友人で外科医のMikeの指導による「ゴルフ用ストレッチング」と「五十肩予防」を合体させたもの。 各12回で次へ移ります。 |
(February 10, 1999)
スポーツ心理学のTom Dorsel, Ph,D(トム・ドーセル博士)による洞察。
'The Complete Golfer"
by Tom Dorsel, Ph,D. (Allyn and Bacon, 1996, $19.00)
「ゴルフを人生に譬える名言は数知れない。しかし、人生なら努力すれば道が開け、報われることもある。ゴルフは努力しても報われない。ゴルフは人生とは全く異なるものだ。
何年も何年もゴルフをやっているが、全然上達しない人を御存知だろう(え、あなた自身?)。15年もおかしなスウィングを続けている男や、バンカーから終生出られないような男、25年間もハンデ25で決して進歩しないであろう男などなど。
ハンデが2とか(まあ10でもいい)、その人の限界に達した場合は、それより上達するのは難しい。しかし、ハンデ25が限界ということはあり得ない。上達の余地は十分にある。なぜ上達しないのか?
・似たような下手っぴとしかプレイしない
教え合い、助け合っても、スウィングの過ちに新たな過ちを付け加えるだけ。
・絶対にレッスンを受けない
練習に専念していてもお馴染の練習を繰り返すだけなので、スウィングを改良出来るテクニックを得る機会が無い。
・年間を通してプレイしない
夏は避暑に行くとか、寒い冬は嫌だとかでプレイしない。伝説的プレイヤーが季節労務者だったという話は聞いたことが無い。
待てよ、ゴルフも人生と変わらないのかも知れない。似たような投資の失敗を繰り返す、職を辞して似たような頭痛の種を生ずる職に就く、離婚した相手とほとんど変わらないような相手と再婚する…どうも人間は学ぶことに抵抗を覚えるみたいですな」
(February 15, 1999)
'How You Can Play Better Golf Using Self-Hypnosis'
by Jack G. Heise (Wilshire Book Company, 1961, $3.00)
30年以上も前の出版ですが、ちゃんとAmazon.comから購入出来ます。全125頁と薄い本ですが、それにしても定価据え置きの$3.00は安い。読んでみて、自己催眠の効用が深く理解出来るので、なおさら安い!
「自己催眠」とは催眠術を応用して“潜在意識”に訴えかけ、確固とした自信をつけるというメソッドです。「自己暗示」と云ってもいいでしょう。テープ等を用いて、手軽に自分で実行出来るので「自己催眠」と呼ばれるわけです。
これは一度実施すると数カ月、あるいは数年も持続するのだそうです。また、実行中に眠りに落ちても何ら問題は無いと明記されています。 “潜在意識”の役割の解り易い説明:人間が走る時、“潜在意識”が脚の筋肉やバランスをコントロールするので、いちいち脚のアクションを思い浮かべる必要はない。走ることを命令しさえすればよい。溝に出くわした場合、初めての場合はその溝を飛び越すための筋肉のアクションのデータが“潜在意識”に無い。“意識”が溝の巾を検討し、過去の経験から想定されるジャンプの高さ等のデータを整える。一度ジャンプに成功すれば“潜在意識”のファイルとして保存されるので、二度目には飛び越すことを命令するだけでよい。 コンピュータのキイボードやタイプライターを使う場合、“意識”が働くのは表現したい思考、言葉、フレーズに対してであって、文字の在りかなどに関してではない。熟練した使い手ならキイの位置と指づかいは“潜在意識”に任せておけばよい。 溝のジャンプに成功した場合、その経緯が“潜在意識”に格納され、タイピングの練習では文字の場所と指づかいが“潜在意識”に刻まれます。ゴルフでは練習が“潜在意識”に記録する場になります。「練習で正しいスタンス、グリップ、スウィングが身についていれば、後は“潜在意識”に任せればよい。歩く、食べる、運転する、その他もろもろの無意識で行なわれる動作を信じられるなら、“潜在意識”がゴルフ・ショットも十分に実行出来ることを信じられる筈です」 「“潜在意識”をグラつかせるのは、ミスした場合に『何を間違えたのか?』と自問することだ。自分のプレイに疑問を持つことは、深刻な心理的過ちを犯すことに他ならない。否定的思考は恐れを誘発し、惨憺たるゲームがその結果となる」 「一打だけのひどいショットだけでは下手なゴルファーとは呼ばれない。ひどい一打に続く、別のひどい一打によってダッファーと呼ばれるのである。よくあるのがグリーン周りでトップしたりダフったりするミスだ。これは不注意が原因と分り切っているので、恥ずかしさにどれだけ怒り狂っても足りないぐらいである。そのミスを即刻過去に追いやるべく次の一打を急いでしまい、もう一度似たような不注意を冒してしまう。こういう場合はゆっくり時間をかけ、ボールから完全に遠ざかって平静に戻れる迄待つべきである」 |
