Golf Tips Vol. 28

山口さんの「80を切った、その日」

東京都東村山市にお住まいの山口さんが80を切った日のレポートを届けて下さいました。コースを強引にねじ伏せようというのではなく、4番アイアンでティー・ショットされるなど、ごく謙虚に、冷静にプレイされ、欲張らなかったことがいい結果を招かれたようです。私達も是非とも見習いたい姿勢です。

私はゴルフ歴七年、JGAハンデ21、満44歳のサラリーマンです。二ヶ月程前、偶然、“ゴルフ「80を切る!」日記”を見つけて以来、毎日昼休みに必ず開いては、いろいろなtipsを参考にさせて頂いています。

特に、「トップの間(ま)」「映画を観るように…」「クラブヘッドがスムーズにボールを通過する様(さま)を見る」("Seeing the clubhead pass smoothly through the ball.")を極力意識してプレーするようにして以来、自分でも信じられないほど急速にスコアアップし、ここ一ヶ月あまり連続して90を切れるようになっていましたが、遂に、先日(8月22日)、80を切るという偉業(?)を達成することが出来ました。

私は遅咲きゴルファーで、筆おろしは、米国ボストン留学中の36歳の時(なんとか卒業の目途がたった92年5月)で、本格的に始めたのは同年10月にU. A. E.(アラブ首長国連邦)に赴任し、DubaiのEmirates Golf Club(ヨーロピアンツアーの第1戦、デザート・クラシックで有名)のメンバーになってからです。以来、七年間で約340ラウンドし、毎年の平均ストロークは、121→112→101→98→96.5→95.5→94.3と近年上達度合いがめっきり落ちていたのですが、高野さんの日記を閲覧し始めてから、本当に急速にスコアアップし、今年の平均ストロークが、先日の80切りスコアを含めると、89.9となりました。直近10回のプレーの平均は、87.2、これまでの長い苦労?が一気に報われた思いです。これもひとえに高野さんの日記から得たtipsのお陰だと思います。

さて、私が80を切った場所は、千葉県木更津市のザ・カントリークラブ・ジャパン(Regular tee: 6,265 yard)、スコアは、IN 41、OUT 38の79でした。当日は取引先企業との年に一度の懇親コンペ(三組)で、同伴プレーヤーM氏(当日スコア81)とは、プライベートを含めて何度も一緒にプレーして気心が知れた仲であり、腕前も私とほぼ互角、互いに同ハンデの優勝候補同士で、Y氏(当日スコア97)とは初めてのプレーでしたが、年下で要らぬ気を使うタイプでもなく、二人とも真摯にラウンドするタイプで、月並みな優勝コメントに良くあるフレーズですが、「同伴メンバーに恵まれて…」という、気持ち良くプレーできた幸運が先ずありました。

このコースは、過去に何度かプレーしたこともありますが、距離は短めながら、ティーグランドからピンが見えないホールが多く、又、個人的な視覚の問題か、真っ直ぐ立てないいくつかのホールではOB連発・大叩きしたりで苦手な部類のコースでした。しかし、今回の好スコアの要因としては、一週前に一度プレーし、攻め方の「予行演習」が出来たことと、以前OBや大叩きしたホールでは、ほぼ曲がらないと自信のある4番アイアンでのティーショット(180〜190ヤード)を実験したことです。結果的には、ドッグレッグで距離が短い戦略的なホールでは、第一打・第二打ともに4番アイアンで打ち繋ぐことでパーオンし、事前に苦手ホールを克服し自信をつけられました。

プレーは、INの10番からスタート、コンペの後続組も見守る緊張の中、第一打のドライバーは無事フェアウエーをキープし、楽にパーのスタート。ところが、次の11番でドライバーのティーショットが持ち玉のフェードがかからず、手打ちの大スライスで、柵を超えてブッシュに入り、ボールも回収できないOBで、ダボ。ここで、実は"Today is not my day."という文句が頭をよぎったのですが、同じ組のM氏や前の組のS氏とホール毎のナッソーをやっていた為、「Betに負けたくない」という気持ちが集中力持続の大きな要因ともなりました。

かくして前半は、パー・ダボ・パー・ボギー・パー・ダボ・パー・パー・パー(二つのダボは、ティーショットのOBが原因)の41、昼休みを挟んでの後半OUTコースは、7番までパー・ボギー・ボギー・パー・パー・パー・パーと2オーバーでまわり、段々と70台を意識し始めた8番、最も苦手なホール(右ドッグレッグ、374 yardのPar 4)を迎えました。

