公開：1989
監督：Steven Soderbergh
地域：ルイジアナ州
出演：James Spader、Andie MacDowell、Peter Gallagher、Laura San Giacomoほか
範疇：セックス／嘘／セックスに関するヴィデオ・インタビュー／夫婦不和／不倫／インポ

私の評価 ：☆1/2

【Part 1】

'Erin Brockovich'『エリン・ブロコビッチ』（2000） 、'Traffic'『トラフィック』(2000)、リメイク版「オーシャン」シリーズなどの監督Steven Soderbergh（スティーヴン・ソダバーグ）の、劇場映画二作目。彼はジョージア州生まれですが、大学教授の父に従い子供時代〜高校卒業までルイジアナ州の州都バトン・ルージュで過ごしたそうです。

ルイジアナ州バトン・ルージュ。まだ子供のいない若い主婦Andie MacDowell（アンディ・マクダウェル）は精神療法を受けている。ゴミ箱がゴミを生み出して溢れるイメージに悩まされていると云う。彼女はまた、弁護士である夫Peter Gallagher（ピーター・ギャラガー）が彼女の身体に触らなくなったのをきっかけに、夫との身体的接触が嫌いになったと告白する。療法士が「ではマスターベーションをしているのか？」と聞くと、彼女は「一度試してみたけど馬鹿げていると思った」と笑う。

夫Peter Gallagherは妻の妹Laura San Giacomo（ローラ・サン・ジアコモ）と浮気をしている。Laura San Giacomoは自由奔放、猥雑で、思ったことを何でもずけずけ云うタイプ。彼女は「姉のベッドであなたとセックスしたら興奮するだろう」などと口走る。

Peter Gallagherに招かれた旧友James Spader（ジェイムズ・スペイダー）がニューヨークからバトン・ルージュにやって来て、住まいを見つけるまでPeter Gallagherの家に滞在する。James Spaderは長髪で、繊細な感情の持ち主。男二人は9年も会っていなかったので、お互いの変わりように唖然とする。

翌日、Andie MacDowellはJames Spaderを案内してアパートを探す。食事の後、二人は“個人的な事柄”について話す。Andie MacDowellは「人々はセックスを過大評価している。女も男と同じようにセックスを求めているなんてデタラメよ。女が求める時は、男とは別の理由なの」と云う。James Spaderは「ボクはインポなんだ」と告白する。彼らが食事をしている間、Peter Gallagherは自宅に妻の妹Laura San Giacomoを呼び、夫婦のベッドでセックスする。

James SpaderはTVモニタで自作のヴィデオ・インタビューを観ている。彼の問いに答え、女性がセックス体験を話す。テープは山ほどある。そこへAndie MacDowellがやって来て、ヴィデオの内容に呆れ当惑して去る。

Andie MacDowellは妹に「James Spaderはおかしな人間だから近づくな」と警告する。妹Laura San Giacomoは逆に好奇心を抱いてJames Spaderのアパートにやって来る。ヴィデオ・カメラの前で彼女のセックス体験を話し、姉の夫と不倫していることを匂わせ、挙げ句はマスターベーションまでして見せる。興奮冷めやらぬLaura San Giacomoは自宅にPeter Gallagherを呼びつけ、狂ったようにセックスする。

夜、Andie MacDowellは夫に「浮気してるのか？」と聞く。Peter Gallagherは即座に否定する。妻は「嘘はつかないで。事実を知ったら腹が立つだろうけど、嘘をつかれたらもっと腹が立つわ」と云う。彼女は「私の妹と？」と尋ねるが夫は全否定し、Andie MacDowellはころりと騙される。しかし、お掃除の最中、寝室で掃除機に引っ掛かった妹のイアリングを見て、彼女は一切を知る。彼女はJames Spaderのアパートに赴き、「ヴィデオテープを作りましょう」と云い放つ…。

監督Steven Soderberghはこの映画の脚本を二週間で書き上げたそうです。彼は題名の候補を五つか六つプロデューサーに伝え、プロデューサーは即『セックスと嘘とビデオテープ』を選んだそうです。この映画を観ると、この題名は端的に内容を伝えていることが解りますが、知らない人間にとっては、何やらポルノ映画業界の裏話が題材のようないかがわしさが感じられます。私がそうでした。魅力的な題名である反面、薄汚さも予感してしまい、ついぞ観ようという気になりませんでした。これがルイジアナ州で撮影された映画でなければ、多分絶対に観なかったでしょう。

実際の内容はとてもよく構築されたドラマで、薄汚さなど微塵もなく、こんな題名を選んだプロデューサーを怨んでしまいます。ただ、この物語は世界中のどこであってもおかしくなく、ルイジアナ州である必要は全くありません。バトン・ルージュらしい風景もほとんど出て来ません。ただ、南部生まれの私のカミさんに云わせれば、俳優たちは南部訛りを模倣しようと努力しているそうです。あまり誇張されていないので、私の耳にそうは聞こえませんでしたが。

主演女優Andie MacDowellは、表面上は何も悩みは無いように装っていますが、時折深い溜め息を漏らすことで内面の葛藤を示すというさり気ない演技がうまい。彼女の夫を演じるPeter Gallagherは、女たらしの嘘つきの役にぴったりはまっています。若きJames Spaderは男の私も惚れ惚れするような甘い顔、繊細で愛らしい（？）視線と仕草で、この映画全体を引き立てています。女性っぽい顔ではなく、ちゃんと男の顔でありながら甘いというのは、きっと育ちがいいのかと思ったら、教師夫妻の息子だそうです。

Andie MacDowellは夫と妹の不倫にどう対処するのか？Peter GallagherとLaura San Giacomoのセックス狂いの結末は？James Spaderのインポはどうなる？様々な要素が観客の心を捉えて最後まで離しません。ある夫婦のもとへ現われた闖入者によって、一波乱あるという趣向は'Shane'『シェーン』（1953）の焼き直しのようでもありますが、脚本・監督のSteven Soderberghは全ての点で観客の意表をつきます。うまい脚本です。こんな才能がありながら独自の世界を作り上げずに、何故リメイクの「オーシャン」シリーズなどで金儲け路線を走っているのでしょう。才能の無駄遣いに思えます。金を貯めて、自分の作りたい映画を自分でプロデュースするということなら結構ですが。

Andie MacDowellのヴィデオ・シーンにかぶさる音楽は、音楽と云うよりも何かの振動音に近い音響ですが、これがとても効果をあげています。下手な音楽よりも緊張を高め、数段素晴らしい。

(September 01, 2007)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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