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【掲載順はランダムです】
私は20代のアメリカ青年二人に日本語を教えています。知り合いの方の所へ若い日本女性が長期滞在されていたので、その女性をお呼びし、青年たちに自己紹介をさせてみました。日本語を習い始めてまだ数ヶ月ですから使える云い廻しも少なく、一言で云って稚拙です。しかし、彼らから学ぶことも多々ありそうです。
先ず、青年Aの自己紹介:「私は●●●●(名前)と申します。私は20歳です。私は大学生です。私は薬局で働いています。私は水泳とランニングと自転車が好きです。私の家は五人家族です」
青年B: 「私の名前は●●●●です。私は25歳です。私はゴルフコースで働いています。私はアニメとお絵描きと食べるのが好きです。私は日本へ行きたいです」
自己紹介はスピーチとは別物ですが、しかし骨格はスピーチを参考にすべきだと思われます。スピーチでは、1) Introduction(枕、導入部)、2) Main body(本題、展開部)、3) Conclusion(結語、終結部)…が不可欠ということになっています。スピーチの場合、主催者に感謝の意を表し、本題に関連する小話(笑話、歴史、ことわざなど)を披露し、やおら本題に入ります。最後に、スピーチのまとめをし、将来の展望(抱負)・課題などを述べて終了します。
わざわざ日本女性が来てくれたわけですから、二人の青年も先ず彼女に感謝の言葉を述べるべきでしたが、二人とも何も云いませんでした。青年Aはミズーリ州に家族がいて、父親は大工さんなのですが、それらにも全く触れませんでした。小さなホームタウンについて説明されても日本から来た女性にはちんぷんかんぷんでしょうが、他州から来て働いている事実は重要ですし、父親の仕事も家庭環境が分る大切な要素だと思います。
青年Bは文字で表すと上のように流暢そうになりますが、実はたどたどしく、精一杯のパフォーマンスでした。しかし、彼の「日本へ行きたい」という言葉は、彼の真実の希望でもあると同時にゲストの日本女性への外交辞令ともなっており、「あ、これで終りだな」と思わせる結語になっています。青年Aのは終ったのか、まだ続くのか分らない“尻切れとんぼ”の状態です。
私は青年二人に「ユーモアを交えろ」と教えていたのですが、結局そういう文章が作れなかったと見えて、二人とも只の事実の羅列に終っていました。青年Aは当地の鉄人レースに参加しているほどのスポーツマンですから、「日本の鉄人レースで優勝して有名になりたい」とか云えるわけですし、青年Bもカレッジ・フットボールの選手でしたから、「日本語をマスターして、日本のフットボール・チームのコーチになりたい」とか云えた筈なのです。夢はいくら大きくてもいいわけですから、笑いを誘うほど誇張しても許されるでしょう。
スピーチについては『英検1級 二次試験対策』などという本に、"Public SpeakingのTopics"として様々なテーマ(主題、課題)が出ています。それらをカードに書き抜いて、ランダムに抽出したテーマで短いスピーチが出来るように練習するといいと思います。英検では、「題目カード」を取り出してから一分だけ考える時間が貰え、話し出して二分で終了するようになっています。
(May 10, 2008)
この項のテーマはDiscoveryというアメリカ合衆国に特有の手続きを紹介しようという試みです。この項は私のインターネット上の知り合いである二人の弁護士、坂井・三村法律事務所のパートナーである柴田義人さんと、Sachse, James & Lopardo法律事務所のStephen V. Lopardoさんの御意見をもとにまとめたものです。
私は柴田さんから初めてDiscoveryという法律用語を教えて頂きました。私が「アメリカでは弁護士が鵜の目鷹の目で訴訟のネタを漁っており、訴えを起して敗訴してもペナルティ(罰金)がかからないため、日本に較べると異常に訴訟件数が多い」と書いたことに対し、柴田さんから「一説には、訴訟件数の違いは日本では訴訟手数料が高いこと、着手金なし(オール成功報酬)でも受任する原告側弁護士が少なかったこと、class actionやDiscoveryのような制度がないので“被害者”側が不利だったことなどが訴訟の少なさに繋がっていると見られている」という解説をお寄せ頂きました。また、「日本では原告が敗訴してもよほどのことでなければペナルティーはないも同然で、これはアメリカとほぼ同じですが、現在も最初に払う手数料が高い点はアメリカと違います」という、私の思い込みに対する御注意も頂戴しました。
class actionは「集団訴訟」(公害裁判など)でお馴染みですが、Discoveryというのは初耳でした。柴田さんは「このDiscoveryこそアメリカの訴訟のユニークな点」とおっしゃっています。ところが、これをかいつまんで素人にも分りやすくした説明を見つけるのは大変難しい。法律ですから色んな付帯事項もあり、どうしても長くなります。素人向けの筈のWikipediaのDiscoveryに関する説明でさえ長ったらしいのです。
私が教えを請うたお二人の法律専門家の意見を総合しますと、《Discoveryとは陪審の前で証人尋問や弁論をする前に、原告・被告双方に公平に証拠となるべき情報を開示することを強制する法制度》ということが出来ます。証拠開示によってお互いの強み・弱みが鮮明になりますから、多くの訴訟は法廷に場を移さずにDiscoveryの段階で和解が成立することが多いそうです。Lopardoさんは「訴訟というものは訴訟当事者の負担となるばかりでなく、州や連邦にとっての経費(法廷や裁判官の経費)も馬鹿にならないので、Discoveryはそうした負担を軽減する役目を果たしている」という見解ですが、柴田さんは「Discoveryによって延々と証拠開示の手続が続くのは、とりわけ被告(典型的には大企業)にとって大変な負担になっている(弁護士費用などのお金と時間がかかる)」という御意見です。
Stephen V. Lopardoさんの説明:
Discoveryというのは、訴状が送達された後、関連する資料等の提出を義務づけるプロセスである。原告・被告両者が同じ情報に平等にアクセス出来ることにより、多くの場合お互いの見解の相違を自発的に解決し、裁判という経費をかけることなく結論を出せるという側面がある。これは紛れもない事実で、カリフォーニア州の例を挙げれば、90%以上の訴訟は訴訟開始後、法廷に移行する前に解決されている。もしこのような成果がなければ、それでなくても過密スケジュールとなっている法廷にとって、大変な重荷となることだろう。
Discoveryのタイプはいくつかあり、どれも原告・被告双方に権利がある。
1) 訴訟に関連する書類は、当事者のどちらでも証拠として開示を要求出来る。
2) 訴訟に関連する第三者の書類も、当事者のどちらからでも証拠として開示を要求出来る。
3) 当事者のどちらも、相手方に対し書面による質問書を送ることが出来、相手方は宣誓と共に答えねばならない。これは訴訟に対する立場を明確にする事実を誠実に述べることを強制するものである。
4) 当事者のどちらも、宣誓証言を得ることが出来る。これは相手方から宣誓に基づく証言を得る質疑応答であり、もし証拠調べや陪審の前での弁論に臨むことになった場合に証拠として使用出来る。宣誓証言は証人や目撃者を対象に行なうことも出来る。
こうしたDiscoveryの結果、現在の法廷ではペリー・メイスンが多用したようなあっと驚く証拠や証言は見られなくなっている。裁判開始予定の数ヶ月前とか数年前にこのDiscoveryの手続きがあるので、当事者双方はそれぞれの強みを評価することが可能となる。
Discoveryの結果、大体の場合本当の事実は何だったのか、実際に何が起ったのかが判明する。もし双方の代理人(弁護士)が有能であれば、彼らは裁判を行った場合と同じ結論に到達する筈だ。そうなれば、大抵の訴訟は法廷に移行しないないで解決をみることが出来る」
つまり、カードを伏せないでプレイするポーカー、牌を曝け出した麻雀に譬えることが出来ましょうか?相手の手の内は分っているわけですから、ハッタリは効きません。
以下は「Discoveryの功罪」に関する柴田さんの御見解です。
「“功”は、いわゆる『証拠の偏在』の解消でしょう。自分に有利な証拠を相手方が持っていることがわかっているのに、何だかんだといって出してくれないので裁判に負けた、ということは基本的にはなくなります。しらばっくれて相手に有利な証拠を隠して、それがバレたりしたら法廷侮辱罪に問われるからです。狭い意味で“正義”にかなった裁判を実現できるという意味では、有用な制度だと思います。“罪”は、裁判がますます遅く、経費が嵩むことです。我々弁護士にとってはありがたいことですが…。Discoveryの手続にかかる弁護士費用を考えると、勝てることはわかっているけど和解金を払った方がマシ、と被告(企業)が判断するケースは珍しくも何ともありません。早くて安い、というのも“正義”の定義に入れるとすると、前記した“功の部分も怪しげなものになってきます。皮肉な言い方をすれば、いずれにしても弁護士にとっては都合のいい制度であるということはできると思います」
