形のパットにおいては…。ダウンヒルやサイドヒルのパットでは、43センチ・オーヴァーは1メートルものオーヴァーに変貌しかねない。こういう場合は、カップの手前の端を狙うこと。

【註】「ホールはゴールではない」(tips_46.html)という記事で、Dave Pelzは「ホールを5インチ(約13 cm)過ぎるスピードでは25%の成功率、10インチ(約26 cm)過ぎるとほぼ50%、15〜20インチ(38〜51 cm)通過した場合は成功率が68%となった。これ以上は成功率は落ちる一方だった」と書いており、Hank Haneyの「成功率90%」という引用は間違いです。

一般的に、ボールをラインに乗せるには強さが必要だと云える。カップで息絶えるようなパットをすると、ボールはゆっくり転がり、グリーンの不完全さ(凸凹や砂利など)の影響を受け易い。どれだけの強さを与えたら良いかは状況次第であり、またあなたがどれくらい強さのコントロールを出来るかにもよる。あなたがあまり巧みでないなら、カップを越えるようなパットをしないのが賢明であり、巧みな人であるならミスしてもカップの横で止まるように転がすとよい」

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(December 01, 2009)


ノックダウン・ショット

2009年の世界ランキングNo.3となったSteve Stricker(スティーヴ・ストリッカー)が愛用するアイアン・ショットを、インストラクターMike McGetrick(マイク・マゲトリック)が詳細に説明します。

'The Scrambler's Dozen'
by Mike McGetrick with Tom Ferrell (HarperResource, 2000, $25.00)

「ノックダウンによるアプローチ・ショットは、身につけると非常に役立つショットである。木の枝の下を潜らしたり風に抗して打つ場合だけでなく、コースにおけるクリエイティヴな数々のショットの基本ともなりうるものだ。

ノックダウン・ショットはバンプ・アンド・ランのテクニックを基礎にして、距離を増すためにバックスウィングでの手の動きを加えるものだ。

ノックダウン・ショットではフル・スウィングをしない。だから、フル・スウィングした時と同じ飛距離を得るには長めのクラブを選ばなくてはならない。あなたが150ヤードを普通7番アイアンで打つのなら、ノックダウン・ショットでは6番アイアンか場合によっては5番アイアンを使う必要がある。

クラブは5センチほど短く持つ。短く持つのに合わせ、ボールに3〜5センチほど近くに立つ。背を伸ばし、両肩は水平のポスチャー。ボール位置はスタンス中央。両手はボールよりターゲット方向に先行したアドレス(これによってややロフトを減らし、低くスタートするボールになる)。

バックスウィングの長さが飛距離を決定する。スムーズかつリズミカルで、バックスウィングとフォワード・スイングの割合が等しく、伸ばした背と水平の肩を維持したスウィングをする。

両手が先行したダウンスウィングおよびインパクトを心掛ける。《低いショットには低いフィニッシュ》を忘れないように。手を返さず、クラブが低めのフィニッシュ。ベルト・バックルはターゲットを向く」

(December 04, 2009)


デッド・ハンズ・ストローク

"Dead hands"(デッド・ハンズ)というのは「東急ハンズ」の姉妹店ではなく、手や手首の筋肉を使わず、両肩を結ぶ線と両腕で形成される三角形を崩さず、時計の振り子のようにストロークするというメソッドを指します。

振り子式ストロークに挑戦してうまく行かず、挫折された方もおられるかと思い、以下の記事を紹介します。このDave Pelz(デイヴ・ペルツ)による記事は振り子式ストロークの長所・短所をうまくまとめています。

'Dave Pelz's Putting Bible'
by Dave Pelz with James A. Frank (Doubleday, 2000, $30.00)

「『打つ』ようなパッティングの対極にあるものは『ストローク』である。そして究極のストロークは振り子式ストロークであり、純粋な振り子運動をするには"dead hands"が必要である。純粋な振り子式ストロークはゴルフの中で最も弱く、パワーと縁のないスウィングだ。