このホールはどうしてもティーグランドで真っ直ぐ立てず、昨年二回ここを廻った時は散々な目にあったホールですが、前週の予行演習通り4番アイアンのティー・ショットでフェアウエーど真ん中をキープ、第二打も計画通り4番アイアンでグリーン中央にパーオン、つい欲をかいて狙いに行った約8 mのバーディー・パットは強過ぎて右上1.5 mに外し、この触るだけの下りスライスラインが、本当にわずか1 cmカップ右横に止まり、ボギー。ここでトータル8オーバーとなり、「次の最終ホールでパーを取っても80か」と70台は諦めて、狙いを「ハーフ30台と優勝」に切り換えました。最終9番は打ち下ろし392 yardのPar 4、とにかく2オン・2パットのパーで上がれば30台なので、ここも手堅く4番アイアンでティー・ショット。6番アイアンの第二打はピンの左上約12 m。前のホールでバーディーを狙ってしくじっているので、頭の中で「2パット・・・2パット・・・」と繰り返しながら、念入りに歩測し、入れるのではなく距離を合わせ、寄せる事だけを考えて打ったパットが見事にカップイン。全く予期しなかったバーディーで、最後の最後の1打で80を切る事ができました。無理をせず、謙虚にプレーした御褒美?にゴルフの神様がくれたバーディーだったのではないかと思います。

あまりの嬉しさに、長ったらしい文章となってしまいました。今、冷静にあのラウンドを振り返ってみて70台を出せた要因(と自分で思う点)を箇条書きにすると:

1. 同伴メンバーに恵まれ、要らぬ気を使わずプレーに集中できた。
2. 持病の腰痛も無く、体調はほぼ完璧だった(最近良く続いている腹筋・腕立て伏せの効果あり)。
3. 適度なBetで、過度の緊張もなく、集中力を持続出来た。
4. 前週に予行演習し、各ホールの攻め方に自信が持てた。
5. 決して無理・冒険はせず、安全第一で攻めた(苦手なバンカーを極力避け、一度も入れなかった)。
6. 毎回のショットの際、極力、「トップの間(ま)」「映画を観るように…」「クラブヘッドがスムーズにボールを通過する様(さま)を見る」を忘れないようにしてプレー出来た(自分なりに“念仏”化して、それを頭で唱えながらショット)。

ここ二ヶ月あまり、毎週末ゴルフの予定が入っていた為、私のゴルフバッグは一度も自宅に帰らず、各地のゴルフ場を宅急便で転々と移動していました。つまり、二ヶ月の間、一度も練習場(打ち放し)で練習をせず、「本番」だけでスコアアップできたのは、これまでの練習がやっと花開いたとも思いたいのですが、実際は、明らかに高野さんの日記から得たtipsの御陰であります。本当にありがとうございました。こういう儲けの無い、趣味だけのホームページを維持・管理していくのは大変なことと思いますが、私のようなアベレージゴルファーにとっては巷のレッスン書ではなかなか得られないtips、情報が多く、是非とも今後、出来る限り続けて頂きますようお願いします。

(September 07, 1999)


マッコイさんの「80を切った、その日」

上州新田郡(にったごおり)三日月村の隣町のコースを根城にするマッコイさんが、自動車事故、夫婦げんかという逆風を乗り越えて、悲願のハーフ30台、トータル70台両方を成し遂げ、月例ぶっちぎり優勝を果たすという快挙のリポートです。「ボギーなら悔しくない」という謙虚な姿勢と、「決して諦めない」という二枚腰の双方が大成功の要因とお見受けしました。

ゴルフに真剣に打ち込み始めて一年半なのですが、ラウンド数は(私の歳では)かなり多いほうで、月に三〜四回はプレイしています。半年ほど前まで週に四〜五回は練習していて、定額打ち放題のせいもあり、一回の練習につき400〜500球打っていたのですが、ここ最近は週に一回ぐらいの練習しかせず、スイング作りというよりは球とのコンタクトを確認するといった感じの内容でした。