次に、日本でDiscoveryが採用されるかどうかに関する柴田さんの見通し。
「導入を主張する方々が多いのは確かです。しかし、おそらく財界は大反対でしょう。というのは、言うまでもなく、資料の提出を義務づけられて不利になるのは企業ですし、導入されれば弁護士費用が高騰するのは必至だからです。したがって、財界に後押しされている政党が議会の多数派を占めているうちは、民事訴訟法が大きく変わることはないような気がします。個人的には、いずれは導入すべきだと思っています。それは、弁護士業界が儲かるから…ではなくて(笑)、証拠を隠しきった側が裁判で勝つ、というのはやはり不合理だと思うからです」
(April 20, 2008)
日本では自分の経歴を書く時、「大学院卒」・「大学卒」・「短大卒」と明確にしなければなりません。大学院は英語では"graduate school"で、四年制総合大学は"university"でその多くはgraduate schoolも併設しています。単科大学が"college"、短大が"junior college"あるいは"community college"です。アメリカでも「院卒」の資格は重要のようですが、就職の際でもない限り「大卒」と「短大卒」などの区別は重要視されていないように見受けられます。
最近、私はオンラインでスーパーWalmartのアンケート調査に応え、さらに保険会社GEICO(ガイコ)の自動車保険の見積もりもオンラインで行ないました。どちらも"college degree"という選択肢はあっても、"university degree"というのは見当たりませんでした。つまり、総合大学・単科大学・短大の三つはいっぱひとからげにみなされているわけです。もちろん、WalmartやGEICOは私を社員として雇うわけではなく、単にどの程度の知識・教養を持っているか知りたいだけなのです。私を雇うかどうかという局面では、もっと詳しく学識の程度を聞きたがるでしょう。ただの"college degree"ではなく、Harvard(ハーヴァード)卒なのかMeridian Community College(メリディアン・コミュニティ・カレッジ=私の住む町の短大)卒なのか。両者の差は大違いですからね。
本サイトの「ビニール袋」で登場して頂いた柴田義人さんに伺いました。柴田さんはロースクール(法律大学院)への留学と法律事務所や裁判所での研修で二年半アメリカに滞在された方です。「形式的には同じcollegeに分類されていても、たとえば二年コースのcommunity college出身者と名門university卒業生では、社会の扱いはまるっきり違うように見えました。アメリカは、日本どころではない、すごい学歴社会というのが私の印象です。graduate school(いわゆる大学院)とprofessional school(ロー・スクール、ビジネス・スクール、メディカル・スクール)を区別するというのは私には新鮮な発想でした。もっとも、アンケートなんかだと、professional schoolのdegreeを持っている人も最終学歴はgraduate schoolに分類するのかもしれません」とのことです。
professional schoolのうちlaw school(ロー・スクール)の場合は、四年制大学で学位を得た後、更に三年間の研究が必要だそうです。標準的medical school(メディカル・スクール)は卒業までに四年間学習し、医師として単独で患者を診るためには、更に三〜七年間の監督下による実習を経なければなりません。建築家になるにも四年制大学で学位を得た後、あと数年研究しなければならないそうです。
(March 30, 2008)
Walmartや他の大規模食料品店はバーコードで値段を計算します。レシートにも品名・数量・値段が印刷され、公明正大です。小さな店、特にアジア系食料品店(日系、韓国系、中国系など)ではバーコードで商品を管理しておらず、キャッシュ・レジスターに指で値段を打ち込みます。こういう店のレシートには商品名がなく、漠然と"produce"とか"frozen"とかあるだけです。
購入するものがたった数点なら、どれがどれか値段の見当もつきますが、20点以上も購入するなるとわけが解らなくなります。そのそも"produce"とは何か?「生産品」?だったら、どれだって生産品です。"frozen"だって生産品なのに、なぜ差別しているのか?
辞書を調べてやっと分りました。"produce"は「農産物」なのだそうです。野菜と果物ですね。これに対し、工業生産物は"product"と呼ぶのだそうで。
アジア系食料品店の場合、私が牛蒡を買い、春菊、ニラを買おうが、青梗菜、銀杏を買おうが、どれも"produce"なのです。どれが、どれほど高い値段なのか、他の店と比較していくら値段が違うのか、後で研究したくても全く分りません。
大体こういうアジア系食料品店でレジを務めているのはオーナーである女性か、男性オーナーの奥さんです。性別はどっちでもいいのですが、彼女たちが何十とある"produce"の値段を脳内で記憶しているというのは、私に云わせれば奇跡です。仕入れ価格は週や隔週で変わる筈なのに、彼女たちは一覧表を見るでもなく、全てを諳(そら)んじているように一瞬の躊躇いもなく価格を打ち込んで行きます。まるで神業です。私はこれを信じません。彼女たちが、よく売れる白菜とか大根、サツマイモ、ネギなどの値段を記憶しているであろうことは信じましょう。しかし、牛蒡、春菊、ニラ、青梗菜、銀杏その他の値段まで全てを暗記しているとは考えられません。それに、先週と今週では値段が違うことだってある筈です。しかし、彼女たちはキッパリと値段を打ち込むのです。価格表を見ることもなく。
私が知っているあるアジア系食料品店は、週に一日だけパートタイムの女性を雇って店主が休みます。そのパートタイムの女性も価格表など見ないのです。というか、価格表なんて存在しないようです。ある韓国系食料品店などは"produce"も何も全く印字せず、値段を羅列するだけ。
私の偏見を云わせて貰いましょう。日本の寿司屋のカッパ巻きと同じだと思うのです。キュウリなんてベラボーに安いのに、日本の寿司屋のカッパ巻きは寿司職人の胸先三寸の値段をつけられ請求されます。アジア系食料品店のレジ係も、ほとんどアドリブで値段を決めているのだと思うのです。一応重量は計るけれども、重量当たりの単価はレジ係の即興で決められる。ボれる客からはボる、知人とかよく来るお得意さんには安い値をつける。「明朗会計」の反対の「不明朗会計」です。
私の偏見は間違いだと思いたいのですが、私がこれまで経験したアジア系食料品店では、一度も価格を確かめる作業というのを見たことがありません。「じゃあ、レジ係にいちいち値段を聞きゃあいいじゃないか」ですって?相手は寿司職人と同じなんですよ。私の一個一個についての質問への仕返しに、春菊や青梗菜にベラボーに高い値をつけられたら困ります。要するに、彼らは客が喉から手が出るほど欲しいものを遠方から買いに来ている事実につけ込んで、売り手市場の値をつけているのだと思います。店主さんよ、私の意見が嘘だと云うなら、せめて品名ぐらい印刷しやがれってんだ。
(March 10, 2008)
海兵隊という名前は日本にいた時から聞いてはいましたが、その実態は知りませんでした。アメリカに来て初めて「ヴィエトナム戦争中に、海兵隊として日本に駐屯した」という男と知り合いました。「海兵隊ってなに?」と聞くと、彼は「どんな戦争でも海兵隊が先ず戦地に一番乗りするんだ。最も勇敢な軍隊だ」と誇らしそうに云いました。実際には彼が鉄砲を持って敵地に乗り込んだわけではなく、単なるメンテナンス要員だったようですが。
彼は「海兵隊」のことを「マリンコ」と云いました。何も知らない私は、「まりんこ?雪ん子とか蟻んこのように、鞠(まり)をつく子供みたい」と不思議に思いました。辞書を調べてみると、"Marine Corps"(正式名称はThe United States Marine Corps)とありました。"corps"の最後の"ps"は発音せず、「コー」となるのだそうです。
この時、私はもう一つの勘違いをしました。"corps"を「屍骸」だと思ったのです。ミステリなどで、こういう単語を見たことがあったからです。「"Marine Corps"って『海兵隊の屍骸』?随分暗いイメージだなあ」と戸惑いました。
私は"corpse"と間違えたのです。こちらの方が「屍骸」で、「コープス」と発音します。最後に"e"が有る無し一つで意味が変わっちゃうわけです。
・corps「コー」軍団、団体。フランス語で"body"の意。