あなたが初めてこれを試した場合、カップにボールを届かせられない頼りなさを感じ、どのパットもショートしてしまうだろう。ボールを全くコントロール出来ないとも感じることだろう。だが、ボールを完全にコントロール出来ないのは誰しも同じである。そんなことを望むのは夢想家に過ぎない。

『打つ』ようなパッティングによってボールをコントロールしようとするのではなく、コントロールすることを諦め、"dead hands"を採用することが建設的な考え方である。"dead hands"はプレッシャーに強い。あなたの指・手・手首などがアドレナリンによって力みがちになったとしても、"dead hands"はそれらを使わないのだから、全く心配する必要がない。

あなたがバックストロークの長さによってパットの転がる長さを決定し、自分の身体の個人的リズムによってストロークを遂行するなら、素晴らしいパッティング・タッチと、パットの強さ・距離のコントロールを学ぶことが出来る。往年のプロGeorge Archer(ジョージ・アーチャー)は振り子式ストロークをしていただけでなく、振り子のリズムをも用いていた。

"dead hands"によるストロークの利点は、手と手首の筋肉を運動から除外することにある(これによってアドレナリンの影響を免れることが出来る)。他にも"dead hands"を推奨する理由が二つある"dead hands"だと長いパットには『打つ』パッティングより長いストロークをしなければならない。ということは、転がす長さのコントロールをストロークの長さ(強さではなく)によって行なうのだから、習得も容易であることを意味する。【編註:強さという感覚的なものは制御しにくいが、長さは目に見えるので制御は容易い】

 

"dead hands"ストロークの利点はまだある。それは素振り(練習ストローク)によってバックストロークを視認し、それで充分かどうかチェックすることが出来るので、実行前に安心出来ることだ。もし、練習ストロークの間に心の目が『これが最適のバックストロークの長さだ!』と感じたら、単純にそれを本番で繰り返せばいいのだ」

[icon]

この記事の中で「振り子式ストロークは弱々しいものだ」と書かれているのは全くその通り。最初は「カップに届かせられない」のもその通り。ここで挫折する人が多いのではないかと推察します。

振り子式ストロークは《左手甲でターゲットに向けてパターを引く》のです。もちろん、左手甲も手首もスクェアでなければいけません。この動作に慣れると距離もちゃんとコントロール出来るようになります。

(December 07, 2009)


テキサス・ウェッジ

'The Scrambler's Dozen'
by Mike McGetrick with Tom Ferrell (HarperResource, 2000, $25.00)

「グリーンまでかなり離れた地点からパットすることを『テキサス・ウェッジ』と云う。この言葉の発祥の地テキサスでは、日光と風によってフェアウェイが固く転がりやすいからである。ボールとグリーンの間の草がきちんと刈られていて、カラーその他の不規則なバウンスを生むものが無い場合なら、テキサス・ウェッジを選ぶのは正解である。ただし、パターではなく4番ウッドかユーティリティ・ウッドを用いること。ウッドのヘッドの重みを利用出来ることと、13°あるいはそれ以上のロフトによってボールを正確に、しかもやや上昇気味にスタートさせられるからだ。

通常のチッピングのセットアップをするが、ボールはスタンス中央の左に置くこと。手首の動きを最小限度にし、腕と肩主体のストロークをする。両腕を先行させ【=ボールを掬い上げない】バックストロークとフォワードストロークの振幅を同じにするように」

(December 07, 2009)


飛ばない女性への助言

John Jacobs(ジョン・ジェイコブズ)は英国生まれのインストラクターで、ヨーロピアン・ツァーの創始者でもあり、アメリカに25、世界各地に5つのゴルフ・スクールを持つ大物です。

LPGAのトップ・プロたちのように筋力トレーニングをしている人なら別ですが、一般的に女性の肩や腕はパワフルとは云えません。John Jacobsは、そういう一般的女性が飛距離を伸ばすためのアイデアを提供します。この記事の原題は'Ladies, you CAN hit it far!'(御婦人の皆さん、あなたも遠くへ飛ばせるんですよ!)です。特に一流女子プロの伸び上がるようなインパクトに関する解説が有益です。最盛期のGary Player(ゲアリ・プレイヤー)も伸び上がるインパクトをしていましたが、彼も小柄な体型でした。ですから、この記事は非力な男性ゴルファー(私を含む)にも有益です。

