Golf Tips Vol. 54

コックの研究
[Cocking exercise]

'Explosive Golf'
by Machael Yessis, Ph.D. (Masters Press, $18.95, 2000)

「コックを出来るだけ長く、少なくとも腰の高さまで解かずに維持するのは重要なことである。その訓練としてはStrength Bar(ストレンス・バー)を使うことをお勧めする。

15インチ(38cm)のStrength Barを使うのがベスト。長いものの方が重い側の抵抗が大きくなる。

【編者註】Strength Barというのは、この著者が考案・販売している道具で、短いバーベルの片方の端を切ったようなもの。運動具店で買えるものではないようです。私はSwing Trainerと呼ばれる、短いが重いゴルフ練習道具を使っています。全長66.5cmですが、ヘッドに近い方のグリップを持てば丁度38cmです。重さが不足になって来たらドーナツを加えればいいと思いますが、そこまで重くすると相当危険な感じがします。この著者の間抜けなところは、重い端を上げてどの位保持するのか、また、これを何回繰り返すのが適当か、全く触れていない点です。

両手を下ろして立ち、片手にStrength Barを持つ。重い方を前方に下げ、出来るだけ長く持つ。これが最初のポジション。腕は真っ直ぐにしたまま、手首だけで重い端を出来るだけ高く上げる。元のポジションに戻って、同じことを繰り返す。正しく行なわれた場合、重い端の移動幅は90゜程度である」



(February 04, 2001)


続・「バックスピンをかける」練習篇

「両手、両手首はスウィングの間中使わない」というのは非常に難しい。「上半身は下半身に引き摺られるだけ」だそうですが、つい手と腕がしゃしゃり出ようとします。

もし、「上半身は下半身に引き摺られるだけ」というのが完璧に実行出来るものならば、それはフル・スウィングのレイト・ヒットにも応用出来る動きでしょうね。

「バックスピンをかける」の筆者が「大きいフォローは必要無い」と云っているのは正しい。30ヤードのターゲットにはせいぜい胸まで上げたフォローで十分で、15ヤードだとお臍の高さで届きます。それ以上上げると左右にブレます。

裏庭での練習ですが、最初はマットの上で打っていました。しかし、そんな乳母日傘(おんばひがさ)が本番で通用するわけはないので、この季節ほとんど枯れている草の上から打つ練習に切り替えました。裏庭ではいい成績なのですが、コースでは相変わらずトップやザックリが出ます。大胆にターフが取れない貧乏人根性が原因かとも思いますが、何よりもこの「バックスピンをかける」スウィングに習熟していないからと思われました。

そこで「スウィング(型)を完成させるのが先決」と、またマット使用を復活。型が身に付けば、距離やライはスウィングの強さで調整出来るだろうという読みです。しかし、一応地面から打っているつもりで、現在もターフを取れる強さで打っています。マットを使うと、面白いように寄ります。20個ぐらいのボールが、20ヤード離れたターゲットの半径2m以内に固まることすらあります(たまたまですが:-))。「ERC IIの謎」【削除済み】で「いいライにボールを蹴るのもOKだ。いいライは楽しいからだ」という言葉を紹介しましたが、それなら私はコースにマットを携行し、「寄せは毎回マットの上から打つ。その方が楽しいからだ」と云いたい気分です:-)。

(February 04, 2001)


'Hogan vs. Snead'(ホーガン対スニード)
[Video]

'Hogan vs. Snead'
by PGA Tour Productions (the booklegger, 60 min., $29.95)

これはTVの'Shell's Wonderful World of Golf'(シェル提供ゴルフの素晴らしき世界)シリーズの一本で、1965年2月のHouston C.C.におけるBen Hogan(ベン・ホーガン)とSam Snead(サム・スニード)の対決を記録したもの。デジタル化と共にカラー化もされています。

