公開：1945
監督：Jean Renoir
出演：Zachary Scott、Betty Field、J. Carrol Naish、Beulah Bondiほか
範疇：原作もの／ドラマ／シェアクロッパー／家族

私の評価 ：☆☆

【Part 1】

Zachary Scott（ザカリー・スコット）とBetty Field（ベティ・フィールド）はテキサスの綿農場の綿摘みに雇われている夫婦である。ある日、畑で一緒に働いていた叔父が倒れる。彼の最後の言葉は「自分の蒔いた作物を収穫しろ」というものだった。

Zachary Scottは農園主に会い、シェアクロッパー（農園主から土地、肥料などを借りて小作料を収穫物で納める小作農民）になる相談をする。普段から働き者の彼だったので、快く承諾される。与えられた土地は農園の外れ。小型トラックに夫婦と子供二人、家財道具一切合切を積み、おまけに祖母を荷台に座らせて引っ越す。到着した先は凄いあばら家。そんな家が気に入らない祖母は荷台から降りない。凄まじい外観に唖然とした妻も、気を取り直してストーヴに火を点ける。豪雨となり、家中雨漏りがする。トラックの荷台で濡れしょぼたれた祖母も、たまりかねて家に入って来た。

先ずは川で洗濯、鉄砲で獣を捕って飢えをしのぐというサヴァイヴァル生活。雑草を刈り、耕し、綿の種を蒔く。

やがて、綿も育って来る。しかし、いいことばかりではない。息子が病気になり、医者に診て貰う。「金は持っているか？」と聞かれた妻が、診察料のつもりでありったけの金額を云うと、「診察料はいいから、牛乳と野菜を食べさせろ」と云ってくれる。春まだ浅く野菜は実っていない。牛を飼っているが不親切な隣人は牛乳を分けてくれない。妻は絶望の余り大地に突っ伏して泣く。Zachary Scottは神に問いかける、「主よ、ここは空は美しいが土地は泥土で最低です。ここの全てを諦め、空の見えない町の工場で働くべきですか？教えて下さい」…と。

このアメリカ南部の貧しい農夫の物語を作ったのがフランスの監督Jean Renoir（ジャン・ルノワール）だというのですから驚きです。彼は既に『大いなる幻影』などで世界的に知られた監督でした。彼はナチの侵略と第二次世界大戦を逃れ、アメリカで仕事をしていたのです。滞米中六本の映画を撮ったそうですが、後に「一本を除いて全ての映画を消し去りたい」と語ったそうです。その例外の一本が、この'The Southerner'『南部の人』です。

主役のZachary Scottはテキサス州出身ですが、この映画の俳優の多くが南部出身でないことを初めとし、John Ford（ジョン・フォード）の'The Grapes of Wrath'『怒りの葡萄』(1940)と比較されたり、公開当時、色々批判を浴びたようです。

単に貧しい農民の悲惨さを強調する映画ではなく、農業（土の上に何かを育てること）が生き甲斐の男、それに誇りを持っている男、愛する家族のために骨身を惜しまない男…そうした爽快な人物を中心に、健気に生きる南部の人々を大自然の中に描いた珠玉の掌篇と云えましょう。

(May 21, 2001)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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