群馬県の太田双葉CCがホームコースで、最近は三回に二回は月例競技という感じです。二ヶ月前に月例で40-42というスコアでハーフ、トータル共にベスト更新したばかりだったのですが、その時の印象は「まだミスは沢山あるし、もっと減らせそうだ」というものでした。「80を切る」というよりは「なんとかハーフで30台」というのが当面の目標で、かなり惜しいところまでは行くものの、上がり二ホールでしくじってしまうというパターンでした。この日(平日月例)の午前中もパー・バーディ・パー・ボギー・ダボ・ボギー・パー・パーで、8番までで3オーバー。最後をパーで上がると夢の30台だったのですが、9番ホールでアプローチのミスからボギーを叩いてしまい、40となってしまいました。前回のベストスコアのハーフ40もあったので、別に身構えることなく、午後もすんなり回っていました。17番までで2オーバーという過去最高のペースでした。

最終ホールのロング。ドライバーの一打目はどテンプラでOBかと思い、暫定球を打ったところ、これもテンプラで200ヤードぐらい。「・・・あ〜あ・・・」とトボトボ歩いていましたら、「あれ?あの球なに?」の同伴者の声。一打目が50〜60ヤード地点でセーフになっていました(笑)。そこから右ラフへ150ヤード脱出。三打目は大ダフリで100ヤードぐらい(^^;)。残り200ヤード弱を4アイアンでフルショット!&右太もも痙攣&球は右カラーに! アプローチが1.5 mぐらいについて、いよいよ初30台&初70台がかかったボギー・パット。ラインは真っ直ぐで上りのパット。ここで思いました、「あ!これはゴルフの神様がオレを試してるんだ!!」と。慎重にラインを読んでキッチリ打ったパットは、ど真ん中からカップイン! 晴れて後半1バーディ・5パー・2ボギー・1ダボで夢の39!! トータルも40-39の79で当然ベストスコア!!!

スコアカードを提出しましたら、二位に6打差を付けてのぶっちぎり優勝! 七月の通常月例に引き続きの優勝だったので、もう有名人もいいとこ(爆)。知り合いのおっさん達からおめでとうの握手を求められまくりで、チョット照れました(笑)。パットも調子良く16-14で30パット。これも新記録でした(^^)。でも特別調子いいというのはこれといってなく、全体にまとまってたという印象。70台なんてこんなもんなんですね〜。

実はこの日の前日、車同士の貰い事故をしてしまい、しかもその夜には奥さんと大ケンカというメチャクチャな精神状態だったのですが、「まあとりあえず何も考えないで、いつも通りやろう。まずベスト更新・優勝は無理だろうけど・・・」と考えていました。しかしコース入りしたときには既にゴルフのことしか頭に無く、ウォーミング・アップとパット練習をしているうちに集中力が高まってきたような気がします。ラウンド中に一瞬それらの雑念が頭をよぎることもありましたが、そういう時は池の噴水を眺めたり、コース脇の道を走る車を眺めたりして気を紛らわせました。ものすごい暑さ&仕事から来る疲れ&私生活のトラブル等、絶対にベスト更新できないと思っていたのですが、その反面「ありのままを受け入れるというのは、その日の天候・体調・同伴者など全てを受け入れることを意味する」というBobby Locke(ボビー・ロック)の名言を頭の中で繰り返し、「決して諦めない」という姿勢を貫いていたのも良かったように思います。

一緒に回っていた方のハンデは9、13、19という感じで、ハンデ20の私は当然ついて回る立場だったのですが、そう考えることは絶対にしないでいました。むしろ「どう考えてもオレの方が上手いじゃん」と無理矢理思い込みながらラウンドしてました。もちろん表面上は敬語を使い、絶対にツンとした態度は取りませんでしたが(笑)。ハンデ20で79ですので、ネット59というDavid Duval(デイヴィッド・デュヴァル)の様なスコアを叩きだして優勝したのですが、優勝より初30台&初70台の方が嬉しかったです。

その日のスイングで気を付けていたのは、アイアンのテークバックでインサイドに引きすぎないということです。私はテークバックの始動時に右ヒザを伸ばす(極度のO脚のため)&チンバックをするのですが、それまでの私は右ヒザを伸ばすことによりどうしてもインサイドに引きすぎて、プッシュと引っかけの両方が出ていました。その日は、右ヒザを伸ばしながらも、飛球線方向に対してスクエアにテークバックすることを心がけていたので、重大なプッシュもなく比較的ピン方向に球が飛んでいました。

