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Sonny

ソニー


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:2002
監督:Nicolas Cage
地域:ルイジアナ州ニューオーリンズ
出演:James Franco、Brenda Blethyn、Harry Dean Stanton、Mena Suvari、Brenda Vaccaroほか
範疇:男娼/娼婦/売春/母子/人生の落後者/更生?

私の評価 :☆1/2

【Part 1】

日本のSONYではなく、若手俳優James Franco(ジェイムズ・フランコ)が演ずる男娼(おかまではなく、女性に春を売る男)のSonny(ソニィ)の物語。俳優のNicolas Cage(ニコラス・ケイジ)が映画化権を得て15年間も温めて来た脚本を、自分の製作、初監督で映画化した作品。上の「範疇」だけ見ると薄汚くおどろおどろしい映画に思えるでしょうが(確かにそういうところもあるのですが)、実際にはピュアな精神に溢れた佳作とも云えるものです。

1981年、ルイジアナ州ニューオーリンズ。26歳になったJames Francoが三年の兵役を終えて戻って来た。彼の母親Brenda Blethyn(ブレンダ・ブレスィン)は娼婦の置き屋の女将で(と云っても現在抱えているのはたった一人)、James Francoを子供の頃から男娼として訓練し、猥雑な街フレンチ・クォーターでJames Francoを知らないものはいないほどの“逸材”に仕上げていた。母親は彼の帰還を喜び、早速商売して貰おうと皮算用する。

しかし、James Francoは軍隊生活で「人生には売春以外の生き方もある」ということを学び、軍隊で知り合ったテキサスの小さな町の本屋の息子Scott Caan(スコット・カーン)のところで働く決意をしている。

彼の母親が抱えている娼婦Mena Suvari(ミーナ・スーヴァリー)は、自分に求婚している中古車屋の親父にフェラチオのサーヴィスをして、James Francoのために車を一台と$100の洋服代を借りて来る。彼女はその見返りとしてJames Francoの“サーヴィス”を要求し、“生まれついての男娼”である彼のテクニックに"Oh, God!"と満足する。

母親Brenda BlethynはMena Suvariに警告する。「足を洗って息子とテキサスに行こうなんて考えるんじゃないよ。お前は私のものなんだから」しかし、Mena Suvariは普通に子供を生んで平凡な生き方をしたいと願っている。

James Francoは母親の古い友達Harry Dean Stanton(ハリィ・ディーン・スタントン)に「おれは、何か自分に出来ることがあるか証明もせずにこのまま歳をとりたくないんだ」と云う。彼は車でテキサスに向かう。しかし、Scott Caanの親父の本屋は倒産して人手に渡っており、Scott Caan自身さえ働き口がない状態だった。二人はダブルデートに出て、James FrancoはJosie Davis(ジョジー・デイヴィス)と寝る。Josie Davisは彼のテクニックに"Oh, God!"と笑みを浮かべ、「あなたはこれで生きて行くべきよ」と冗談を云う。James Francoが正直に「軍隊に入る前は男娼だった」と告白すると、慌てて薬を服む。James Francoは自分が汚い存在と思われたことが口惜しくて暴れ廻る。

帰宅すると、待っていた母親が「あたしには年金もないし、お前だけが頼りだ」とかき口説く。James Francoは昔なじみの中年女性相手に“商売”し、「他に客がいたら紹介してくれ」と頼む。こうして、彼は完全に元の仕事に復帰する。Harry Dean Stantonは「友達がお前に仕事をくれそうだ」と云うが、James Francoは「フレンチ・クォーターの半分の人間がおれを男娼だと知っている。誰もおれに普通の仕事なんかくれないよ」と自棄になっている。

James Francoは裕福な中年婦人の邸宅へ警官の服装でコスプレ・サーヴィスに行ったり、Mena Suvariとペアでパーティの主人役夫婦それぞれを満足させる出張サーヴィスに出向いたりする。

そうした“出張”の帰り、James FrancoとMena Suvariはドライヴに行き、郊外の納屋で雨宿りする。そこで生まれたばかりの小犬に囲まれた雌犬を見たMena Suvariは、「結婚しましょ。みんながやってるように」と云い、「おれたちはみんなと違う。みんなと同じようなフリは出来ないよ」と答えるJames Francoに、なおも「じゃ、私に嘘をついて。いつも仕事でそうしてるように。あたしは嘘を信じることが出来る。ほんとよ!」と彼にすがりつく…。

つまり、母親は自分が生きて行くためには息子やMena Suvariを犠牲にするしかない境遇であり、James FrancoとMena Suvariは何とかその境遇から抜け出そうと努力するわけです。二人ともまだ若いので、更生の可能性は充分あります。鍵はJames Francoが母親を完全に見捨てることが出来るかどうかにかかっているわけです。

上に引用したMena Suvariの台詞以外にも、彼女にはまだまだいい台詞がいくつも用意されており、'American Beauty'『アメリカン・ビューティ』(1999) の数倍演じ甲斐のある役となっていて、彼女も好演しています。James Francoはまだ演技の幅が狭く、表情も一本調子ですが、悩める青年の役は大過なく果たしています。

母親を演ずるBrenda Blethynはイギリス生まれのヴェテラン女優で、特訓を受けた南部訛りを駆使して娼婦上がりの中年女を熱演しています。素晴らしいのはHarry Dean Stantonで、演技とも地ともつかぬ非常に自然な表情で、James FrancoとBrenda Blethynを助ける人のいい老人像を構築しています。監督が俳優であるNicolas Cageですから、監督が強制するのではなく、俳優の役柄の解釈を優先したことが好結果を生んだようです。

馴染みの客を演じているBrenda Vaccaroも、好色な中年女を楽しそうに演じています。彼女が唇を歪めるのは、トレードマークなのかどうか知りませんが、この映画の役にはぴったりだと思いました。

Nicolas CageはS&Mのゲイの娼窟の主人役で特別出演していますが、シリアスな映画の中で彼だけ漫画チックな役作りをしていて違和感があります。監督としてのNicolas Cageは、初めての割にはよくやっていると思いました。BGMの選曲などには疑問がありますが、画面構成や編集には問題がありません。

全く期待していなかった作品ですが、結構真面目な題材を真剣に扱っているので感心しました。

(February 25, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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