'Practical Golf'
by John Jacobs with Ken Bowden (The Lyons Press, 1972, $16.95)

「僅かの例外を除いて、女性は自分の能力の限界まで飛ばすことが出来ない。飛ばせる女性は例外であり、その能力だけで直ちに国内外の名声を勝ち得てしまう。男性のゴルフにおいてはボールをコントロールする方が重要であり、飛ばすだけで認められることはない。

女性が男性ほど飛ばせないのは事実である。何故なら、女性は男性と同等のヘッドスピードを生み出す肉体的要素に欠けているからだ。女性が認識すべきなのは、飛距離を得るには単なるクラブヘッド・スピードだけではなく、“正確に適用された”クラブヘッド・スピードが必要だということだ。女性が限界までクラブヘッド・スピードを上げようとすると、ボールに効果的に力を与えるよりもクラブの使い方を間違ってしまい、"pat-ball golf"(ぽこんと当てるゴルフ)になってしまう。

女性がダウンブローでカット気味に打つ際のクラブヘッド・スピードは結構早い。それが地面に平行で、ターゲット・ラインに沿った軌道を走り、フェースがスクウェアなショットに変貌すれば、誰でもかなり遠くに飛ばせる筈だ。

飛距離を考慮する場合に重要なのは、ボールにクラブヘッドが近づく方向はボールの真後ろから【水平で】であるべきで、背後上方からではないということだ。インパクト・ゾーンで浅い攻撃角度によってボールの真後ろをヒットするには、女性は腕・手首・手を男性よりも早期に用いるべきである。【編註:「レイト・ヒット」の反対なので今後「アーリィ・ヒット」と呼ぶことにします】大方の女性にとって、バックスウィングのトップから腕を使うことは、意識的努力なくしては出来ないことだが、これには二つの理由がある。
1) 女性の場合、最高のヘッドスピードに達するまでに時間がかかる。
2) 上からでなく水平の攻撃角度を得るため。

 

男子の一流ゴルファーに見られる『レイト・ヒット』(インパクト直前の段階でコックを解くこと)が出来るほど肉体的強さを持った女性は少ない。手首の角度を維持して『レイト・ヒット』を試みる女性の多くは、ミスヒットによって飛距離を減らしてしまう。だから、女性はダウンスウィングの早期に右腕を真っ直ぐに伸ばす方が遠くへ飛ばすことが出来るのだ。

アーリィ・ヒットの効果はトップクラスの女性ゴルファーに顕著に見られるので、女性誰しもが彼らをお手本にすべきである。多くの一流女性ゴルファーたちがインパクト直前に爪先立ちし、インパクト後もその状態を保つ。【編註:最近ではPaula Creamer、Natalie Gulbisなど】その理由は早期ヒットによって生じた広めのスウィング弧でダフらないためのスペースを作り、ボールにスクウェアにヘッドを向かわせるためである。

アーリィ・ヒットによるフラットなスウィング軌道では、ボールを掬い打ちしない限り、アイアンで大きなディヴォットを取ることはない。

どのようにアーリィ・ヒットを実施するか?先ず第一に"pat-ball golf"をやめ、インパクトでクラブがヒュッと唸るくらい早く振ろうと決意することだ。女性が本当に上達しようと願うなら、このメンタルなハードルを飛び越えなくてはならない。

身体面では、グリップが主な要素である。女性は一般的にカットするスウィングをしがちだが、あなたもその一人であればストロング・グリップ(=フック・グリップ)を採用すべきだ。特に左手は親指をグリップの右に廻し、ナックルが上から三つ見えるように握る。シャフトは指とパーム双方で、ぴっちりと握るように(そう出来なければグリップの径が太過ぎる)。右手はシャフトのやや下に廻し、親指と人差し指の間に出来る"V"の字の突端が右耳と右肩の間を指すように。シャフトは指の中に気持良く納まり、右人差し指は銃の引き金を引くようにシャフトに絡まる。

