公開：2003年
監督：David Gordon Green
地域：ノースキャロライナ州
出演：Paul Schneider、Zooey Deschanel、Shea Whigham、Danny McBride、Maurice Compteほか
範疇：女たらしと親友の妹の恋／男の友情／処女喪失／人間関係の崩壊と修復

私の評価 ： 1/2

【Part 1】

主演のPaul Schneider（ポール・シュナイダー）と監督David Gordon Green（デイヴィッド・ゴードン・グリーン）が物語を作り、David Gordon Greenが脚本を書いて監督も務めた作品。二人は芸術学校で一緒だった仲で、製作当時の年齢は、Paul Schneiderが27歳、David Gordon Greenが28歳。Paul Schneiderはロケ地であるノースキャロライナ州の生まれ・育ち、David Gordon Greenはアーカンソー州の出身で、ともに南部人。

David Gordon Greenにとってはこれが劇場映画二作目。Paul Schneiderは俳優として五本目の作品ですが、そのうち三本はDavid Gordon Greenの映画（二本は在学中に作った短編）。また撮影監督も同じ学校を出たTim Orr（ティム・オー）で、当時35歳。つまり、さして経験豊富とも云えない三人が組んで作った映画と云えば、それはインディ映画だと思うでしょ？左にあらず。Sony Pictures Classicsが配給を担当し、映画製作の助言もしたようです。David Gordon Greenの前作が各地のマイナーな映画祭で好評を拍し、彼が注目の新人だったことが原因のようです。

ノースキャロライナ州の田舎町。Shea Whigham（シア・ウィンガム）を兄貴分にした四人のノラクラ組がいた。その一人Paul SchneiderはShea Whighamとお互いに大の親友であることを認め合っていた。Shea Whighamの妹Zooey Deschanel（ゾーイー・デイシャネル）は、12歳の時から寄宿制の女学校に行っていたのだが、最近卒業して帰って来た。そのZooey DeschanelがPaul Schneiderに惚れてしまった。

Paul Schneiderが女たらしであり、町中の若い娘のほぼ全員が彼と関係したことがあるのは周知の事実だった。それを知っているShea Whighamは兄として妹の身を案じ、落ち着かない思いをする。彼との友情を重んじるPaul SchneiderもZooey Deschanelの接近に落ち着かない思いをしていた。

この町の働き口には紡績工場があった。Paul Schneiderもひと夏働いたことがあった。Zooey Deschanelは、工場の中を覗いたこともなかった。

Paul Schneiderの母はピエロの格好で児童施設を慰問するのが好きだった。彼女は息子にもピエロの扮装をさせて、二人で施設で踊る。

Shea WhighamとZooey Deschanelの兄妹の下には、知恵遅れっぽい弟と中国系の養女がいた。二人はPaul Schneiderになついていた。

Paul Schneiderが妹との付き合いを止めないため、Shea Whighamは怒り狂い、Paul Schneiderに絶交を云い渡す。

Paul Schneiderは、Zooey Deschanelの他の女たちにない魅力に惹かれていた。二人は互いにペッティングを楽しみ、Paul Schneiderが裸になろうとすると、Zooey Deschanelが「あたし、セックスしたことないの。でもあなたを信じてる」と云った。Paul Schneiderは驚いた。親友の妹で、しかも処女とは！ことの重大さに怯え、彼はそそくさと立ち去る。

二人は気分転換にモテルの一室に宿泊する。ベッドの上でZooey Deschanelが昔の出来事を告白する。父と湖に釣りに行った時、酔った父の代わりに彼女が船を操縦した。そして、泳いでいた男の子を轢き殺してしまったと云う。「この話をするのはあなたが初めて」と、彼女は云った。二人はまだセックスしない。

Paul SchneiderはShea Whighamと話す。Shea Whighamは「おれの女がおれの子を妊ったそうだ。おれは親父になるんだ。嬉しくて泣いたぜ」と云う。二人は抱き合って仲直りする。