・corpse「コープス」死体、屍骸。ラテン語で"body"の意。
語源はどっちも"body"なんで、間違えても当然なのです(開き直り)。スカしてフランス語源の言葉なんか使う方がいけない(いちゃもん)。
アメリカには五つの軍隊があり、大きい順に並べると、
陸軍(United States Army)
海軍(United States Navy)
空軍(United States Air Force)
海兵隊(United States Marine Corps)
沿岸警備隊(United States Coast Guard)
…という風になります。
海兵隊は海軍の中の一つと分類されている比較的小さな軍隊ですが、指揮系統的には海軍から独立しているそうです。大統領の命令一つで、即臨戦態勢に入れる唯一の軍隊とのこと。海兵隊は独自に陸海空の全ての移動手段を持ち、特に海空の両面作戦で敵地に乗り込むことを得意にしています。硫黄島で合衆国国旗を掲揚している有名な写真も海兵隊です。
“勇猛果敢”はいいのですが、それだけに除隊しても性格が荒っぽいままだったり、頑固で他人の意見に耳を貸さないというような人物が一般的と見られています。映画'Great Santini'(邦題『パパ」、1979年)で、Robert Duvall(ロバート・デュヴァル)がそういう人物を巧みに演じています。
アメリカ特有の軍隊組織に"United States National Guard"(州兵)があります。各州が暴動、災害などに対処するため独自に兵士を編成しており、平時においてはその指揮官は州知事です。国家的非常時が出来すると、合衆国大統領が臨時に州兵の指揮官となり、その期間州知事の権限は失われます。州兵には二種類あり、the Army National Guardは陸軍に対応し、the Air National Guardは空軍に対応しています。紛らわしいのですが、"National"という文字はあっても「国」とは関係なく「州」の兵隊です。フルタイムで勤務する州兵は全米で八万人ほどで、約三十万人の男女州兵は日常は別な仕事についていて、月に一度週末に訓練、年に二週間ほど野戦訓練を行ないます。9.11以後、National Guardは大統領命令でイラク戦争に派兵されています。ハリケーンKatrinaの災害救助・後始末にも活躍しました。現在のNational Guardの勤務期限は最大18ヶ月(海外では12ヶ月)となっています。州兵も軍の基地売店で無税のショッピングが出来たり、高校生子弟への学資援助、20年以上勤めると60歳以降年金が出るなどの特典があります。
(February 10, 2008)
渡米後ずっと無事故無違反だったのに、2004年の暮れ、ついに捕まってしまいました。ゴルフの帰りに郊外のスーパーで食料品を購入し、町の中心にさしかかる下り坂で、制限速度が55mphから急に45mphに落ちるところがあります。45mphは相当遅く、どの車も普段は60mphぐらいで走っている場所です。
その日、走行車線には一台の車が走っていて、私は追い越し車線を並走していました。走行車線の車に視界を遮られて、遠くの道端にパトカーが停まっているのが見えませんでした。見えた時には万事休す。「ままよ」とブレーキは踏まず、惰性で走るままにして、走行車線が空いてから停止しました。これがよかったのかどうかは不明。
結局19mphオーヴァーということでcitation(召喚状)を切られました。そのお巡りは「罰金がいくらになるかは警察署に問い合わせて貰いたい。私は知らない」とのことでした。これは真っ赤な嘘で、絶対知っていた筈です。
数日後警察に行くと、10〜19mphのオーヴァーは$87.00(約9,000円)の罰金なんだそうです!$30.00ぐらいかと思っていたら、とんでもない。それを越えると10mph毎に$10.00ずつ増えるのだそうです。「高い!」と怒鳴ったら、「ハイウェイ・パトロールはもっと高いよ」と云われました。慰めにもなりゃしない。
こちらの友人に聞くと、パトカーを見掛けてブレーキを踏んだら、「あなたはブレーキを踏んだ。速度違反を認めたということだ」とお巡りに云われたそうです。ですから、踏んでも踏まなくても同じみたいですね。しかし、$87.00と云えばゴルフ・クラブ一本買える値段です。それをどぶに捨てたようなものですから、やり切れません。ついてない年でした。
最近その現場にさしかかると、私は几帳面にスピードを落とします。そして、「パトカーはどこだ!警察は何をやっとる!ほれ、あの車を捕まえろ!何で今日は取り締まらないの!おればかり捕まえやがって、このーっ!」と叫んでいます(もちろん、胸の内で)
ところで、日本でも事情は同じでしょうが、違反をすると罰金だけでは済みません。スピード違反は三年間記録に残り、それに自由にアクセス出来る保険会社は、保険の掛け金を引き上げます。私の最低の保険(日本で云う強制保険のみ)で 半年で50ドルの違いがありました。馬鹿に出来ません。保険会社によっては(大きな保険会社)、この違反記録に知らんぷりして掛け金をディスカウントする商法で客を逃がさないようにするところもあります。
(January 20, 2008)
アメリカの弁護士の多くは"attorney at law"という肩書きを用いています。なんで、"at law"という言葉が付くのか不思議でした。"professor at math"とか"teacher at science"などとは云わず、弁護士だけに"at"が付きます。試みにUAM(University of West Alabama)で数学の教授をしていた友人Mike(アメリカ人)に聞きましたら、「実は、おれも常々"attorney AT law"という云い方は妙だと思っていた」という返事でした。生粋のアメリカ人のインテリでさえ知らなかったのです。
この件と弁護士全般について、日・米の弁護士資格を持つ柴田義人さん(坂井・三村法律事務所)にお尋ねしました。以下は柴田さんからお教え頂いたことをもとに、私の意見を加えたものです。
連邦議会や州議会などの議員は法案を提出・審議するので"lawmaker"と呼ばれる。法律を修めた議員が多いのは事実であるが、企業家や元軍人もおり、法律専門家ばかりではない。
一般に法律を扱う専門家を"lawyer"と呼ぶ。日本では裁判官・検事・弁護士は言葉の上で明確に分けられているのに対し、"lawyer"には裁判官や検事、弁護士も含まれる。
裁判に携わる弁護士には"defence attorney"(被告側弁護士:被告側につく弁護士の総称)、"criminal defence attorney"(刑事弁護士:刑事を専門にする弁護士の総称)などがある。
検事は一般的には"public prosecutor"と呼ばれる。一定区域の犯罪の捜査・公訴に当たる者は"district attorney"(地方検事)。
民間で実務をしているアメリカのlawyerは、"attorney at law"(あるいは"attorney-at-law")を肩書にしている。これは"attorney in fact"(代理人;弁護士資格は必ずしも必要ない)と対比して厳密な言い方をする場合のアメリカ英語。意訳すれば、「業務として代理人となることを法的に認められている人」ということ。日常会話では、自分の職業を単にattorneyと呼ぶ弁護士もかなり存在する。"attorney at law"は離婚や自動車事故、医療過誤、借金取り立ての代理人になったり、破産問題や企業の合併・買収なども担当する。
「弁護士資格を必要としない代理人」の例に"power of attorney"という言葉がある。民間レヴェルの場合、一家の主などが病気によって情緒不安定や思考能力欠如を来していると認められた場合、詐欺などの被害を防ぐため家族の健常者に財産の委任権が与えられ、当人は財産の処理に当たることが出来なくなる。その委任権を証明する委任状が"power of attorney"で、PoAと略されることもある。こうした家族の場合は“業務として”代理人になることを法的に認められている”わけではない。弁護士の場合は“業務”である。
なお、法律事務所などで複数の弁護士が存在する場合は、"attorneys at law"と複数になる。
'Cape Fear'という映画があります。有罪となって刑務所に入れられたことが弁護士のせいであるとして、出所後前科者が弁護士一家をいびる物語。オリジナルは1962年、そのリメイクは1991年。どちらも前科者は弁護士に"counselor"と呼びかけます。「カウンセラー」というと、生活指導や結婚生活について相談する役目の人と思っていたので、この映画の台詞にはちと違和感がありました。しかし、辞書を引くと「Counselor《米》法廷弁護士」と出ていました。前科者もちゃんと正しい英語を喋っていたのでした。
(December 20, 2007)
