公開：1941
監督：Howard Hawks
出演：Gary Cooper、Walter Brennan、Joan Leslie、Ward Bondほか
範疇：実話の映画化／第一次大戦の英雄／信仰／ロマンス

私の評価 ：☆☆

【Part 1】

1916年、テネシー州山間部の小さな村。Gary Cooper（ゲアリ・クーパー）演ずるAlvin York（アルヴィン・ヨーク）は貧しい農家の長男。父は既に亡く、老いた母と未成年の妹、弟がAlvin Yorkの稼ぎに頼っていた。しかし、彼はほどほどに働くと悪童仲間と呑み、喧嘩し、教会の礼拝を邪魔したりする日々を送っていた。

ある日、狩りの途中で美しいJoan Leslie（ジョーン・レスリー）に出会う。洟垂れ娘だとばかり思っていた近所の娘である。Alvin Yorkは彼女と結婚したいと願った。しかし、親代々の狭く小さい農地ではあまりにも稼ぎが少なかった。絶対にいい農地が必要だ！

彼は肥沃な農地の地主に掛け合う。ロバや時計、毛皮などを売っても農地購入には足りない。数週間の期限で金を作ることになり、他人の農地整備などの賃仕事を一杯請け負って、来る日も来る日も働く。しかし、まだまだ金が足りない。頼みの綱は地元の射撃大会だった。射撃に自信のあるAlvin Yorkは豪華な賞品を金に換えて農地を買う腹だった。

母親、妹、弟、恋人が見守る中、Alvin Yorkは自慢の腕で七面鳥射撃に勝ち、最後の射的種目にも勝って農地買収に十分な金を得る。しかし、地主は約束を違えて、Alvin Yorkの恋敵に既に農地を売り払っていた。

憤怒の男と化したAlvin Yorkは、ある嵐の晩、憎き地主と恋敵を殺そうと馬を進める。雷鳴が轟き、Alvin Yorkの銃と馬の馬蹄に落雷する。気絶から蘇った彼は、彼を天に召さなかった神の慈悲を悟り、そのまま教会の夜間礼拝に赴き、以後聖書の教えに従順なクリスチャンに変貌する。

折しも第一次世界大戦が勃発。「汝、殺すなかれ」という聖書の言葉を信じるAlvin Yorkは良心的兵役拒否者として徴兵免除の手続きを取る。だが、その申請は却下され彼は陸軍訓練キャンプへと送られる。抜群の射撃の腕前により、指揮官である少佐は彼を伍長に昇進させ、射撃指導に当たらせようとする。少佐は『アメリカの歴史』という本をAlvin Yorkに示し、「我々の祖先達は自由のために闘って来た」と説き、二週間故郷に帰って考えて来いと薦める。それでも闘うのが嫌なら兵役を免除しようという提案だった。Alvin Yorkは崇拝する西部開拓の先駆者Daniel Boon（ダニエル・ブーン）も国のために闘ったこと、聖書に「シーザーのものはシーザーに、神の物は神に納めよ」とあることを知り、陸軍に留まることを決意する。訓練終了後、Alvin Yorkは同期の兵士達と共にフランスへ送られる…。

後に数々の名作を世に送り出したHoward Hawks（ハワード・ホークス）が初めてアカデミー監督賞候補になった記念すべき作品。Alvin Yorkの支えとなった田舎牧師のWalter Brennan（ウォルター・ブレナン）と母親役のMargaret Wycherly（マーガレット・ワイチャーリィ）はそれぞれ助演賞候補になりました。Gary Cooperは初のアカデミー主演男優賞を獲得。

実際のAlvin Yorkの恋人も当時16歳だったそうですが、演じたJoan Leslieもまさしく芳紀16歳だったそうです。彼女の匂うがごとき初々しさ、美しさはたとえようがありません。Alvin Yorkを未来の夫と定め、面倒な手続きを無視して「これが返事よ」とキスしにやって来るという純情さが堪りません。時に、相手役Gary Cooperは40歳だったそうです。

John Huston（ジョン・ヒューストン）などが脚本改訂し、監督がHoward Hawksですから、ユーモアもたっぷり混じって非常に好ましい映画に仕上がっています。白黒撮影による農地、農作業などが美しい階調で描かれています。

この第一時大戦の英雄を描いた映画は、奇しくも第二次大戦勃発の二ヶ月前に公開され、アメリカの愛国精神高揚に一役買いました。しかし、監督Howard Hawksは「Alvin Yorkの人となりを描いただけであって、政治的プロパガンダとは無縁の映画製作だった」と断言しています。

(June 05, 2001)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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