普通ならこのヴィデオに手を出すことは無かったのですが、当市のゴルフ・ショップで半額セールをやっていたので買ってしまいました。

1965年と云えば、Ben Hoganが'Five Lessons'(『モダンゴルフ』1957年刊)を出版した8年後です。Hoganは、1954年から4年間Yipsで苦しみ、その後、トーナメントからは遠ざかってしまいました。このヴィデオは、そういうHoganを引っ張り出したという企画のようです。Hoganに幸いしたのは、この日Sam Sneadのパットが不調で、Hoganのパットがまずまずに見えること。

二人の闘いはそれほど面白くないのですが、私には二つ収穫がありました。先ず、「冷たい」と云われたBen Hoganが非常ににこやかに、気さくに喋っている姿が見られたこと。もう一つは、このシリーズのおまけについている対戦者によるスウィング解説で、Hogan自身による説明と高速度撮影フィルムが見られたことです。

「下半身が全てをリードする」と説明しながら、Hoganはトップからダウンスウィングに移行する時のモーションを何度か繰り返します。私の関心は右肘の位置ですが、Hoganはこの時の説明では右肘は脇腹近くを擦るように見せています。「アマチュアは上半身で打とうとするので、インパクトで(手首ではなく)クラブヘッドが先行してしまう」と、手首が甲の方に折れ曲がったインパクトを悪い例として見せます。最後に高速度撮影による完全なスウィングです。この時の右肘は身体の右脇に下りていて、脇腹を擦ってはいません。先ほどの説明は相当誇張して見せた感じです。

HoganがSam Sneadに語った話が'The Game I Love'(『ゴルフは音楽だ』)に出ています。「Benは、クラブがボールに向う時、右肘を身体の右脇にキッチリと引きつけておきたいと云っていた。右肘が擦るのでセーターが綻びてしまうと云っていたものだ」

テイクアウェイはさほどアップライトではなく、ややフラットに後方へ引かれています。よく伸びた左腕が見事です。ダウンスウィングのコックの角度の急なことには目を見張ります。極限までコックをほどいていません。インパクトで、今度は右腕が目一杯伸ばされます。伸び切った両腕が彼のパワーを物語ります。左肘はすぐには折り畳まれず、「もう伸ばしていられない」という限界まで行ってから、やっと畳まれています。Hogan、この時53歳だったそうですが、美しく、パワフルで、調和のとれた素晴らしいスウィングです。

(February 07, 2001、改訂May 31, 2015)


レイト・ヒットの研究・特訓篇

アンコックを遅らせようとこだわっています。鏡の前でスローモーションの素振りを繰り返しました。右肘が最低でも右ポケットを越えないこと、出来ればダウンスウィングで手が腰の辺りへ来た時に、シャフトは水平より上に位置していて欲しいというのが目標。

ヴィデオに撮ってみると、かなり頑張っても腰の辺りでクラブは水平になっていて、これだとボールに接触する前にクラブと腕は既に真っ直ぐに伸び切っています。あと20cmは我慢したいところ。

しかし、写真写りと結果の違いにも呆れます。私は一打毎の結果(軌道、距離)をジェスチャーでカメラに記録します。ほぼ満足出来た場合は親指を立てます。凄くいい時は10(十本指)。プッシュ、スライス、プル、てんぷらなどは手の向きで方向と軌道を示します。短い場合は両掌を近づけて(狭くして)「短い」ことを表わします。何十球も打つわけですから、どこでどうだったかは忘れてしまいます。試写する時に、スローモーションで頭が動いていないか、コックはどうかなどをチェックするのですが、「これは完璧だ」と思えても指と手で表示される評価は落第ということもあるし、「こりゃ駄目だ」というスウィングに親指が立ったりします。頭が動いても、上手に(?)元へ戻す動きでカヴァーしたり、アンコックが早くても、ヘッドスピードで距離を稼いだりしている場合があるのでしょう。

スウィング・コーチMarshall Smith(マーシャル・スミス)が「息子に教えたが、身につけるまでに十数年かかった」と云っている通り、レイト・ヒットは非常に難しい。裏庭での練習で、これまでになく飛んだのはたった二回です。100発ぐらい打ってこれですから、紛れ当たりという範疇ですね。