私の友人Mike(マイク)が「おれが日本人の友達(註:私のこと)とゴルフしたり、一緒に寿司を喰っていると云うと、驚く奴もいる。考えてみりゃ、第二次大戦では敵同士だったわけだから…」と云いました。私は「実は毎年12月8日は出来るだけ出歩かないようにしてるんだ。唾を吐きかけられたりしたくないから」と云いました。「12月7日だろ?」とMike。
私は愕然としました。《太平洋戦争開戦記念日は12月8日》と覚えていて、それは日本では正しいのですが、アメリカでは一日早い12月7日だったのです。東京とハワイは日付変更線を挟んで向かい合っているようなものですから、距離は近いけれど一日違うのです。
私はこちらに住んで12年になろうとしていますが、いつも外出を控えていたのは12月8日であって、12月7日は暢気な顔をして町を歩いていました。馬鹿ですねえ。
国が違えば時差があると考えるのが普通ですが(そうでない頓馬もいるけど)、同じ国の中で時差があると厄介です。アメリカ合衆国(カナダも同じ)には四つに縦割りにした異なる時間帯があり、東から一時間ずつ進む仕組みになっています。
ミシシッピ州(CST、中部標準時)からカリフォーニア州(PST、太平洋標準時)のどこかに飛行機で向かう場合、テキサス州Dallas(ダラス)経由ならここもCSTなので時計をいじる必要はありません。しかし、航空券がジョージア州Atlanta(アトランタ)経由だったりすると厄介です。ジョージア州はEST(東部標準時)なので、CSTより一時間進んでいますから時計を進める必要があります。アラバマ州上空に戻って来るとCSTなので、今度は一時間戻さなくてはなりません。さらに途中で MST(山岳部標準時)を横切るとさらに一時間戻し、カリフォーニア州に着いたら更にまた一時間戻すことになります。
というわけで、アメリカの東部から西部に飛行すると、座っている物理的時間は六時間なのに三時間で着くように思われ、逆の場合はやはり六時間座っていても九時間かかるように思えたりします。
機内で到着前に現地時間をアナウンスしますが、聞き取れないことがあります。「着いたら空港の時計で合わせればいいや」と思っていると、どこにも時計が見当たらない空港もあります。こういう時は暇そうな空港カウンターの係員に聞くしかありません。
乗り継ぎ空港で、次の飛行機まで一時間半の待ち時間があるとします。あなたがちゃんと時計の時差を調整してあれば、待ち時間はきっかり一時間半です。しかし、うっかり調整を忘れたとするとどうでしょう。待ち時間は実質30分かも知れません。空港の端から端まで電車に乗ったり動く歩道で移動したりする必要があれば、30分などあっという間に経ってしまいます。お店を覗いたりビールを呑んだりしている暇はないのです。乗り継ぎの便に乗り損なってしまいます。
時差がハッキリ分かるのが大晦日のTV中継です。日本は単一時間帯なので、除夜の鐘はTVの「ゆく年来る年」も御近所のお寺の鐘も一緒に鳴り出します。非常に単純至極。ところが、アメリカの場合、全国放送でニューヨークの人々がカウントダウンして「ワアーッ!Happy new year!」とか騒いでも、ミシシッピ州では元旦までにまだ一時間もあり、西海岸では三時間も先のことなので、全く白けてしまいます。
(November 20, 2007)
私は二人の青年(20歳と25歳)に日本語を教えています。何故彼らが日本語に興味を持ったかというと、彼らは'Naruto'などの日本のTVアニメのファンで、言葉が解ればもっと面白かろうと思ったのがきっかけだそうです。TVでは英語吹き替えなのですが、彼らはDVDをレンタルしたり購入したりして、オリジナルの日本語音声を聴くほど熱心なのです。
数ヶ月経った現在、彼らはアニメ鑑賞だけではなく、「実際に日本に行って働きながら生活したい」というまで意欲的になっています。就職するには丁寧な言葉遣いが必要でしょうから、私は先ず丁寧な表現を教えることにしました。で、私の日本語教室では彼らは丁寧な言葉を話すのですが、メールのやりとりとなると別なのです。TVアニメの表現を使ってみたいという誘惑が大きいのと、'Domo Arigato, Mr. Robot'などという英語の歌の影響でしょうが、彼らは"Arigatou gozaimasu."ではなく"Arigato."とだけ書いたり、"Domo"(どうも)とか、"Ja ne"(じゃあね)と書いたりします。
彼らに「日本では単に兄弟というだけでなく、年上なら“兄”、年下なら“弟”という言葉があり、儀式や宴会でも長幼や序列によって座る席が決まっている」と説明したらびっくりしていました。父親や母親、あるいは職場の上司ですらファーストネームで呼ぶ国柄では、目上とか目下の区別がつかないようです。英語にも丁寧な云い廻しはあるのですが、それらは"sir"や"ma'am"をつけるか仮定法の度合いに過ぎません。日本の言葉遣いの多様さとは異なります。彼らが日本のTVアニメから学ぶ言葉遣いは、若者同士の乱暴な会話でしかないのに、その事実に気がつかないのです。
多分、同じことは日本の英語学習者にも云えるでしょう。最近のアメリカ映画だけ観て影響されると、"y'know"だの"man"を盛大に盛り込んだ表現が生き生きとした英語だと誤解する恐れもあります。"fuckin'"や”What the hell..."を使うのが格好良いと思ってしまうかも知れません。
青年の一人が「日本語で日記を書いたのでチェックしてほしい」とメールして来ました。それは「今日、私はラーメンを食べました。今日はWalmartに行きます。果物と肉とパワーエイドを買います」というものでした。何やら日本の小学生の「今日は動物園に行きました。アイスクリームを買って食べました。キリンさんとゾウさんとシマウマさんがいました」に近いものです。それも道理、青年は私が教えた文型しか知らないので、それを応用することしか出来ないのです。単純な叙述しか出来ないので、小学生の作文と同じことになるのは止むを得ないことです。
実は私は、英会話教師だった頃のカミさんから「あなたは日本語でもそんなシンプルな話し方をするの?」と聞かれたことがあります。多分、上の青年の日記のように喋っていて、非常に子供っぽく聞こえたのではないでしょうか。それはボキャブラリの問題というより、文体の問題なんですね。
私は二人のアメリカ青年に「これは誰のリンゴですか?」、「それは私のリンゴです」、「あなたのお父さんの仕事は何ですか?」、「私のお父さんの仕事は大工です」などという問答を教えているわけですが、実際にこういう応答をすると機械翻訳されたロボットの言葉みたいに聞こえます。「私のです」、「大工です」と云うのが普通の答えでしょう。文型を学ぶのは大事だが、いつもそれに則って話すと、子供っぽく、あるいはロボットのように聞こえてしまうわけです。
では、どうやって活き活きした大人の会話を学ぶかですが、私のお勧めはRobert B. Parkerの「Spenserシリーズ」ですね。ボストンの私立探偵ですが、腕っ節が強いだけでなく教養もあり、心理学者のガールフレンドとのウィットに富んだ会話が楽しめます。黒人の相棒が凄いブロークンな英語を喋る様子も分ります。2005年の作品'School Days'では高校生の英語が活写されていました。ペーパーバックも出ています。
(October 30, 2007)
あるグロサリ・ストアでのこと。こちらのグロサリ・ストア(大規模食料品店チェーン)は日本の中程度のスーパーの大きさで、薬品、化粧品、台所用品、雑貨なども揃えています。
肉売り場を見ていると"Buy 1, Get 1 Free"というシールが貼られた牛肉パックがいくつも並んでいました。私は、以前にもこの"Buy 1, Get 1 Free"の肉を購入し、使う分以外は冷凍してかなり長く楽しめたことがあります。この日、牛肉を購入する予定はなかったのですが、一体どういうサイクルでこの"Buy 1, Get 1 Free"を行なうのか知りたいと思いました。その日は月曜でしたので、毎月曜なのか?、一週おきの月曜なのか?
丁度、若い店員が肉のパックを並べ始めたので聞いてみました。
私:"Excuse me. When do you do this Buy-1-Get-1-Free?"
店員:"It will end on Wednesday, sir."
私:"I see. But I want to know what day do you put these stickers."
店員:"We did it today."
私:"Do you do this every Monday?"
店員:"No sir. It's a sale."
私:"I know, but don't you do this every week?"
店員:"No. It's a sale."
私:"You don't have a specific day for this, then."
店員:"No."
