2012年のThe Masters(マスターズ・トーナメント)は若手・左利きの飛ばし屋Bubba Watsonの勝利に終わりました。これを報じたオンライン・メディアの表現に呆れてしまいました。 「読売オンライン」(http://www.yomiuri.co.jp/sports/golf/news/20120409-OYT1T00043.htm)は高岡 学記者の署名記事で、「マスターズ、ブバ・ワトソンがメジャー初制覇」と書いているのです。"Bubba"はどんな辞書を見ても「ババ」と発音するのであって、「ブバ」は馬鹿げたローマ字読みでしかありません。 「朝日新聞デジタル」(http://www.asahi.com/sports/update/0409/TKY201204090005.html)は「バッバ・ワトソン」と表記しています。確かに、「バッバ」と促音表記にしている英和辞典もありますが、これは現地音ではありません。「馬場」あるいは「婆」のように「ババ」が正しく、そういう英和辞典にしても発音記号は「ババ」と正しく表記しています。「バッバ」は日本人が捩じ曲げた表記法です。 もともと、"bubba"はアメリカ南部で"brother"(あんちゃん)を意味した言葉で、本来は自分で名乗るものではありません。しかし、兄弟姉妹が"Bubba"と呼んでいるうちにそれがニックネームになってしまうケースがあるわけで、私の知っている人も自分で「おれはBubbaだ」と名乗っていますし、フロリダ州生まれのBubba Watsonの本名はGerry Watson(ジェリィ・ワトスン)なのに、ニックネームのBubbaを通称にしているわけです。 南部特有の表現であるため、北部などでは多少蔑んだ意味合いで南部の無教養な白人を"bubba"と呼ぶこともあるようです。しかし、Bubba Watsonはそんなことは一向に気にしていませんね。 【追記】 (Apr. 08, 2012、追記September 30, 2017) 日本を代表する通信社を名指しで“公害企業”扱いするのは無茶だと思われるでしょうが、どうせ蟷螂の斧ですし、それに私は非常に腹立たしい思いをしているので、本当はこのぐらいのタイトルでは生易しいというのが実感です。 世界にはAP、ロイター、タス、新華社などの通信社があり、日本には共同通信と時事通信の二社があります。通信社というのは独自にニュースを公開するメディアを持たず、新聞社、TV局などにニュースを配信する会社です。いわばニュースの卸問屋ですね。時事通信は主に経済ネタを扱い、共同通信は他の一般ネタ全般を扱うそうです。私は株式市況や企業合併などに関心がありませんので、ターゲットは専ら共同通信ということになります。 私の共同通信への怒りは、諸外国の人名・地名などのカタカナへの変換が非常にでたらめであるということです。既に日本社会に浸透してしまったものはまあ仕方がないとして、新しいニュースに登場する人名・地名はきちんとしたカタカナにしてほしいのです。 私はアメリカに住み、アメリカのTVでゴルフ・トーナメントの実況中継や'The Golf Channel'(ザ・ゴルフ・チャネル)のニュースや講座番組を視聴しています。そういう放送でアナウンサーが喋る人名・地名と、日本の新聞、TV、雑誌における人名・地名の隔たりが大違いなのに呆れているのですが、その諸悪の根源は共同通信なのです。 日本の新聞、TV、雑誌の多くは、独自の記者派遣による取材の予算が少ないため、諸外国のニュースの多くを通信社の配信に頼っています。共同通信の取材網も限られていますから、共同通信はAPその他の通信社から配信を受け、それを翻訳して日本の新聞、TVなどに流します(こういうニュースには【AP=共同】という表示、あるいは「AP共同によれば」というようなアナウンスがつけ加えられます)。共同通信がお粗末な表記をすれば日本全国のマスコミがお粗末な表記を垂れ流し、日本国民はそれを正しいと信じ込んでしまうという構図なのです。 何が腹立たしいかと云いますと、共同通信のカタカナ変換は中学生がやりそうなローマ字読みに過ぎないのです。彼らは事件の当事者や関係団体などに確認もせずに、ローマ字読みで配信してしまいます。「ニュースなんだから急がなくては」と慌てふためくだけで、彼らの仕事が日本国民に与える影響など考えてもいないのです。 チャンピオンズ・ツァ−・プロ(元PGAツァー・プロ)のBob Tway(ボブ・トウェイ)のことを、共同通信は「ボブ・ツエー」と表記します(この通信を受けて記事として流す日本のメディアはみな同じ)。確かに、彼はPGA選手権チャンピオンでもあり、優勝経験も豊富で“ツエー”(強え)のは間違いありませんが、それにしてもこの表記はひどい。"tsetse fly"(ツェツェ蠅)みたいじゃありませんか。 共同通信にすれば「"two"は“ツー”なんだから、"Tway"も“ツエー”でいいじゃないか。これを“トウェイ”としたら、"two"も“ツー”でなく“トゥー”にしなければならず、大変な騒ぎになる」とでも云うのでしょう。 そう云えば、"twin"(トゥイン、双子)も日本では「ツイン」です。"tweed"も「トゥイード」ではなく「ツイード」です。日本で英語塾を経営する私の友人は「カタカナは日本語なんだから、目くじら立てても仕方がない」と云います。しかし、私はこういう表記は日本人の英語の発音学習の妨げになるという観点から嫌悪するのです。特に影響力の強い新聞などには、もっと注意深く対処して貰いたい。 Bob Twayを「ボブ・ツエー」と書くのなら、Mark Twain(マーク・トウェイン)も「マーク・ツエイン」にしなくてはなりません。そうでしょ?「日本人に“トウェ”なんて難しい発音を押し付けられるか!」とでも云うのでしょうか?最近の日本人を舐めていませんか?最近の日本人は"DVD"を「ディー・ヴィー・ディー」と発音するのではありませんか?「デー・ブイ・デー」ではなく。「ティーン」の好物アイスクリームは「サーティ・ワン」でしょう?「テーン」や「サーテイ・ワン」ではなく。ゴルファーは「テーショット」、「パッテング」、「バーデー」などと云っているでしょうか?(完全にノーです。ティー・ショット、パッティング、バーディと云っています) 共同通信はスペインのプロSergio Garciaを「セルヒオ・ガルシア」と表記しています。それがスペインでの正しい発音だそうです(アメリカでは「セルジオ」)。ヨーロッパ系の名前だけはやたら正確を期しているわけです。しかし、Sergio Garciaの大先輩であるSeve Ballesterosのことは「セベ・バレステロス」と書いて澄ましています(これはアメリカ読み)。現地音主義を取るのなら、これは「バイェステロス」が正しいのではありませんか?つまり、現地音主義もはなはだいい加減なのです。 ヨーロッパの人名が全て正しいのではないという、もう一例。 共同通信は、南アのプロRetief Goosenを「レティーフ・グーセン」とローマ字読みの間違った読み方を日本に浸透させてしまいました。ある英語サイトにあった記事ですが「米PGAの『メディア・ガイド』によれば、Goosenの正しい発音は“フーサン”となっている。しかし、当人は“グーサン”と呼ばれるのを好む。友人たちは“グース”と呼ぶと彼は云う。ファースト・ネームは"ruh-teef“(ラティーフ)以外に読みようがない」 つまり、Retief Goosenは本当は「ラティーフ・グーサン」なんですね。共同通信が広めた「レティーフ・グーセン」は、現地音でもなくアメリカ風発音(ラティーフ・グースン)でもなく、中学生しかやらないようなローマ字読みに過ぎないのです。共同通信の翻訳は中学生がやっているのか!共同通信は現地音主義だったりそうでなかったり筋が通っていないわけですが、唯一筋が通っているのは、当人にもPGAツァーなどの組織にも問い合わせず、自分勝手なローマ字読みを適用しているということだけです。共同通信は長いことアメリカのプロTom Lehmanを「トム・リーマン」と表記していましたが、現在は正しい「レーマン」に直しています。