これまでの留意点は、「頭を右膝の上に残す」(左膝を戻す動きにつられて横移動しない)、「右肘を腰骨の上につける」…というものでした。しかし、右肘を後ろへ廻しても手首が伸びていては意味がありません。もっと、何かコツが欲しいところでした。

[Hogan]

'The Fundamentals of Hogan'
by David Leadbetter (Doubleday and Sleeping Bear Press, 2000, $27.50)

「脚の研究」で若干触れた、David Leadbetter(デイヴィッド・レッドベター)による'Ben Hogan's Five Lessons'(邦題:モダン・ゴルフ)の解説本です。前のは'Golf Digest'に掲載された、ある章の一部:'To Become an 80-Breaker--or Better'(80を切る人、あるいはもっと上を狙う人に)という部分でした。単行本と較べてみたら、雑誌の記事は抜けている部分が沢山あります。その一つがレイト・ヒットの練習に関するものでした。やはり、現物を買って良かった。

「ダウンスウィングが始まると、右肘は落下して右腰に向う。一方、両手は胸からの距離を維持している。

この感覚を養うには、ダウンスウィングの途中の、インパクトの一歩手前の状態を作る(図参照)。右肘は右腰に接しているか、右腰の前にある。このポーズを数秒間キープし、ついでフィニッシュに向って"aggressive"(攻撃的、積極的)に振り抜く。これをマスル・メモリにインプットする。これがHoganが望んだ『パワーを増すためには、私は三本の右腕が欲しい』を実現する、パワー全開のためのポジションである」

この瞬間のHoganの右肘は右腰骨辺りにぴったり接しているようです。イラストはHoganのフィルムの一画面を模写しましたので、スティル写真を元にした原本の挿絵よりも正確です。なお、この時のHoganの手首、右肘、シャフトの角度などは、“飛ばし屋”Sam Snead(サム・スニード)の場合でも全く同じでした。「コックをほどかない」とでもいうような決意で“攻撃的に”弾くんですね。David Leadbetterのドリルは、例の特製グリップを使って家の中でも練習出来ます。

(February 11, 2001)


左手の親指

伝説的インストラクターHarvey Penick(ハーヴィ・ピーニック)のグリップに関する信条。

'Harvey Penick's Little Red Book'
by Harvey Penick with Bud Shrake (Simon & Schuster, 1992, $10.00)

「どんなタイプのグリップであれ、共通して存在してほしい一点がある。

私は真っ直ぐ下を向いている左手の親指を見たくない。親指は若干右にあってほしい。Byron Nelson(バイロン・ネルスン)は左手の親指の位置に関することは、私が教えることの中で最も重要な一つだと云った。その理由は、バックスウィングのトップで左手の親指はクラブの下にあるべきだからだ。これがあなたにコントロールする能力を与える」

(February 16, 2001)


体型別スウィング
[LAWs]

'The LAWs of the Golf Swing'
by M. Adams, T.J. Tomasi and J. Suttie (HarperCollins, 1998, $25.00)

この本はユニークです。「人間の体型が異なるのに、レッスン書もレッスン・プロも一つの方法しか教えないのは間違いだ」という発想で書かれています。主に三つのスウィングの型が代表として取り上げられています。

1) Leverage (テコ型):中肉中背の人、例:Steve Elkington、Jim Colbert、David Frost、Jeff Maggert、Annika Sorenstam多くのLPGAプレイヤー
2) Arc (円弧型):背が高く腕の長い、痩せ型の人、例:Ernie Els、Fred Couples、Davis Love III、Phil Mickelson、Lee Janzen、Betsy King、Payne Stewart
3) Width(幅広型):中背ではあるが胸が広く厚い人、例:Tom Lehman、Craig Stadler、Peter Jacobsen、Duffy Waldorf、Meg MallonLaura Davies

[Pistol]

