公開：1994
監督：Ken Cameron
地域：ノース・キャロライナ州
出演：Diane Lane、Donald Sutherland、Cicely Tyson、Anne Bancroft、Blythe Danner、E.G. Marshallほか
範疇：原作もの／TV映画／南北戦争／南軍兵士とその妻／黒人奴隷

私の評価 ：☆

【Part 1】

CBS-TVで放映されたミニ・シリーズ。DVDは170分。長い原題'Oldest Living Confederate Widow Tells All'は、原作小説のタイトルそのままで、直訳すると「現存する最高齢の南軍兵士未亡人が全てを語る」ですが、実話ではなく、モデルさえいない完全なフィクションです。

ノース・キャロライナ州のナーシング・ホーム（看護付きの優雅な養老院）に住む99歳の老婦人Anne Bancroft（アン・バンクロフト）の、現在と過去の物語。

1899年。Diane Lane（ダイアン・レイン）演ずる若き日のAnne Bancroftは、年齢不詳だが格好から云って14、15歳ぐらいの女学生。学校の宿題で南北戦争の話を聞きに元荘園主夫人の屋敷に行くが、老婦人の顔が怖くて逃げ出し、息子のDonald Sutherland（ドナルド・サザランド、推定50歳前後）と鉢合わせする。

Diane Laneは同級生のCamille Cooper（カミーユ・クーパー）と大の仲良しで、二人は永遠の友情を誓って、腕を傷つけ流れる血を交える。年頃の若い娘たちが社交界デビューするダンス・パーティが開かれる。彼女の母親Blythe Danner（ブライス・ダナー）は、娘を社交界の花形にして金持ちと結婚させようと目論んでいる。貧しい家のCamille Cooperが一緒でないので、Diane Laneはふくれ面をし、他の女の子とどつき合ったりする。南軍の礼装に身を包んだDonald Sutherlandが、彼女と踊る。

ダンス・パーティにおける態度で評判を落したDiane Laneからは友達が遠ざかり、ついには親友のCamille Cooperも離れて行く。町の広場でセレモニーがあるが、Camille Cooperらが花束を渡す役を仰せつかり、Diane Laneは無視される。口惜しくてその場を離れたDiane LaneをDonald Sutherlandが追って来て慰めたり励ましたりする。

Donald Sutherlandの母が亡くなる。彼は母の形見のダイヤモンドの指輪をDiane Laneの左手の薬指に嵌める。彼女は拒まない。こうして、父親と娘のような二人が結婚する。母親がセックスについて何も教えなかったせいで、Diane Laneはまるで夫から犯されるような初夜を迎える。

Donald Sutherlandは南北戦争の後遺症で、しょっちゅううなされる。彼は13歳で親友と共に従軍した。敵の銃弾を脚に受け、医師が彼の脚を切断しようとするが、親友は医師にピストルを突きつけて切らせない。ある日の休息で、南軍兵士たちが川辺で水浴びや飛び込みを楽しんでいると、北軍の銃弾がDonald Sutherlandの親友の命を奪う。その場面が悪夢となって甦るのだ。

Donald Sutherlandの母の時代の奴隷の召使い、現在は彼の女中であるCicely Tyson（シシリィ・タイスン）は、Diane Laneを闖入者のように扱い、「朝起きるのが遅い」だの、「ヘアブラシが汚い」だのと文句を云う。Cicely Tysonはヴードウーを信じているようで、それも薄気味が悪い。夫婦がDiane Laneの両親を晩餐に招くと、Cicely Tysonはあからさまに不躾な態度を取る。しかし、Cicely Tysonはヴェテラン助産婦であり、彼女を頼って来た若い妻のお産をDiane Laneに手伝わせて見事にやってのける。

