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Point of No Return

『アサシン』


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1993
監督:John Badham
地域:カリフォーニア州、ルイジアナ州ニューオーリンズ
出演:Bridget Fonda、Gabriel Byrne、Dermot Mulroney、Miguel Ferrer、Anne Bancroft、Harvey Keitelほか
範疇:フランス映画のリメイク/秘密工作員/アクション/ロマンス

私の評価 :☆

【Part 1】

この映画を“南部もの”と括るのは乱暴です。しかし、既にこういう「一部に南部ロケもある」という作品を何本か取り上げちゃいましたし、'Mississippi Mermaid'『ミシシッピ・マーメイド』のように題名以外はまるで南部と関係ないものも入っています。何か南部関連で書きたいことがある場合は含める意味もあるわけですが、そうでないならこういうケースは例外に止めたいと思っています。

これはLuc Besson(リュック・ベッソン)脚本・監督のフランス映画'Nikita'『ニキータ』(1990)の翻案で、この映画の後TVシリーズ'La Femme Nikita'(1997〜2001)となったほど人気のある原作です。

麻薬中毒の若者たちがある夜薬局に押し入って強奪を始める。何でも斧でぶち壊すのが好きな馬鹿がいたせいで、早くも911(日本の110番)され、若者たちは警官隊のライフルでどんどん射殺される。一人残った女を警官が保護しようとすると、その女が警官を射ち殺す。

その女Bridget Fonda(ブリジット・フォンダ)は警察でも裁判所でも暴れ回るほど凶暴な性格だった。彼女は死刑を宣告され、お役所仕事とは思えぬ迅速なスピードで死刑を執行されることになる。彼女は「母が来るまで待って!」と何度も叫ぶが聞きいれて貰えず、薬物が注射され、彼女は失禁しながら死ぬ。

韓国TVドラマによくあるみたいに:-)、Bridget Fondaは実は死んでいなかった。ずっと彼女を見守っていた男Gabriel Byrne(ゲイブリエル・バーン)が現われ、「もう君の葬儀も埋葬も済んだ。君は生まれ変わるんだ」と云う。「生まれ変わって何をするの?」と彼女が聞くと、「これからは国のために働け。そのために、言葉やコンピュータについて勉強しろ」と説得する。彼女が「嫌だと云ったら?」と聞くと、彼は「もう墓は出来ている(=本当に殺す)」と答える。彼女はGabriel Byrneを攻撃して脱出を図るが失敗し、取り押さえられる。

Bridget Fondaは秘密工作員になることを承諾し、条件として「Nina Simone(ニーナ・シモン)のレコードを聴きたい」と希望する。訓練が始まる。空手、射撃の訓練。そして、Anne Bancroft(アン・バンクロフト)による立ち居振る舞い、行儀作法、セックス・アピールなどの訓練もある。Bridget Fondaは攻撃力はあるが、全てに反抗的で工作員としての従順さが見られず、管理者Miguel Ferrer(ミゲル・ファラー)はGabriel Byrneに「このままだとあの女の脳味噌に弾丸をぶち込むしかない」と告げる。Gabriel Byrneは彼女に上司の言葉を伝え、Bridget Fondaは青ざめて態度を変える。

数ヶ月経ち、Bridget Fondaは容姿もエレガントになり、フランス語もぺらぺらになる(どうやって?教えて!)。Gabriel Byrneは彼女を初めての外出に連れ出す。車窓風景からそこは首都Washington D.C.であることが分る。二人は一流レストランに行く。彼はBridget Fondaにプレゼントを渡すがそれは拳銃で、「二階にいるVIPに二発ぶち込め」と指示する。それは卒業試験だった。

Bridget Fondaは試験に合格し、"Nina"(ニーナ)というコードネームでカリフォーニアに派遣され、指令を待つことになる。彼女は部屋を貸してくれた若者Dermot Mulroney(ダーモット・マローニィ)と恋仲になり、セックスに明け暮れる日々を送る…。

私はスパイの訓練風景というのが好きです。'Spy Game'『スパイ・ゲーム』(2001)、'The Recruit'『リクルート』 (2003)なども、もっと訓練を見せてほしかったぐらい。この映画の訓練風景はあまりリアルではなく、物足りません。

