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The Reaping

『リーピング』


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:2007
監督:Stephen Hopkins
地域:ルイジアナ州
出演:Hilary Swank、David Morrissey、Idris Elba、AnnaSophia Robb、Stephen Rea、William Ragsdaleほか
範疇:ホラー/ファンタジー/旧約聖書の十の災厄/神と悪魔の闘い

私の評価 :☆

【Part 1】

この映画は撮影中にハリケーンKatrinaの襲来(2005年)に遭い、地元スタッフの80%が家を失ったそうです。製作者たちは継続を危ぶんだそうですが、スタッフたちが撮影続行を希望しました。撮影が続けば、とりあえず住む部屋(ホテル)も収入も確保出来るからでした。

神父Stephen Rea(スティーヴン・リー)がうなされて目覚める。額縁の中の写真の女の顔の部分に火がついて燃えている。神父はガラスを叩き割って火を消す。彼の机の引き出しには、同じように女の顔が燃えた写真が一杯ある。彼が写真を並べると、燃え跡は一つの古代のシンボル(上下反対の小鎌)となった。

その頃科学者Hilary Swank(ヒラリィ・スワンク)は黒人の助手Idris Elba(アイドリス・エルバ)と共に、チリの修道院周辺で発生した原因不明の疫病の調査をしていた。地震によって40年前に死んだ修道僧の棺が開き、蝋人形のように綺麗な遺体が現われ、人々は病気を治してくれる奇跡を願って、その遺体にお参りに来ていた。Hilary Swankは奇跡など信じない。二人が修道院の地下を探索すると、何と産業廃棄物にぶち当たった。大地震によって毒素が下水に流れ出し、町に広まったのだ。

[the South]

ルイジアナ州の州都バトン・ルージュ。LSU(ルイジアナ州大)でHilary Swankが公害について講義を終えると、神父Stephen Reaから電話があった。彼の手元の燃えた写真の人物はHilary Swankだった。彼は「これは神が君に警告を発しているんだ。君に危険が迫っている」と云う。Hilary Swankは真に受けず電話を切る。

【回想】友人である神父Stephen Reaの招きによって、Hilary Swankと夫、および娘(10歳前後)がスーダン(アフリカ)での布教活動に赴く。一年間雨が降らず、穀物は枯れ、家畜や人々が死んだ。原住民はHilary Swankの家族が災厄を招いたとして、彼女の夫と娘を生け贄にして殺した。それ以来、Hilary Swankは神に祈ることをやめ、地上の出来事の全てを科学的に解明するようになったのだった。

ルイジアナ州の湿地帯に面した小さな町Haven(ヘイヴン)からやって来た教師David Morrissey(デイヴィッド・モリッセイ)が「男の子が湿地で死んで、それ以来川が真っ赤に染まった。人々はそれは旧約聖書にある災厄の再来だと考えている。真実を突き止めてほしい」と頼む。Hilary Swankはその気になれないが、人々が男の子の12歳の妹が兄を殺したと思い込み、少女の身が危ういと聞いてその町へ行くことにする。

教師David Morrisseyの案内で、Hilary Swankは黒人助手Idris Elbaと川へ行く。視界に入る広い川幅はくまなく赤く染まり、死んだ魚が大量に浮かんでいる。科学者二人は川の水や魚を資料として採取する。三人はボートで川を遡行し、水深が浅くなってからは胴長を着用して歩いて調査する。Idris Elbaは無数の蛙の死体が木の上から降って来るのを目撃する。Hilary Swankは行方不明の少女を見掛けるが逃げられてしまう。

二人は教師David Morrisseyの邸宅に泊まることになる。彼はBBQ(バーベキュー)グリルで町の食料品店から買って来た魚を焼く(汚染された魚ではない)。いざ食べようという寸前、三人の目の前で魚に蛆が湧き無数の蠅がたかる。そこへシェリフから電話で、「牧場の牛たちに異常が現われ始めた」という知らせ。現場へ向った一行の車は狂った牛に攻撃されるが、牧場主が牛を射殺して助かる。信心深い黒人Idris Elbaは、事態は旧約聖書通りに展開していると信じ始める。Hilary Swankは現代科学で全ては説明がつくと云い、「旧約聖書の十の災厄」を論駁するが…。

「旧約聖書の十の災厄」とは『出エジプト記』に登場するもの。今から3,000年前、エジプト王ファラオはヘブライ人たちを虜にし虐殺していました。神は「ヘブライ人たちを自由にして去らしめよ」と、ファラオが決意するまでエジプトに以下のような災厄をもたらします。
1) 水が血に変わる
2) 蛙の大発生
3) シラミの大発生
4) 蠅の大発生
5) 家畜の病気の蔓延
6) 腫れ物の流行
7) 火の嵐
8) バッタの襲来
9) 闇(日が射さない)
10) 長子(第一子)の死

この映画では、以上の十の災厄が全て映像化されて出て来ます。こうした災厄の物語を製作していたクルーが巨大ハリケーンの犠牲になるというのも、妙な因縁です。

Hilary Swankが初めてHavenの町を訪れる時、二叉路を左折します。そのカット尻でカメラは分離帯の薮を映し出しますが、その緑の薮はアメリカ南部の“災厄”である葛(クズ)です。1876年にフィラデルフィアで開催された「ワールド・フェア」において、日本代表がブースに日陰を作るために葛を植え、アメリカ人の多くが珍しがって種を貰って帰りました。1930年代、大恐慌の後のニュー・ディール政策で、ルーズヴェルト大統領はアメリカ全土の土木事業を推進しましたが、この時、南部の緩い地盤による土砂崩れが問題となり、その土留めの役として葛が植えられるようになりました。当時は各州数百エーカーほど移植しただけでしたが、現在は南部だけで700万エーカーとなっているそうです。葛は冬には枯れたように見えても根は死んでいません。夏になるともの凄いスピードで繁茂し、それを止めることは出来ません。

欧米の映画はこの映画のような神と悪魔の闘いというテーマが好きですね。'The Exorcist'『エクソシスト』(1973)とか、'End of Days'『エンド・オブ・デイズ』(1999)とか。私は亡霊とか魔女の呪いとかまでならついて行けますが、神と悪魔の闘いというと想像を絶してしまいます。子供の頃から日曜学校などで聖書に慣れ親しんだ欧米の人々との違いでしょうね。この映画が舞台としてルイジアナ州を選んだのは自然条件だけからではありません。深南部のバイブル・ベルトの一角で、信仰熱心な人々が多い。また、ルイジアナ州はヴードゥー教が盛んなところでもありますから、呪いとか魔術などにも相応しい土地なのです。

神父の警告にも関わらず、Hilary Swankはその神と悪魔の争闘の真っ只中に入り込んでしまいます。夫と娘を失って以来無神論者になっていた彼女が、否応無く聖書の世界に身を置かねばならないというのは脚本家たち(複数)の一捻りです。ただ、話の運びがのったりしていて、サスペンスが盛り上がらない憾みがあります。災厄の一つ一つの映像化はまずまずの出来ですが、あまりにもダイレクトにあっけらかんと描かれているのでショックがありません。これは監督の責任でしょう。

(November 07, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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