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The Skeleton Key

『スケルトン・キー』


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:2005
監督:Iain Softley
地域:ルイジアナ州
出演:Kate Hudson、Gena Rowlands、John Hurt、Peter Sarsgaard、Joy Bryant、Maxine Barnettほか
範疇:女性もの/ホスピス・ケア/古い家の秘密/ミステリ/Hoodoo術師/ホラー

私の評価 :☆

【Part 1】

この映画は"Southern Gothic"(南部ゴシック)の一本として、英語版Wikipediaの"Southern Gothic"という項の「映画作品」代表作の13本に含まれています。詳しくは'The Night of the Hunter'『狩人の夜』の項を御覧下さい。

ニューオーリンズに住むKate Hudson(ケイト・ハドスン)は市内のホスピス(看護収容施設)で働く看護師だったが、患者の人間性を無視したビジネス・ライクな経営に不満を抱いていた。彼女は新聞広告で、郊外の家族が在宅ホスピスとして住み込みの看護師を好待遇で求めていることを知り、面接を受けに行く。

その家は昔の金満家の豪壮な邸宅(二階建てで屋根裏部屋付き)だった。老婦人Gena Rowlands(ジーナ・ローランズ)とその夫John Hurt(ジョン・ハート)が住んでおり、介護の対象は脳卒中のため全身麻痺で口も利けなくなった夫の方だった。生粋の南部婦人Gena Rowlandsは北部育ちのKate Hudsonを毛嫌いするが、少壮弁護士のPeter Sarsgaard(ピーター・サースガード)が取りなす。

老婦人の冷たい態度にも関わらず、Kate Hudsonは雇われる決意をする。彼女は唯一人の肉親だった父親と不仲のまま彼を亡くして後悔していたため、老人John Hurtのような患者を大事にしたかったのだ。Kate HudsonがJohn Hurtに挨拶に行くと、全身麻痺の筈の彼が痛いほどギュッと手を握りKate Hudsonを脅かす。Gena Rowlandsは屋敷内のどの部屋のドアも開けられるというスケルトン・キイ(マスター・キイ)の一つを渡してくれる。二人がこの家を買ったのは1962年。元の家主は幼い兄妹だった。Kate Hudsonはその兄妹の後ろに、黒人の男女の召使いが立っている写真を見つける。

ある日、Gena Rowlandsに頼まれ、Kate Hudsonは物置となっている屋根裏部屋へ物を取りに行く。その奥にスケルトン・キイを使っても開かない部屋がある事に気づく。「引っ越して来た時からずっと開かないの」とGena Rowlandsが云う。

ある雷雨の夜、何か倒れる音と風でバタバタする音で目覚めたKate Hudsonが、二階の老人John Hurtの部屋をテェックしに行くと、ベッドは空で、シーツに"HELP ME"と書いてある。窓から外を見ると、老人は屋根の上で濡れネズミで這って逃げようとしている。Kate Hudsonが止めるが、老人は聞かず地面に転落する。駆けつけたKate Hudsonを見つめ、老人が必死で何かを伝えようとする。

Kate Hudsonは例の開かずの間を調べる。スケルトン・キイが使えなかったのは鍵穴にキイの破片が残っていたからだった。部屋の中にはVoodoo(ヴードゥー)の儀式に使うような薬草や人形があり、「究極的保身の魔法」という分厚い本、「犠牲の魔法」と題されたレコードなどもあった。Kate Hudsonは、この家のどこにも鏡が無いのが不思議だったが、ここには沢山の鏡が隠されていた。

外出してニューオーリンズのアパートに戻ったKate Hudsonは、ルームメイトの黒人娘Joy Bryant(ジョイ・ブライアント)に相談する。Joy Bryantは「それはVoodooではなくHoodoo(フードゥー)だ」と云う。彼女の叔母さんがHoodooを実践していると教えてくれるが、怖がって叔母さんのところへは行きたがらない。

戻ったKate Hudsonは「開かずの間について話してくれないなら辞める」と脅し、Gena Rowlandsの口を開かせる。彼女は90年前の家の主人とその召使いの黒人の男女について語り出す。召使いの黒人の男女はこの地域では有名なHoodooの術師で、あるパーティの夜、幼い兄妹に術を施そうとしているところを見つかり、パーティ参加者の富豪たちから縛り首にされ、身体を焼かれてしまった。その後、主人は没落し、妻を射ち自殺して兄妹が残された。鏡には殺された召使いの男女の姿が映るのだと云う。

Kate Hudsonはルームメイトの叔母さんのところに行き、呪いを解くHoodooの呪文を教わり、必要な品々を購入する。ある夜、老人John Hurtの部屋に鍵を掛け、Hoodooの呪(まじな)いを始める。すると、口がきけない筈の老人が「助けてくれ、ここから出してくれ」と喋り出す…。

Hoodooとは耳慣れない言葉ですが、DVDにはVoodooの教祖たち何人かが出演する短編が付いていて、分り易く説明してくれます。それによれば、Voodooは宗教で、Hoodooは魔術を集大成したものだそうです。Voodooはアフリカに始まり、数世紀を経て16世紀になって確立されたもので、自然と人間のバランスを求める宗教。組織化されていて、入信から聖職者の道に至るまでのコースがあるそうです。Hoodooは信心でも信仰でもなく、慣習に過ぎないと説明されます。黒人奴隷たちは、アフリカで愛用していたハーブ(薬草)を探し求め、アメリカ・インディアンから暑い気候の南部でしか育たないハーブを得ることが出来、それがHoodooを定着させるもととなったのだそうです。

私はホラーものは嫌いなのですが(恐いので)、この映画はあまり恐くありませんでした。映画の演出が観客を驚かすというよりも、「開かずの間の謎」とか「黒人召使い男女の呪い」というミステリや、「老人の救出」というサスペンスに傾斜しているせいでしょう。Kate Hudsonの役は、ある登場人物から「キミは看護師なの、探偵なの?」と云われるくらい、屋敷の中をうろつき廻ります。買い物と称してニューオーリンズまで往復二時間のドライヴを何度もします。老人の介護をほっぽらかしていいのか?と心配になるほどです。

Kate Hudsonはもともと我がままっぽい顔立ちですから、好奇心を満足させるためなら冒険も辞さずという役柄に合っています。Gena Rowlandsは善人なのか悪人なのか分らないという役を見事に果たしています。逆に云えば中途半端にも思える演技ですが、善悪どちらに傾いてもいけない役なので仕方がないでしょう。Peter Sarsgaardは可も無く不可も無し。John Hurtはほとんど芝居らしい芝居をしません(脳卒中患者ですからね)。

メイン・タイトルで出て来る、木から垂れ下がっているコケは"Spanish Moss"というもので、アメリカ南部の湿地帯を象徴する植物です。白い色なので死んだコケのように見えますが、実は生きています。この映画でクロースアップになった時、ちゃんと生きているように見えると思います。寄生植物でもなく、根は無く、水分は空気中から、養分は漂う塵から摂るのだそうです。【参照 http://www2.netdoor.com/~takano/spanish_moss.html】

この映画の舞台となった屋敷は、160年の歴史を持つFelicite Plantation(Vacherie, Louisiana)です。

(June 06, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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