これからも本人に聞くなり、PGAツァーに問い合わせるなりして、海外でそのまま発音してもいいような表記に改めるべきです。ニュースの卸問屋なんですから、責任を痛感して貰いたい。 ついでなので、返す刀で日本のマスコミ全体を斬ります。ゴルフやテニスのプロを表現するのに「選手」というのはやめてほしい。野球やサッカー、バレーボールなど、全体で20人とか50人とかいるチームを代表して試合に「選ばれて出場する」から「選手」なのです。ゴルフやテニスのプロは一匹狼であり、何らかの組織(大学やチーム)を代表しているわけではないので、選手と呼ぶのは不適当です。 プロの相撲取りは部屋を代表しているわけで、彼らを選手と呼ぶのは妥当なのですが、誰もそう呼びませんね。 プロ・ゴルファーでもオリンピックに出場したり、国対抗の催しに出る場合は選手と呼んでいいわけですが、彼らが単独で賞金稼ぎをしている際に「石川 遼選手」などと呼ぶのはお門違いです。「石川 遼プロ」と表現するしかありません。 ・読売新聞(Yomiuri Online)2011年3月30日 ・朝日新聞(asahi.com)2011年6月17日 (Dec. 20, 2011) 「マッサージ師」と云いたい場合に"massage"という言葉しか知らないと、英語圏では分って貰うのに手間取るかも知れません。私はカミさんが大の指圧・マッサージ好きで、日本の温泉へ行くとマッサージ師を頼むのを楽しみにしていたので、否応無く言葉を覚えました。 難しいのは男女で言葉が違うことです。女性のマッサージ師は"masseuse"(マスース)で、男性は"masseur"(マスア)なのです。もちろん、"massager"と云っても通じるでしょうが、相手が"masseuse"あるいは"masseur"と云った場合に理解出来ないといけません。ビートたけしの『座頭市』(2003)を英語吹き替え版にしたものを観ましたが、「按摩さん」と呼びかける場合に男性なので"Masseur"となっていました。 (Oct. 20, 2011) アメリカに長く、しかもArkansas州にも住んでいた日本婦人は、いつも「アーキンソー」と発音します。文字から学ぶことなく、いきなりアメリカにやって来て暮らし始め、耳から入る音で英語を学んだ人たちは一風変わった発音をします。"commissary"を「カミソリ」とか、"credit"を「クラレ」などと云うのですが、ちゃんとアメリカ人に通じるのです。私は「アーキンソー」もその一つだろうと思っていました。 ところが、Arkansas州で開かれたゴルフ・トーナメントのTV中継のアナウンサーまで「アーキンソー」と云っていたので驚きました。日本婦人の発音は「クラレ」風ではなかったのか? http://www.merriam-webster.com/dictionary/arkansas というオンライン辞書で"Arkansas"を引き、その発音を聞いてみました。微妙な感じです。"ark"の次の"a"は、"e"が逆立ちして左右反転した発音記号なので、「アークンソー」に近いと思います。「アーキンソー」にも聞こえる人がいるかも知れませんが。 アメリカのTVのアナウンサーの発音はいい加減だということが分かります。NHKですと定期的にアナウンサーの研修をしたり、発音のための辞典を作って発音やアクセントの標準化を図ろうと努力したりしていますが、アメリカにそんなものはないようです。 ついでなので、アラバマ州の大都市"Birmingham"にも触れておきます。私はアメリカへ来る前にイギリスで数ヶ所撮影したことがあり、その一つがスコットランドの"Birmingham"でした。イギリスでは"h"を発音せず「バーミンアム」という感じなので、アラバマ州の同名の都市もそうだろうと思っていたら、その地に留学していた人から「現地では"h"を発音するんです」と云われてびっくり。 これも http://www.merriam-webster.com/dictionary/birmingham で発音を聞くことが出来ますが、明らかに「バーミンハム」と発音しています。 (Oct. 20, 2011) 御存知のように、後に続く名詞や形容詞が母音で始まる場合の定冠詞はthe(ズィ)と発音します。例:"The apple is rotten."(そのリンゴは腐っている) では、the(ズィ)と云っておいて子音で始まる名詞や形容詞を続けたら恥ずかしいでしょうか?そんなことはありません。「云い淀む英語」(『英語の冒険』正篇の「発音」)に書いたように、母音で始まる名詞を予定していてthe(ズィ)と云ったものの、実際には子音の名詞や形容詞に変更することはよくあるからです。英米人でも「the(ズィ)+子音の名詞」で喋ることは珍しくありません。そういう場合、"the...uh..."(ズィー・ァー)と云い淀むことが多い。云い淀んだ箇所で名詞・形容詞が変更されたと考えられます。 逆にthe(ザ)と云っておいて母音で始まる名詞や形容詞を続けたらどうか?これはちょっと恥ずかしいです。私の住んでいるアメリカ南部だと三単現も無視した喋り方をしますから、the(ザ)とthe(ズィ)の使い分けが出来なくても許されます。しかし、一般的には恥ずかしい。そこで「取り敢えずthe(ズィ)と云っておく」という傾向が見られるような気がします。 (June 30, 2011) "award"を「アワード」として日本国内に広めたのはアマチュア無線愛好家の面々だと思われます。彼らは交信に成功した相手とお互いに証明書を交換し合い、その数を自慢します。その証明書"award"を無線愛好家たちは「アワード」と称しました(正しくはアウォード)。この間違いは日本のカタカナ表記によくあるもので、別に珍しいものではありません。
「アワード」系の人は、"warm"(ウォーム、暖かい、暖気)は「ワーム」と発音するのでしょうね?"worm"(ワーム、普通ミミズと解釈される)は「ウォーム」と? (April 30, 2011、改訂September 24, 2017) 市営ゴルフ場でよく顔を見、私がトーナメントで対戦したチームの一人でもあった男が、ゴルフ場のパートタイムのレジ係になりました。名前を知らなかったので聞いたところ、"Earl"(アール)のように聞こえたので、"Earl?"と聞き返すと「そうだ」とこと。 ある日、ゴルフ仲間の一人に「レジ係のEarlが…」と話すと、「レジ係にEarlというのはいない」と云います。人相を説明すると、「それはHarold(ハロルド)だ」とのこと。 他の仲間にも聞いてみましたが、みな彼の名前はHaroldだと云います。では、何故当人が私の"Earl?"に「そうだ」と云ったのか?よく分析すると、名前の先頭の"H"は無音ではないものの、日本語の「ハ」のように鋭く発音されません。続く巻き舌の"r"と舌先を歯茎に付けた"l"がポイントで、どちらにも含まれる"r"と"l"によって「アール」、「ロル」と、非常に似通った発音になるわけです。Harold当人は、私の"Earl?"を"Harold?"と云ったと勘違いしたのでしょう。 英米人同士だと、語尾の"d"を聞き逃さないのかも知れません。"Earl"の語尾の"l"は舌先を歯茎に付けたままフィニッシュしますが、"Harold"の"d"は舌先を弾くことになります。英語は語尾を曖昧にしない言語ですので【参照「語尾へのこだわり」】、最後の"d"が聴き取れれば「あ、EarlではなくHaroldだ」と認識出来るのかも知れません。 ある日、彼に直接聞きました。「"Earl"かと思ったら、"Harold"と云う人もいるけど…」と云うと、彼は「よく間違えられる。アメリカ人でさえ"Earl"と呼びかける人間もいるよ。正しくは"H-A-R-O-L-D"だ」と云いました。私はいささか安心しました。 数年前、少年ゴルファー二人と知り合いました。ちっこい方の少年が、のっぽの方を"Joe"と呼んでいるので、ある日「Joeは今日は来ないの?」と聞きました。ちっこい少年はぽかんとした顔をしました。Joeなんて人間は聞いたこともないという感じでした。「キミの相棒はJoeじゃないの?」と尋ねると、「違うよ。Jonathan(ジョナサン)だよ」と私の間違いを正しました。 