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Chasing Secrets

(未)


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1999
監督:Bruce Pittman
地域:テネシー州
出演:Della Reese、Crystal Bernard、Madeline Zima、Yvonne Zima、Ron White、Ossie Davisほか
範疇:原作もの/TV映画/貧乏白人一家/孫娘いじめ/孤独な白人少女と黒人夫婦の友情

私の評価 :☆

【Part 1】

この映画のタイトルは、IMDbでは'The Secret Path'(秘密の小径)と改題されています。

この映画はTV映画ですが、いくつもの話題性があります。先ず、主演の黒人女優Della Reese(デラ・リーズ)はTVシリーズ'Touched by an Angel'を九年も続けた人気女優であること。彼女は五歳の時から歌っていましたが、十代の時にはゴスペル音楽の大物Mahalia Jackson(マハリア・ジャクスン)と巡業をしていたそうです。この映画の中で、一曲だけですが彼女は賛美歌を披露します。

Ossie Davis(オシー・デイヴィス)は人気のある黒人男優としてDella Reeseに拮抗出来る俳優です。この映画ではDella Reeseと主役の白人少女の理解者として控えめな役を演じています。

[the South]

物語を転がす役は7歳の白人少女と、成長して14歳になった彼女ですが、この人物をYvonne Zima(イヴォンヌ・ジーマ、1989年生まれ、撮影当時10歳)とMadeline Zima(マデリーン・ジーマ、1985年生まれ、撮影当時14歳)の姉妹が演じています。二人ともTVや映画で活躍している人気女優たちです。二人の間にもう一人Vanessa Zima(1986年生まれ)がいて、彼女も映画やTVに出ています。

キング牧師の長女で女優のYolanda King(ヨランダ・キング)も出ています。

40代の母親が、訳も分らずに渋る十代の娘を急き立てて荷造りさせ、母親の郷里への旅に出る。荒れ果てた無人の家を「これが私の実家」と云う母親に、娘は信じられない面持ち。家の中の一室のドアを開けた母親は「ここが私の生まれた部屋」と云う。

【回想】1932年、テネシー州の田舎。昔はカウンティ(郡)を牛耳っていた一家が、今は"White trash"(白人の屑)と陰口をきかれるほど落魄していた。ある夜、その一家の長女Crystal Bernard(クリスタル・バーナード)がどこの誰とも知らぬ男の赤ん坊を産み落す。彼女の父親(赤ん坊にとっては祖父)Ron White(ロン・ホワイト)は「もうこれ以上養えない」と赤ん坊をタオルに包んで車で捨てに行く。たまたまシェリフによる検問が待ち構えていたため、祖父は町へ行くことを断念し、道端に赤ん坊を捨てる。

赤ん坊を捨てられた長女Crystal Bernardは哀しくて泣き濡れていたが、家の外の赤ん坊の泣き声に気づく。軒先に赤ん坊が戻されており、「神様は見ている。私もだ」という手紙が付いていた。誰かが捨て子の現場を目撃し、Ron Whiteに警告したのだ。捨て子は犯罪だから、バレたら刑務所行きである。Ron Whiteは仕方なく赤ん坊を養うことにする。

七年後。捨てられかかった赤ん坊は、成長してYvonne Zimaになっている。彼女は一歳年上の兄と学校へ行く。二人の下校時、黒人の老人Ossie Davisが馬車で通りかかり、二人を馬車に乗せてくれる。兄は「馬が遅い」と馬に石をぶつけ、Ossie Davisから「下りろ」と命ぜられる。兄は「何だい、nigger(黒んぼうめ)!」と罵り、妹にも下りるように云うが、Yvonne Zimaは馬車に乗ったまま黒人の家に行く。

Ossie Davisの妻Della ReeseがYvonne Zimaに冷たい水を飲ませてくれる。「ありがとうって言葉が聞こえないわ」とDella Reeseが催促すると、Yvonne Zimaは黙って馬車の積み荷を下ろし始める(それが感謝の印らしい)。Della Reeseは少女が気に入るが「あんなに静かな子は変だ。笑いもしないし。家庭に何かあるに違いない」と夫に云う。