自分がどれであるか見分ける簡単な方法があります。左の写真のように人指し指と親指を伸ばしてピストルの形を作り、肘を身体に付けて垂直にします。この時、親指が肩より高ければ円弧型で、丁度肩の高さならテコ型(私はこれ)、肩より低ければ幅広型となります。LPGAプロLaura Davies(ローラ・デイヴィス)は横幅があるので幅広型ですが、大抵の女性はテコ型だそうです。

勿論、現実には1+2とか、1+3などのミックス型も存在するわけで、そうした人々への留意点もちゃんと触れられています。自分の型を正確に掴む20問ほどの自己診断テストもあります。

例として、背が低く筋肉質の人が、いくら好きだからといってFred Couples(フレッド・カプルス)のスウィングを真似たり、背が高く痩せた人がBen Hogan(ベン・ホーガン)をお手本にしても、ちゃんと調和するわけがないと指摘されています。著者達は『ある人にはマジック(魔術的)であっても、他の人にはトラジック(悲劇的)である』と主張します。

となると、テコ型体型である私が円弧型のErnie Els(アーニイ・エルス、1.92m)の真似をしても無駄というわけです。もう一人、私の好きなFred Couples(1.56m)は、何故か本書では彼は主に円弧型であり、胸が厚い要素が加わってテコ型の要素も混じっていると書かれています。1.56mって高い方に入らないと思いますが、彼は腕が長いのでしょうか?ま、いずれにしても、私がこの二人が好きな理由はスウィング・メカニクスにあるのではなく、彼等のエフォートレスなリズム、テンポですから問題は無いのですが。

「Ben Hoganの記念碑的著作である'The Five Lesons'(モダン・ゴルフ)は、テコ型の人には素晴らしい教科書であるが、無数の円弧型のプレイヤーを駄目にした。彼等はダウンスウィングの開始で腰を廻すように努めたのだが、これは円弧型スウィングにおいては腰をドン!と押す動きが先にないとボールは一直線に右へ出て行ってしまう。

90%のスウィング・エラーはセットアップの間違いにある。

目のアライメントは重要である。なぜなら、スウィング軌道は両目を結んだ線に沿う傾向があるからだ。

両肩を結ぶ線が腕によるスウィングを決定するので、インパクトでフェースがターゲットを指すように、正しいアライメントが必要だ。

ワンピース・テイクアウェイを実行するには強靭な身体が必要。そうでないと、脳は無理にトップへと身体を捻転する代りに、両腕を使ってクラブを持ち上げてしまう。

パワーをリリースするタイミングを変えるには、爪先の開き加減を調節する。左足を開けば左脚が真っ直ぐになるタイミングを遅らすことが出来る。反対に閉じる方向だとパワー・リリースは早くなる。

【テコ型スウィング】

ボール位置は次のようにすべきである。
・5番アイアン〜サンドウェッジ        左頬
・ロング・アイアン〜フェアウェイ・ウッド  左頬と左腋の下の間
・ドライヴァーとティーから打つウッド    左腋の下
スタンスは次のようにすべきである。
・ショート・アイアン  踵を腰の幅に開く
・ドライヴァー     踵を肩の幅に開く
・その他        以上の中間

腰の細いテコ型プレイヤーはバランスのために広めのスタンスを取り、適切な体重移動のために腰の横移動をするべきである。

腰の動きが早い人はアドレス時に爪先の開きを大目にする。

顎は誇らしく上げる。

胸の薄いテコ型プレイヤーはより直立に近いポスチャーを取り、左腕のスウィングを45゜に制限すべきである。

腰のアライメントは重要である。それがテイクアウェイからダウン・スウィングまでの回転量を規定するからだ。腰をオープンにするとバックスウィングの回転が少な過ぎて、ターゲットの左に向く結果となる。アドレスで腰をクローズにすると、バックスウィングで過剰に回転し、インパクトで腰が正しい位置に戻って来ない危険がある。テコ型の体型ではアドレスでスクウェアな腰が適切な身体の回転をもたらす。