興味のある方は添付の「自己催眠スクリプト」をダウンロードし、誰かに頼むか自分でやるか、いったんテープに録音して試してみて下さい。
――――――――――以下の私のスクリプトはBee Epstein-Shepherd博士の台本を土台にしていますが、どの催眠療法士の台本も、元を辿るとBetty Erickson(ベティ・エリクスン、アメリカにおける催眠療法の草分けDr. Milton H. Ericksonの妻)の原案に行き着き、それぞれ類似した内容です。【パートA】は導入部であり、テーマが何であれ常に同じです。自己催眠に慣れて来たら、この導入部は短縮可能です。【パートB】は解決したいテーマで、一例として「パッティング篇」にしてありますが、各自の課題に合わせて「ドライヴァー篇」や「チッピング篇」、「自信をつける」などに変更します。その際のポイント、以下の通り。
1) 視覚化を多用すること
ゴルフコースにいるあなた、ティーグラウンドに立っているあなた、グリーン上でラインを読んでいるあなた、そして周囲の状況まで含めて詳細な視覚化を導入するようにします。
2) 常にポジティヴであること(否定形の表現をしない)
過去のベストのパフォーマンスを想起させ、現在のプレイにもベストの結果を想像させます。
3) 今後のあなたに自信を授ける
自己催眠から覚めた後のあなたのパフォーマンスについて、「私はリラックスし、自信を持ってプレイする」などの短い確言(=宣言)によって締め括ります。
【パートC】は覚醒手続きであり、【パートA】同様この部分も常に不変です。
・自己催眠スクリプトの例
【パートA】
ゆったりと楽な姿勢で横になりなさい。腕や脚は伸ばし、きつい衣類は緩めなさい。両腕は身体から少し離して左右に投げ出し、手の甲が上を向くようにします。ゆっくりと深く息を吸い込み、息を吐く時に目を閉じなさい。神経を呼吸に集中しなさい。鼻に入る空気を感じ取りなさい。息を吐くと同時に緊張とストレスも吐き出しなさい。素晴らしく伸び伸びし、リラックスした催眠状態に入るのはあなたの願望です。指示に従えば、その催眠状態があなたのものになります。
あなたの頭の頭皮に意識を集中し、そこがリラックスしていることを感じなさい。リラックスした寛ぎの波があなたの天辺から始まり、ゆっくりと下降します。寛ぎの波が眉間の皺を和らげます。額は滑らかになります。目の周りの小さな筋肉もリラックスします。目がとても重くなります。瞼は、まるで快適に糊付けされたように合わさっています。寛ぎの波があなたの顔を下降し、顎をゆったりさせます。唇を少し開くともっとゆったり出来ます。
寛ぎの波が、あなたの首の周りを旋回し、肩の方向に下りて行きます。肩の緊張を取り除きましょう。まるで世界を背負っていた重みが、あなたの肩から取り除かれたように軽くなります。胸の筋肉がリラックスすると、呼吸するのがとても楽になります。あなたの呼吸は、ゆっくりと深くなります。寛ぎの波が、あなたの背中の方に移動して、背骨の周りの筋肉の緊張を解放します。寛ぎの波が、背中からお腹と骨盤の周りへと下りて行きます。
深くゆっくり呼吸をしながら、あなたの身体を支えている物の表面を感じ取りなさい。ゆったりとした呼吸とともに、あなたの身体がその表面に沈んで行くのを感じなさい。脚の筋肉も緊張から解放しなさい。先ず、太股を。そして、向こう脛とふくらはぎを。寛ぎの波は、いま足首を旋回し、足先へと移動します。寛ぎの波が、下半身にあるどんな緊張をも爪先から追い出せるような状態を作り出しましょう。爪先に疼きのようなものを感じるかも知れません。
腕に神経を集中しなさい。二頭筋と三頭筋の緊張を解放し、腕がゆったりとぐにゃぐにゃのリラックスした状態になるようにしなさい。両腕に軽い流動的な刺激が感じられますか?とてもリラックした刺激です。この寛ぎと安らかな感覚をしばらく楽しみなさい。催眠状態の間、物音や気が散ることがあっても何も邪魔になりません。それらは、あなたが願っている状態により深く送り込んでくれる助けになるだけです。あなたが聞く唯一の音は、あなたの利益となる示唆をする私の声だけです。
