公開：1941
監督：John Ford
出演：Charley Grapewin、Marjorie Rambeau、Gene Tierney、Dana Andrewsほか
範疇：コメディ／ドラマ／プア・ホワイト

私の評価 ：☆

【Part 1】

1930年頃、大恐慌下のジョージア州サヴァンナ。オーガスタから南の、サヴァンナ川に沿う煉瓦舗装道路を人呼んで“タバコ・ロード”。この周辺には貧しいシェアクロッパー（農園主から土地、肥料などを借りて小作料を収穫物で納める小作農民）や日傭農民が満ち溢れていた。彼等はもう一歩落ちぶれて黒人以下の扱いになることを恐れる状態だった。

医師の運転手、新聞記者などの職に就いたため、このタバコ・ロード付近の農民の窮状に詳しかったErskine Caldwell（アースキン・コールドウェル）は、1932年にそうした貧農を描いた小説『タバコ・ロード』を出版しベストセラーとなった。これはJack Kirkland（ジャック・カークランド）によって戯曲化され、その舞台も七年に及ぶロングランの大ヒットとなった。その戯曲を元にNunnally Johnson（ナナリィ・ジョンスン）が脚本を書き、John Ford（ジョン・フォード）が映画化した作品がこれ。

Charley Grapewin（チャールズ・グレープウィン）の農地は今年は旱魃で何も実らなかったため収入はゼロで、妻、20歳になる息子Dude（デュード）、適齢期の娘の一家四人は飢えに苦しんでいた。Ward Bond（ウォード・ボンド）がやって来て結婚生活の泣き言を云うが、彼の話にお構いなく、一家はWard Bondを押さえつけてターニップ（カブ）の袋を奪い取る。一家四人の夕食はカブにカブりつくことだった。

Charley Grapewinが尊敬する元大尉のDana Andrews（ダナ・アンドリュース）がやって来る。金銭的に助けて貰おうと思ったのに、彼がくれたのはトウモロコシ数本だけ。同行の銀行家は「次の日曜の9時までに$100払わないと立ち退いて貰う」と宣言する。再開発で大規模農園を作る予定なのだ。

Marjorie Rambeau（マージョリィ・ランボー）演ずるSister Bessie（シスター・ベッシィ）は、何かというとすぐ調律用の笛を鳴らしてから賛美歌を歌い出す変わり者。Charley Grapewinの息子Dudeは脳足りんだが、賛美歌の二重唱では彼女と息が合う。ついに二人は結婚を決意する。代書屋で結婚登録しようとするが、39歳の女性と20歳の青年の結婚を本気にしてくれない。二人は賛美歌を歌い出し、近くの客達も唱和する。宗教的圧力に負け代書屋は仕方なく書類を作る。彼女は亡くなった亭主の保険金があるので、結婚記念に新車を$800で購入する。Dudeはすぐさま木にぶつけたり、垣根をブチ割って新車を台無しにする。

Charley Grapewinは神に祈る。「立ち退きを免れるにはどうしても$100必要なのです。ターニップ（カブ）を盗んだ罪を許して頂き、もう一回のドロボーをお許し下さい」彼は息子夫婦の車を盗み、道路傍にいた紳士に$100で売付けようとする。この紳士は警察署長だったので、簡単にパクられてしまう。しかし、親戚同士のいざこざとして無罪放免される。

Ward Bondがまたやって来る。嫁さんに逃げられたと泣く。「待ってました！」とCharley Grapewinの長女が彼を追って家を出る。

妻は黙って立ち退きの準備をする。といっても、家の中は空っぽ同然で、「持ってく物も無いんだわ」と云うほど寂しい有り様。金も無く、住むところも無くなる二人はこの先どうなるのだろうか…。

以上のように書いてもこれがコメディであるとは信じて貰えないかも知れませんが、本当に喜劇なのです。馬鹿息子のDudeに顕著ですが、ほとんど無声喜劇みたいな場面も沢山あります。まあ、それが問題と云えなくもないのですが、ともかく悲惨な貧窮農民をコミカルに描くという、世にも変わった実験と云えましょう。

(June 09, 2001)

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