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公開:1928
監督:Walt Disney、Ub Iwerks
地域:ミシシッピ川沿いのどこか
出演:ミッキー・マウス、ミニー・マウスほか
範疇:短編アニメーション/蒸気船/音楽演奏
私の評価 :☆
【Part 1】
Walt Disney(ウォルト・ディズニー)製作の短編白黒アニメーション。Walt Disneyは以前にヒットした漫画キャラクターの版権を他の会社に奪われてしまい、何とか捻り出したのがミッキー・マウスで、幸い人気が出たため、続々とミッキー・マウス・シリーズを製作しました。この作品はミッキー・マウスものとしては三本目だったそうですが、配給会社の選択によって劇場公開は一番目となりました。この作品は“史上初のトーキー・アニメーション”と呼ばれることもあるものの、実際には他のアニメ・プロダクションが四年も前にトーキー・アニメを公開しているので、“Walt Disneyとしては初のトーキー”ということになります。厳密に云うと、他社のアニメは映像・音声が完全にシンクロしていなかったそうです。この作品はミッキーの(物を叩く)演奏と音楽が完全にシンクロしているのが特徴。
この映画はBuster Keaton(バスター・キートン)の'Steamboat Bill, Jr.'『キートンの蒸気船 』(1928)と同じ年に公開されたこともあり、よく“Steamboat Bill, Jr.'のパロディ”と云われますが、実際にはストーリィもギャグも全く別物で(ハリケーンも出て来ません)物真似ではもちろんなく、パロディでさえもありません。「'Steamboat Bill, Jr.'に触発された企画」という範疇です。
「パロディ」と云われる所以があるとすれば、この映画のタイトルです。Buster Keatonの'Steamboat Bill, Jr.'の"Bill"とはWilliamの愛称です。そして、こちら'Steamboat Willie'の"Willie"も実はWilliamの愛称なのです。題名に関してだけ云えば、完全にBuster Keatonの映画のイタダキということが出来ます。
ミッキーが蒸気船を操縦している。口笛を吹き、汽笛を鳴らし、一人前の船長気取り。そこへ巨人のようなどら猫がやって来て、ミッキーを追い出す。そのどら猫こそ本物の船長で、ミッキーは只の雑役夫でしかなかった。どら猫船長は噛みタバコを噛み、そこら中にペッペッと唾を吐く。
【註】2007年、The Walt Disney Companyは「今後当社の映画の中に喫煙シーンは登場させない」と宣言しました。この'Steamboat Willie'公開の79年後です。
蒸気船の次の船着き場では、牛だの七面鳥だのの家畜が船を待っている。ミッキーはクレーンを使って苦労してそれらを船に積み終える。ミニー・マウスが走って来るが、既に船は桟橋を離れた後。ミニーは「待ってーっ!」と大声で叫びながら船と平行に岸辺を走る。それに気づいたミッキーは、動物を乗せるために使ったクレーンを伸ばし、陸のミニーの洋服にフックをかけ、グイーンと船まで回転させ、無事にミニーを甲板に下ろす。しかし、ミニーが持っていた『藁の中の七面鳥』の楽譜とウクレレが甲板を転がって山羊の足元に行ってしまう。山羊は思いがけぬ御馳走に大喜び。楽譜をむしゃむしゃ食べ、ウクレレまで飲み込んでしまう。
ミッキーは山羊の口の中を覗いてミニーに何か云う。ミニーは山羊の尻尾を蓄音機かオルゴールのハンドルのように廻し始める。すると、山羊の口から音符が続々と飛び出し、『藁の中の七面鳥』を奏で始める。ミッキーは船の備品や船上の動物たちを使って、そのメロディに伴奏をつける…。
たった9分ですからね。お話は短いです。オチも一寸弱い。
【図版はどちらもhttp://upload.wikimedia.orgにリンクしています。左はこの映画のミッキー(1928年)、右がその後】
その後のミッキー・マウスと較べると、ミッキーの手足は貧弱で、尻尾もいやに長いような気がします。例の白い手袋もしていません。顔も目も愛嬌が不足気味。この辺は後にスターとなる俳優や歌手のハングリーな時期にそっくりです。北島三郎や五木ひろしなども、流しをやっていた頃は痩せていて暗い表情でした。人気が出て、いい暮らしが出来るようにつれ、人相も人柄も丸くなって行きます。アニメ・キャラクターも同じだなと思いました。
そういう時期だからだと思いますが、今だと女性や子供に見せるのはどうか?というシーンがいくつかあります。クレーンはミニーのパンティを掴んで持ち上げるのです。最後に、クレーンの先っちょがミニーのドレスをお尻にかけて、パンティを隠します。「親切だろ?」って感じで。船上で寝っ転がって子豚たちにお乳をやっている雌豚がいます。ミッキーは雌豚の身体を持ち上げ、おっぱいを飲んでいる子豚たちを振り落とし、雌豚の沢山ある乳房をランダムに指で押して雌豚に声を挙げさせ、それによって『藁の中の七面鳥』の伴奏を続けます。豚の乳房とは云え、ミッキーが突つき廻す趣向には驚いてしまいます。もう一つ、ネズミなのに猫を恐れないのは漫画だからいいとして、子猫の尻尾を持って振り回し、ミャオミャオ云わせて伴奏にするというのも乱暴です。つまり、この時期のミッキーは“いたずらっ子”なんてもんじゃなくて、結構粗野なキャラクターだったんですね。
この映画のリヴァイヴァルでは上の動物虐待のように見えるシーンをカットして公開したそうです。しかし、私が観たDVDでは完全にオリジナルに戻っていました。
トーキーとは云うものの、台詞は殆どありません。ミニーが短い言葉を発する以外は、サウンドトラックは音楽と効果音が主体です。この当時、ミッキー、ミニーや動物の声はWalt Disneyが自分自身で演じたそうです。
なお、『藁の中の七面鳥』(Turkey in the Straw)は、一般にはフォークダンスで演奏される『オクラホマミキサー』 (Oklahoma Mixer) として知られている曲。
アメリカの著作権法は何度も改定され、芸術作品の保護期間がどんどん延長されています。それは実はこの映画のせいだと云われています。過去に何度もこの1928年製作の'Steamboat Willie'の保護期間が切れ、パブリック・ドメイン(自由にコピー出来る範疇)の作品になりかけたのですが、その度にThe Walt Disney Companyが議会でロビー活動を展開し、常に延長を勝ち取って来ました。最近も同じことが繰り返され、この映画の著作権は2023年まで延長されています。
邦題はallcinemaにリンクするのが慣例ですが、この作品に関してallcinema.onlineは本邦未公開のように扱っていてデータが見当たらないため、日本語版Wikipediaにリンクさせています。
この作品についてはPart 2はありません(書くほどのネタがない)。
(December 07, 2007)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。
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