このやりとりがとんちんかんだったのは、お互いの頭にある言葉の意味がすれ違っていたせいです。『研究社・英和中辞典』を見ると、saleの語義は、
1) 販売
2) 売れ行き
3) 特売
…となっています。普通の日本人の感覚では、やはりこの順番通りの理解ではないでしょうか?私は最初の語義「販売」にこだわり、店員は三番目の語義「特売」にこだわり続けていたのです。実は私はカミさんから聞いて"sale"に「特売」という意味もあることも知ってはいたのですが、日本語の「特別セール」のような表現に毒されていたもので、この時は"special" saleみたいな形容詞がつかないと「特売」とは理解出来ない心境だったのでした(多分、疲れていて脳味噌が柔軟でなかった)。
定期的に特売をする店はないでしょうし、毎週特売するというのも考えにくい。それをしつこく聞いてるんですから、「何なんだ、このアジア人は!」と思われたことでしょう。しかし、「特売」の意味で"sale"が使われる頻度は結構高いので、こういうすれ違いが起らないようにしないといけません。
(September 30, 2007)
"OJT"は"On-the-Job Training"の略。
私の町に住む二人の日本婦人(70ウン歳)は英語ぺらぺらです。お二人とも英語は“敵性語”と呼ばれた時代に教育を受けた方々ですから、学校で英語など教わっていません。国際結婚をなさるまでも(された後も)片言でしか喋れなかったそうです。それがいまや、ぺらぺら。学校へ通ったのか?いいえ。旦那が手取り足取りで教えてくれた?ノー。旦那さんたち(アメリカ人)は、勇ましいだけが取り柄の軍人でしたから、奥さんに教科書片手に英語を教えようなどとは考えなかったようです。奥さんたちは、仕方なく一人教科書を開いて勉強したでしょうか?否。
では、どうやってぺらぺらになったのか?伺ってみると、奇しくもお二人から同じ答えが返って来ました。お二人とも旦那の勤務時間中、アメリカのTVのソープ・オペラを見続けたのだそうです。ソープ・オペラとは、云わば日本の「昼メロ」。純愛だったり、悲恋だったり、浮気だったり、要するに三食昼寝付きの奥樣方の大好物のドラマ。お話は万国共通ですから、筋の見当は容易につきます。来る日も来る日もこれを見たそうです。で、聞き取れない単語や云い廻しをメモしておいて、帰宅した旦那に聞く。旦那は辞書をめくって当該単語を示してくれる。ただし、文法の講義などはしませんでした(したくても彼らには出来ない)。
何しろ彼女たちがアメリカにやって来たのは50年も前です。ソープ・オペラに学んだ表現も、50年も堂々と喋り続けていると磨きがかかってスピードも早くなり、多少発音に問題があろうが、時制や数が一致していなかろうが彼女たちのユニークな言語として認知されます。時制や数なんて、こちらの黒人英語、南部英語などは滅茶苦茶ですからね。それに比べれば、日本婦人たちの英語はずっと真っ当です。文法的に正しいかどうか、あるいは教養人の気の利いた話し方かどうかは別として、彼女たちは云いたいことは過不足無く伝えられ、質疑応答にも問題なく、お喋りも充分楽しんでいます。
お二人の御婦人の違いは何か?お一人は子供に恵まれなかったので上の状態のままで留まってしまいましたが、もう一人の御婦人は娘さんが出来、さらに孫娘も出来ました。彼女たちが「ママ、それはこういう風に云うんだよ」とか、「お祖母ちゃん、その発音はこう。云ってみて?」と教えてくれ、70ウン歳の今でも勉強をさせられているそうです。
蛇足ですが、この御婦人たちが見たドラマには字幕などついていませんでした。最近ならClosed Captioning(CC、聴力障害者のための字幕)などが利用出来るでしょうが。ですから耳で聞いたままを覚えたので、"credit"は「クラレ」で、"appointment"は「ポイメン」、"cereal"は「セリエ」という風になり、アメリカ人には立派に通じても、スペルの想像がつかない私などは数回聞き直さないといけないことがあります:-)。
逆に云うと、この御婦人たちは耳で聞いて覚えたのでスペルを知りません。ですから、「聞く、話す」はすごく達者ですが、「読む、書く」は非常に苦手だそうです。
(September 10, 2007)
東京の坂井・三村法律事務所にお勤めの柴田義人さんには、私のウェブサイトの法律関連記事の“相談役”(無報酬)となって頂いていますが、柴田さんからアメリカのロースクール(法律大学院)への留学と法律事務所や裁判所での研修で二年半アメリカに滞在された折りの失敗談をお寄せ頂きました。『英語の冒険』の趣旨にぴったりの内容です。お楽しみ下さい。
渡米間もないころ、Whole Foods(高級スーパー)で勘定を済ませているとき、食料を袋に詰めてくれる愛想のいいレジのお兄さんに(※アメリカでは店の値段に比例して愛想もよくなるような気がするのは私の僻み根性でしょうか…)
"Plastic or paper?"
と聞かれました。日本の某放送局(NXX)の番組で、クレジットカードのことを俗語でplasticと呼ぶ、と紹介していたのを(珍しく)覚えていた私は、
「ははん、カードで払うか、紙幣で払うか、聞いているのね」とすぐに「理解」し、
"Plastic, please."
と答え、おー自分の英語もなかなかじゃないか、などと大いに勘違いして買い物を終え、帰路につきました。
…のみならず、日本の職場に不定期で送っていた近況に、「アメリカでは、スーパーで支払方法を聞くのに"Plastic or paper?"と聞きます。Plasticというのは…」と得意げに「解説」まで送っていました。
しかし、何回か同じ店で買い物をしていると何か変です。アメリカ人の客は"Plastic”と言いながら現金で払ったり、"Paper”と言いながらカードで払ったりしているのです。
仕方ないので改めて聞いてみると、plasticというのはビニールの買い物袋のことで、paperというのは文字通り紙袋のことだというではありませんか。何のことはない、Whole Foodsでは、2種類の袋から客が選べるので、どちらにするか聞かれていただけなのです。英語では柔らかいビニール製でもplasticなんですね。
うーん。得意げに職場に送った近況報告は、直ちに訂正され、失敗談の第1号に変わりました。
それ以来、アメリカ人がクレジットカードやデビットカードをplasticと呼ぶのは聞いたことがありません。あのNXX(3チャンネル)の番組は何だったのでしょう…。(「死語」の類だったのでしょうか)
【以下は編者の蛇足】
柴田さん、ありがとうございました。我々は「プラスティック」はCDのケースなどの固いものだと思っていますが、"plastic"は一般的に「石油化学素材で、柔らかいと自由に変形出来、固まると形を保持する」ものだそうですから、全部が全部CDケースのようなものとは限らないわけです。LDCEを見ると、"Vinyl"(ヴァイヌル)は"firm bendable plastic"(しっかりした、曲げられるプラスティック)で、ある日本の辞書では「"vinyl"は専門用語」とありました。我々は日常的に専門用語で喋っているわけで、なかなか凄いですね:-)。
なお、当地の大手スーパーWalmartは、レジ係の職務遂行能力をアップさせるためビニール袋を回転台に搭載するようになり、紙袋を全廃してしまいました。その埋め合わせのように、Walmartの入り口にはビニール袋回収箱があります。リサイクルで活用するというアピールです。使用済みの皺クチャのをもう一度店で使うわけではなく、溶かして玩具とか別なものに再生させるのだと思います。私のところにはビニール袋が相当溜まっていました。溶かすのなら問題ない筈ですが「他の店の袋も回収箱に入れていいの?」と聞いてみました。入り口の案内係(兼万引き防止係)の黒人のお婆さんは「どこのでもいいわよ、どうせ捨てるんだから」と云いました。私は呆気に取られました。「リサイクルじゃなくて捨てちゃうの?」それが事実だったらWalmartはアメリカ中の非難を浴びることでしょう。リサイクルは格好だけで、実際には捨てているとしたらかなりのスキャンダルです。私はこのお婆さんを馘にしたくなかったので、新聞への投書も、マネージャーに電話で聞くこともしませんでした。お婆さんは、多分溶かしちゃうことを「捨てる」と同じことだと誤解していたのでしょう。そう思いたいです。
(August 20, 2007)
アメリカへ遊びに来られたある日本女性と話していました。私が「黒人の人口がこのまま伸び続ければ、黒人有権者の大量投票によって黒人の大統領が出る日も遠くないだろう」と云いますと、女性は「でも、黒人は大統領になれないんでしょ?」と云います。私が「いや、アメリカ生まれなら誰でも大統領候補になれます」と云うと、「でも黒人は大統領になれないって聞きました」と私の云うことをてんで受け付けません。「誰がそう云ったんです?」と聞くと、「忘れたけど、そう聞いてます」と頑固です。
彼女の頭に「黒人は大統領になれない」と植え付けたのは日本の誰かなのです。日本の誰かの言葉を信じて、こちらに十年暮らしている私の言葉を信じて貰えないので口惜しい思いをしました。私は常々「アメリカに長く暮らしていると云っても、ある小さな地域の知識しか持っていない人が多いので(私もそう)、過信してはいけない。たった数年の留学や駐在の経験者も同じ。自分が確認するまでは、眉に唾して聞くのが賢明」と書いて来ました。ま、これは主に慣習などのことですけどね。アメリカで暮らしている人の言葉すら信じてはいけないのですから、日本を一歩も出ていない人の言葉など、まるで信じちゃいけないのです。
しかし、この問題について私が正しいのは間違いありません。2008年のアメリカ大統領選には黒人のBarack Obama(バラック・オバマ、46歳)上院議員が民主党から立候補を表明しています。同じ民主党ではHillary Rodham Clinton(ヒラリー・ローダム・クリントン、60歳)上院議員の人気が高く、先ずBarack Obamaは民主党内で大統領候補として選出されないだろうと見られています。
Barack Obamaはアメリカの一般的黒人とは一寸違います。彼はアフリカのケニア出身の黒人男性とアメリカの白人女性の子供なのです。アメリカに多い黒人奴隷の末裔ではありません。そこが黒人一般の共感を得られないポイントであるとの見方もあります。
2007年7月下旬の報道によれば「米紙ワシントン・ポストとABCテレビが23日発表した合同世論調査結果によると、黒人(アフリカ系米国人)が大統領に選出されることを容認すると答えた人は86%に上った。女性大統領の容認意見はやや少ない79%だった」そうです。【2007年7月23日のasahi.comより】
二大政党の議員のほとんどは白人ですから、黒人の議員が増えない限り、黒人の大統領候補の出現は無理ですが、しかし、出現すれば黒人の有権者数の多さによって当選するのは簡単な筈です。映画'Deep Impact'『ディープ・インパクト』(1998)では俳優Morgan Freeman(モーガン・フリーマン)が一足早く黒人大統領を演じましたが、これも夢物語ではなくなるのです。
(July 30, 2007)
あるアメリカ婦人の家に約束の時間に着いたのですが、彼女は裏庭で芝刈り機を動かしています。芝刈り機の騒音は相当なもので、一寸声を掛けたぐらいでは聞こえません。また、彼女は一心不乱になって庭を行ったり来たりしていて、顔も上げません。彼女が約束の時間を覚えているなら、単に切りのいいところまで片付けようとしているのでしょう。私は、彼女の作業が一段落するのを待とうと思いました。水を飲んだりする休憩することももあるでしょうし。ところが10分経っても15分経っても、騒音は止みません。
結局、彼女の芝刈りが終ったのは30分後でした。私が姿を現すと彼女は驚きました。私との約束をすっかり忘れていたようです。彼女は何度も"I'm sorry."を繰り返しました。私は"No problem."とか"That's OK."とか云っていたのですが、彼女は"Do you accept my apology?"と聞きました。
アメリカ人は老夫婦の間でさえ"I love you."と口に出して確認し合わないといられない人たちですから、謝罪に対しても「あなたの謝罪を受け入れる」とちゃんと表明しないといけないようです。"I understand."とか"It happens."(よくあることです)とか云うだけでは、「本心ではまだ怒っているに違いない」と思われるのでしょう。
'Stranger Than Fiction'『主人公は僕だった』(2006)という映画で、国税庁の役人である主人公が過少申告した女性の店に調べに行き、彼女に一目惚れしてしまいます。その後、二人が出会った時、彼が謝ります。
男:"I think I owe you an apology."