あなたは今、十段ある階段の天辺に立っていると想像しなさい。私がゆっくり数えるのにつれて階段を下り、その一歩毎に素晴らしい魅惑の催眠状態へと深く、深く入って行きます。
十・・・・一歩下りて、自分自身がリラックスした状態へと舞い降りたことを感じなさい。
九・・・・八・・・・七。深く、もっと深く。
六・・・・さらに、さらにリラックス。
五・・・・もっと、もっと安らかに。
四・・・・三・・・・二。ほぼ、あなたが行き着ける終点ですが、
一・・・・もっと深く下ります。
あなたの身体と心は今やとてもリラックスしていて、あなたが願っている助言を受け入れる準備が整っています。
あなたの瞼に神経を集中しなさい。両方の瞼は糊付けされていて、開けないと想像しなさい。瞼を開こうと試してみなさい。開こうと努力すればするほど、それはさらに強くくっついてしまうことが分かるでしょう。リラックスして瞼との格闘をやめなさい。ほんの一寸、静かに目を開けなさい。深く、深く、目を閉じていた時の倍の深さに舞い降ります。右腕が軽くなっているのを感じなさい。まるで、宙に浮きたいと願っているような感じです。右腕がもっともっと軽くなるのを感じなさい。あなたの腕は持ち上がって来ます。動くままにしなさい。腕は、上に、上に、さらに上に上がるような感じでしょう。上への動きを感じたら三つ数えます。三つ目で腕はぽとんと落ち、あなたは深く、深く下りて行きます。
一・・・・二・・・・三。とても、とても深く、とてもリラックス。
【パートB】
グリーンに移動しましょう。短く刈られた芝をイメージし、フリンジのやや長目の芝にも注目しなさい。旗竿を見なさい。それは何色の旗ですか?グリーンのどこにボールが着地したかに注目しなさい。それはカップからどのくらい離れていますか?ラインを読んでいて、パットを成功させるためにどうしたらよいかを考えているあなたを想像しなさい。カップあるいはボールを見る時に、常にボールがそのターゲット、つまりカップを探し求めているとイメージしなさい。
あなたがパットする番です。ボールがカップに向かうラインを想像しながら、強さ、距離、曲がりを測定しているあなたをイメージしなさい。ボールに歩み寄りなさい。心の中であなたの筋肉の動きを感じながら、パット前の儀式を遂行しなさい。パットに臨みながら、あなたはリラックスしていて、自信が漲るのを感じます。過去に何度もパットを成功させたことを思い出します。数秒間で、ボールがラインに沿って進み、カップに転がり込む場面を想像しなさい。ボールがカップの底に当たった音を想像しなさい。楽な、リラックスした呼吸をしなさい。さあ、スムーズにパターを引き、ボールを打つあなたを想像しなさい。完璧なストローク。完璧なインパクト。さあ、あなたの想像力で、ボールが想定したカップへの道を転がるのを見守りなさい。やった!あなたはとても満足ですが、しかしこれは当然のナイス・パットでした。あなたのパートナーがパットを賞賛する声を聞きなさい。
【パートC】
あなたを元の場所と時間に戻します。五から一まで逆に数えます。一まで達したらあなたの目は開き、今までになくリフェレッシュした感じを味わうでしょう。
五・・・・ゆっくりと楽に、快適に元の場所と時間に戻ります。
四・・・・ゴルフにエネルギッシュに、やる気一杯、熱狂的でありなさい。
三・・・・あなたはいいプレイが出来る腕前があることに、完全に自信を持っています。
二・・・・テープを何度も聴くことがあなたのゴルフを上達させることを知っています。
一・・・・目を開き、リフレッシュした素晴らしい感覚とともに目覚めなさい。
参照:
1) 自己催眠
2) Tiger Woodsの自己催眠・成功例
(February 17, 1999、増補改訂May 29, 2015)
'Elements of Scoring'
by Raymond Floyd with Jaime Diaz (Simon & Schuster, 1998, $20.00)
誰しも「左肱を伸ばす」、「頭を残す」などのSwing Thoughts(あるいはSwing Keys)があるものですが、Ray Floyd(レイ・フロイド)は、「そんなものは全部忘れなさい」と主張します。
「どこへ打つかというのではなく、いかに打ちたいかを考え出すと、ゲームを難しくするだけである。Swing Thoughtsはターゲットからあなたの心を逸らしてしまう。
ターゲットに全力で集中しなさい。いくつか悪いショットがあったとしても、スウィングを変えるのではなく、ターゲットへの焦点を狭めることによって調節しなさい。