グリップはしっかりと握るが、腕は柔軟であるべきで、緊張したり強ばっていたりしてはいけない。それが難しければインターロッキング・グリップやベースボール・グリップを試すとよい。

カット気味に打つ女性はオープン・スタンス(両足、腰、肩がターゲットの左を向く)を取るべきではない。ややクローズ目の肩にすれば、ボールの真後ろをしっかり打てるだけでなく、インサイド・アウトの角度によるドローによって距離を増すことも出来る。

女性ゴルファーにとっては、バックスウィングの弧を広くすることが、男性にとってよりも不可欠だ。多くの女性がその必要を感じているものの、不幸にもその努力はスウェイに繋がる身体の過剰な動きによってコントロール不能に陥りやすい。

女性は、ゴルフにおけるパワーの源泉であるゼンマイを巻くように身体を捩るのが難しいようだ。スウィング弧を広げる努力として、女性は最初のテイクアウェイの動きにつれ、足から上の身体全体を廻してしまう。女性は男性同様、スウィングの錨として頭を静止させることと、足と脚の抵抗を感じながら腰から上の上体だけを回転させることを学ぶべきである。

私は男性にも女性にもアーリィ・ヒットを助言して非難されることがあるが、それは正しい捻転が行なわれておらず、アーリィ・ヒットがトラブルに繋がる場合である。下半身の抵抗が無い早期ヒットは、手と腕だけによってボールに弱々しく接触することでしかない。下半身が正しく抵抗しながら上体が捩られているなら、腕とクラブヘッドの力強いダウンスウィングを、ターゲット方向に逆転しようとする脚と腰の反射的運動に同期させることが不可欠である」

(December 10, 2009)


サンドウェッジと肩の開き加減

'Practical Golf'
by John Jacobs with Ken Bowden (The Lyons Press, 1972, $16.95)

「ボール位置は左足踵の前方。オープンにした肩のラインに沿って、スムーズにスウィングすること。繰り返す。常に、オープンにした両肩を結ぶ線に沿ってスウィングする。【編註:ターゲットに向かってスウィングするのではない】

スウィングする際の注意事項:クラブでボールの下の砂を滑らすにはクラブフェースがオープンのままでなければならず、それはダウンスウィングで腰を左に回転させることによってのみ可能なことだ。もし腰が静止していると、手と腕だけでダウンスウィングを遂行せざるを得なくなり、クラブがボールに近づくにつれ腕は身体の周りを廻り始めてフェースをクローズにし、ヘッドが砂にめり込んでしまう結果になる。

クラブフェースでボールの下の砂をスライドさせ、ボールを跳ね飛ばすのだが、これには穏やかな一閃で充分であり、暴力的攻撃は必要ない。【編註:筆者は"skimming"という言葉も使っています。鍋物の灰汁を取るようなイメージ】

飛距離はどれだけボールの背後にクラブを突入させるかにもよるが、私の場合、簡単にクラブフェースと肩の開き加減で調節する。【下図参照】この方法で距離をコントロールする場合、《常にオープンにした肩のラインに沿ってスウィングする》ことを忘れてはいけない」

ターゲットまでの距離フェース角度肩の角度
ごく
近距離
[flag] [wedge]

リーディングエッジはターゲットのかなり右を指す
[shoulder]

左肩はターゲットのかなり左を向く
中距離 [flag] [wedge]

リーディングエッジはターゲットのを指す
[shoulder]

左肩はターゲットのを向く
遠距離 [flag] [wedge]

リーディングエッジはターゲットのやや右を指す
[shoulder]

左肩はターゲットのやや左を向く

《どの場合も、オープンにした肩のラインに沿ってスウィングする》

図で一目瞭然ですが、オープンなフェース角度と肩の角度は鏡に映したように左右対称(=同じ量の開き加減)です。

(December 16, 2009、改訂July 13, 2016)