テコ型プレイヤーで右脚が左脚より長い人は、腰の高さの分だけスタンスをクローズにすべきである。【編者註:驚きました。私が実はこれなのです。ズボンを買う時は常に右脚を1cmほど長く縫って貰っていました】

テコ型のテイクアウェイの鍵は低い両手、高いクラブヘッドだ。これ以外はスウィング・プレーンから外れてしまう。

テコ型のプレイヤーに多いダウンスウィングでの問題点は、あまりにも早く右腰をボールに向ってほどいてしまうことだ。右の頬はイメージ上の壁にくっついているべきである…左腰が左へ廻ることによって、否応なく引っ剥がされるまでは。

右半身は腕がクラブヘッドを適切な位置に落下させる迄、ボールに向って回転しない。

ダウンスウィングで体重をあまりに長く右に残すと、ダフるかプルの原因となるので注意。

クラブは先ず下に向い、ついで身体に沿って廻る。廻ってから下に向うのではない。

テコ型のプレイヤーは手の動きを最少限にしながら、身体をほどくべきである。両手はスウィングの間中身体に近く留まり、左足は地面に付いたまま」

この本で学んだ最大のものは、爪先の開き方でスウィングが変わるということです。私は下半身主導型スウィングが染みついていて、腰が早く開き過ぎるような傾向がありました。で、両足の爪先を開き加減にしましたら、これがかなりいいのです。ただ、すぐにはそれが身につかず、ややもすると開くのを忘れて打ってしまいますが。

【参考】原著には、自分がどの体型に属するかを知る詳細な自己診断テストが含まれています。以下のサイトに、それがそっくりそのまま復刻されています(英文)。
http://www.tomasigolf.com/whats-your-body-type.html

【参照】
・「体型別スウィング(幅広型篇)」(tips_92.html)
・「体型別スウィング再履修」(tips_107.html)
・「体型別スウィング(プレーン篇)」(tips_137.html)
・「体型別スウィング(テコ型の補遺)パート1および2」(tips_157.html)
・「体型別セットアップ法」(tips_165.html)
・「体型別・腰のアクション・ドリル」(tips_165.html)
・「体型別スウィング【微調整ポイント一覧】」(tips_165.html)
・「体型別スウィング【微調整ポイントの相性を知れ】」(tips_165.html)
・「体型別スウィング【妙薬と毒薬を見分けよ】」(tips_165.html)

(February 27, 2001、改訂・増補September 20, 2015、増補October 12, 2015、再増補December 08, 2015)


KISS

'Hit Your Second Shot First'
by Marshall Smith with Tom Ferrell (The K.I.S.S. Group, 1999, $19.95)

KISSメソッドとは何か?色っぽい話は何も無く、"Keep It Simple Stupid"(シンプルにやるんだ、阿呆)の略だそうです。「ターゲットと握手せよ」という一言でMarshall Smith(マーシャル・スミス)に興味が湧いたので、彼のこの本にも手を伸ばしたのです。タイトル『二打目を最初に打て』は私の記事の「自分を騙す」に似ていたので、1999年に発見した時すぐ注文しようかと思ったのです。しかし、100頁に満たないという体裁から、「どうも大した本じゃないようだ」と考え、思い止まったのでした。手にしてみると、実際はもっとひどく、全94頁で、そのうち計17頁は飾りに過ぎないイラストで埋められています。「シンプルに書くんだ、阿呆」という方針だったので、77頁以上書く中味が無かったのかも知れません:-)。

[Smith]

Marshall Smithは出版当時71歳。少年時代にBen Hogan(ベン・ホーガン)のボール拾いをしたこともあるそうです。

「私はレッスンにヴィデオを用いない。いいゴルフ・スウィングというものは、全体が連続したものである。スウィングの間で、あなたの心をストップ・モーションにすることは出来ない。

いいプレイヤーに共通する唯一のものは、バランスだ。あなたが求めるべきものがそれだ。

私は二、三分で生徒が直すべきポイントを見つけられる。あなたが私に30分以上のレッスンを許すなら、それは私にあなたの金を盗めと云うに等しい。

トーナメント中継のハイライトに出て来るようなショットを望むな。あなたのパートナー達を感心させるショットではなく、ターゲット・エリアから逆に計算した最もリーズナブルなショットを選べ。

