公開：1942
監督：S. Sylvan Simon
地域：ジョージア州
出演：Red Skelton、Ann Rutherford、Guy Kibbee、Diana Lewis、Celia Travers、Rags Raglandほか
範疇：コメディ／スリラー／ラジオ・ショーのタレント／素人探偵／殺人事件／宝探し

私の評価 ：☆

【Part 1】

"The Fox"（狐）と自称する素人探偵の活躍を放送するラジオ・ショーの主人公Red Skelton（レッド・スケルトン）とその婚約者Ann Rutherford（アン・ラザフォード）のコンビによるドタバタ・コメディ。第一作は'Whistling in the Dark'なる戯曲の映画化（本邦未公開、1941）でしたが、二作目にあたる本作'Whistling in Dixie'以降には原作はなく、映画用のオリジナル脚本です。三作目'Whistling in Brooklyn'（本邦未公開、1943）まで続いた人気シリーズ。

一作目の'Whistling in the Dark'は、ある秘密宗教団体が邪魔になる人物の殺害を、なんと人気声優Red Skeltonにやらせようとし、同じ番組の女優兼婚約者のAnn Rutherfordを巻き込んでてんやわんやになるというお話。そのクライマックスは囚われた男女がラジオを送信機に改造して（？）警察の助けを呼び、同時に殺害されようとする人物（飛行機で旅行中）に警告を発しようとするシーン。悪党一味のトロい運転手Rags Ragland（ラグズ・ラグランド）が、Red Skeltonから「ラジオ・ドラマの生放送だ、あんたも出ろ」と云われ、Red Skeltonに協力して犯罪者役を熱演してしまうのが可笑しい。というわけで、二作目ではそのRags Raglandが二役で大活躍します。彼は三作目にも出ていますので、当時かなり受けたことが分ります。

ジョージア州。1868年建立で今は廃墟となっているFort Dixon（ディクスン砦）。夜、背広姿の男が辺りを窺いながら砦への道を登って行く。その彼をつける一人の女。銃声一発、男が倒れ女が悲鳴を挙げる。南軍の愛唱歌'Dixie'が口笛で流れる。

女がシェリフや地方検事、判事などを連れて戻って来るが、男の死体は忽然と消えていた。女は判事の娘Celia Travers（セリア・トラヴァース）で、判事の姪Diana Lewis（ダイアナ・リュイス）と双方が口々に「死んだ男Gordon（ゴードン）は私を愛していた」と主張する。

帰宅した判事の娘Celia Traversは、父親の寝室に忍び入り、父親の拳銃を調べる。父がGordonを射ったのではないかと疑っているのだ。そんな彼女の行動を判事の姪Diana Lewisが窺っている。

その頃、ニューヨークのラジオ・スタジオでは、人気探偵番組'The Fox'の主人公Red Skeltonが"murder"（殺人）という言葉を聞くと身体が引き攣るアレルギー反応を起すようになっていた。それは過労のせいであると医師が診断し、放送局から二週間の休暇が与えられることになった。婚約者Ann Rutherfordは「丁度いいから新婚旅行にしよう」と提案する。そこへ彼女の元同級生Diana Lewisが「助けに来て。あなたのボーイフレンドも一緒に」という手紙を寄越す。Ann Rutherfordは急遽旅行先を変更し、「何で新婚旅行にジョージア州なのさ？」と納得しないRed Skeltonを引っ張って旧友を助けに向う。

空港に判事、その娘Celia Travers、姪Diana Lewisが出迎えてくれる。彼らの運転手はRags Raglandで、前作の最後に彼を刑務所に送り込んだRed Skeltonは、彼が脱獄したと思い込んで運転中のRags Raglandと取っ組み合いをする。Rags Raglandには双子の兄がいて、そちらはまだ刑務所にいることが分る。

Diana Lewisの案内で、Red SkeltonとAnn Rutherfordは砦を見に行く。誰かが床を掘っている影法師が見え、近づいた三人に向って拳銃の轟音。怪しい人物は消え失せたが、三人は妙なことが書かれた紙切れを見つける。

その頃、脱獄したRags Ragland（兄）が弟を頼って判事の家にやって来る。Red SkeltonはRags Ragland（兄）とRags Ragland（弟）と交互に顔をあわせ、トンチンカンなやりとりが続く。

夜、酔った判事がアメリカの詩人Henry Longfellow（ヘンリィ・ロングフェロー）の詩を口ずさむ。Red Skeltonはその詩をヒントに昼間見つけた紙切れの謎を解く。シェリフに連絡し、一同はまたも砦に向う。Red Skeltonは床を叩いて廻り、空ろな音を立てた部分を持ち上げ、宝の箱を見つける。中には南軍の札束がぎっしり。それは現在では通用しない紙くずなので、そんなもののために殺人事件が起るとは思えない。Red Skeltonは札束を取り除く。すると、下には英国の19世紀の金貨がわんさと詰まっていた。これは価値があった、殺人につながるほどの…。

Red Skeltonの演技はDanny Kaye（ダニィ・ケイ）にちょっと似ています。ドジで臆病で、自ら災難を招くようなキャラクターであることも似ています。このシリーズのRed Skeltonは、過去のラジオ・ドラマに出て来たトリックや謎解きの方法を思い出して、賢く事件解決の糸口を見出しますので、そこがDanny Kayeと異なる点。Danny Kayeのコメディ演技は、神経症的で時にはクレイジーでさえありますが（ここが好みの分かれ目）、それでも洗練されていて、可笑しさ80〜90%のギャグがスピーディに展開します。Red Skeltonのギャグは常に可笑しさ50〜60%で、それもかなり歩みがのろく途絶えがちです。私はDanny Kayeのファンなので、この映画の展開にはかなり苛々させられました。

Ann RutherfordはRed Skeltonの婚約者役にはもったいないような小柄の美人で、身体を使ったアクションも見せ、真面目に務めています。Rags Raglandは何やら東欧系の顔立ちで、くぐもった妙な発声をしますが、この映画の功労者と云ってもいいような活躍をしています。

早く結婚したいRed SkeltonとAnn Rutherfordですが、ジョージア州に到着早々「訪問者は州に来て5日間は結婚出来ない」と云われてがっくりします。特に、早くフロリダかどっか観光地に行きたいRed Skeltonはショックを受けます。英語版Wikipediaの"Marriage license"（結婚許可証）を読むと、アメリカでは結婚登録をして結婚許可証を得るまで1〜6日ほど待つのが普通（州によって異なる）とあります。これは他州からの訪問者という条件ではなく、全てのカップルが対象です。この映画は1942年公開ですが、「訪問者は5日待つ」というのが当時のジョージア州の真の条例だったのか、脚本家の出任せなのか、どちらでしょうか。現在、許可証発行までに数日待つのは50州のうち23州（3日待たせる州が多い）で、他州から来たカップルに4日待たせるという条件があるのはデラウェア州だけです。現在のジョージア州では待ち時間なしで許可証が発行されます。

なお、二人が役場を訪れると結婚許可証申請料はたった2ドルです。釣魚ライセンスは3ドル、犬の登録は5ドルで、人間の結婚が一番安い値段。本当なのか、冗談なのか？なお、2007年現在のジョージア州の結婚許可証申請料は平均30ドルで、フロリダ州の88.50ドル、ミネソタ州の70ドルなどに較べれば安い方です（全米のほぼ平均の額）。

(November 18, 2007)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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