私には語頭のアクセントの強い「ジョ」だけが聴き取れ、どうでもいいように弱く発音される"th"以下の音が聞こえなかったのです。子供相手だし、別に重要な話をするわけでもないので問題なかったのは幸いでした。しかし、これがビジネスの付き合いだったり、役所関係の人間だったりしたら非常に厄介なことになっていたと思われます。アメリカでは誰でも名刺を持っているわけではないし、出会う人一人一人に名前を紙に書いて貰うのも体裁が悪い。人名は大事なのに、困ったものです。 (March 20, 2011) 2010年のU.S. Openゴルフ・トーナメントで、石川 遼が連日上位で頑張っていたため、TV画面にもかなり登場しました。前年、「“遼”の発音は"Rio"だ」と云い切った大手ネットワークNBC-TVのアナウンサーが2010年以降どうしたかというと、もう“遼”の発音は諦め「石川」と呼ぶようになりました。英米人に"ryo"の発音は難しいからです。【参照「Rの発音」】 その「石川」も「イ」と「カ」にアクセントがある英語風発音です。日本語にアクセント(強勢)はなく、あるのはイントネーション(抑揚=音の高低)なのですが、彼らにはこれは難しいようです。 (March 20, 2011) カミさんとカミさんのお友達に料理を作って御馳走した時のこと。冬ですから、おしぼりをビニール袋に入れてチンしてサーヴしました。「これは何の袋?」と聞かれたので、「雨の予報の日に新聞が包まれて来る袋。無限に供給されるわけ」と云い、"infinitely"(無限に)を「インファイナイトリィ」と発音しました。するとカミさんが「インフィニトリィね」と云い換えました(彼女は、結婚前私の英会話の先生でした)。 私は"finite"(有限の)という言葉が「ファイナイト」という発音であることを知っていましたから、"infinite"(無限の)は「インファイナイト」であり、その副詞形"infinitely"(無限に)は「インファイナイトリィ」に違いないと思っていました。 私が"infinite"という言葉に出会ったのは遥か昔のことです。プログラミング言語を習っていて、"infinite loop"(無限ループ)という言葉を覚えました。これは譬えて云えば、辞書で○○という言葉を引くと「●●を見よ」とあり、●●を引くと「○○を見よ」となっているようなもので、無限に行ったり来たりしてプログラムが暴走することです。十数年前、カリフォーニア州クパチーノにあるApple本社を訪れたことがありますが、そのメイン・ビルディングの名前が"Infinite Loop"でした。コンピュータの会社としては皮肉で可笑しい命名です。上記のどちらも私は「インファイナイト・ループ」だと思い込んでいました。 カミさんが私の「インファイナイトリィ」を「インフィニトリィ」と云い替えたのは、"neither"が「ナイザー」とも「ニーザー」とも云えるような違いで、カミさんは自分の好みの方を口にしただけだと思っていました。 念のため辞書を引いてショックを受けました。形容詞"infinite"は(「インファイナイト」ではなく)「インフィニト」と詰まって発音され、その副詞形"infinitely"も当然「インフィニトリィ」となっていたのです! "neither"を「ナイザー」と云おうが「ニーザー」と云おうが間違いではないが、「インファイナイト」と「インファイナイトリィ」は間違いだったのです。 【音声】 (January 20, 2011) Denzel Washington(デンゼル・ワシントン)主演の映画に'Ricochet'(1991)というのがありました。その意味は「跳弾」(弾丸が道路や壁に当たって水切りのように跳ねること)です。私はこの映画をアメリカに来てTVで見、題名を「リコシェット」と読んでいました。 ある時、カミさんに「リコシェットみたいに…」と云ったら、「それはフランス語で、語尾の"t"は発音しない」と云われました。私は以前に辞書は引いたものの、「跳弾」という意味だけ調べて発音や語源までは読まなかったのでした。辞書の説明を最後まで読んでいれば「フランス語から」などと語源が書いてあったのに…。日本の映画ファンなら、この日本語題名が『リコシェ』であることは知っておられたことでしょう。 "gourmet"はもう日本語になっているので、「グルメット」などと発音する人はいません。これもフランス語起源で、最後の"t"は無音です。調べると、そもそもこの"gourmet"は「ワインの鑑定家」が語源であって、本来は「食通、美食家」の意味は含まれていなかったそうです。 カミさんが、彼女の友人が"gourmand"という言葉を仕入れて使い始めたと云いました。これもフランス語起源で、「健啖家、美食家、食通」という意味です。つまり、この"gourmand"の語義がいつの間にか"gourmet"に侵入し、かつ占領してしまったわけです。ま、ワインの利き酒が出来る人は美食家・食通でもあるでしょうから、目くじらを立てることもないのですが。 「リコシェット」で間違えた私は、「"gourmand"も最後の"d"は発音しないんじゃないの?」とカミさんに云いました。Yves Montandというシャンソン歌手・俳優は「イヴ・モンタン」であり、名前の最後の"s"も苗字の語尾の"d"も発音しませんし、"grand"(グラン、大きい)や"tres"(トレ、非常に)、"long"(ロン、長い)など、フランス語の語尾の子音字は発音されないことが多いからです。そうカミさんに得意そうに云った後、オンライン辞書で発音を聞かせてくれるもので調べてがっくりしました。「グールマンド」あるいは「グアマンド」という風に語尾の"d"も発音しており、私はまたまた間違えた結果になったからです。 しかし、私が完全に打ちのめされたわけではありません。仏和辞典で"gourmand"を引くと、「グルマン」という発音になっているのです。語尾に"e"が付いて女性名詞になった時だけ「グルマンド」になります。語尾に"e"のない英語の"gourmand"は、男性名詞のスペルと女性名詞の発音をごっちゃにした雌雄同体の言葉となって英語圏に輸入されたことになります。 英語でも外来語風の単語は、発音をよく調べた方がいいですね。われわれは外国人ですから、発音を間違えても別に「恥をかいた」とまで考える必要はないのですが【アメリカ人一般は、フランス語もイタリア語もドイツ語も実際には知りませんし】、私のように間違えずに(!)英語の外来語を正しく発音出来れば教養人と思われるのは間違いありません。表立っては誰も褒めないでしょうけど…。 (December 30, 2010) 英和辞典等で"Hull"を引くと、"hΛl"という発音記号で表記されています。私はこの横棒の無いΛの発音記号を長いこと「あまりハッキリ発音しないア」だと思っていました。その発音記号が使われる単語の代表として載っているのは、cut(カット)、come(カム)などなのです。「ア」ですよね? Longmanの'Dictionary of American English'のΛの発音サンプルでさえ"but"となっています。これだって「ア」でしょ? 「英語の発音記号 読み方と音声サンプル」(http://www.linkage-club.co.jp/entry/hatsuonkigo.html)というサイトは、発音の要領を「短く『ア』と言う。日本語の『ア』とほぼ同じ」と述べています。そして、例として"gun"(ガン)、"study"(スタディ)、"tunnel"(タヌル)などを挙げており、いずれも「ア」と発音しています。 しかし、英米人の発音が聞ける「名前サイト」(http://www.rong-chang.com/namesdict/audio/last/h/Hull.mp3)でHullを引くと、音声では明らかに「ホル」と発音しています。 「goo辞書」(http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/ej3/41858/m0u/hull/)のオーディオでも「ホル」です。 