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公開:1997
監督:Richard Friedenberg
地域:テネシー州
出演:James Cromwell、Tantoo Cardinal、Joseph Ashton、Graham Greene、Mika Booremほか
範疇:原作もの/少年もの/チェロキー・インディアン/自然の中の教育/家族愛
私の評価 :☆☆
【Part 1】
1935年、テネシー州。白人男性James Cromwell(ジェイムズ・クロンウェル)とチェロキー・インディアンの女性Tantoo Cardinal(タントゥー・カーディナル)から生まれた父が、白人女性と結婚し少年Joseph Ashton(ジョゼフ・アシュトン)が生まれた。父は戦争に行って亡くなり、少年が8歳の時に母も亡くなった。母の妹が少年を引き取ろうとするが、少年の祖父James Cromwellと祖母Tantoo Cardinalがやって来て、当然のように少年を連れてバスに乗り、町から山へと歩いて山中の彼らの小屋に向う。
祖父と祖母は少年を"Little Tree"(小さな木)とインディアン名で呼ぶ。ここから学校には遠くて通えないので、祖母が読み書きを教えることになる。少年は犬四頭に囲まれ、自然の摂理(鳥の弱肉強食など)を知り、チェロキーの知恵を教わり、祖父の密造酒作りを手伝う。
Graham Greene(グレアム・グリーン)演ずるチェロキー・インディアンの末裔"Willow John"(柳のジョン)がやって来る。彼は暖炉の前で少年にチェロキー・インディアンに何が起ったかを話して聞かせる。「チェロキーはずっとこの山中に住み農業に従事していた。ある日、白人たちがやって来て、チェロキーは条約にサインした。それは問題のない内容でチェロキーは『白人たちはいい連中だ』と考えたほどだった。しかし、その後軍隊がやって来て『条約の文言は変更された』と云い、チェロキーは家や畑を捨て、遠い西の果てに移動しなければならなくなった。軍隊は馬やロバに乗れと云ったが、チェロキーは歩き通す決意をした。山から遠ざかるにつれチェロキーは何百、何千と死に始めた。チェロキーは亡くなった肉親を背負って歩いた。夫は亡妻を、息子は死んだ母を。その行進を見た人々は、それを"Trail of Tears"(涙の行列)と呼んだ。しかし、チェロキーは泣かなかった。彼らは歩き続けた」
少年がベッドに入ろうとすると、そこに立派な大きなナイフが置いてあった。"Willow John"の贈り物だった。
翌朝、祖母は少年の靴を脱がせ、インディアン特有の柔らかい鹿革の靴を履かせる。祖父と少年は山を下りて、町へ密造酒を売りに行く。少年は裸足で遊んでいる貧しい少女と出会う。少女は父親の受け売りで「インディアンは怠け者だ」と云う。祖父は売り上げから少年の分け前として50セントくれる。
日曜日、一家は正装して教会へ行く。牧師は政治家を礼賛し、政治家嫌いの祖父の顔をしかめさせる。教会に当の政治家がやって来て演説する。その間に例の少女が少年を呼び、繋がれた子牛を見せる。二人は子牛を飼いたがる。持ち主が、「それは売り物だ」と云い、少年から50セント受け取る。山道を歩く途中、子牛は死んでしまう。もともと病気だったのだ。
祖母は子牛の一件で少年がこれから騙されないように諭し、祖父は薪割りや魚獲りの方法を教える。祖父はガラガラ蛇に襲われそうになった少年を救おうとして、自分が噛まれる。祖母は鳥の雛を裂いて夫の傷口に当て、少年と二人で体温で温かくして夫を介抱する。奇跡的に祖父は助かった。
しかし、一難去ってまた一難。政府の役人がやって来て、「少年を学校にもやらずに育てるのは合衆国の条例違反である。少年は法律的にはインディアンなので、近くのインディアン専用寄宿学校で18歳まで過ごすことになる」と伝える。町の弁護士も祖父に「あきらめろ」と云い、祖父は少年を学校にやることになる。
祖母は「夕方、大犬座を見なさい。あなたのお祖父ちゃんも私も見ます。"Willow John"も見るわ」と云う。少年は一人バスに乗せられ、インディアン学校へと向う。そこには監獄のような生活が待っていて、少年は毎夕大犬座に向って「帰りたいよ」と語りかけるのだった…。