グリーンにおけるターゲット・エリアは、一般的に云ってホールの下方である。そこなら真っ直ぐな上りなので、アグレッシヴなパットが可能だ。

ショート・ゲームで誰にもある傾向は減速してしまうミスで、これは簡単な短いショットもぶち壊してしまう。

私がショート・ゲームで勧めるストロークは、シャフトを短く持ち、膝の高さを越えない短いバックスウィングをすることだ。テイクアウェイで手首を折り、右肘を身体に近く保持する。

短いバンカー・ショットではロブ・ウェッジを使ってクラブフェースをオープンにする。長めのバンカー・ショットではサンド・ウェッジを使う。30〜40ヤードもあるバンカー・ショットは最も難しいショットである。この場合はピッチング・ウェッジか9番アイアンを使い、フェースをオープンに保つ。

長いパットでは、気持ちグリップを緩め、ストローク巾を長くする。

フル・スウィングでは、私は誰にでもベースボール・グリップを使うよう勧める。まだ一度も試したことがないなら、是非試すこと。特に、ボールが右へ逸れる傾向があるか、思ったようにパワーが得られない人に相応しい。

スウィングの間中、頭を高く保つ。そうすることで、顎に邪魔されることなく左肩をボール位置まで回転させることが出来る。普通の頭の重さは14パウンド(6.35kg)ある。これは背骨からブラ下がるには結構な重さである。顎を上げ、首を背中と直線にすること。

ショート・ゲームの練習方法は色々あるが、同じ場所から同じターゲットへ五つのボールを五通りの打ち方(ストレート、フェード、フック、ロー、ハイ)で打ち分けるのをお薦めする。

練習では、ある日は偶数のクラブ、ある日は奇数のクラブを選ぶ。こうすれば自信を構築出来るし、どれかが“お気に入り”になるという弊害を防止出来る。

コースが空いている早朝などにお薦めしたいのは、二個のボールで別々の異なる攻め方を試すことだ。もう一つ、素晴らしい練習は、どのティー・ショットも5番アイアンを使うという方法だ。これだとグリーンを狙う際に、いつもと全く異なるクラブを使わざるを得なくなる」

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(March 07, 2001)


KISS: Part 2

'Hit Your Second Shot First'
by Marshall Smith with Tom Ferrell (The K.I.S.S. Group, 1999, $19.95)

ゴルフはいくつ偉大なショットをするかというゲームではなく、悪いショットがどの位良いかというゲームだ。

[Smith]

プロが金を得る方法は、正しい地点にミス・ショットし、寄せワンのチャンスを残すことだ。彼等は馬鹿げたギャンブルはしない。彼等はどこにトラブルが待っているかを知っていて、そこから離れてプレイする。いい作戦の一つは、パーを作ることであって奇跡を期待するのではない。ボギーは致命的ミスではない。一個のバーディがそのミスを消しさってくれる。知ってるかな?ダブルボギーはまずいショットの連続によって出るのではなく、集中心の欠如の結果なのだ。

ウォームアップは、とりわけバランスとテンポに焦点を当てるべきだ。そのための最良の方法は、単純で小さく短いショットをすることだ。その後、ストレッチのためにフル・スウィングの素振りを数回。同じテンポとバランスをキープし、四〜五個のボールを打つ。

最初のティー・ショットでは、舵をとろうとしないこと。ボールの飛ぶ方角を誘導しようとするのは、最初のホールの最大の罪である。そうではなく、攻撃的なスウィングで、ボールに向って十分な加速とリリースをすべきである。

あなたが最初のホールで緊張しがちだったり、最初の数ホールでミスを冒しがちであれば、練習あるいはウォームアップのやり過ぎかも知れない。

『自分が連れて来たパートナーとダンスしなければならない』という古い言葉がある。持ち球がフェードでも、ある日はドローばかりになることもある。そうなったら、ドローを避けるのではなく、ドローでピンにアタックすべきである。

