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公開:1929
監督:Harry A. Pollard
地域:ミシシッピ川流域およびイリノイ州シカゴ
出演:Laura La Plante、Joseph Schildkraut、Emily Fitzroy、Otis Harlanほか
範疇:原作もの/ドラマ/ロマンス
私の評価 :☆
【Part 1】
'Show Boat'『ショウ・ボート』はOscar Hammerstein II(オスカー・ハマースタイン二世)の台本・作詞、Jerome Kern(ジェローム・カーン)作曲のブロードウェイ・ミュージカルですが、この1929年版はサイレント映画として撮影され、公開前に台詞と唄の一部が付け加えられました。これで分るように、このヴァージョンはミュージカル映画と云えるものではありません。後年、この物語は1936年に白黒版で、1951年にカラーで映画化されています。
私はCATVのTrner Classic Movies(TCM)で放映されたものを観たのですが、先ずお断りの字幕が出ます。「いくつかのトーキーの音声が失われているため、TCMが独自に字幕を補った」そうです。実際に観てみると、無声映画(字幕)の部分が大半でトーキー部分はあまり多くありません。舞台の場面や歌や踊りの場面はトーキーだったようですが、その音声の多くは失われていて口をパクパクするだけです。
「そんな映画観たってしようがないじゃないか」と云われるかも知れませんが、1936年版、1951年版を観た以上、“大全集”の編纂者としては観なくては納まりません。そして、このヴァージョンにもそれなりに見応えのある部分はありました。
画面に"Overture"(序曲)と出て、ブロードウェイ・ミュージカルのオリジナル・メンバーの歌と踊りが始まったようですが、ここは映像が失われてしまったらしく音質も悪いので、何やら蓄音機の音を聞いているような具合。かの有名な'Ol' Man River'も聞かれますが、単なるオーケストラの演奏に過ぎません。
やっと映像が出て、ゆったりと流れるミシシッピ川、そして蒸気船などが映る。そしてこの映画の主な舞台となるショウ・ボート'Cotton Palace'(綿の殿堂)の登場。大勢の観客を容れて芝居を見せる船なので、かなり巨大。その最上層の舳先に彫像のように立っている長身の婦人がいる。これは後で映画の主人公の母親(座長夫人)と分るが、この時は「何だろう?」と観客を惑わせるだけ。'Cotton Palace'はもう一艘の中型の船を引っ張っている。多分、これが役者や楽団員、乗組員の寝る場所らしい。【リメイクの映画にはこの二艘目は出て来ませんでしたが、こちらの方がリアルに生活臭が出ていていいと思いました】
ある港町に近づき、甲板では蒸気を使った楽器が奏でられ、座長の幼い娘Magnolia(マグノリア)は飛んだり跳ねたり大喜び。専属の楽団が町へ宣伝に繰り出すと、Magnoliaも踊りながらついて行く。仮面をかぶったような馬面の座長夫人Emily Fitzroy(エミリィ・フィッツロイ)が娘を叱るが、娘は気にしない。
夜、町の白人も黒人も列をなして芝居を観に来る。場内は大入り満員の盛況。純朴な観客たちは涙を流し、芝居と事実を混同して舞台の悪漢に向かって発砲する者まで出る始末。幼いMagnoliaも客席最後方で観ているが、舞台に先行して台詞を大声で口走ったりして母親からお尻をぶたれる。この母親は冷血極まりなく、Magnoliaが懐(なつ)いている主演女優Julie(ジュリー)に嫉妬し、彼女を解雇してしまう。【リメイクでは、このJulieは黒人との混血でありながら白人と結婚(当時のミシシッピ州法では違法婚姻)していると分ったため船を下りる設定になっていました。この1929年版では人種問題は映画には相応しくないテーマだということで無視されています】
十数年後。Laura La Plante(ローラ・ラプラント)演ずるMagnoliaは美しく成長し、一座の花形女優となっている。座長夫人は娘にちょっかいを出した男優を馘にする。座長は慌てるが、夫人はぬかりなく後任の男優を呼び寄せてあった。Joseph Schildkraut(ジョゼフ・シルドクラウト)演ずるGaylord(ゲイロード)は、実はギャンブラーなのだが凄い二枚目の紳士。彼は馬面で高飛車の座長夫人に恐れをなして雇われるのをやめようとするが、美しいMagnoliaを見て思いとどまる。MagnoliaもGaylordに一目惚れ。
座長夫人監視のもとでお芝居の稽古をする。お芝居として二人がキスしようとすると、「本番までお預けよ」と制止されてしまう。いよいよ舞台の幕が開く。音がこもっていてよく聞き取れないが、とにかくGaylordもまずまずの出来で観客の声援を浴びる。二人は芝居にかこつけ、舞台上で何度も何度もキスしあう。少なくとも十回はキスし、舞台の袖では座長夫人がカンカンになって怒る。当然、舞台が終わるとGaylordは馘になり、Magnoliaを連れてボートで夜逃げする。
フィルムが欠けているのか、いつの間にか二人はショウ・ボートに戻って結婚したようで、以前同様舞台を務めている。座長夫人とGaylordは年がら年中口喧嘩をしていて、Magnoliaは間でおろおろする。
嵐。大波で座長が川で溺れてしまう。丁度その日、Magnoliaは娘を生んだ。
Magnoliaの娘が少女になった頃、ついに母親はGaylordとの口論に飽きて娘および孫娘を手放すことにし、多額の小切手を与える。Gaylord親子三人は一座を離れてシカゴに赴き、贅沢三昧の暮らしを始める。もともと賭博師のGaylordはギャンブルにうつつを抜かす。ルーレットの上に二重焼きされた小切手がじりじりと燃え尽きて行く…。
憎まれ役の座長夫人は、一寸見女形に思える風貌・体型ですが、ちゃんとした女優です。イギリス生まれで、アメリカで映画俳優となり、約100本の映画に出演しました。1929年版を考える時、今後必ず彼女の白塗り・馬面を思い浮かべることでしょう。彼女の尻に敷かれている旦那は、無声喜劇役者のコメディ・リリーフ演技で悪くないのですが、あまり活躍せずに溺死してしまいます。Gaylord役の男優はちと軽過ぎますが、ドサ回りの役者には似合いでしょう。Magnolia役の女優は美しいとは云いかねますが、最近主演を張っている(私に云わせればブスの)Kirsten Dunst(カーステン・ダンスト)よりはずっといいです:-)。後半で歌手として成功することになるのですが、音声が無いのでその実力のほどは説得力がありません(いずれにしても吹き替えだそうですが)。
撮影は頑張っていて、ミシシッピ川の風情とか嵐のシーンの特撮などもよく撮れています。馬車の移動撮影、レールかクレーンを使ったようなショットもあります。
現在、日本でこの映画を観られる機会は先ず無いでしょうから、躊躇わずにPart 2の後半のあらすじもお読み下さい。
(January 20, 2006)
【参考】
・ショウ・ボート (1936)
・ショウ・ボート (1951)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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