次第にDiane LaneとCicely Tysonは打ち解け、Diane Laneの妊娠を祝って二人は密造酒で乾杯する。Cicely Tysonを信頼してはいるが、Donald Sutherlandにとって彼女はあくまでも黒人であり、妻が友人のように扱うのを嫌って彼はCicely Tysonを馘にする。

1912年、夫婦は六人の子持ちとなっていた。一家八人は車に乗ってDonald Sutherlandがかつて少年兵士として闘ったヴァージニア、メリィランドなどいくつかの戦場を見て廻る。Donald Sutherlandの会社の経営が思わしくなくなる。そんな状態なのに、彼は南軍が使用した銃のコレクションに熱中し、嫌味を云う妻を殴る。彼は長男に鴨猟を教えようとし、彼女が猛反対するが聞き入れない。末子の赤ん坊（男の子）が熱病で死ぬ。Diane Laneはショックで寝込み、夫の旅行中に一人で家出する決意をする…。

実際にはもっと現在と回想が錯綜するのですが、煩雑なので整理しちゃいました。この映画の見ものはメイクアップです。Anne BancroftとCicely Tysonは100歳ぐらいまで老けますし、Diane Laneも70歳ぐらいまでは老けて見せます。そのメイクはバスト・サイズぐらいまで寄って撮影しても耐えられるほどうまく出来ています。終始顔中髭もじゃのDonald Sutherlandにはメイクする面積がなかったと見え、彼だけはあまり変わりませんが。

親子ほども歳が違う男女の結婚ですが、これは原作者がさんざ頭をひねった結果でしょう。元南軍兵士であれば歳をくっていなければならず、現存する最高齢（100歳）の未亡人であれば相当若くして結婚させなければならないわけです。結果から逆算した設定だと推察します。そういう結婚をさせるために、作者は主人公の男女二人を世の中から少しハミ出た“変人”として扱っています。

主要人物を演ずるのはみな名だたる映画俳優ですが、それぞれ手抜きしないで真面目にやっています。ギャラだけの芝居をするというより、TVドラマもこういう風にVHSやDVDとして残るので、いい加減な芝居は出来ない時代になったということでしょう。

Cicely TysonはこのTVドラマの20年も前に'Autobiography of Miss Jane Pittman'（1974、本邦未公開）で110歳の老婦人を演じていますから、ここでもメイクだけに頼らず、小刻みに手を震わせたりして存分に老け役を楽しんでいる感じ。リアルな演技で、かつユーモラスなゆとりが漂い、しかも（目の芝居など）全身から存在感を滲み出させるという素晴らしい役者です。

Diane Laneは娘時代から老境まで頑張っています。まあ及第点（私の好きな女優じゃないので、点が辛い）。Donald Sutherlandはレッドネック（男尊女卑、人種差別、ときに粗暴）の特徴と、それでもなお妻から愛される優しさ、信頼感などを兼ね備えた男を真摯に演じています。老いてなお好色であるという存在が可笑しい。

Anne Bancroftも懸命にやっているとは思いますが、あまり芝居のしどころがありません。メイクはともかく、彼女の演技は99〜100歳には見えないのが問題。せいぜい80歳程度。仕草がのろのろしていないのと、台詞廻しが早過ぎるのが原因だと思います。一般的に100歳になろうという人は、もっと云い淀んだり、ろれつが廻らなかったり、聞き取りにくい喋り方をするのではないでしょうか。彼女は演技派なのに、ここではあまり計算されていないように思えます。これでいいのなら、いっそDiane Laneに100歳までやらせたら良かったのでは？…という気がします。

Gwen Verdon（グエン・ヴァードン）が出ています。ミュージカル'Damn Yankees!'『くたばれ！ヤンキース』（1958）の舞台と映画双方に主演した、あのGwen Verdonです。ナーシング・ホームの住人の一人ですが、ご愛嬌に踊って見せたりします。E.G. Marshall（E.G.マーシャル）も住人の一人。役不足な軽い存在で、彼が可哀想。

(November 23, 2007)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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