[English] [Japanese Home] [Studio BE] [America Offline] [公民権運動] [英語の冒険] [英語の冒険2] [Golf] [Hummingbird]



[Banner]



Paradise

『愛に翼を』


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1991
監督:Mary Agnes Donoghue
地域:サウス・キャロライナ州ほか
出演:Melanie Griffith、Don Johnson、Elijah Wood、Thora Birch、Sheila McCarthyほか
範疇:原作もの(仏)/父が恋しい少年/夏休みの田舎暮らし/子を失った男女/父のない少女/恐怖心の克服

私の評価 :☆

【Part 1】

日本の夏休みは学年の途中ですが、アメリカでは六月上旬に学年を終了し、九月上旬に新たな学年が始まります。この映画はその休みの間の出来事です。

都会の私立の小学校。同級生が「ボクはコロラドの避暑用の家に行く。キミは?」と聞くのに対して、10歳のElijah Wood(イライジャ・ウッド)は「ボクはアフリカに行く」と答える。

大きなお腹を抱えている少年の母は、少年を連れ長距離バスに乗って、アフリカではなくサウス・キャロライナ州の田舎町(名前はParadise)に向う。出産までの二ヶ月、旧友であるMelanie Griffith(メラニー・グリフィス)に少年を預かって貰うことにしたのだ。女同士は再会を喜び合う。母は数時間後にバスで都会に戻って行く。

少年は隣りの9歳の少女Thora Birch(ソーラ・バーチ)と仲良くなる。彼女は未婚の母の娘で父を見たこともない。少年は「ボクのお父さんは海軍軍人で、外国へ行ってる」と云うが、少女は「あなたのお父さんは、もう帰って来ないんじゃない?」と云い、少年は「これまでは帰って来たよ」と云うが確信はない。二人は森を散策したり、湿地でボートに乗ったりする。少女は高い物見台の縁に立って歩いて見せる。Elijah Woodには恐くて出来ない。

Melanie Griffithと夫Don Johnson(ドン・ジョンスン)との仲はぎくしゃくして妙だった。Don Johnsonは少年の滞在を迷惑がっていて「あの子と遊んでやるつもりはないぜ」と宣言する。少年がラジコン飛行機を見つけると、Don Johnsonは使い方を教え「お前にやる。壊したらそれまでだ。直す気はない」と云う。

少年が墓地の木の上に登っていると、Melanie Griffithがやって来て一つの墓に花を供えた。見ると、墓の主はJamesという名で、三歳で亡くなっていた。

朝5時、Don Johnsonは自分のエビ漁船に少年を乗せる。少年は一生懸命働き、Don Johnsonを感心させる。その夜、疲れ果てた少年はMelanie Griffithの膝に頭を乗せて眠ってしまい、彼女の母性愛を目覚めさせる。

Don Johnsonは少年にフライ・フィッシングを教える。「この釣り場は、結婚する前二人でよく来たところだ」と云う。「釣りに?」と少年。「うんにゃ」とDon Johnson。「あれだね」と少年。「そうだよ、お利口さん」とDon Johnson。少年は「Jamesって誰?」と聞き、Don Johnsonは「おれたちの子供だ。二年半前に三歳で亡くなった。事故だ」と答える。

少年はDon JohnsonとMelanie Griffithのそれぞれに聞き、二人が表面上は冷たいがまだ愛しあっていることを知る。少女Thora Birchの一家と少年、Don Johnson、Melanie Griffithがピクニックをする。その夜、珍しく心のドアを開いたMelanie GriffithをDon Johnsonが抱き締め、キスしようとするが、Melanie Griffithは拒む。Don Johnsonは「おれの顔を見るのも嫌なのか?キミの心は死んでいるのか?」と詰(なじ)り、二人の子供部屋の家具を叩き壊し始める。Melanie Griffithは息子の死の真実を話す。それが彼女の心を閉ざしている原因だった…。

少年の父は妻と息子を捨てて行って、帰って来ない。Melanie GriffithとDon Johnsonも、もう戻らない息子の想い出によって夫婦関係を冷え込ませている。二人の隣人のウェイトレスSheila McCarthy(シェイラ・マカーシー)は未婚の母として年頃の長女と9歳の次女Thora Birchを抱えながら、ついに結婚しようと考えている。少女Thora Birchは自分の父親を探し求めている。こういう具合に、各様の家族関係、親子関係が錯綜します。

真実を直視する勇気というテーマもあります。少年は「ひょっとしたら、もう父は帰って来ないのではないか?」と思いつつも、恐くて母に聞くことが出来ない。Melanie Griffithも息子の死の原因の一つは自分にあったと思いつつ、恐ろしくてそれを誰にも話せなかった。Don JohnsonもMelanie Griffithとの間にもう愛はないのか?と訝りつつ、恐くて二人で話し合うことが出来なかった。

少女Thora Birchと出会ったばかりの頃、少年Elijah Woodは「ボクは学校で人気者なんだ」と嘘をついたり、何でも知っているようなフリをします。彼は年齢の割には頭がいいのですが、実際には孤独な少年でした。しかし、お転婆でオマせな少女と親交を深め、Don JohnsonとMelanie Griffithの不自然な間柄を反面教師とし、次第に正直で素直な心根を持つ少年に変貌します。少年は、「ボクは人気者じゃない。友達もいない」と少女に告白します。少女は「あたしはあなたの親友よ」と宣言します。

Melanie Griffithは生気のない役柄のせいもあり、魅力に乏しい憾みがあります。Don Johnsonは、ここではいつものプレイボーイ風の軽い感じを捨て、非常に渋く人間味のある演技をしています。しかし、いくら日焼けしててもエビ漁船の船長には見えませんが。

Elijah Woodと少女Thora Birchは、それぞれ実年齢も当時10歳と9歳でした。Elijah Woodはやや孤独で蔭のある少年をうまく演じています。

少女Thora Birchは後年'American Beauty'『アメリカン・ビューティー』(1999)でKevin Spacey(ケヴィン・スペイシイ)とAnnette Bening(アネット・ベニング)の娘を演じました。ここでは髪はくしゃくしゃ、木登りの好きなお転婆で、飾らずに真実を口にする素朴な少女を好演しています。

隣人のウェイトレスSheila McCarthyは'Die Hard 2'『ダイハード2』(1990)でリポーター役で出ていた女優。ここでは年齢を隠すためのケバい厚化粧の役柄で、とても同じ女優に見えないのですが、私は彼女の特徴ある(短い)下顎で気づきました。

女性による脚本・監督だけに、登場人物たちの性格や会話は細やかで味わい深いものがあります。いくつか、思慮の足りないような演出・編集部分がありますが、それらは重要とは云えない脇筋なので許せる範囲。

(May 31, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




Copyright © 2001-2011    高野英二   (Studio BE)
Address: Eiji Takano, 421 Willow Ridge Drive #26, Meridian, MS 39301, U.S.A.