それと、やはりスコアメイクの鍵はアプローチ&パットだと思います。その日アプローチは全体にショートする傾向で約1 m〜1.5 mぐらいのパットが残り、入れたり外したりしていたのですが、「まあ外してもボギーだし、ボギーなら悔しくないや」と思っていました。私のアプローチは徹底的なピッチ&ランで、砲台グリーンに対しても転がしをしてしまうので、チョット失敗した箇所もあったのですが、自分の得意じゃないアプローチを突然行うと何もかもが崩れてしまいそうだったので、ずっと球足の長い転がしアプローチを続けました。パットはスコッティ・キャメロンのミーハーパターを、当日朝に練習グリーンで自分に無理矢理合わせて臨みました。少しオープンスタンスに立ち、フェース面を真っ直ぐ引いて真っ直ぐ出すと、思い通りにラインが出ました。あとラウンド途中で気付いたのですが、通常のセオリーとは逆に、パッティング・アドレス時に6:4ぐらいで右足に体重を乗せるつもりで打っていたのが良かったような気もします。私のパッティング・スタイルは距離をピッタリにしてラインを出していくタイプなのですが、その日は極端なオーバーやショートが無かったので精神的にすごく楽でした。

なんだかんだ云っても、80切りには運も必要だと思います。つまりゴルフの神様からのご加護ですね。私の今までのベスト更新のラウンドでは必ず「木に当たってフェアウェイへ」とか「ナイスキックでベタピン」とかそういったものがありました。この日も午後の15番と17番で、木に当たってピン方向に近づくというラッキーショットがありました。こればっかりは自分でどうこう出来るものではありませんが、私は常日頃こう考えています、《日夜練習に励み、ラウンド中は絶対にゲームを投げない、余計なことはしない、云わない、考えない。これがゴルフの神様から助けて貰える第一条件》だと。そして神様からの助けを頂いたときには、私は必ず空に向かって「ありがとうございます」と心の中で呟きます。巨人の桑田がボールに向かって呟くのと似て、ちょっと気持悪いかもしれませんが、これをしないとこの先二度と助けて貰えないような気がして・・・(笑)。

(September 13, 1999)


誉め言葉

日本では、「ナイス・ショット!」、「ナイス・リカヴァリ!」、「ナイス・パット!」と、ほとんどナイスづくし。「ナイス・ショット!」はこの道十年風に発音した場合「ナイショー!」で、これは英米人には"Nice show!"と聞こえる筈です。"You drive for show, and putt for dough."(「ロング・ドライヴは見せ物、パットは飯の種」…Bobby Lockeの言葉)なので、ティー・ショットに"Nice show!"は、まあ、あり得ますけど一寸ねえ:-)。

英語の誉め言葉は多様です。

"Good ball."
"Good shot!"
"That'll work."「いいんでない?」
"That'll do." (   〃   )
"Good out!"(トラブル脱出に際して)
"Nice out!"(     〃    )
"Solid!"(何とも誉めようがない時に)
"Good looking shot!"(曲がる前に先に誉めてしまう)
"Nicely done!"「上出来!」
"Good job!"(  〃  )
"Way to go!"(  〃  )
"Excellent shot!"
"Gorgeous shot!"
"You smoked it"(凄いロング・ドライヴに)
"You nailed it!"(     〃     )
"Beautiful shot!"
"Beautiful hit!"
"Wonderful shot!"
"That's a beauty!"

"What the heck of a shot!"「何て凄いショットだ!」
"Nice up and down!"(見事な寄せワンに)
"Good try!"(果敢に攻めたがやっぱり駄目という場合)
"Well struck!"「よく打った」(いいパットに)
"Great effort!"(距離感とラインはほぼ良かったが入らなかったパットに)
"Nice judgement!"(            〃          )
"Almost!"「惜しい!」(“ほとんど”入りそうだったパットに)
"You the man!"(ロングパットを決めた人などに)「よっ、大統領!」 黒人風に云うと"You da man!")
"Yes, sir!"「お見事!」
"Keep it up!"「そのまま頑張れ;どんどん行け!」
"You can play!"「お主、出来るな」
"Nice par!"
"Good three!"(パー3の時。「ナイス・パー」と同じ)
"Good four!"(パー4の時。「ナイス・パー」と同じ)
"Good five!"(パー5の時。「ナイス・パー」と同じ)
"Nice save!"(パーを拾った人に)

「だからどうなんだ?」と云われても困ります:-)。これらを日本で使うと一寸クサイですよね。ま、いつか英米人と一緒にプレイするハメになった場合のために覚えておくという程度でしょうか。

ついでなので、激励の言葉も。顔見知りやパスさせてくれた人々への挨拶は"Play good!"あるいは"Play well!"。これらはオールマイティです。"Hit'em good!"というのもあります。'emはthemの略でボール(複数)を指します。

