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公開:1978
監督:Martin Ritt
地域:ルイジアナ州ほか
出演:Walter Matthau、Alexis Smith、Robert Webber、Murray Hamilton、Andrew Rubin、Michael Hersheweほか
範疇:原作もの/競馬/少年/調教師の夢/大レース出場/P>
私の評価 :☆
【Part 1】
'The Long, Hot Summer'『長く熱い夜』(1958)、'The Sound and the Fury'『響きと怒り』(1959)、'Sounder'『サウンダー』(1972)、'Conrack'『コンラック先生』(1974)、'Norma Rae'『ノーマ・レイ』(1979)など、多くの“南部もの”を手掛けているMartin Ritt(マーティン・リット)の監督作品。
アメリカ人は少年や少女と競馬馬の物語が好きなようで、昔から現在に至るまで映画が沢山あります。これもその一本ですが、ここに登場するのは"quarter horse"(クォーター馬)と呼ばれる小型の馬です。瞬発力があるので、主に1/4マイル(約0.4キロメートル)のレースが行なわれます。小回りが利くので、ロデオやホース・ショーに向いており、牧場の作業用としても使われます。
ルイジアナ州。Walter Matthau(ウォルター・マッソー)は何故か勝てない馬ばかり手掛けているしがない調教師。貧乏を嫌った妻に逃げられ、三人の息子たちと暮らしている。
末の息子Michael Hershewe(マイケル・ハーシュー、7歳見当)はGypsy(ジプシー)という名のポニー(小型馬)を可愛がっている。この日は州の'Cajun Quarter Horse Classic'(ケイジャン・クォーター馬レース)の日で、Gypsyも出場する。Walter Matthauは大物調教師Robert Webber(ロバート・ウェッバー)と賭けをする。Gypsyの相手は偶然にもRobert Webberの娘Susan Myers(スーザン・マイヤーズ)だった。Gypsyは騎手の代わりに雄鶏を鞍に乗せて、軽々と勝つ。
馬の買い付けのため出張していた長男Andrew Rubin(アンドルー・ルービン、20歳見当)が戻って来た。馬主の黒人Harry Caesar(ハリィ・シーザー)は二歳のコルト(若駒)を望んでいたのだが、Andrew Rubinが買って来たのは歳取った牝馬だった。彼は「この馬は伝説的な優良馬'Sure Hit'の子を宿しているんだ。血統書もある。たったの1,800ドルだった。いい取り引きだ」と自慢する。馬主Harry Caesarは懐疑的だったが、Walter Matthauが請け合うので渋々承諾する。
仔馬が生まれる。しかし、母馬は死んだ。仔馬には母親の乳が必要だ。他の牝馬の貰い乳は出来るが、実の母馬でないと仔馬を蹴り殺してしまうこともあるという。末っ子Michael HersheweはポニーのGypsyの乳で育てようと提案する。仔馬はGypsyの乳をグビグビ飲む。
仔馬はぐんぐん成長した。Michael Hersheweは色んな芸を仕込む。長男Andrew Rubinが「芸だけじゃ優勝出来ない」と云うので、Michael Hersheweはフル・スピードで走って見せる。Walter Matthauは大慌てで止め、「まだ骨が出来ていない。こんな時期にフル・スピードで走ったら骨を駄目にする」と怒る。
競走馬を駄目にしたかとしょんぼりするMichael Hersheweに、Walter Matthauは「多分大丈夫だ。馬名だが、お前の名を取って'Casey's Shadow'にするつもりだ。お前に文句がなけりゃ」と云い、感激した息子に抱きつかれる。
二年後の同じレース。色んな馬主が'Casey's Shadow'に目を付け、「売ってくれ」と申し出る。長男Andrew Rubinは食べるものもない暮らしで金が要るのと、騎手志望の次男Steve Burns(スティーヴ・バーンズ、16歳見当)をカリフォーニアに送り出したいので、「売ろう!」と云うがWalter Matthauは「こんないい馬を持ったのは初めてだ。ゆっくり筋肉を付けさせよう。勝ちたいという欲望を植え付けるんだ」と意気込む。
