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公開:1943
監督:Vincente Minnelli
地域:南部のどこか
出演:Ethel Waters、 Eddie 'Rochester' Anderson、Lena Horne、Louis Armstrong、Rex Ingram、Kenneth Spencerほか
範疇:ブロードウェイ・ミュージカルの映画化/オール黒人キャスト/天使と悪魔による人間の魂の争奪
私の評価 :☆
【Part 1】
一人のギャンブラーが銃で撃たれて死にかけます。その男の妻は信心深く、夫を心から愛しているので、神の助命を祈ります。神の使いの将軍(海軍将校のような白装束)と悪魔(こちらも軍人のような黒装束で、髪の毛が二本の角のように尖っている)が、男の生死をめぐって競います。もうずっと前に頭の20分ほどを観たのですが、ミュージカルのようにも見えず、あまりに他愛ない話なのでほっぽらかしてありました。観直すと、そう悪い映画ではありません。Ethel Waters(エセル・ウォーターズ)の歌がいいし、Lena Horne(リナ・ホーン)やLouis Armstrong(ルイ・アームストロング)、Duke Ellington(デューク・エリントン)のバンドまで登場します。ジャズ・ファンには必見の映画でしょう。
今日は日曜日。Ethel Watersの旦那Eddie 'Rochester' Anderson(エディー“ロチェスター”アンダースン)はギャンブラーだったが、妻から「絶対に勝てないからギャンブルは止めなさい」と説得され、ホテルのエレヴェーター・ボーイの職を得て、堅気の生活をすることに決めていた。二人が教会へ行くと、会衆は珍しい顔Eddie Andersonの登場に目を丸くする。
礼拝の途中で、ヤクザ数人が借金を取り立てに来る。返せないEddie Andersonをバー「パラダイス」に連れて行き、ピストルで撃つ。Ethel Watersは必死の看病をするが、夫は息を引き取る。悪魔Rex Ingram(レックス・イングラム)が煙草の煙をもうもうとさせる手下一同と共に登場し、Eddie Andersonの魂を地獄に誘うべく待機する。Eddie Andersonの魂に、悪魔は「お前はもう病気じゃない。死んでるんだ」と教える。そこへEthel Watersの祈りを聞いた神の使いの将軍とその部下も登場。結局、神の決断で六ヶ月の猶予が与えられ、その間の素行次第で天国行きか地獄行きか決まることになる。生き返った夫を見て、Ethel Watersは夫を愛する唄を歌う。
バー「パラダイス」の屋根裏に陣取った悪魔一同は面白くない。Eddie Andersonを確実に地獄に迎える秘策を練る。トランペッターの悪魔Louis Armstrong(彼の髪も角のように尖っている)が、「奴に大金を与え、美女Lena Horneに誘惑させれば間違いなく堕落しまさあ」と提案し、一同やんやの喝采をする。
Eddie Andersonが昼寝しているところへ、Lena Horneが登場。誘惑するが一向になびく気配がない。そこで、彼の買った宝くじが当り賞金$50,000を貰えるという知らせを見せる。Eddie Andersonは「その大金があれば妻に楽をさせてやれる」と大喜びし、礼としてLena Horneにダイヤの指輪を買ってやると約束。丁度帰宅した妻Ethel Watersは、その最後の部分だけ聞きとがめ、「この浮気者め!」と夫を叩き出す。Eddie Andersonは、仕方なくLena Horneと去り、悪魔の企み通りにコトは運ぶのだが…。
この後、バー「パラダイス」のDuke Ellingtonバンドをバックに、群衆の踊り、Eddie Andersonを撃ったヤクザのタップ・ダンス、豪華に着飾ったEddie AndersonとLena Horneの登場、さらにこれも華麗に着飾ったEthel Watersも登場し、Ethel Watersとヤクザの歌と踊りなどが展開します。
当時のハリウッドにはこのようなオール黒人キャストの映画を作る気運はなかったのですが、MGMの大物プロデューサーArthur Freedがこの舞台を気に入り、低予算で映画化しようとしたもの。で、監督は新人Vincente Minnelli(ヴィンセント・ミネリ)が選ばれ、彼の監督第一作となりました。Vincente MinnelliはLena Horneとデイトする仲だったそうで、彼女を売り出すため浴槽で歌うシーンまで撮りましたが、当時の検閲でカットされました。
私は'Pinky'(未)(1949)という深刻なドラマに母親役で出ていたEthel Watersを知っていただけなので、彼女の見事な歌とパフォーマンスにびっくりしました。このEthel Watersだけがブロードウェイのオリジナル・キャスト。彼女はミュージカルの脚本が男主体で妻は刺身のツマの扱いなのと、宗教の扱いが不満なので、最初出演を固辞したそうです。何度か脚本書き直しがあり、彼女は出演をOKしましたが、リハーサルから初日の幕が開くまでの間、この人物像がキチンと構築出来るように自分で台詞を追加して行ったそうです。凄い女優さんですね。
Eddie Andersonが演じた役のオリジナル・キャストはDooley Wilson(ドゥーリィ・ウィルスン)で、Vincente Minnelli監督も彼に映画に出て貰いたかったようです。しかし、映画会社は当時もっと有名だったEddie Andersonを観客動員の要素として考え譲りませんでした。Dooley Wilsonは悔しさに泣いたそうですが、MGMは埋め合わせとしてDooley Wilsonに'Casablanca' 『カサブランカ』(1942) のピアニストの役を与えました。どちらの役が現在まで人に知られているかは云うまでもありません。
(May 14, 2003)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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