祖父役James Cromwellはヒット作'Babe'『ベイブ』(1995)の二年後で、'L.A. Confidential'『L.A.コンフィデンシャル』と同じ年。善人も悪役も務まる達者な俳優で安心して観ていられます。祖母役Tantoo Cardinalはアメリカ・インディアンとヨーロッパ人の混血でカナダ人。芝居はやや固いですが、本物のインディアンの血を活かして存在感があります。'Dances with Wolves'『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990) では白人女性の養母役で出ていました。少年役Joseph Ashtonは固いなんてもんじゃありませんが、決めの台詞を喋る時のきっぱりとした表情と口調がいいです。
Graham Greeneは、もとニューヨークの北方に住んでいたOneida(オネイダ)インディアンの末裔だそうです。彼も'Dances with Wolves'に重要な役で出ていました。カナダ出身。
少年が学校へ去る前、いつも裸足で歩いている女の子に、祖母が子牛の皮で作った靴を上げます。少女は喜びますが、その父親は怒って娘のお尻をベルトで打ちます。父親は靴を少年に突っ返し、「施しは受けない。特にインディアンからはな!」と云って、娘を引き立てて去って行きます。政府の役人の目にもインディアンを蔑むような色があり、インディアン学校の校長(白人)にも同じ気味が見られます。黒人差別と同種の人種偏見が語られているわけです。
アメリカ大陸の真の"native people"はインディアンだったわけですから、後から侵入して来てどんどんインディアンを迫害した白人たちに、インディアンを蔑むことは許されないわけですが、事実は逆なんですね。日本人もアイヌ民族を北方へ追いやった過去があり、イギリス人もオーストラリア大陸のアボリジニを囲い込んで白人の国にしています。偉そうなことは云えません。
この映画は原題('The Education of Little Tree')の通り、祖父と祖母がさまざまなことを少年に教えるのですが、最大のものは家族の結びつきに関するものです。祖父がガラガラ蛇に噛まれて生死の境をさまよっている時、祖母が云います、「たとえあなたのお祖父ちゃんの身体は死んでも、お祖父ちゃんの魂は私たちを見守ってくれる。だから、哀しくなんかないのよ」と。事実、彼女は後に夫が亡くなっても泣いたり喚いたりせず、平静そのものです。
映画の終盤は成長した"Little Tree"のナレーションによって進行します。彼は「祖父の後を追うように祖母も亡くなった。私は夕方毎日のように大犬座を見上げながら、『お祖父ちゃん、お祖母ちゃん、待っててね。"Willow John"も待ってて。いつか又一緒に楽しく暮らそうね』と。羨ましくなるような結びつきです。日本にも命日とかお彼岸とか、死者を思い、慰める慣習はありますが、上のように故人の魂と共に暮らしているという実感や、あの世での再会を願うような気持はほとんどないと思います。アメリカ・インディアンの信念は宗教を越えるもっと根源的なものであって、もっと美しいものであるような気がします。
アクションものの続編や馬鹿笑いを誘う青春コメディばかり乱発するアメリカ商業映画の中に、このようにピュアな心を伝えるような珠玉が混じっていたことに驚嘆したのですが、よく見たらこの映画はカナダの作品でした。大ヒットとなるような期待は最初からなく、映画製作者たちの良心を満足させるためにだけ作られた映画のようでもあります。
内容に相応しく、霞たなびく山並み、黄葉の森林、清涼な小川のせせらぎ、真っ赤な日の出など、山岳地帯の自然も美しく撮影されています。DVDの画質・鮮明度も優秀。家族で観るのに相応しい映画です。
(April 25, 2007)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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