ターゲットだけを考えていれば、いまこれからのショットだけを考え、可能な限りうまく処理することが可能。こういう風に一打一打を進めて行くのが真にゴルフをプレイするということなのだ。プロ達が云う、“見つめたところに打つ”が実行出来る」
上のRay Floydのメソッドの応用篇。寄せで最近私がやっている方法ですが、ボールがどういう軌道で飛行し、どの程度弾んでピン傍に止まるかをイメージします。まあ、ここまではやっておられる方も多いと思いますが、もう一つ先があります。ピン傍で停まったイメージ上のボールが、ニコニコと笑って「ここだよ〜!」と私に呼びかけるのです。これは距離感をハッキリ心に刻む効果があるようです。こういう想像を拡大して行くと、ほとんどビョーキの世界になりそうで恐いですが:-)。
(March 01, 1999)
ティー・ショットで池ボチャだといきなり二打増えてしまいます。「大した当りじゃなくていいから、無事に池だけ越えたい」という思いが湧いても不思議ではありません。特にNo.1に池越えがある私のホーム・コースのような場合、一日のラウンドを占う大事なショットになります。スタート前に練習ボールを打っていたとしても、やはりテンションは最大です。「スタンスもやや狭く、クラブも短く握り、大振りせず、ボールを運ぶように…」などと無難路線でヒットするのですが、結果は哀れやっぱり池ボチャ。まれに水切りの術で向こう岸へ渡りそうな気配を見せることもありますが、大概は上陸寸前で息切れしてしまいます。
'The 5 Facts of Impact: Why the ball goes where it goes'
by Dr. Gary Wiren with Peter Morrice ('Golf Magazine' 1998, No.12)
この記事はインパクトにおける5つの要素を分析したものですが、そのクラブヘッド・スピードの項に、「インパクトにおける最高のスピードは最大の飛距離につながる。それはまた、ボールを舞い上がらせる最大のバックスピンを加える強打でもあるので、最高の軌道をも生み出す」という説明がありました。「ボールを舞い上がらせる最大のバックスピンを加える強打」というのがポイントだと思います。つまり、強打しないで「ボールを運ぶように」などという気の抜けたスウィングはバックスピンを加えることが出来ないので、ボールは舞い上がることが出来ないわけです。
いじけた無難路線は、十分に肩を廻さない中途半端なバックスウィングになり易く、ダウンスウィングで手打ちになる恐れも多いと思われます。いずれにしても、選択したクラブの最大飛距離を得るスウィングをするということに尽きるようです。
なお、先ほどの記事の続きはこうです。「速く弾けるようなスピードでパワーを生み出そうとすると、往々にして手と腕にテンションを作り出す。それは筋肉の動きを遅くさせ、インパクトでトップ・スピードに達するのを妨げる」
(March 03, 1999)
四十肩とも云い、五十肩とも呼ばれます。お風呂で背中を洗おうとして腕を廻すと「イテテテ…」というのは、立派な五十肩です。これによって一時「私のゴルフ生命も終りか」と思ったものですが、友人で外科医のMikeが教えてくれた五十肩体操に助けられました。道具はリハビリとかストレッチング用に売っている幅広のゴムベルトです。自転車のチューブを切って広げたようなもの。
先ず道具無しでストレッチングをします。
ゴムベルトの片方に輪を作り、それをドアノブにひっかけます。適当な弾力が得られる位置に立ち、図のような数種類の体操をします。それぞれ両方の腕で12回やったら、次へ移ります。
1)肱を支点に左右に60゜引っ張る
2)上と同じだが、ドアから遠距離になる
3)後ろに引っ張る
4)前に引っ張る
5)手を伸ばした状態から腿(もも)まで引っ張る
6)ベルトの端を踏み、胸元まで引っ張る
これは肩に負担をかけないよう一日おきに実施し、一週目:一日一回、二週目:一日二回、以後:一日三回行ないます。必ずストレッチングの後で行うこと。
一時は朝起きた時も肩がドーンと重かったりしたのですが、これらのおかげで何の問題も無くなりました。Mikeによれば「ゴムベルトの運動はボールの飛距離が75ヤード伸びる:-)」そうです。
痛くて痛くて肩が廻せないという症状がある場合には、体操の前にお医者さんにかかる必要があります。多分肩の突端付近に注射をしてくれて、以後痛みは無くなります。体操を始めるのはそれからです。
(March 08, 1999)
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