オンライン英英辞典 Merriam-Websterを見ると、何と"hull"は"həl"と表記しています。しかし、オーディオによる発音は「ホル」です(https://www.merriam-webster.com/dictionary/hull)。 カミさんにも発音して貰いましたが、やはり「ホル」でした。 (November 10, 2010) 私がスーパーWalmartで買い物していたら、20代の黒人姉妹がラーメンを物色していて、姉さんの方が「ラーメン」と発音したら、妹の方が「レイメンでしょ?」と主張していました。確かに"ra"を"radio"、"rail"や"rain"のように「レイ」と発音する場合もあるわけです。お節介な私は"It's ramen."(ラーメンですよ)と云ってしまいました。二人が私を中国人と見たか日本人と見たかどうか知りませんが、「あ、東洋人が云うのなら間違いない」とでも云うように、「ほらね?」「あ、そうなんだ!」という反応を示しました。 「レイメンは冷たいヌードルのことです」とも云いたいところでしたが、云わなくて良かった。拉麺(ラーメン)は日中共通ですから中華料理店でも通じますが、「冷麺」はもともと韓国がオリジナルだそうで、日本においても厳密には「冷麺」は韓国風の麺類を差すようです。西日本の「冷麺」はラーメンを冷やしたもので、これはいわゆる「冷やし中華」ですが、この類いを中国語では「冷麺/涼麺(リャンメェン)」と呼び、「レイメン」とは云いませんから、アメリカ人に「レイメン」という言葉を教えても無駄ということになります。 韓国の自動車Hyundaiは日本では「ヒュンダイ」ですが、これを「ハイユンダイ」と発音していたアメリカ人を知っています。白人で、ミシシッピ州の最高と云われる大学の卒業生でした。Hyattというホテル・チェーンがありますから、その伝で "hy"を「ハイ」と読んだのでしょう。ある Q&Aサイト(http://answers.yahoo.com/question/index?qid=20080120171816AAToWio)を見ると、南部のアメリカ人だけがおかしいのではないことが分ります。「ヒユンデイ」など色々な憶測が投稿されています。英米における発音は、正しくは「ハンデイ」のようです。 (October 20, 2010) ゴルフ仲間の一人がどっかかから仕入れたゴルフ・ジョークをメールで送って来ました。キャディ不足のゴルフ・コースがロボット・キャディを導入したところ、客へのアドヴァイスが適切なので、ロボット・キャディは引っ張りだこになった。しかし、客の苦情も殺到した。金属製の表面が太陽光を反射し、眩しくてプレイの妨げになる…というものだった。「じゃ、ロボットの表面を黒く塗ればいいじゃないの」とある客が云った。「塗りましたとも」と支配人が云った。「どうなったと思います?ロボットたちのうち、二体は無断欠勤し、四体は福祉事務所に駆け込んで貧困者救済手当を請求し、一体はプロ・ショップに泥棒に入り、残る一体は自分が大統領だと思い込んでる始末です」…というもの。明らかに黒人の最近の傾向を当てこすったジョークです。 私の親しい友人Mike(マイク)は人種差別主義者ではないので、彼が上のジョークをどう思うか聞こうとしました。彼は話の最初から怪訝な顔をし、話について来れない様子。 話の途中のある時点で、「ああ、ロボットの話なのか!」と、やっと解ってくれた顔をしました。 結局私は諦め、話を最後まで続けたのですが、てんで白けてしまいました。 帰宅して辞書で調べると、"robot"は「ロウバット」という感じで語頭を伸ばして発音しなければいけないのでした。「ロウ」と伸ばすべきだなどとは露知らず、私は少年時代から「ロボット」と覚えこまされていました。Mikeにすれはどっかの"Robert"(ロバート)という人物の話なのかと思っていたのでしょう。 辞書で"robot"の前後の言葉を見てみると、"robe"(ローブ;長い緩やかな外衣)も「ロウブ」で、"rodeo"([カウボーイの]ロデオ)も実は「ロウディオウ」、"rotund"(丸々太った)も「ロウタンド」なのでした。 私の場合、結局話は伝わったわけですし、恥をかいたというわけでもないので実害はありません。しかし、又もや英語をカタカナに置き換えて普及させた連中のデタラメさに腹立たしい思いをしました。「ロウボット」あるいは「ローボット」としてくれていれば何の問題もなかったのです。連中がローマ字読みで「ロボット」などという言葉を広めたせいで、われわれ後続世代はえらい迷惑を蒙っています。 (August 30, 2010) アメリカ映画'Precious'『プレシャス』(2009)はニューヨークの貧民層街に住む、ろくに読み書きも出来ない16歳の黒人肥満少女Precious(プレシャス)の物語。彼女は母親のボーイフレンドによって二度も妊娠させられ、普通の学校から退学処分になり、落ちこぼれだけを教育する教室に通うようになります。 Paula Patton(ポーラ・パットン)演ずるその教室の黒人女性教師Ms. Rain(ミズ・レイン)は、毎日生徒たちに日記を書かせ、教室で発表させます。ある日、Preciousは自分が亡き義父によってAIDSに感染させられていたことを知り絶望的になり、何も書けなくなります。他の生徒たちと共にPreciousの涙に濡れる告白を聞いた教師Ms. Rainは、驚きつつも「それを日記に書きなさい!」と命じます。Preciousが何度か拒否し、Ms. Rainも何度か"Write!"(書きなさい!)という応酬があります。 業を煮やしたMs. Rainは教室に隣接された教師用の小部屋に去りかけますが、くるりと振り向いて、口を尖らせます。あたかも「ウー!」と云う時のような口のすぼめ方です。そのまま数秒経過した後、彼女は"Write!"(書くのよ!)と云い放ちます。 日本人には難しい"R"の発音ですが、よく「口をすぼめて『ウ』の発音をするような形にし、その後で(舌を上顎に付けずに)"R"の発音をすればよい」と云われますが、女優Paula Pattonはまさにその実例を見せてくれたわけです。 (April 10, 2010) 日本の若手プロ・ゴルファー石川 遼(18歳)が、2009年のゴルフ・シーズン初めにアメリカのPGAツァーでデビューしました。ところがシーズンも終わろうとする10月になっても、アメリカのTV界は彼の名前の発音で混乱を見せていました。 2009年10月に開催されたPresidents Cup(プレジデンツ・カップ)に石川 遼が日本を代表して参加。この大会はアメリカのトップ・プロ12人対(ヨーロッパを除く)世界のトップ・プロ12人が腕を競い合うもので、二年に一回開催されます。
石川 遼自身が書いた「りょうの発音について」という記事があります。http://mesl.ucsd.edu/sugiryo/ryo.html(英語)。 実は私にも苦い思い出があるのです。私の日本語の生徒たち(アメリカ人)に「料理」という日本語を教えた時のことですが、誰一人正しく発音出来なかったのです。彼らの発音は「ローリ」とか「ヨーリ」のようになってしまいます。「日本料理」は"Nihon rohri"、「西洋料理」は"Seiyo yohri"という感じ。 私は「日本語には英語のような"R"の発音はない。"R"で表記されていても"L"で発音すると正しく聞こえる」と教えていますが、"R"を"L"に変換して読むのは難しいようです。「料理」を"Lyori"あるいは"Lyohri"と発音させてみても駄目でした。英語には"ryo"あるいは"lyo"で始まる単語は、どちらも皆無だからです。 結論として、不幸なことに石川 遼の名前を正確に発音出来る英米人はいないということになります。日本語を深く研究した英米人でもなければ無理でしょう。これから生まれる赤ちゃんに将来海外で活躍してほしいと願う御両親は、"ryo"で始まる名前を付けてはいけません。 日本語で「私は日本料理が好きです」と発音出来る英米人がいたら、盛大な賛辞を上げて下さい。大変な努力の結果に違いありませんから。 (October 20, 2009) 笑って下され。