女:"Really?"
男:"I apologize. I ogled you. Sorry."(謝ります。あなたをスケベな目で見た。申し訳ない)
女:"Okay, apology accepted."
'Tales From Q School'(by John Feinstein, Littke Brown & Company, 2007)という本に、次のような挿話がありました。Q Schoolとはゴルフのプロ・テストのためのトーナメントのことで、数ラウンドを経て上位の成績を修めないとプロになれません。そのラウンドで弟子について歩いていたコーチが、携帯電話のスイッチを消し忘れていて、突如それが鳴り出しました。自分の息子を応援するために歩いていた往年のプロがカンカンになります。"You can't have a cell phone on out here. Don't you understand what's at stake?"プロ・テストは一年に一回なので、騒音で息子がミスし、それによって彼が心理的落ち込んだりして不合格となると、彼はもう一年待たなくてはなりません。たかが電話の呼び出し音などと云っていられないのです。The coach apologized. 「おっしゃる通りです。消すのを忘れていました。私のミスです」しかし、老人は"Apology not accepted."と拒絶し、トーナメントの審判係を呼ぶという騒ぎになります。
老爺心で付け加えますと、名詞は「アポロジィ」で、動詞は「アポロジャイズ」です。間違えないようにしましょう。私の場合、頭の中で考えないと間違えやすい:-)。
(June 30, 2007)
「レストランのチップ」については『英語の冒険』正篇の【食事】を御覧下さい。ここではガイドブックなどにもあまり出て来ないものを取り上げます。金額は以下の本に書かれた基準ですが、アメリカ人が大都市で払う相場と云っていいでしょう。田舎ではやや少な目の相場になると思います。
'What Not to Do in Polite Company!'
by Linda J. Beam (Sweetwater Press, 2005, $7.95)
《空港》
・電気自動車に乗せて貰った場合、一人につき$2.00〜$3.00を運転手に。
・ポーターあるいはskycap(赤帽):バッグ一個につき$2.00(重いバッグには金額を増やす)。道路脇のチェックインにはさらに$2.00上乗せする。出発間際に駆け込んで来たのにちゃんと乗れるよう手配してくれたら$5.00〜$20.00追加して上げる。
・車椅子の介助員:短い距離なら$5.00、長ければ$10.00〜$20.00。バッグを手伝ってくれたら一個につき$1.00〜$2.00。
《ホテル》
・Bellman(ベルマン):部屋に荷物を届けてくれた時に一個につき$1.00〜$2.00。
・Concierge(コンシェルジュ):入手困難な切符や予約を取ってくれたら$5.00〜$10.00。
・Doorman(ドアマン):タクシーを呼び入れてくれたら$1.00〜$2.00。バッグを運ぶのを助けてくれたら、さらに$0.50〜$1.00。部屋まで荷物を運んでくれたら一個につき$1.00〜$2.00。
・Housekeeper service(ルームメイド):一日につき$1.00〜$2.00を枕の「上」に置く。
・Room service(ルーム・サーヴィス):請求額合計の10〜20%。もしサーヴィス料が含まれていれば不要だが、$1.00上げてもよい。
《床屋、美容院、温泉》
・床屋:$2.00〜$3.00。
・ヘア・スタイリスト:料金の10〜20%。
・マニキュア、美顔術:料金の15%。
・マッサージ:医院のマッサージは不要。そうでない場合は10〜15%。
・サロン、温泉:料金の10〜20%。
《配達》
・花:普通のサイズで$2.00〜$5.00、大きければ$5.00〜$10.00。
・ピザ:料金の15%(最低$2.00)。
《レストラン、バーなど》
・バーテンダー:15〜20%、あるいはドリンク一杯につき$1.00。
・コート預かり:$1.00。
・コーヒー・ショップ:請求額の10%。
・客席を巡り歩くミュージシャン:リクエストにつき$2.00〜$3.00。あなたの傍で演奏してくれたらもっと弾む。
・請求書を分けて貰う場合:それぞれの請求額の18%。
上の本にはタクシーのチップが無いので付け加えておきます。『地球の歩き方 旅のチップガイド』より。
《タクシー》
最低50セント、料金が$3.00〜$6.00の場合70セント〜$1.00、それ以上は15%。
(May 30, 2007)
私のアパートのマネージャーは77歳のお婆さんです。もう20年もこのアパートの管理を任されています。彼女と英語に関する話をしていたら、色んな話が飛び出しました。
このアパートは低所得者用で、黒人も結構います。マネージャーがある黒人女性に入居申込書を書かせた時のこと。
"National origin"という欄にこの女性は"Baptist"と書いたそうです。ここはCaucasian(白人)、African-American(黒人)、Asian(アジア人)などと書くことを想定されている欄ですが、何故か彼女はキリスト教の宗派名を記入したわけです。
書類には"Sex"という欄があり、ここにはmale(男性)、female(女性)と記入すべきところですが、同じ女性は"Two times weekly"と書いたそうです。
私は『英語の冒険』正篇の【その他】の「Sexの英語」という記事で、似たようなことを書きました。それはある日本の英語本に載っていた日本人女性の外国旅行を題材にした冗談っぽい話でしたが、何とここでは実話だったわけです。マネージャーは当人を前にして笑い転げてしまったとか。"Two times weekly"は"Twice a week"の方が正しい英語ですが、マネージャーは黒人女性が記入した表現を正確に覚えていました。よほど印象に残る出来事だったのでしょう。
別の黒人女性は、マネージャーが「部屋の又貸しは許されません」と云った時の"sublet"(又貸し)という意味が分らなかったそうです。
また別の黒人女性は「緊急の場合の連絡先」という意味が分らず、マネージャーが「今は誰と住んでるの?」と聞くと「姉」という答えなので、「じゃ、姉さんの名前と電話番号を書きなさい」と云うと、「でも姉はここへは越して来ない」とちんぷんかんぷんだったそうです。
黒人・白人の別なくよく見られる傾向として、"February"(二月)を"Feburery"と書く人が多いそうです。
どうです?自信が湧いて来ませんか?