Phil Mickelson(フィル・ミケルスン)の秘密のチップ

'Phil's short game secrets'
by Phil Mickelson with Guy Yocom ('Golf Digest,' December 2009)

「・低いランニング

受けているグリーンやピンまでに余裕がある場合は、飛行時間よりランの方が長いチップをすべきである。

9番アイアンを使い、ボール位置はスタンスのターゲット寄りにする。バックスウィングでは腕の動きを最少にしコックもほんの僅かにする。ダウンスウィングではターゲット方向に両手をゆっくり動かす。その際、クラブヘッドを水平に近い浅い進入角度でボールに向かわせ、フォロースルーまでクラブヘッドを低く保つように。

このように打たれたボールは、バックスピンがあまり掛からず、低く出てパットのように転がる。

・急停止するチップ

グリーンが固い場合、あるいはダウンヒルのグリーンにチップする場合には、ボールを急停止させなければならない。

 

60°ウェッジを使い、ボールを後方の足の親指の前方に置く。バックスウィングでは、コックしながら急角度にクラブを上げる。ダウンスウィングでは両手をクラブヘッドに先行させながら、ボール後部に向かって急角度で振り下ろす。小さなディヴォットを取ってもよい。

インパクトで(両手を先行させることによって)ロフトが減るため、ボールは低く出て急停止する」

(December 20, 2009)


なぜ左手で引くのか?

私はしばしば「フォワード・ストロークは左手甲で引く」と書いています。それが役に立つ理由をインストラクターBill Moretti(ビル・モレッティ)に説明して貰いましょう。

'Turn Three Shots Into Two'
by Bill Moretti with Mike Stachura (Andrews McMeel Publishing, 2002, $19.95)

「どちらの手がパッティング・ストロークをコントロールするかと云えば、それは左手だ。フォワード・ストロークのインパクト・ゾーンで左手がパターを引っ張るのだと考えてほしい。左手で引く動きの方が、右手で押すよりもずっと確実である。

ゴルフ以外でも、テコの原理を利用して引く動きの方が、押す動きよりも真っ直ぐ動作する。煉瓦を一杯乗せた手押し車を想像してほしい。背後から押すのと、取っ手を持って引くのとどっちが真っ直ぐ転がるだろうか?手押し車の場合もパッティングの場合も引く方が真っ直ぐ進むものだ。

パッティングで引こうとすると、全ての間接(手首、肘、両肩)は一緒に同方向に働く。反対に、押そうとした場合は、全ての間接はそれぞれがてんでんばらばらに働いてしまう」

(December 20, 2009)


トップする原因

英国のインストラクターJohn Jacobs(ジョン・ジェイコブズ)によるトップの病理。

'Practical Golf'
by John Jacobs with Ken Bowden (The Lyons Press, 1972, $16.95)

「ゴルファーたちは、トップした仲間を『ヘッドアップしたからだ』と糾弾する。彼らが実際にヘッドアップを目撃していないにもかかわらず…である。彼らは間違っている。ゴルファーの頭をコンクリートで固めて強制的に動かないようにしたとしても、トップするゴルファーはトップする筈だ。トップする原因は二つある。これらは互いに姻戚関係にあり、スウィングの幾何学的要素に由来している。

・スウィング軌道

スライスを打つゴルファーが、アウトサイド・インのスウィング軌道でクラブヘッドをボールに向かわせた場合、程度問題ではあるが、身体から遠い方のボールの右角を打つことは容易に理解出来ると思う。そのスウィング軌道が鋭く急角度にボールに向かった場合、クラブヘッドはボールの2/3にすら接触出来なくなる(2/3だとスライス)。唯一ボールの天辺1/2かそれ以下にしか接触出来ず、結果的にトップし左方向へのゴロとなる。

つまり、トップはヘッドアップとは無関係で、アウトサイド・インの(スライスとプル双方が生じ得る)軌道で急な攻撃角度によってボールに接触することが真の原因である。トップを防止するにはスライスを撲滅すればよい。クラブヘッドをボールの真後ろへとインサイドから、かつフラット目に(上方からでも下方からでもない)接近させるべきである。