失敗続きでござった。 私が住んでいるアメリカ南部は、冬でも半袖・短パンでゴルフする人がいるくらい暖かいところです。暖かい分、雨が降るとその後の湿気は凄いです。 ただ、私が湿度計を買おうと思ったのは普通の生活のためではありません。湿度が高いとゴルフ・ボールが飛ばないのです:-)。推定ですが、湿度が80%を上廻ると10ヤード(約9メートル)は飛距離が減るように感じます。湿度対飛距離の関係をデータにしてみよう…それが動機でした(あまり威張れない)。 で、あるお店に行って、深く考えもしないで「"balometer"はありますか?」と聞きました。私は"me"の部分にアクセントをつけて「バロ・↑ミー・ター」と発音しました。さて、この私の台詞に三つの間違いがあります(汗)。見つけて下さい。 当然ながら、店員には私が何を探しているのか解らず、怪訝な顔をしました。私は"To measure humidity."(湿度を計るの)と説明し、今度は通じましたが、この店にあったのは天気予報器とでも呼ぶべきもので、価格も高いので止めました。 もう一軒行ってみました。ここでも私は「"balometer"はありますか?」を繰り返し、それが通じないので"To measure humidity."を繰り返しました。ここの店員は「湿度計」に当たる単語を繰り返して云い、「それは置いてない」と答えました。店員の発音は「バ・↑ロ・ミター」という風に、「ロ」にアクセントがありました。私の間違いの一つは、アクセントの問題で、正しくは第二音節にアクセントがなければ通じないというものでした。 さらに、家に帰って英和辞典で"balometer"を探しましたがありません。仕方なく、和英辞典で「湿度計」を調べました。「湿度計」はなんと"hygrometer"(ハイ・↑グラ・ミタ)となっていました。この単語も"gro"(第二音節)にアクセントがあります。 聡明な方は私を馬鹿にした笑みを浮かべておられるでしょうね。私が「バロメーターというのは一体何だったのか?」と思って調べると、実は正しくは"barometer"("L"と"R"の違い)で、これは「気圧計」のことでした。ちゃんと調べもしないで買い物に行くという能天気なヒトのお話でした。私の間違いは… 1) "barometer"の"R"を"L"と間違えた。 親類の"tharmometer"(温度計)は「サ・↑マ・ミタ」で、第二音節の「マ」にアクセント。"kilometer"ですと、「キ・↑ラ・ミタ」と発音する場合は第二音節にアクセントがあり、「↑キラ・ミータ」と伸ばす場合は第一音節にアクセントがあります。"centimeter"(↑セ・ンタ・ミータ)の場合は第一音節、"millimeter"(↑ミラ・ミータ)も第一音節です。 私の場合は「馬鹿ミータ」でした。 (September 30, 2009) 私の友人Jackは80歳を越えたのに、急にヴァイオリンに興味を持ち出し、自作したり人のヴァイオリンを修理してあげたり、挙げ句は先生について弾き方まで習い出しました。 市営ゴルフ場で初めての人と一緒のチームになりました。こちらでは、ただ"Nice shot!"と云うだけでは片手落ちで、必ず"Nice shot, Bob!"という風に名前をつけるのが普通ですから、チームメイトの名を知らずにプレイは出来ません。 アメリカで生活を始めてもう14年になろうというのに、まだLとRに悩まされています。 (August 30, 2009) 私は人の笑顔を見るのが好きです。男性の笑顔もいいですが、特に女性の笑顔が大好き。笑顔はその人を美しく見せ、見る人の心を和ませます。赤ちゃんの笑顔は最高です。思わず、こちらもつられて笑顔になります。 英会話では、日本語会話のように「ええ、ええ」とか、「はいはい」とか相槌を頻繁に入れてはいけないと教わりました。相槌を打たないのも物足りないということで、私などはこちらの表情や頷きで応じるようにしているのですが、これで何度か失敗したことがあります。 写真を撮る時、「チーズ」と云わせることで自明のように、英語の「イー」の発音は口を最大限横に引っ張るので、あたかも発話者が笑っているように見えます。発話者がまだ単語を口にしていないのに、頭の中で「イー」で始まる言葉を考えていて、先に準備として「イー」の口の形を作ってしまわれると問題です。相手が笑顔を作ったように見えるので、何か面白いことを云うのか?と、こちらも笑顔を作って待っていると実は深刻な話題だったりするのです。「お前はどうしてニコニコしてるんだ?」とは云われませんが、「日本人は深刻な話の時にもニコニコする不思議な民族だ」と思われたかも知れません。こういうことが何度かありました。お恥ずかしい。 ヨーロッパの女子プロ・ゴルファーで、私の嫌いな人がいます。この人はボールを打った後、必ず口を開けて横に引っ張るので、最初笑顔を見せているのだと思ってこの人が好きになりました。ところが、それは単にボールの行方をハラハラして見守る時の癖であって、笑っているわけではないことに気づきました。騙された私は「紛らわしい顔すんな、コノーっ!」と、以来このプロが嫌いになったというわけです。これは「イー」の発音とは関係ありませんね。失礼。 (April 20, 2009) "interpreter"(通訳)という言葉は「インタープリタ」で最初の「タ」にアクセントがあります。私は往々にして頭の「イ」を強く発音してしまい、アメリカ人に怪訝な顔をされます。"inter-"が付く語はどれも似たようなアクセントかと思うと、そうでもないのです。 以下は全てinter-に続く第三音節にアクセントがあります。 以下は語頭にアクセントが来ます。 となると、"interpreter"は非常に特殊なアクセントを持つ言葉と云っていいのでしょうか?『新英和中辞典』で"inter"で始まる語を調べてみましたが、以下のようなものが"interpreter"同様第二音節にアクセントがあります。 "intercalary"(閏年の)、"interior"(インテリア)、"interment"(埋葬)、"interminable"(果てしない)、"interrogate"(質問する) つまり、"interpreter"だけが特殊とは云えないようです。なお、動詞の"intepret"(インタープリト)も第二音節の「タ」にアクセントですが、"interpretation"(解釈、説明)となると、「インタープリテイシャン」で第四音節の「テイ」にアクセントが来ます。 (March 20, 2009) ある知人(日本人)へのメールに「コーケイジャン」と書いたら、「コーケイジャンって何ですか?」と聞かれました。実は私も十年ほど前にカミさんから「コーケイジャン」と云われて分らなかったことを思い出しました。 日本ではローマ字読みで「コーカシアン」と思われている言葉です。"Caucasian"「コーカサス人;白色人種;白人」ですね。これの英語の発音は「コーケイジャン」。「コーカサス(またの名をカフカス)」を調べると、「ヨーロッパ・ロシアの南部、コーカサス(カフカス)山脈の南北にわたる地方。黒海とカスピ海の間に位置する」とあります。 人種を肌の色で表現する"white"と"black"を避けて、「白人」を"Caucasian"と云う場合があります。しかし、私の経験では滅多に聞かれません。ヨーロッパのことなど縁遠いアメリカの庶民には、持って回った云い方と捉えられるか、アメリカ人でさえ「何、それ?」と云う人がいそうです。しかし、たまたま云われる場合もありますから、知っておいて損はないでしょう。 ちなみに私が日本語を教えているアメリカ人青年二人はちゃんと知っていて、「何か登録書類を書く時に"Caucasian"、"African-American"、"Asian"などから選ぶ時に使う程度」だと云っていました。 (November 30, 2008) 友人「毎週水曜日はカイロ・プラクティックだから、ゴルフは出来ない」 よく聞くと、彼は"choir practice"(合唱の練習)と云ったのでした。小さな教会の役員としては聖歌隊の一員も兼ねなければならないらしいのです。 