怒りはラウンドの最後まで取って置く。その時に、まだクラブを放りたければ放ってもいい。しかし、最後まで待てたのであれば、何かもっと建設的なことにエネルギーを使いたいと思うようなるだろう。

あなたには、ティーショットを大きくすることを考えて貰いたい。そのためには大きなターゲットが必要だ。飛行予定線の上にむくむくした雲を見つけてほしい。その雲めがけて打つ。必然的にボールの軌道も良くなる。小さなターゲットはプレッシャーを生むが、このやり方だと終始フリーな気持ちで打てる。

空手の黒帯は最もパワフルな人達だ。彼等は生の体力でパワーを作り出すことをしない。彼等はコントロールされた動きから最大のものを引き出す。空手の達人が動きに備えるところを見よ。身体をセットする方法によって全てが始まることを知るだろう。

Tom Watson(トム・ワトスン)のデビュー当時、優勝一歩手前で何度も過剰な期待と緊張のため失敗した。その後、彼は単純にいいラウンドをするために集中する方法を学んだ。いいプレイをしていれば、後はいいプレイが面倒を見てくれるという、強い信念を確立したのだ」

【おことわり】画像はamazon.comにリンクして表示させて頂いています。

(March 12, 2001)


全力≠最大飛距離

スポーツ心理学者Dr. Tom Dorsel(トム・ドーセル博士)の本の中の逸話。

'Play Slow-motion Golf for Better Results'
by Tom Dorsel, Ph.D (Golf Illustrated, Jan./Feb., 2001)

「数年前のロングドライヴ・チャンピオンSteve Thomas(スティーヴ・トーマス)が、彼のクラブヘッド・スピードを計ろうとする人々から『可能な限りハードにスウィングしてくれ』と頼まれた。その計測結果は164km/hだった。その強打に続いて、Steve Thomasは普通のスウィングをした。驚くべきことに、その結果は269km/hであった。彼の通常のスムーズでリズミックなスウィングは、出来るだけ早く振ったスウィングより105km/hも速かったのだ。

スローにした方がいい証拠は他にもある。スポーツ心理学者達が短距離走者のグループに『110%の勢いで走ってほしい』と頼んだ。数日後、同じ走者達は『95%の努力で走ってくれ』と頼まれた。大方の予想と裏腹に、95%の努力の方が速かった。

その学者達は『大半のスポーツにおいて、運動に関与する筋肉群は代わる代わる仕事をし、残りはリラックスしている方がいい結果を生む』と云う。全筋肉群が同時に仕事をしようとすると、相互に干渉しあい、望んだようなスピードが得られない。スローダウンあるいは楽にすることが、容易に目的を達成する道だというわけだ。

解っていてもスローなスウィングをするのは難しい。その理由の一つが過剰な“やる気”である。“やる気”があり過ぎると、ものごとを早く処理しようとする。早く歩き、早く呼吸し、早く話し、スウィングも早くなる。

 

私の経験を一つ紹介しよう。あるスポーツ関係のリポーターが私のスウィングの写真を撮りに来た。彼が欲しがっていたのはインパクトの瞬間であるのは分っていたし、私はヘッドアップしバランスの悪いスウィングだけは撮られたくなかった。私はスローなスウィングで、ボールから目を離さないことを心掛けた。ボールがどう飛ぼうと、結果はどうでもよかった。結果は写真に写らないからだ。驚いた。私がフェアウェイを歩いて行くと、ボールはフェアウェイのど真ん中280ヤード付近まで飛んでいた。これは私の現在までのベスト・ドライヴの一つだ。

スローにスウィングするイメージに最適なのは、あなたが巨大な蜂蜜の瓶の中にいると想像することだ。こってり、ネバネバする物質の中でスウィングしてスローにならない筈がない。蜜にまみれたスウィングの結果は、この上なく甘美なものであるに違いない」

(March 17, 2001、改訂January 06, 2019)


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