・スウィング弧

前述の原因と絡まり得る要素である。どのショットにおいてもそうだが。[スウィング弧の半径]=[真っ直ぐな左腕とクラブの長さ]である。スウィングの初期にはその半径が保たれているが、コックした時点で半径は当然短くなる。インパクトの際に、手首が充分にアンコックして元の半径に戻さなければトップするのは当然である。これはシングル級以上のゴルファーにも起り得る、よくあるミスである。

上級者の場合、これは通常意図的にレイト・ヒットを試みる際に起る。インパクト前にスウィング半径を元に戻すことが不可欠だ」

“トップ・プロ”の私としては【註:一流のプロじゃなく、トップすることにかけては一流の意】、もう一つの原因があると考えます。スウェイです。バックスウィングでスウェイすると、スウィング弧の最低点が右に移動します。ダウンスウィングで奇跡的にアドレス時のスウィング弧の最低点に戻せればいいのですが、そうは問屋が卸しません。結局クラブヘッドはボールの右手前で最低点を迎え、上昇しながらボールの天辺を叩きます。これを防ぐにはスウェイを撲滅し、背骨を軸として身体を捩るバックスィングをする必要があります。

(December 26, 2009、改訂June 03, 2015)


ダフる原因

英国のインストラクターJohn Jacobs(ジョン・ジェイコブズ)によるダフりの病理。

'Practical Golf'
by John Jacobs with Ken Bowden (The Lyons Press, 1972, $16.95)

「ダフる原因は二つある。

・ポスチャー

初級者にも上級者にも生じる原因。アドレス時の屈み込むようなポスチャーによってスウィングの間にバランスを崩すことで起る。屈み込むと爪先の方に体重が移動する。ダウンスウィングの勢いによってさらに身体が前のめりになったり、ボールにクラブを合わせようと膝や肩を下げざるを得なくなってダフる。これを防ぐには、正しいセットアップ(この場合、特に背を適度に真っ直ぐ伸ばすこと)が必要である。

・手打ち

比較的経験を積んだゴルファーにも見られる原因。ダウンスウィングで身体と手の連係が悪くなり、腰が手の通り道を開ける前に打ってしまうと起る。この早期の手の動きはスウィング弧を広げ、インパクトでは広過ぎるほどになってダフる。女性ゴルファーはこの問題を爪先立ちで伸び上がって解決する。【参照:「飛ばない女性への助言」】しかし、男性ゴルファーはバレー・ダンスを習う必要はない。腰と手・腕の動きの歩調を揃え、手首の動きを制限してレイト・ヒットを目指せば解決する」

「トップする原因」と同じく、私にはもう一つダフる原因があると思います。スウェイです。バックスウィングでスウェイすると、スウィング弧の最低点が右に移動します。ダウンスウィングで奇跡的にアドレス時の最低点に戻せればいいのですが、そうは問屋が卸しません。結局クラブヘッドはボールの右手前で最低点を迎え、盛大に地球をほじくり返すことになります。これを防ぐにはスウェイを撲滅し、背骨を軸として身体を捩るバックスィングをする必要があります。

(December 26, 2009)


ダフるよりトップせよ

これはさまざまな新聞に共同配信されているゴルフtipsの連載コラム401本を集大成した小型本です。

'Master Strokes'
by Nick Mastroni and Phil Franke (Running Press, 2003, $9.95)

「アイアンではダフるよりはトップすべきである。ボールの上部を叩いてトップした場合、完璧なショットに較べるとボールは低い軌道で飛び、通常の距離に達することがある。【編註:パー3のティー・ショットをトップし、恥ずかしいゴロになってしまったものの、ボールはグリーンに駆け上がったりしますね。あれです】

反対にダフった場合は十中八九ショートする。クラブがボール手前の地面に接触するため、クラブフェースがターゲットラインから逸れ、トップより方向が乱れる。

ツァー・プロたちは"Thin to Win."(勝つにはトップ)という文句を口にする。ダフりを回避するには、スウィングする際ボールの右端を見るのではなく、その頂点に集中すればよい」

(December 26, 2009)


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