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War Eagle, Arkansas



[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:2007年
監督:Robert Milazzo
地域:アーカンソー州
出演:Brian Dennehy、Mary Kay Place、Luke Grimes、Dan McCabe、Misti Trayaほか
範疇:実話に基づいた物語/田舎町/少年二人の友情/野球/スカウト

私の評価 : ☆

【Part 1】

アーカンソー州のオウザーク山地の一部にWar Eagleという小さな町がある。銀行は一つ、医師は一人しかおらず、貧しくのんびりした町である。農夫で野球狂のBrian Dennehy(ブライアン・デネヒィ)が監督を勤める地元高校の野球チームEagles(イーグルズ)のエースは、彼の孫Luke Grimes(ルーク・グライムズ)だった。Luke Grimesは吃りで、彼の幼馴染みのDan McCabe(ダン・マケイブ)は車椅子が欠かせない身体障害者。Luke GrimesはDan McCabeを車に乗せたり、ベッドに寝せるのを助け、Dan McCabeはうまく喋れないLuke Grimesの代弁者となり、お互いに助け合う親友同士。二人はWar Eagle River(ウォー・イーグル川)を見下ろす高台に行って、黙って座っているのが好きだった。

【註】"ware eagle"なら「イヌワシ」ですが、"war eagle"という鳥は存在しません。日本語の「荒鷲」のように、勇ましい鷲のイメージを表わす言葉なのでしょう。ここでは純然たる地名。アメリカで場所を表わす場合、「地名+(カンマ)+州名」で表記する慣習です。

EaglesのライヴァルEureka(ユウレカ)チームの連中がLuke Grimesの吃りとDan McCabeの障害をからかう。Luke Grimesは取っ組み合いの喧嘩をする。

Luke Grimesの祖父と母親は農業で生計を立てて、三人で暮らしている。卒業を間近にしたLuke Grimesを野球のスカウトが訪れる。スカウトは、奨学金でテネシーの大学へ行って野球が出来ることや都会での夢のような暮らしについて滔々と喋りまくる。

Dan McCabeは車椅子ながらDVDレンタル店で働いている。その経営者の黒人James McDaniel(ジェイムズ・マクダニエル)は敬虔なキリスト教信者で、教会建設に取り組んでいる。

Brian Dennehyは野球場で孫Luke Grimesとキャッチボールしながら、「お前は落伍者になるな」と説く。Luke Grimesは「お祖父ちゃんやママみたいになるなってこと?」と聞く。祖父は「そうだ。おれたちはworking class(労働者階級)だからな」と云い、孫は「working classで何が悪いの?」と憤慨し、グラヴを投げ捨てて去る。

Dan McCabeの誘いでLuke Grimesはライヴ・ハウスへ行き、Ozark Mountain Hoe-Downバンドの歌と演奏を聴く。バンドには彼の好きな娘Misti Traya(ミスティ・トレイヤ)が加わって歌う。Luke Grimesは目を輝かせて聴き入る。終演後、Luke GrimesはMisti Trayaに「よかったよ!」と云いたいのだが吃って喋れず、周りの女の子たちに笑われてすごすごと引き下がる。Misti Trayaが女の子たちをたしなめる。

ある日、祖父とのキャッチボールから戻ると、母が息子に野球のボールを渡す。それにはMisti Trayaの電話番号が書いてあった。「連絡して」というメッセージである。Luke Grimesは飛ぶように友Dan McCabeの家に行き、自分の代わりに彼女への電話を頼む。「アーカンソーのオールスター野球大会を見に来てくれ」という願いだったが、彼女は既に予約券を買ってあるとのことだった。Misti Trayaが観戦する中、Luke Grimesはアーカンソー西部地区チームのエースとして活躍する。

Luke Grimesは勇気を出して自分でMisti Trayaに電話し、デイトの約束を取り付ける。しかし、一人では心もとないのでDan McCabeに付き添いを頼む。しかも、シャツの下の二の腕に話題に困った時の話のネタを書いてのデイト。Misti Trayaは奇妙な三人のデイトで面食らう。この地域の名物の洞窟に行く。車椅子は入れないのでLuke GrimesとMisti Trayaだけで入る。二人は洞窟の中でキスをする。

Luke GrimesとMisti Trayaがやって来て、Dan McCabeの家のTVゲームで遊ぶが、いつの間にか二人はDan McCabeの寝室でいちゃいちゃし、怒ったDan McCabeが「二人とも出ていけ!」と怒鳴る。

Luke GrimesはDan McCabeの母親に相談する。「彼は変わった。このままでは、僕は町を出て大学へ行けない」と打ち明ける。親友の母親は「変わっちゃいないわよ。あんたに妬いてるだけよ」と云う。またスカウトが来て、契約書にサインさせようとするが、Luke Grimesはサインせず祖父を苛立たせる…。

アーカンソー北部とミズーリ州、オクラホマ州にまたがる高原を"Ozark Mountain"(オウザーク山地)と云い、そこには独特のフォーク・ミュージックが伝わっているそうです。映画の中で流れる音楽もそのトーンを活かしているようです。

主人公二人のモデルである実在の人物は、現在40代となって今もWar Eagleの町に住んでいます。俳優の二人の若者たちは本物の人物と町を歩いたり会話したりして、演技の感じを掴んだとのこと。Luke Grimesは Joaquin Phoenix(ホアキン・フィーニックス)を若く甘くしたような顔立ちですが、モデルの男性は丸顔で別にハンサムでもありません。彼はもう吃りを克服していて、流暢に話が出来ます。身体障害を持つDan McCabeのモデルの人物はいまだに車椅子無しでは生活出来ません。Dan McCabeは忠実に手つきや表情、喋り方を盗んで演技しています。

ある地方の映画祭(Breckenridge Festival of Film)で、二人の若者は共に助演男優賞にノミネートされましたが、投票は同点だったため二人が一緒に受賞したそうです。Luke Grimesの吃りの演技は巧過ぎて痛々しくなるほど。DVDの最初で、彼のナレーションが始まった時、私はDVDに傷があって針飛びしているのかと思ったほどでした:-)。

この映画の撮影監督はMasanobu Takayanagiとなっています。この方の劇場映画の担当作品は20本近くあるものの、一本も日本には輸入されていないようで、allcinemaの検索でも邦題は全くヒットしません。なぜこの方が撮影を担当することになったかというと、この映画はカメラ・レンタル会社Panavision社の"New Filmmaker Ptogram"(新人監督の作品にカメラを無料で貸し出す制度)の一本に選ばれ、Panavision社がMasanobu Takayanagi氏を推薦したんだそうです。カメラ会社が選んだのですから、撮影が悪かろう筈はありません。氏はフィルムにFuji Filmを採用しています。想像ですが、ナイト・シーンが多いので高感度で評判のいいFujiを選んだのではないでしょうか?ただし、人員・機材・時間不足のせいか、自然光を多用するという狙いのせいかどうか不明ですが、照明不足でメリハリの無いシーンが何ヶ所かありました。残念です。

(May 11, 2010)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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