*この項についてはカリフォーニア在住の矢野さんの御助言も頂きました。ありがとうございました。

(September 17, 1999、増補July 19, 2015)


英雄志願

'Slam School'
by Mike Chwasky ('Golf Tips,' October 1999)

これは示唆に富む論説(トーナメント批評)です。筆者の主観ですし、後からは何でも云えるという批判もあるでしょうが、冷静なコースマネジメントと自己コントロールの必要性を教えてくれます。

「Pinehurst(パインハースト)でのU.S. Open '99、Payne Stewart(ペイン・スチュアート)はコースの困難さに鑑み一定の状況下ではパー、あるいはボギーも受け入れなければいけないと決心した。つまり、三打目が長くなるとしても、ラフからフェアウェイに戻すだけということも実行するという決意。この作戦の好例は最終日の最終ホール。ティー・ショットはラフに入った。Payne Stewartは二打目でグリーンを狙う代りに、パーをセイヴする余地を残してボールをフェアウェイに戻した。結果的には15フィートのロング・パットが入ってしまい、彼は二位に一打差で優勝。

[Jean]

Carnoustie(カーヌスティ)における全英オープン '99。Justin Leonard(ジャスティン・レナード)はPayne Stewartを見習うべきところを、英雄的ショットをしようという大失敗を冒す。最終ホールをパーで上がればその時点でのトーナメント・リーダーPaul Lawrie(ポール・ローリイ)より一打少なくプレイ終了出来るところだった。最終組のJean Van de Velde(ジャン・ヴァン・デ・ヴェルデ)がダブル・ボギーを叩くということは、プロ・トーナメントの一般論として考えにくい。しかし、CarnoustieのNo.18は濠がフェアウェイを三重に横切っているという過酷なレイアウトであり、おまけに風もあった。何が起ってもおかしくなかった。

Justin Leonardは不幸にもこうしたオプションを熟考せず、メイジャー・トーナメントの最終ホールを英雄的ショットで飾ろうとしか考えなかった。3番ウッドによる二打目は濠に入り、ダブル・ボギーを覚悟せざるを得ない状況に追い込まれた。実際には見事な寄せでPaul Lawrieとタイになり、御存知Van de Veldeの大惨事(トリプル・ボギー)により三人のプレイ・オフとなる」

筆者は触れていませんが、No.18におけるVan de Veldeも英雄志願だったでしょう。The Golf Channelのインタヴューで、「私は487ヤードで6番アイアンなど使わない」と答えていました。これは二打目で3番ウッドを引き抜いたJustin Leonardと同じ姿勢です。一打目でドライヴァー、二打目で2番アイアン、これらもメイジャー・トーナメントの最終ホールを英雄的ショットで飾ろうという見栄、プロとしての誇り、あるいはフランスの英雄たらんとする欲望だったでしょう。

The Golf Channel(ゴルフ・チャネル)のホストPeter Kessler(ピーター・ケスラー)は、Van de Veldeに「で、全英オープン終了後、あなたは泣かなかったか?」という凄い質問をしました。Van de Veldeも素直で、「泣いた。子供のように泣いた」と答えていました。Justin Leonardは「私は今回のBritish Open優勝のチャンスを二回フイにした」と嘆いています。プレイ・オフにおけるNo.18でも3番ウッドを抜いて失敗したからです。表彰式での彼の顔は、まるで葬式に参列しているようでした。

うって変わって、我々レヴェルの話。私らのゴルフは全英オープンでないのは勿論、全米アマ、全日本アマですらありません。せいぜいクラブ・チャンピオンを狙うコンペであり、大抵は友人や同僚との親睦コンペかレクリエーション・ゴルフです。U.S.オープンや全英オープンですら刻むことが正しい時に、なぜ我々はレクリエーション・ゴルフで英雄になろうとするのか?英雄的ショットで何が得られるのか?パー・プレイ?アンダー?とんでもない。よくて80を切れるか、切れないかであり、下手をすれば90を越えてしまうレヴェル。Justin Leonardでさえ失敗する英雄的ショットに我々が成功する筈はなく、一打を倹約しようとして利息(ペナルティ)と打直し打数が増えてしまうのがオチです。「イチかバチか」という局面が訪れたら、我々はJustin Leonardの無念の表情を思い起こす必要がありそうです。


(September 23, 1999、改訂May 29, 2015)


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