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公開:1951
監督:Elia Kazan
出演:Vivien Leigh、 Marlon Brando、Kim Hunter、Karl Maldenほか
範疇:戯曲の映画化/ドラマ
私の評価 :☆☆
【Part 1】
Tennessee Williams(テネシー・ウィリアムズ)のピューリツァー賞受賞の戯曲の映画化。アカデミー主演女優賞(Vivien Leigh)、助演男優賞(Karl Malden)、助演女優賞(Kim Hunter)、美術監督・装置賞【黒白部門】などを獲得したこの作品は、素晴らしい出来栄えで、一度も観ないで済ますわけにはいかない作品となっています。撮影もノミネートされただけあって、狭苦しい室内、暑苦しい感じを、ローキイでまとめた巧みな表現が見事です。
監督はブロードウェイでこの戯曲の初演を手掛け好評を得たElia Kazan(イーリア・カザン)。主役のBlanche DuBois(ブランシュ・デュボア)のみイギリスでこの役を演じたVivien Leigh(ヴィヴィアン・リー)ですが、他はElia Kazan演出の舞台に出演したメンバーで固めています。
ニューオーリンズの駅にBlanche DuBoisが到着し、妹の住まいを訪ねるために"Desire"(欲望)という名の電車に乗ります。この名は"Disire Street"という電停に由来しますが、もうそういう名前の電車はありません。現在は“欲望”という名の「バス」になっています。
Blanche(ブランシュ)という名前はフランス語"blanc"(白い)の女性形です。苗字のDuBois(デュボア、「森」の意)と併せて、彼女がフランス系の名家の流れであることを暗示します。彼女は妹Stella(ステラ)の住居が薄汚く、騒々しい一角にあり、しかもたった二部屋しかないアパートであることにショックを受けます。
Marlon Brando(マーロン・ブランド)演ずる妹の旦那Stanley Kowalski(スタンリイ・コワルスキイ)は、ポーランド系移民の子で、機械工場で働くブルーカラー。言葉も態度も乱暴で、Blancheに云わせれば"animal"(けだもの)のようです。しかし、Stellaは彼に心底惚れていて、低収入や貧しい住居も気にしていません。彼女は彼の子をお腹に宿しています。
狭いアパートの一室に落ち着いたBlancheは、安月給の高校教師だった割りには高価な衣装を持ち、装飾品、化粧品もふんだんに持っています。StanleyはBlancheが親代々の土地を金に換えたに違いないと睨み、Blancheを追及します。
ニューオーリンズのあるルイジアナ州は、アメリカ政府がナポレオンから買い取るまで、長くフランスの統治下にありました。ナポレオンがセント・ヘレナ島に幽閉された時、当時のニューオーリンズ市長が、ナポレオンを救出して彼をニューオーリンズに連れて来るという陰謀を画策。市内に今もある「ナポレオン・ハウス」は、その市長が住んでいた邸宅で、救出後ナポレオンを滞在させる用意がされていたと伝えられています。しかし、実際にはナポレオンは獄死してしまい、この計画は頓挫しました。そういう背景があるので、この物語に「ナポレオン法典」が登場するのも意外ではないのです。Stanleyが云うには「ルイジアナ州ではナポレオン法典に則り、夫の財産は妻の財産であり、妻の財産は夫の財産である。親の土地は妻にも権利があり、つまり俺にも権利がある」と主張します。
しかし、その土地は既に無く、Blancheは一文無しです。高校教師を突然辞めたのは何故か?一体過去に何があったのか?Blancheの淑女ぶった物腰と彼を蔑視する言動にうんざりしていたStanleyは、Blancheの過去を洗い出す決意をし、二人の間の緊張関係は一気に高まり、登場早々から神経が切れそうだったBlancheに危機が訪れます…。
夫と姉の板挟みにあいながら、あくまでも姉をかばうStellaがけなげです。Kim Hunter(キム・ハンター)が、時に痛々しく、時に強い女を好演します。Blancheに求婚する隣人Mitch(ミッチ)を演じるKarl Malden(カール・モールデン)が儲け役を得ています。Stanleyと同じ職場で働いていますが、穏やかで礼儀もわきまえていて、醜男(ぶおとこ)ゆえか婚期を逃がして来て、やっと素晴らしい女に巡り合ったと有頂天になる男を好演しています。
Marlon Brandoはアカデミー賞こそ逃がしたものの、この一作で世界に彼の存在を知らしめ、以後'The Wild Ones'『乱暴者(あばれもの)』や、'On the Waterfront'『波止場』などの話題作に登場することになります。
(February 25, 2001)
【Tennessee Williamsもの一覧】
・'A Streetcar Named Desire'『欲望という名の電車』(1951) Vivien Leigh主演
・'The Rose Tattoo'『バラの刺青』(1955) Anna Magnani主演
・'Baby Doll'『ベビイドール』(1956) Carroll Baker主演
・'Cat on a Hot Tin Roof'『熱いトタン屋根の猫』(1958) Elizabeth Taylor主演
・'Suddenly Last Summer'『去年の夏突然に』(1959) Elizabeth Taylor主演
・'The Fugitive Kind'『蛇皮の服を着た男』(1959) Marlon Brando主演
・'Summer and Smoke'『肉体のすきま風』(1961) Laurence Harvey主演
・'Sweet Bird of Youth'『渇いた太陽』(1962) Paul Newman主演
・'This Property Is Condemned'『雨のニューオリンズ』(1965) Natalie Wood主演
・'The Glass Menagerie'『ガラスの動物園』(1987) Joanne Woodward主演
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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