ちゃんと語尾まで聞いていれば"chiropractic"と"choir practice"の区別はついたのでしょうが、最初の"choir"(クワイア)を「カイロ」と聞き間違えた時点で、もう"practice"ではなく"-practic"を予期してしまったのが頓馬でした。 落ち着いて考えると、彼はアメリカ人特有の"r"をはっきり響かせる感じで「クヮラ・プラク」と聞こえるように発音していたと思います。私の貧弱なボキャブラリーで「クヮラ・プラク」と聞けば「カイロ・プラクティック」と間違えるのも無理はないわけです。…と自分で自分を慰めても仕方がないのですが:-)。 もう一つ、次は私の思い込みによる失敗談。 ゴルフ場で顔見知りの老人に挨拶すると、彼は「今朝、女房が『邪魔だからゴルフに行きなさい!』って、おれを家から追い出したんだ」と云います。私は家の周りの雑用(芝刈りとか落ち葉集め、ペンキ塗りなど)を、うろ覚えで「ハウス・コア」と呼ぶのだと思っていて、「今日は、奥さんがあんたに命じる雑用がなかったってわけだ」とからかったのですが、全然通じません。彼に何度か聞き直された挙げ句意味を説明すると、「何だ、チョアか」と云われました。 「雑用」は"chore"で「チョー」あるいは「チョア」なのでした。私は英語の"ch"は(上の"choir"のように)「コ」になることが多いという先入観で「コア」と云ってしまったのです。耳でなく目から入った情報は恐いですね。ローマ字英語と同じで、トラブルの原因です。 "practice"に関する話題も付け加えましょう。日本人には"practice"イクォール「練習」という理解が普通だと思いますが、次のような表現をどう思われます?私の友人で医師のMike(マイク)はメニエル氏病に類似のもっと重い難病に罹り、医業をやめ(当人は“中断”と云っています)治療に専念しています。彼からのメールの一行です。 It has now been 52 months since I practiced medicine. "practice"には医業や弁護士業を「実践する」という意味もあるので、上は「投薬の練習をした」ではありません。患者を人体実験に使われては困ります:-)。 (October 20, 2008) ガソリンを入れに行きました。車から出ると、黒人の中年女性従業員が店の周りの掲示物を直しています。彼女が私に近づいて来たので「何してるの?」と聞きましたが、「働いてるのよ」と云うだけで要領を得ません。彼女は私が入れようとしているスタンドの貼り紙をびりびり破き出しました。 私は車の注入口を開け(アメリカの多くのgas stationはセルフ・サーヴィスです)、クレディット・カードを読み取らせ「注入してよろしい」という表示を待ち、「レギュラー」を選んで注入口にノズルを差し込もうとしました。入りません。注入口はバネ仕掛けで普段は閉まっていますが、ノズルで押せば開く筈です。ところが、いくら押しても開かない。私の車はカミさんのお下がりなのですが、最近色んな箇所がおかしくなり、頻繁に修理工場へ通わなくてはならなくなっています。「また故障か!」私は焦りました。 私がガチャガチャやっていると、例の黒人女性が何か云いました。"It's..." その後の言葉は"decent"か"descent"に聞こえました。私は「何を云ってるんだ?」と思いました。どっちにしても現在の状況にマッチする言葉ではありません。私が"What?"と聞き返すと、女性は私の手元を指差しながら同じ言葉を繰り返します。同じ言葉を繰り返されても、解らないものは解りません。途方に暮れた私が指差された手元を見ると、ノズルの色が見慣れない緑色をしています。普通は黒です。ノズルの格納場所を見ると"Diesel"と書いてあるではありませんか!私は頭から血の引く思いがしました。ガソリン・タンクにディーゼル油を混ぜたら大変なことになるところです。私は黒人女性に礼を云いました。 ディーゼル油のノズルはガソリン車の注入口には入らないように出来ているようで、それで注入口が開かなかったんですね。この時は、何台かあるスタンドの中でいつも使わない端っこのスタンドを選んだのですが、ここだけにガソリンとディーゼル油の二つのノズルがついており、他のスタンドは黒色(ガソリン用)一個だけでした。 後になって考えると、この女性は「ディーセル」と澄んだ発音をしたのです。「"diesel"=ディーゼル」と濁った音が脳に刷り込まれている私には、とても同じ言葉とは思えませんでした。 辞書を見ると、ちゃんと「ディーセル」という澄んだ発音も出ていました。しかし、英語国民のどれだけの数が「ディーセル」と発音しているのでしょう。どちらかに統一して貰いたいと思ったことでした。 (September 20, 2008) "gauge"という単語には「規格」、「標準寸法」などという意味があります。模型機関車ファンには線路幅を示す「ゲージ」として知られています。で、この言葉はスペルからは想像も出来ないのですが、その正しい発音は「ゲージ」(正しくはゲイジ)なのです。珍しく“日本語”と英語の発音が合致した例です。これはフランス語の「計量竿」が英語に輸入されたものだそうです。 間違って"gauge"をスペルに合わせて「ゴージ」と発音すると、「峡谷」を意味する"gorge"と解釈されます(アメリカ人は"r"を響かせるので違いはあるでしょうが、イギリス風の発音では誤解はあり得ます)。この"gorge"もフランス語起源で「のど」という意味。両側が絶壁となっている谷を指します。 ある車のマニュアルを見ていたら、"Fuel gage"(燃料計)というように簡単なスペルを用いているのでびっくりしました。辞書を引くと「"gage" =gaugeを見よ」とあります。発音は同じ。"gage"なら発音を間違える心配はありませんね。 紛らわしい単語に"gauze"というのもあります。日本では「ガーゼ」と呼ばれているものですが、英語としての発音は「ゴーズ」です。ガーゼのような薄織が初めて織られたパレスチナの町Gazaの名から取られている言葉だそうです。 2007年7月の新聞に"NASA close to wrapping up tests on shuttle gouge"という見出しの記事が掲載されました。私にはこの"gouge"は初めてでした。記事の内容は「アメリカのスペース・シャトルEndeavourの外側に発射時の事故で凹みが出来、それを飛行士が宇宙空間に出て修理すべきかどうかNASAがテスト結果によって結論を出す日が近づいた」というものです。で、この"gouge"は「ゴウジ」ではなく「ガウジ」と発音し、「(穴たがねで彫った)溝」という意味だそうです。つまり、ごく細い凹みのようです。 一見似たような単語ですが、それぞれ発音が違います。私の説明で、ますます紛らわしくなったら御免なさい:-)。 (August 10, 2008) ある時、カミさんに「ディヴェロッパー」という発音をして笑われたことがあります。辞書で確認するまでもなく、"developer"(開発者、[宅地などの]造成業者)のスペルはdevelopperではないので、「ロッパ」になりようがないのでした。私は日本の新聞・雑誌に氾濫する「デベロッパー」というカタカナに毒されていたのです。 YouTubeで音声で聞かせてくれます。聴いてみて下さい。 ね?「デベロッパー」ではなく「ディヴェラパー」と云っています。ちなみに、"develop"を聞いてみると、こちらは「ディヴェラップ」に聞こえますが、派生語の"developer"は「ディヴェラパー」なのです。この辞書によれば、語源はフランス語の"développer"(動詞;名詞はdéveloppement)だそうですが、この動詞の発音は「デヴロッピ」に近く聴こえます。「デベロッパー」という日本の方言は、フランス語の動詞に影響されたものかも知れません。 Googleで検索すると、「デベロッパー」は2,390,000件もあります。Wikipediaの見出しも「デベロッパー (開発業者)」となっています。これらは英語ではありませんので御注意下さい。 