(May 10, 2007)
2007年に入って、2ベッドルームのアパートの家賃が$5.00値上げされて$345.00になりました。家賃の支払いは小切手です。私は小切手に40〜49の金額を書く時はいつも苦い思いを味わいます。
NHK東京の制作技術部撮影班にいた頃、私はあるコンピュータ・ソフトを作成しました。海外取材につきものの、税関用機材リストを簡単にプリントするものです。年配の、キーボードに慣れていない先輩たちが、一本指でポツンポツンとタイプライターを打つ姿を見兼ねたからです。そのリストには機材の単価と合計価格を英語で書かねばなりません。
私のプログラムは正確なスペルの機材名を表示し、カメラマンは機材のシリアル・ナンバーだけタイプすればいいようになっていました。インプットを終えるとプログラムが単価を自動的に合計し、しかもその合計が1,760,200円であれば"One Million Seven Hundred Sixty Thousand and Two Hundred Yen"と横文字に翻訳してプリントするという、至れり尽くせりの機能です。これはカメラマン諸氏から感謝され、部内の賞も頂きました。
その後、私は福岡に転勤したのですが、ある日件のプログラムを点検していて、飛んでもない間違いを発見しました。数字が40になると、私のプログラムは"Fourty"と翻訳していたのです。正しくは"Forty"でなくてはならないのに。脂汗が滲む思いでした。早速、修正したヴァージョンを東京に送りました。
四年後に東京に戻ってみると、いつの間にか私のソフトは技術部の誰かによって改良され、私のものよりもっと便利になっていました。その作成者も表彰されたそうです。しかし、他の部分はともかく、数字を英語に変換するプログラムは私のオリジナルを盗用したものでした。40→Fourtyの翻訳ミスがそのままだったからです。この改作者が一言私に挨拶にくれば間違いを教えて上げたでしょうが、向こうが知らんぷりなので私も知らんぷりで通しました。NHKのカメラマンたちは、いまだにFourtyとプリントされた書類を携えて世界中を飛び回っているのでしょうか?
ところで、私のアパートのマネジャーに「小切手にfourtyと書く人がどれだけいるか、数えてみてほしい」と頼みました。小切手で支払う人は住人の半数の20数軒だそうですが、その中の三人が間違えていたそうです。うち一人はアジア人で、二人がアメリカ人とのことでした。
私の日本人の知り合いから教わったことですが、もう一つ間違いやすい数字があるそうです。それは「9番目」を表す"ninth"で、「つい"nineth"と書いてしまいそうになるので注意」ということでした。
(March 30, 2007)
「知ったかぶり」という記事(「文法・表現」)は私のお粗末でしたが、こちらはそのアメリカ人版。
日本にも「真里」とか「純」、「薫」など男女両方につけられている名前があります。私は実際に「真里」という男性と同じ職場にいたことがあります。
英米でも同様で、"Stacey"とか"Fran"、"Jacky"、"Pat"その他、男女両用のニックネームが沢山あり、名前を聞いただけでは男か女か分りません。こちらの企業で働いていた時、「この人に会え」と云われて、「この人は女性ですか、男性ですか?」と尋ねました。すると、有名大学卒の50代のアメリカ人実業家が「覚えておきなさい。語尾が"ie"で終る名前は必ず女性なんだ」と断言しました。
上のようなアメリカ人が日本で同じことを喋ったら、学生も社会人もみなノートに「"ie"で終る名前は女性」と書き留めることでしょう。「いいことを教わった」とほくほくしながら。アメリカに生まれ育って、有名大学を出て、中小企業ながらトップに立っている人物が云う言葉ですからね。信用しない方がどうかしています。
しかし、彼は間違っていたのです。私は現実にその当時"Eddie"という名前("Edward"のニックネーム)の男性と知り合いでしたし、William(男性名)のニックネームも"Willie"ですし、男性名"James"のニックネームは"Jimmy"とも"Jimmie"とも綴るのです。有名な黒人男優にJamie Foxxという人もいますね。女性にも"ie"と"y"の両方の綴りが存在するニックネームは枚挙にいとまがありません。
常に眉に唾して聞く(読む)必要があります。生まれ育って50年の人物もいい加減なことを云うのです。留学だの駐在だのでアメリカに数年いたような人の知識も怪しいものです。もちろん、私の書いているものも100%鵜呑みにしてはいけません。私はアメリカに十年住んでいますが、踏破した州も数えるほどですし、現地人と触れ合う世界も狭いので、私の経験など限られたものです。アメリカ全体の話としては通用しないことを書いている恐れもあります。信じるべきなのは他人の言葉ではなく、御自分の体験だけにすべきです。
では、私が書いていることは何なのか?信じちゃいけないんなら読むだけ時間の無駄ではないか?えっと、私が書いているのは『ガイドブック』の記事に近いと思って下さい。『ガイドブック』に「このレストランの料理は素晴らしい」と書いてあっても、御自分で食べて見るまでそれが本当かどうかは分らないでしょう。「あそこのレストランの料理は素晴らしいらしい」とは云えても、誰かに「あそこのレストランの料理は素晴らしい」と伝えると嘘になります。あくまでも御自分の舌を尺度にすべきです。
無闇に人を信じてはいけません。
(February 28, 2007)
「留学、予想と現状」を寄稿して頂いた山口佳代子さんに、なぜ南部を選んだのかについて説明して頂きました。留学生予備軍とその御両親に是非お読み頂きたい内容です。
私がアメリカ南部を選んだ第一の理由は、生活費や学費の全てを含んだ金額が、他のどの州と比べても一番安かったからです。私は今Perkinstonという小さな町の短大(MGCCC=Mississippi Gulf Coast Community College)で幼児教育と一般教養を学んでいます。Out-of-State Fee(州外者課金)を含めた学費が1セメスターで$1,600で、その他寮費、食費、本代を含め、合計が$3,200程度というとても有難い金額です。ちなみに成績によっては奨学金が$800出て(Honors Class)更に安くなります。支払いも三回に分けてできるため、一度に大金を振り込まなくていいのが良いところです。
【編者註】Out-of-State Fee(州外者課金)について: 大学側は「州内の子弟の親たちは州税を納めており、大学の維持に貢献しているが、州外からの子弟はそうではない。よってOut-of-State Feeを徴収する」と説明します。実際のところは、州内の子弟を州外に逃がさないための高い塀として、各校がOut-of-State Feeを設けていると云えそうです。「そっちの水は苦いぞ、こっちの水は甘いぞ」です。国外からの留学生はどの州とも関係ないわけですが、州外からの生徒と同様にみなされているわけです。
ちなみに同じ地域にあるUniversity of Southern Mississippi(USM)は、授業料のみで一年間で100万円近くかかりますが、私の通っている短大で一定の成績をキープして編入すると、Out-of-State Feeを払わなくて良いという特権もあり、それが理由で短大で一般教養のクラスを取っている留学生も多いです。(ちなみにUSMのOut of State Feeは1セメスターで20万円程かかるようで、Out-of-State Feeが省けるという事は留学生にとっては大きな恩恵です)
私は今は寮に滞在していますが、USMに通う日本人の殆どはアパートに住んでいます。Hattiesburg(ハティスバーグ)市は大学都市なので、他の町と比べると家賃は少し高めらしいですが、それでも、ミシシッピという土地柄、みんな安いアパートを見つけています。他の州の大都市に住んだことのある日本人は皆さん目を丸くして”安い”と言っていました。何年も続く留学生活(早く終わらせて仕事を始めたいのが本心ですが…)なので、お金がどれ位かかるかという問題はとても重要です。まして周りにいるアメリカ人(皆が皆そうではないのですが)が学生ローンを組んで学校に行き、バイトをしながら生活費を賄い、とても自立していると感じるので、私のようにまだ親のスネをかじっているのが、少し恥ずかしく思えています。
金銭以外の理由としては、日本人の少なさもあります。留学前に、経験者から「大都市で勉強するのは刺激があって楽しいが、日本人がたくさんいるので、どうしても日本人同士でつるみがち。英語はおろか、アメリカの文化さえ学ぶ機会を逃す」という話を聞きました。留学先を探していく際、ミシシッピはとても田舎なので、あまり日本人はいないと知ってここに来ることを決心しました。もちろん、日本人はどこへ行ってもいますが、やはり他の州に比べると、ミシシッピ州はかなり少ない様です。
"Southern hospitality"(サザン・ホスピタリティー=南部の歓待)という言葉がある様に、「南部の人はとてもフレンドリーだ」という話も留学前に聞きました。ミシシッピの愛称が"Hospitality state"であるように、確かに人々はあたたかく、おおらかだと思います。私も留学当初はアメリカ人がしてくれた事一つ一つに感激していました。私自身は他州で暮らした経験がないので比較はできませんが、南部の人間性のあたたかさは多くの留学生が感じ取れることだと思います。その反面、不愉快な経験からか、アメリカ南部を毛嫌いしている留学生も少なくはありません。南部には多様化に慣れていない人が多いので、店先やレストランなどで、不快な経験をした人も少なくないようです。