Bridget Fondaと恋人のDermot Mulroneyは、「旅行代理店に勤めている」と称するGabriel Byrneから、丁度マルディ・グラのお祭りがあるニューオーリンズへ招待されます。「マルディ・グラ」の由来と印象記は、私の http://www2.netdoor.com/~takano/english/custom.html#Mardi_Gras を御覧下さい。簡単に云うと、車に引かれた沢山の山車(だし)がマーチング・バンドやバトン・トワラーたちに先導されてパレードし、山車の上の人々がビーズのネックレスやプラスチックのコインなどを観客に投げます。別にそのビーズやコインに意味があるわけではないのですが、人々は争うように空中でキャッチしたり路上で拾ったりします。ネックレスを10も20も首に掛けると重くて首が痛くなります。日本の上棟式では餅を撒いたり、硬貨を撒いたりしますが、日本の方がずっと実利的で気が利いています。映画の二人もネックレスをキャッチしようときゃあきゃあ騒ぎます。

バーボン・ストリートは道路が狭いので山車は入って来ません。しかし、ここでは夜、特別の“行事”が行なわれます。通りの両側には古いアパートや小さなホテルが並んでいて、そのヴェランダに立っている住人とその親戚・友人らがビーズのネックレスをバラ撒きます、山車のように無作為に抛るのではなく、衣類をまくって胸を露出した女性に御褒美として投げ与えるのです。つまり、観光客の女性たちが「旅の恥はかき捨て」だったり、「露出狂」の本能を満足させるためだったりでおっぱいを丸出しにするわけです。それを見物にお客がわんさとやって来ますから、バーボン・ストリートは身動きがままならないほどごった返します。この映画ではDermot Mulroneyが女性の立派な裸のおっぱいを見て「ワーオ!」と興奮し、嫉妬したBridget Fondaが「あんた!」と自分に目を向けさせ(このシーンのBridget Fondaは可愛い)、二人でキスします。

その後、Bridget Fondaが「お腹が空いた」と云い、二人はホテル(と云ってもモダンなホテルではなく、バーボン・ストリートに近い昔風の造りの宿)に戻ってサンドイッチを注文することにします。これは脚本上の都合でそうなったのでしょうが、ニューオーリンズに行ってホテルのルーム・サーヴィスを取るなどというのは愚の骨頂です。近くにいくらでもニューオーリンズ名物料理、ケイジャン料理、クリオール料理や生牡蠣、オイスター・ポーボーイ、シュリンプ・ポーボーイなどの店があるというのに、普通のサンドイッチを食べるなんて信じられません。

ホテルに向う二人は人気のない裏通りを抜けようとし、黒人二人に囲まれ金を取られそうになります。格闘技の訓練を受けたBridget Fondaは心配ないのですが、そういう特技のない旅行者は気をつけた方がいいでしょう。アメリカのどこの薄暗がりにも金に飢えた危険人物が潜んでいると思わなくてはなりませんが(生活のため、借金のため、麻薬のため)、特にニューオーリンズの暗がりは危ないそうです。アメリカ南部の人間もそう云います。

私はJohn Badham(ジョン・バダム)監督作品としては'Blue Thunder'『ブルーサンダー』(1983)が好きです(飛行機もの、ヘリコプターものが好きなので)。あれは話の運びも快調でしたし、映像もシャープでした。この作品はどうかというと、一寸かったるいですね。アクション一辺倒ではなくロマンスをミックスした脚本に足を引っ張られたのかも知れませんが。

私はBridget Fondaは好きではありません。美人でもないし、色気があるわけでもない。親の七光りというのも気に入りません。Gabriel Byrneはよろしい。Bridget Fondaの育成係兼お目付役兼連絡係ですが、次第に情が移って行くものの、何とか踏みとどまらなければならない辛さをうまく表現しています。'End of Days'『エンド・オブ・デイズ』(1999)の悪魔役などよりは、この善人役の方が似合っています。

Anne Bancroft(アン・バンクロフト)は頑張っていますが、62歳なので紗をかけて撮って上げたい気になります。監督はAnne BancroftがBridget Fondaを気遣うような表情を入れたりして、この名女優に敬意を表していますが、全体にAnne Bancroftに芝居のしどころがなく、彼女を使うのが勿体ない感じ。

Harvey Keitel(ハーヴェイ・カテル)についてはPart 2で触れますが、淡々とビジネスライクに仕事をする印象的な“悪”(わる)を演じています。彼にとっては'The Piano'『ピアノ・レッスン』(1993)と同じ年の作品です。

コンピュータによるSFX全盛の昨今からすると、身体を張ったアクションだけなのでやや地味な感じがしますが、「それがいい」と思われる方もいるかも知れません。

(April 13, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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