誰か一人の知ったかぶり(多分、土建屋でしょうな)が最初に「デベロッパー」と活字にしちゃうと、一億人が金魚のウンコのようにそれを信じてしまうという悲劇。 (June 20, 2008) 日本のウェブサイトの多くで、"Asian"を「アジアン」と表記しているものが沢山あります。ま、「カタカナは日本語だ」と割り切ればいいのでしょうが、当人は日本語だと思っているでしょうか?こういう人は、英会話でも「アジアン」と発音するような気がします。英米人に通じないわけではないので、当人もそれでいいと思ってしまうでしょう。そして、こういうサイトを訪れた大勢の人たちが"Asian"を「アジアン」と発音して当然だと思うことでしょう。 NHKまで『アジアンスマイル』(Asian Smile)などという番組を始めました。「アジアの若者たちが懸命に生きる姿を映すドキュメンタリー」だそうです。片方で語学講座を持っている放送局が、「アジアン」と表記するなんて困ったもんですなあ。 “レシピ30万品検索”を謳うCookpad(http://cookpad.com/)のレシピにも「アジアン風○○」、「アジアン風味の○○」が一杯(653品もある)。 歌手・石嶺聡子は'Asian Dream'という歌を「エジアン・ドリーム」と発音しています。これもおかしい。 この『英語の冒険』をお読みの方ぐらいは、「エイジャン」あるいは「エイシャン」と読み・書きして頂きたいものです。「アジアン」ではありません。妙な発音を蔓延させないよう、お願いします。 YouTubeで正しい発音を教えてくれます。聴いてみて下さい。 発音から外れますが、日本人が「アジアン」と云う場合、そのアジアには日本も含まれているのでしょうか?世界から見れば日本もアジアの一国に過ぎないのですが、われわれが「アジア」と云う時、われわれの意識は西方(韓国、ミャンマー、タイ、中国など)と西南方向(マレーシア、フィリピンなど)を向いていないでしょうか?Cookpadのレシピ投稿者が「アジアン風○○」と称する時は明らかに東南アジアの味覚を指しています。ここには、日本をアジアから切り離そうとする潜在意識が窺えるような気がします。 (May 20, 2008) アメリカ人に日本語を教えています。これまで、動詞の活用まで到達したことはあったのですが、現在の生徒たちには形容詞について教えるところまで来ました。 「美しい」とか「新しい」とか語尾が“い”で終るものを[i] adjective、「優雅」とか「新鮮」など“な”を補って修飾するものを[na] adjectiveと分類するのが、外国人への教え方として常道のようです。 日本語を教えるということは日本語を勉強するということでもあります。「きれい」、「嫌い」、「有名」は“い”で終っても、これらは[na] adjectiveであることを初めて知りました。いえ、自分で使う時は正しく使っているのですが、この三つが特別視されているということを知らなかったのです。 色の表現でも、赤・青・白・黒などは名詞ですが、語尾に“い”を付ければ形容詞になります。茶や黄の場合はそのままでは形容詞にならず「茶色い」、「黄色い」と“色”を補ってからでなければ“い”を足せない。緑の場合は“色”を補ってさえ“い”を足しても正しい形容詞にならない。ここまでは自分で発見し驚いていたのですが、「なぜそうなのか?」はインターネットで調べてみるまで分りませんでした。普段何気なく使っている形容詞にも、奥の深い歴史があることを知らされました。 さて、形容詞に関する授業を一回済ませ、その経過をカミさんに話したら怪訝な顔をしています。「何のことを話しているのか分らない」という苛立ちさえ感じられます。私の話が一段落したところで、彼女が割り込んで来ました。「あなたは"adjective"の話をしてるの?」と云います。「そうだ」と答えると「"objective"に聞こえるわ」と云いました。 私は二音節目の“ジェ”にアクセントを置いて発音していたのです。"adjective"なら冒頭の“ア”にアクセントを置いて"apple"と同じように発音しなければいけなかったのでした。"objective"はニ音節目にアクセントがあり、「目的、客観的、目的格の」という意味で、「形容詞」とは関係なくなってしまうのです。私は脇の下に汗が滲む思いでした。生徒たちに90分間形容詞の話をしているつもりで、間違った発音をしていたのです。その90分を取り戻して消去したい思いですが、それは叶いません。ま、英語は私の母国語ではないし、刷り物に"adjective"と書いてあるので生徒たちは大目に見てくれたのでしょう。 私は慌てて「副詞」の発音も調べました。"adverb"も"adjective"と同じで第一音節にアクセントがあります。よーし、副詞の時は間違えないぞ! (April 10, 2008) 私はインクジェットのカラー・プリンタも持っていますが、インクの値段が高いのでよほどカラーでなければいけない場合以外は使いません。普通はレーザープリンタを使っています。細長いカートリッジに詰まったトナー(黒色粉末)を熱転写で紙に印刷するプリンタです。白黒ですが、スピードはインクジェットより格段に早く、鮮明でもあります。 こちらの友人のJack(ジャック、78歳)に「トナーが切れてしまって、注文してるところだ」と話したのですが、「?」と私が何を云っているのか理解出来ない様子。「Laser printerに使うトナーだよ」と云っても通じません。仕方なく「t-o-n-e-r、トナー」と云うと、「ああ、あんたの話してるのは“トウナ”のことか!」とにっこりしました。 家に戻って『研究社 英和中辞典を引くと、「toner 【トウナ/タウナ】(複写機の)トナー」とありました。【トウナ/タウナ】は本来は発音記号ですが、ネットで発音記号は表示出来ないので、私がカタカナにしました。それにしても、この「トナー」というJaplish(和製英語)は誰が作ったのでしょう?最初から「トウナ」という言葉を広めてくれりゃいいのに、「トナー」などとローマ字読みを広めるなんて甚だ迷惑です。 "motel"に「モーテル」というJaplishを当てたのと同じくらい罪が重いと云わなければなりません。 私は別にJackに通じなかったから「恥ずかしい」などと思っているわけではありません。英語として通じないような言葉を蔓延させている輩に腹を立てているのです。「トウナ」としなかったのなら「着色粉末」と日本語のままにしておいて欲しかったと思います。これなら罪はありません。 (January 20, 2008) 日本式カタカナで雑誌などが書いているセックス関連の人体部品の多くは英語ではありません。医学用語のほとんどはドイツ語がそのまま輸入されていたり、英語のスペルでもローマ字読みであったりで、そのままでは英米人には通じません。英語で通じる発音を記してみます。 肛門:anus アヌスではなく、「エイナス」 下記の本はセックスと排泄に関する言葉に関する情報を集めたものですが、以下のような非英語国民が間違え易い発音について注意を呼びかけています。 'Dangerous English' 2nd Edition beach 海辺/ bitch 尻軽女 私はアメリカ人に日本語を教えていますが、「どうも失礼しました」の「失礼」の発音は、彼らにはとても難しいようです。"shitsurei"の"tsu"という発音が英語にないのですね。やけくそで、"shit-lay"はどうかと思ったら、これだと何とか「失礼」に聞こえました。しかし、上の語彙集で翻訳すると、"shit-lay"は「糞・性交」という非常に卑猥な言葉に変貌し、教える方も教わる方も落ち着きません。ちょっとまずいので"shitz-lay"にしました。あまり変わりませんかね:-)。 (January 20, 2008) もう十数年前のことですが、ウィーンに一ヶ月ほど滞在し、ウィーン美術史美術館の絵画や工芸品の数々を撮影したことがあります。それらはハプスブルク家の王侯たちが集め、作らせたものなので、王族の歴史も重要な要素です。その中の一人の王がウィーン少年合唱団の創始者だったということで、合唱団も取材することになりました。
