公開：1936
監督：James Whale
地域：ミシシッピ州
出演：Irene Dunne、Allan Jones、Charles Winninger、Paul Robeson、Hattie McDanielほか
範疇：原作もの／ドラマ／ミュージカル／ロマンス

私の評価 ：☆

【Part 1】

'Show Boat'はOscar Hammerstein II（オスカー・ハマースタイン二世）の台本、作詞、Jerome Kern（ジェローム・カーン）作曲のブロードウェイ・ミュージカルで、1929年の映画化が第一作でした。これはサイレント映画として撮影されたのですが、公開前に台詞と唄のある部分が加えられたそうです。そのリメークがこの1936年の白黒版で、1951年にカラーで三回目の映画化がされています。1951年版については既に紹介済みです。

この1936年版はかなりブロードウェイ上演の台本に近いことと、Paul Robeson（ポール・ロブスン）による名唱の'Ol' Man River'が聴けることで熱狂的なファンが存在します。

ミシシッピ州Natchez（ナッチェス）。ミシシッピ川沿いの町を興業しながら往復するショウ・ボートがやって来る。大人も子供も馬も豚も、みな駆け出してショウ・ボートを目指す。

お披露目のパレードの最中に、早くも不吉な展開が予告される。一座のスターであり主演男優の妻でもあるHelen Morgan（ヘレン・モーガン）に横恋慕する船員がいて、一悶着起したのだ。

座長の娘のIrene Dunne（アイリーン・ダン）はショウ・ボートの横を通りかかった二枚目のギャンブラーAllan Jones（アラン・ジョーンズ）に出会い、彼の甘い言葉に上気する。

先ほどの船員は自分の恋が叶わぬと知ると、腹いせにシェリフのところへ駆け込み、Helen Morganには黒人の血が混じっていて、当時ミシシッピ州で禁じられていた黒人と白人の結婚であると告げ口する。残念ながらそれは事実だったため、Helen Morganと夫は船を下りて去って行く。

花形二人を失った一座は、苦し紛れに座長の娘Irene Dunneと、彼女に会いに来たギャンブラーAllan Jonesで穴を埋めることにする。二人の芝居が観客に受けるが、それは台本以前に二人が恋仲だったからである。二人は結婚し、やがて娘が誕生する。

Allan Jonesは愛する妻に都会を見せたいと、家族三人でシカゴに向う。お金のあるうちは豪勢な暮らしを楽しめたが、Allan Jonesのツキが落ちると同時に貧しい生活に転落する。Allan Jonesは妻と娘に別れを告げ、姿を消す…。

まあ、ここまではほとんど1951年版と同じです。前半で違うのは、黒人のPaul Robesonと彼のガールフレンドの炊事婦Hattie McDaniel（ハティ・マクダニエル）が登場する場面が多いことぐらい。大幅に異なるのは後半のストーリィで、それについてはPart 2に譲ります。

Paul Robesonは大学で法律を学んだそうですが、この映画がヒットして彼の'Ol' Man River'が有名になり、世界中を公演したり他のミュージカルの仕事が殺到するなどして、ついに弁護士として法廷に立つには至らなかったそうです。確かに、彼の素晴らしい声と飾らない演技は素晴らしく、彼だけを目当てにこの映画のヴィデオを購入する人が多いというのも頷けます。この映画では、わざわざ彼を引き立てるため、ブロードウェイ版には無かった唄も追加したそうです。

黒人炊事婦Hattie McDanielは、この映画の後'Gone with the Wind'『風と共に去りぬ』(1939)の召使い役を演じ、アカデミー助演女優賞を獲得しました。ここではPaul Robesonと掛け合いの歌も披露します。この黒人二人が歌う台所には'Aunt Jemima's Pancake Mix'（ジェマイマ小母さんのホットケーキ・ミックス）の箱が見えます。この"Aunt Jemima"はブロードウェイでHattie McDanielの役を演じた黒人女優だそうです。実はそのホットケーキ・ミックスやシロップは現在でもベストセラーで、私も何度もホットケーキを焼きました。そんな謂れがあるとは知りませんでしたが、云ってみればPaul Newman（ポール・ニューマン）ブランドのサラダ・ドレッシングの先駆者だったわけですね。

(February 26, 2002)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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