他の留学生がミシシッピを選んだ動機について触れると、南部音楽(ブルースやジャズ)に興味がある、William Faulkner(ウィリアム・フォークナー)由来の地だからなどがあります。
(January 30, 2007)
日本のある御婦人から2007年の干支である猪の紙人形が送られて来ました。親子の猪で、茶色い身体に黒い目鼻、毛、蹄(ひづめ)、そして白い牙。
それをカミさんに見せたら、「今年は豚の年なの?」と云いました。「豚じゃないよ。Wild boar(猪)だよ。ほら、fang(牙)があるだろ?」と私が云うと、「それはfangじゃなくて、"tusk"だ」と指摘しました。豚の間違いを牙の間違いにすり替えて、ちゃらにしたかったようです。
犬や狼など垂直に生えている牙は"fang"で、象や猪などの水平に生えている牙は"tusk"なんだそうです。象や猪に垂直の牙が生えていても、あまり恐くありません。やはり槍のように横に突き出されていないと格好がつきませんね。
(January 30, 2007)
アメリカ南部の小さな町のカレッジに留学されている山口佳代子さんに、留学前と留学中の御経験について寄稿して頂きました。留学予備軍とその御両親の皆さんに是非お読み頂きたい内容です。
・英語学習について
私が留学を決心したのは高校3年の6月でした。高校入学後、目標も立てず、全く勉強しなくなってしまった私は、英語でさえもひどい点数を取っていました。高校3年、受験生でありながら英検準2級の試験を受けることから始めました。次の年の1月にはTOEFLで目標とする点数を取ることと、英検準1級に合格することを目標にして、まずはちんぷんかんぷんである文法から始めました。当時学校で使っていた英文法の参考書、単語帳を何度も読み返し、暗記しました。ただの受験勉強のように思えますが、私にとってはこれが今の英語力の基礎になっていると信じています。初めに文法のルールを解っていると、その後の勉強がスムーズに頭に入りました。英会話本の会話例を何度も暗記しようとしましたが、やはり、文法の知識が乏しいと、いつまで経っても覚えることができなかったり、うろ覚えのままになってしまいます。ちょうどクラスでも受験英語をやっている最中だったので、授業で新しく学んだ単語は一生懸命覚えました。
「受験英語、学校で学ぶ英語は役に立たない」という意見も耳にしますが、単語、文法学習については、私はとても役に立っていると思います。アメリカに来て周りの環境によって英語を学ぶことは理想のように思えますが、間違って覚えてしまうこともあり得ます。特に私のように南部で勉強していると、土地の訛りや間違った文法(三人称単数や過去分詞を無視した文法)を覚えてしまうことがあるかも知れません。
TOEFL対策に使った、トフルゼミナールという会社が出版している『TOEFLテスト完全英文法』はとても詳しく、前置詞を初めとする、私たち日本人が苦手とする事を細かく例を挙げて説明していてとても役に立つ参考書です。今でも、ペーパー(エッセイやリポートなどの宿題)を書く際、疑問に思うことがあるとこの本を開いています。
私は英文法・英単語の学習と平行して、英会話も始めました。ちょうど家の近くに授業料も手頃で人気がある教室を見つけたので、週に2、3回は通っていました。英会話のバックグラウンドがゼロに等しかった私でしたが、そこで基本的な言い回しなどを学びました。そこの教室で一番学べたことは度胸です。恥ずかしいと思ったらいつまでも恥ずかしいままで、会話さえ成り立たず、自分が腹立たしく思えてしまうだけでした。ですが、下手な英語を一生懸命、身振り手振りで説明していくうちに、度胸というものを学んで行きました。
洋楽、洋画、バイリンガル・ラジオ、英会話番組なども勉強の手段にしました。特に洋楽が大好きだった私は歌詞を覚えたり、発音を注意して聞いたり、言い回しを覚えたりと楽しんで勉強できました。最近のロックバンドなどは、スラングなどをふんだんに使っているので、洋楽から学んだ単語や言い回しは数知れません。
アメリカに来てからは毎日が勉強でした。英会話も10ヶ月通い、自分が設定した目標もクリアして自信を持ってアメリカに来た私ですが、初めは周りが何を言っているのか殆ど解りませんでした。一対一だと、ゆっくりゆっくり、何度も繰り返し簡単な単語を選んで話してくれましたが、アメリカ人同士の会話を理解することなどまるでダメ、単語さえ聞き取れませんでした。
今でも毎日が勉強です。アメリカに長くいるだけで英語が上達するわけではないと思うので、努力を怠ることは出来ません。最近は発音を気にしたり、可算、付加算名詞、前置詞などをマスターする事を目標にしています。自分の英語の上達を実感できる事は次への自信につながりますが、すぐに次の壁にぶつかり、落ち込んでしまう、という繰り返しの中で英語を学んでます。
・アメリカでの生活
アメリカに来る前の私は、この国について全く無知でした。アメリカ人という人種に対して、たくさんのステレオタイプ(決めつけるような定型化した考え方)を抱いていました。でもこっちに来て、アメリカ人と肩を並べて同じクラスで勉強していく間に、そのステレオタイプは間違ったものだと認識しました。明るくて、陽気なアメリカ人もいれば、おとなしくて、無口なアメリカ人もいます。いつもラップを聴きながら、わいわい騒ぐのが好きな白人もいれば、静かに読書を好む黒人もいます。自分勝手な人もいれば、他人を思いやり、尊重する人もいます。アメリカ人は日本人と同じ、色んな性格の人がいて、人それぞれ、という事を学びました。様々な国からやってきた留学生と交流していても同じことを学びました。肌、髪、目の色は違っても肌の下は全く同じ人間だと分りました。
アメリカ人が日本人(アジア人)に対して抱いているステレオタイプには時々驚かされます。私はミシッシッピ以外の州に滞在したことがないので、一概には言えませんが、私の周りにはアジアが一つの国と思っている人が山ほどいます。中国人に間違えられたり、ベトナム系に間違えられたり、日本とわかっても、“あなた達みんな眼鏡をかけているんでしょう?”といった質問さえ浴びせられます。これは悲しい現実ですが、私が説明するプロセスで、少しでもアジア、日本に対して興味を抱いてくれたら…と思っています。ですが、最近は日本の文化、アニメや料理、ファッションなどに興味を示し、日本語を学んでいる人も割りと多くいます。難しいと言われている日本語を彼らが一生懸命学ぶ姿勢を目にすると、私も頑張らなければ、と思わざるを得ません。
アメリカに来てたくさんの人に出会い、たくさんの事を学んでいます。困っていた時に助けてくれる親切な人達(アメリカ人だけではなく、日本人や他の国から来た留学生など)に出会う度に、感謝の気持ちで一杯になります。ですが、アメリカで出会った全ての人がフレンドリーで優しいという訳ではないので、そういう人達に傷つけられ、落ち込んだりする事もよくあります。こういう状況の中で英語を駆使しながら生活して行くのは、一見大変な事と思えますが、経験すればするごとに自分に対しての自信も沸いてきます。これから少なくともあと数年は続くであろうアメリカでの留学生活ですが、英語だけではなく意味あることもたくさん学んで行きたいと思っています。
【参考】http://mytown.asahi.com/usa/newslist.php?d_id=4900024「留学のススメ」、「留学生のため息」
「南部での留学」も山口佳代子さんの寄稿によるものです。経済問題や留学先選定に関する情報が盛り込まれています。どうぞ、続けてお読み下さい。
(November 10, 2006)
あるアメリカ駐在員の方から次のようなメールを頂きました。
>アメリカのインディアナ州Columbus(コロンバス)に住んでいます。ここはアメリカの
>中西部に位置し、日系企業が数多くあります」
私はその「中西部」という表現にびっくりました。「インディアナ州Columbus【地図Aの赤丸】が中西部?」アメリカ中西部という言葉で私が直感的に思い浮かべるのはオクラホマ州(黄色に塗ったところ)あたりです。インディアナ州の公式サイトを見てみると、確かに「アメリカの中西部に位置し…」と書いてありました。混乱した私は色々調べてみました。
Wikipediaですと、ミネソタ州、アイオワ州、ウィスコンシン州、イリノイ州、インディアナ州、ミシガン州、オハイオ州などが"Midwest"(中西部)になるようです【地図Aの緑色で囲った地域】。しかし、御覧のようにそれらの州はアメリカの中西部などという位置ではなく、“北東部”と云うのが正しいように思えます。この謎の答えもWikipediaにありました。
1803年、アメリカ合衆国はフランスから仏領ルイジアナを買収しました。これは有名な事実なので私も知っていました。しかし、知らなかったのはその広さ、大きさ、位置です。現在のルイジアナ州なのかと思っていたらとんでもない、地図Bの赤い領域全部なのです。アメリカのど真ん中。ということは、1803年以前、首都Washington, D.C.あたりから見るとイリノイ州、ウィスコンシン州が西端だったわけです。それでこの地域が"Midwest"(中西部)と呼ばれたわけです。北海道が開拓される以前、東北地方が「陸奥」(陸の果て)と呼ばれていたのに通じると思います。
Wikipediaは「"Midwest"という呼称はもはや古語である。この地域は中部でも西部でもない」と書いています。ミシガン州Detroitに代表されるこの地域は自動車産業が集まっており、日系企業も数え切れないほど存在します。その人々がみな「ここはアメリカの中西部に位置し…」と書いて日本の人々を混乱させているとすると、ちとまずいのではないかという思いがします。
(November 10, 2006)
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