兄が祖父Ron Whiteに云いつけたため、祖父は「お前はniggerと食事したいんだろう」と嫌味を云い、「お前は犬と同じだ。犬と一緒に食え」と食事を庭にバラまき、全ては犬に食べられてしまう。夜更け、空腹に耐えかねたYvonne ZimaはDella Reeseの菜園に忍び込んでトマトをバクバクと盗み食いする。Della Reeseが声を掛けると、少女は無言で駆け去る。

祖母の云いつけで、Yvonne Zimaは近所の裕福な黒人婦人Yolanda Kingの家に卵を貰いに行く。貰った卵のいくつかをDella Reeseに渡す。「トマトの御礼だ」と云う。Della Reeseは少女に手伝わせビスケット(小型のパン)を作り、夫と三人で茶話会を催す。

Della ReeseはYvonne Zimaを可愛がり、ABCを教え、縄跳びを教える。Yvonne ZimaはDella Reeseに「あなたは私が知っている中で一番素敵なniggerだわ」と云ってDella Reeseを怒らせる。少女はその言葉が黒人を蔑む表現であることを知らなかったのだ。

さらに七年後。少女はすくすくと育ってMadeline Zimaになっている。その頃母親のCrystal Bernardは、町外れのバーで男を引っ掛けては売春をして一家の暮らしを支えていた。ある日、祖父は娘とMadeline Zimaとその兄を車に乗せ、バーに向う。娘が引っ掛けた男が出て来たところを祖父と兄が殴り倒し、金品を奪い、車で逃走する。追い剥ぎであった…。

よく似た顔の姉妹を同一人の成長に合わせて起用するというアイデアがいいですね。普通のアメリカ映画も韓国TVドラマも、全然似ても似つかぬ俳優を成長前・成長後にして登場させるので辟易していました。映画製作者は、われわれ観客に与える違和感・ショックを無視していると思います。そこへ行くとこのTV映画は良心的です。Yvonne ZimaとMadeline Zimaはどちらも線が細いですが、このお話の主人公は薄幸の少女なので、まあ似合っています。Yvonne Zimaの口の中でもごもご云う台詞廻しは、時々聞き取るのが大変ですが、子供特有のリアルな喋り方ではあります。

Della Reeseは涙もろ過ぎる感じではあるものの、人が良くタフな黒人の老婦人を重厚に演じています。可愛がっているYvonne Zimaから"nigger"呼ばわりされて以後の取り乱し方も的確に演じられています。Yvonne Zimaに人種差別的偏見は全く無く、単に祖父や祖母の口癖を真似ただけなのは明白なのに、Della Reeseにはショックで憤激せずにはいられないのです。この映画は、"nigger"という言葉がいかに黒人を傷つけるかという、白人たちへのメッセージ映画であると見ることも出来ます。

1932年というと、1929年に始まった大恐慌による不景気が収まらず、ルーズヴェルト大統領がNew Deal政策を始める1933年の前年ですから、テネシー州の田舎でも人々が生活に困っていた時期です。堕胎のためのお金も無かったのでしょう。昔の日本の農民が“間引き”と称して赤ん坊を捨てた時代があったそうで、それを思い起こされます。

この映画では、黒人たちの方がいい暮らしをしていて、道徳的・宗教的にも白人よりも優れているように描かれています。劣っている白人たちが、黒人を"nigger"と嘲るのですから笑止千万です。少女の一家は"poor white"(貧しい白人)を通り越して、追い剥ぎを働かないと食っていけないほどの"white trash"(白人の屑)になり下がっています。祖父の脚が不自由で働き口がないという以上に、昔の栄華が忘れられず地道に働くことを考えない怠惰な性格が災いしているようです。少女の兄も職を得るでもなくのらくらして追い剥ぎを手伝うというのは、祖父の血の隔世遺伝なんでしょう。

そういう貧しい家の娘が老いた黒人夫婦と親密になり、ABCや料理を教わり、礼儀作法も躾けられるという物語はユニークです。逆のケースはいくらでもあるでしょうが、白人にとってこちらのケースは皮肉でもあり、身の縮む思いをするお話でしょう。

(March 14, 2008)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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