"a'cappella"の語源はイタリア語の「教会のスタイルで」という意味で、音楽用語としては「(合唱曲が)無伴奏の」と定義されています。NHKでは地方局でも合唱コンクールなどの収録をしますから、ディレクターや音声マンは「あかぺら」という言葉を知っていて、知らないのはそんな番組に携わったことのない私だけだったのでした。音声マンからすれば、楽器が出てくればマイクを余計に立てなくてはならないので、伴奏の有無は重要だったわけです。しかし、どうせレコードの合唱をかぶせてしまうのですから、真面目にマイクを立てる必要もなかったのですが。 2006年、私の住むアメリカ南部の田舎町にウィーン少年合唱団がやって来て一晩の公演がありました。私が聴きに行ったかですって?冗談でしょう。こんな小さな町にドサ回りでやって来るなんて、二軍に決まってるじゃありませんか。 (October 10, 2007) BMW(ビー・エム・ダブリュー)はドイツの高級車メーカーBayerische Motoren Werke AG(バイエリッシェ・モトーレン・ヴェルケ・アーゲー)社の車。日本ではドイツ語読みで「ベーエムヴェー」(あるいはベーエムベー)と呼ぶ人もいますが、アメリカでそんな発音をしても通じません。 Chevrolet(シヴォレー)はGM(ゼネラル・モーターズ)の大衆乗用車。スイス出身のレーシングドライバー、ルイ・シヴォレーが創立に関わったことから、この名が付けられました。愛称はChevy(シェヴィ)。 Corvette(コーヴェット)はGMのスポーツカー。アメリカでの正式名称はChevrolet Corvette。 Dodge(ダッジ)は、米クライスラー社のブランド。「ドッジ・ボール」と同じスペルですが、「ダッジ」。 Fiat(フィーアト)はイタリア製の車。日本では「フィアット」と促音になっていますが、「フィー」と先ず伸ばし、後半を「アト」と軽く続けるのが英米では正しいようです。 Jaguar(ジャガー)は英国生まれの高級車ですが、現在は米フォード傘下となっています。正しい発音は「ジャグワー」もしくは「ジャギュア」。 Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)はドイツの高級乗用車ですが、アメリカでの発音は「メーシーデス・ベンツ」あるいは「メルセイデス・ベンツ」。 Mustang(ムスタング)は、フォード社の車。Mustangは「スペイン人がメキシコ、テキサスなどに持ち込んで野生化した小型馬」のことで、「ムスタング」はローマ字読み。正しくは「マスタング」。 Nissanはアメリカでは「兄さん」あるいは「二、三」という風に発音されます。「にっさん」という促音としては発音されません。 Pontiac(ポンティアック)はGMの車で、アメリカ・インディアンの酋長の名前「ポニアック」(これが正しい発音)から来ています。 Porsche(ポルシェ)は、ドイツの自動車会社。英語では語尾の"e"を無視し「ポルシュ」と発音されています。 Subaruは「スバルー」と語尾を伸ばして強調されます。 Toyotaは「トヨダ」(次項「濁るT」参照)。 Honda、Mazda、Suzukiなどはそのままです。 (July 10, 2007) 自動車会社TOYOTAはアメリカでは「トヨダ」です。「ダ」は「ラ」に近い柔らかい「ダ」。同じように、ゴルフの女子プロ宮里 藍は「ミヤザド」で、この「ド」も「ロ」に近い柔らかい「ド」。アメリカでは、最後の音節のta-ti-tu-te-toは澄んだ音にはならないのでしょうか? 辞書を全部調べたわけではないので大雑把ですが、英語では"ta"、"tu"、"to"で終わるものは少なく、"t"で終わるか、"te"で終わる単語が多い。 "ta"、"tu"や"to"で終わるものもあるにはありますが、かなり少ない。 "duty"とか"dirty"となると、やや濁って来ます。 TOYATAもMiyazatoも外来語なのに、なぜ濁るのか?アメリカ人に聞けば"It's a good question!"と云うでしょう。「分らない」のです。 (March 20, 2007) アメリカのTVアナウンサーが"champion"という言葉を「チェアンピオン」という風に発音したので、カミさんに「変な発音じゃない?」と聞いたら、「変じゃないわよ」という返事でした。 よく考えると"a"の発音というのは、われわれ日本人が馴染んだローマ字の"a"とは全く違うんですね。 angle(角度)「エァングル」 これらは発音記号ですと"æ"になるわけです。 問題はわれわれ日本人が"a"をローマ字風に「ア」と発音した場合、英米人には"u"だと判断されることです。"hat"(帽子、ヘァット)のつもりで「ハット」と云うと"hut"(小屋)の話をしていると思われます。"pan"(片手鍋、ペァン)のつもりなのに「パン」と発音すると"pun"(駄洒落)と解釈されます。 (December 30, 2006) 「えーと、どっちだったっけ?」と一寸迷うのに「発音」という語の発音とスペルがあります。 名詞:pronunciation「プロナンシエイシャン」 真ん中が"nun"か"noun"かという違い。《動詞の場合に逆に"noun"(名詞)になっている》と覚えればいいようです。 (December 30, 2006) 英語は“明解”をモットーにして話されたり書かれたりします。時間(時制)、数、性、方向、場所、否定・肯定など、常にハッキリさせないと落ち着かないかのように文が構築されます。 それは同時に、言葉を曖昧に発音しないという傾向につながります。お持ちのCDやレコードなどで、本場の人が唄う英語の歌(ミュージカルが最適)を聞いてみて下さい。どんなに長く音を引っ張った後でも、ちゃんと語尾を付け加えている筈で、決して曖昧に終わらせたりしません。歌に限らず、映画の台詞なども同じです。 試しに映画"West Side Story"の"Tonight"を聴いてみて下さい。この歌には"tonight"という言葉が13回出て来ますが、「トゥナイ」などと尻切れではなく、必ず最後に「ト」が付けられています。"tonight"の韻を踏んだ "bright"、"light"、"night"、"right"、"alright"なども出て来ますが、これらも必ず最後の「ト」はハッキリ発音されています。 もう一つ映画"Oklahoma!"に登場する"Oh, What a Beautiful Mornin'"を聴いてみましょう。ここで"morning"は"mornin'"と最初から省略されているので"g"は当然発音されません。しかし、代わりに語尾となった"n"はハッキリと発音され、「モーニン・ヌ」という風に唄われています。 私が日本で英語の研修を受けた時、ある“同級生”の中年男性は米人教師から上のような語尾の大切さを教わり、いたく感銘を受けたようでした。彼はスピーチの最後でよく使う云い廻し、"Thank you for your attention.”の最後を「アテンション・ヌ」とはっきり発音すべきだと悟り、参加者全員が五分ずつ喋る“卒業スピーチ”の最後をその発音で飾ろうと決意していました。彼のスピーチの内容は家族ぐるみで英語を喋る日を設けたという微笑ましい内容で、私が演壇に置いて録音したテープには彼の最後の「アテンション・ヌ」がちゃんと入っていました。しかし、実際には彼の話が終わった途端に盛大な拍手が起こり、「アテンション・ヌ」は教師たちや生徒一同の耳には届きませんでした。彼の唯一の目玉であり、担当米人教師への目配せだっただけに、彼はとても悔しそうでした。 なお、語尾をはっきり発音するというのは、アメリカでも東部・西海岸などの人々、特にアナウンサーや俳優、歌手、政治家、学者等に顕著なことであって、南部人を一緒に括ることは出来ません。南部の黒人英語は、"test"を"tes"と発音したりするほど“ものぐさ”なのですから。 (November 20, 2006) [一般] [風俗・慣習] [食事] [発音] [口語] [文法・表現] [その他] [Home] Copyright © Eiji Takano 2006-2023 |