Zooey Deschanelは女友達の湖畔の別荘のパーティに招かれ、一泊する。戻って来た彼女はPaul Schneiderに「話がある」と云う。話を聞いたPaul Schneiderは逆上し、地面を叩いて泣く…。

主演男優Paul Schneiderは、どう贔屓目に見ても女たらしには見えず、町の若い娘がこぞって身を捧げようとするようなハンサムには思えません。何度か踊るシーンもヘタクソ。主演女優Zooey Deschanelはデビュ−当時の桃井かおりか烏丸せつこという感じで、ごく自然な演技を展開します。彼女がこの映画の演技でいくつかの地方映画祭の主演女優賞候補になったのも頷けます。

私はこの映画の脚本・演出が嫌いです。先ず、Paul SchneiderがZooey Deschanelのトロンボーンを手に、オナラの真似を吹き鳴らすという下品さ、Paul SchneiderがZooey Deschanelと山道を歩きながら彼女に「キミ、オナラしたんじゃない？」と聞いたりする下品さが嫌いです。アーカンソー州生まれの人間が南部のリアルなユーモアを描いたつもりかも知れませんが、最低のユーモアです。ついでですが、私は男の立ち小便のシーンも嫌いです（やや遠景ですが、この映画にも出て来ます）。女性の排尿シーンというのは絶無なのに、なぜ男の排尿を画面に出すのか？飛沫まで見せる映画まであります。うんざりです。

何度も繰り返されるフェード・アウト、フェード・インの編集も単調。折角長時間かけて撮影した微速度撮影による日の出、日の入りや雲の動き、工場内の労働者たちの動きなども全く意味がありません。天空の星や紡績工場の夜景が写っているショットが出て来ます。白黒風の画調から云って、ノクトヴィジョンなどの暗視カメラを使った感じのようですが、これも単なるお遊びにしか見えません。

Paul Schneiderとその母がピエロの衣装を着るのも意味不明だし、滑稽でもなく、悲しくもない。映画に何の効果も及ぼしていません（必要性も見当たらない）。振り付け師を雇わなかったせいでしょうが、Paul Schneiderの二回の“ダンスもどき”は体操に毛の生えた程度のお粗末なもので、この俳優の無能さを曝け出しています。

Paul Schneiderはカーレースに参加しますが、自動車修理工の男を同乗させています。カーレースに同乗者がいるなんて（重くてスピード出せないじゃないの！）聞いたことがありません。

Zooey Deschanelが紡績工場で働いているシーンが出て来ます。私は1967年から1973年まで名古屋の放送局に勤務していたせいで、数え切れないくらい岐阜の紡績工場で撮影した経験があります。この映画の1カットにも出て来るように、紡績工場内というのは綿埃（わたぼこり）だらけです。作業員は帽子かネッカチーフをして髪が綿埃だらけになるのを防ぎ、肺や気管を守るためにマスクもします。この映画のZooey Deschanelは何も着けていません。2003年のアメリカでこんな状態はあり得ないでしょう。

青年たちが働いているシーンは全く出て来ません。いくらのらくらしているからったって、ビールを呑むためには小遣いを稼がねばならない筈です。どう暮らしを立てているのか不思議です。Shea Whighamは「おれは親父になる」などと嬉し泣きしていますが、どうやって子供を育てる気なのか？

映画はPaul Schneiderが犬と戯れた後、突如エンドマークになってしまいます。尻切れとんぼもいいところ。DVDのコメンタリーを聞くと、この犬のシーンはそもそもは最初の方のシーンの設定だったそうです。プロデューサーや配給会社の助言で最後に持って来たとのこと。まるでいい加減。それで成功していればまだしも、全く意味不明なエンディングになっているのですから、救いようがありません。

総じてこの脚本は薄っぺらで納得出来ません。演出・編集もひどいものです。

この映画に関するPart 2はありません。

同じ監督と主演男優による'George Washington'（2000）もレンタルしましたが、あまりにもお粗末で終りまで観る気になれませんでした。

(June 20, 2010)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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