Walter Matthauは'All-American Quarter Horse Futurity'(全米クォーター馬新星レース)での優勝を夢見る。そのエントリー金額は4,000ドル。馬主はそんな大レースに出費するよりも、手頃なレースでの現金収入を望む。Walter Matthauは「じゃ、4,000ドルはおれが出す。その代わり、レース終了までは馬をどう扱うかはおれに任せろ」と契約を交わす。
末っ子Michael Hersheweは調教師Robert Webberの娘Susan Myersに唆され、勝手に賭けレースをし、'Casey's Shadow'の足を痛めてしまう。獣医は「数ヶ月は馬を動かすな」と命じる。Walter Matthauは「開催地の高度に慣れさせるため、早めに現地入りしよう」と、息子たち三人と共にニュー・メキシコ州のRuidoso Downsに向う。
220頭参加の予選レースが始まる。有名厩舎の社長Murray Hamilton(マレイ・ハミルトン)が「'Casey's Shadow'を買おう」と云って来る。'Casey's Shadow'は予選レースの最高記録を出して注目を浴びるが、足の古傷がぶり返してしまう。別の有名厩舎の女性社長Alexis Smith(アレクシス・スミス)が、「決勝レースに出さないという条件で馬を売れ」と迫る。彼女は自分が所有する種牡馬'Sure Hit'を引退させ、'Casey's Shadow'をその後釜に据えようと算段しているのだ。そのためにはこのレースで'Casey's Shadow'を廃馬にしてはならなかった。そんな最中、何者かが'Casey's Shadow'に毒物を飲ませようと忍び込んで来る…。
私はWalter Matthauをあまり評価していませんでした。軽喜劇路線の森繁久彌みたいに適当に流しているという演技が嫌いだったのです。この映画の監督がMartin Rittでなかったら観る気にならなかったところです。ここでWalter Matthauはよくやっている方だと思いました。決して流していません。いつもの間抜けた顔に髭を生やし、いつも噛みタバコをもぐもぐさせていますが、時折キラリと目を光らせたりする細やかな演技もあるし、特に子供たち相手の芝居がいいと思います。一つには、監督が'Hud'『ハッド』(1963)や'The Spy Who Came in from the Cold'『寒い国から帰って来たスパイ』(1965)などを世に送って来た名匠だったから手を抜けなかったということかも知れません。
Martin Ritt監督は'Sounder'『サウンダー』(1972)という子役主演の映画も作っているほどなので、この映画の三人の若者の演出も手慣れた感じです。末っ子のMichael Hersheweの顔立ちに少しヒスパニックの感じがあるのが妙ですが、それぞれ感じのよい演技をしています。
この映画の見所は後半の大レースの描写です。レース展開そのものはまあ普通の出来ですが、ゲートインに至るまでの克明でリアルなスケッチが、「さすがMartin Ritt」と拍手を送りたい。騎手たちの準備風景、検量、パドックへ移動するまでの順番待ち、そしてゲートイン。ゲートインにここまで時間を費やした映画は他にないのではないかと思われます。ゲートに押し込まれるのを嫌う馬、押されてもお尻を引っ込めない馬、興奮する馬、怖がって暴れる馬。それを介助する係員たちの動き。辛抱強くタイミングを待つスターター。観ているこちらもスタートの緊張感に汗ばんでしまうほどです。
もう一つの見所は馬の出産シーン。馬の赤ちゃんが袋に包まれて出て来るとは知りませんでした。見所はどちらもドキュメンタリーっぽい部分ですね。
お子様映画、家族映画として括られているようですが、そんなものではありません。厩舎とのビジネス、馬主と調教師の関係、妻に去られた老調教師の人生最後の賭け、息子たちとの反目…こういう部分は子供たちには解りにくいでしょう。よくある少年の愛馬物語とは一寸違うのです。
(May 22, 2007)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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