公開：1950
監督：Elia Kazan
地域：ルイジアナ州ニューオーリンズ
出演：Richard Widmark、Paul Douglas、Barbara Bel Geddes、Jack Palance、Zero Mostelほか
範疇：スリラー／犯罪／伝染病／保菌者捜査

私の評価 ：☆

【Part 1】

ニューオーリンズ。Jack Palance（ジャック・パランス）と二人のダチ公が見知らぬ男とカード・ゲームをしていた。男は一人勝ちしていたが、「悪寒がする」と行って引き上げようとした。「勝ち逃げする気か！」と他の三人は気色ばむが、男は彼等を振り切って逃げ出す。Jack Palanceがカードを点検すると、男がインチキしていたことが分る。男を追い詰め、Jack Palanceは冷酷に射殺する。ダチ公二人が死体の始末をする。

翌朝、波止場に浮かんでいた男の死体が警察に収容され、検屍官に廻される。検屍官は見知らぬ病原菌を発見し、直ちにU.S. Public Health Service（アメリカ公衆保健サービス）のRichard Widmark（リチャード・ウィドマーク）が呼び出される。非番で息子の相手をしていた彼は、渋々制服に着替えてモルグ（死体公示所）に赴く。

殺人事件ということで多数の報道関係者がモルグに群がっていた。Richard Widmarkが顕微鏡で調べたところ、病原菌は肺ペストであることが分る。彼は委細を説明せずに、報道陣への予防接種を指示する。

Richard Widmarkは市長、警察署長をはじめとする市の主だった人々に肺ペストの恐ろしさを説明する。「死亡率が高く、飛沫伝染により48時間でニューオーリンズ市民が全て死に絶える恐れがある」と警告するが誰も信じない。波止場に浮かんでいた男と接触した人間を隔離しなければならないという点は了承され、Paul Douglas（ポール・ダグラス）演ずる警部と共に捜査にあたることになる。

警察としては死体の身元調べから始めたかったのだが、伝染を恐れたRichard Widmarkは既に火葬を命じていた。仕方なく警察はヤクザ、浮浪者などから聞き込みを始める。Richard Widmarkはそんな悠長な段取りに耐えられなかった。彼は単身船員雇用所に行き、死人の写真を見せて50ドルの賞金で情報を得ようとする。努力の甲斐あって、死人が密入国者であり、乗って来た船、ニューオーリンズでの宿泊先などが分る。

その頃、Jack Palanceのダチ公の一人が、疫病に冒されているとも知らず悪寒に震えていた…。

“名匠”Elia Kazan（イーリア・カザン）の'A Street Car Named Desire'『欲望という名の電車』(1951) の一年前の監督作品。

'Kiss of Death'『死の接吻』(1947) の気味悪く笑うごろつきで衝撃的なデビューを飾ったRichard Widmarkの七本目の映画。Jack Palanceにとってはこれがデビュー作で、Walter Jack Palanceとクレディットされています。彼もその風貌と非情さを巧みに表現した演技でRichard Widmarkに劣らぬ鮮烈なデビューです。『死の接吻』ではRichard Widmarkが車椅子の女性を階段から突き落としましたが、本作品のJack Palanceも死にかけているダチ公を二階から突き落とします。偶然でしょうか？悪役デビューの定石だったりして。他にRichard Widmarkの妻の役でBarbara Bel Geddes（バーバラ・ベル・ゲデス）が出ています。

Richard Widmarkは軍人のような制服を着ていますが、実際には保健機関のドクターです。U.S. Public Health Service（アメリカ公衆保健サービス）というのは非常に広範な仕事をしていますが、その一つに検疫という仕事があります。やはり取り調べには権威が必要ということから、軍服めいたものを着ているのでしょう。人間、動物、植物などの検疫は空港でお馴染みですが、ニューオーリンズもアメリカ有数の貿易港ですから検疫は欠かせないわけです。

ヨーロッパやアフリカなど世界に向けて開いている港ということと、湿気の多い土地柄のせいで、ニューオーリンズは本当に疫病が流行る都市なのです。1853年の黄熱病（蚊が媒介する）の流行では11,000人が亡くなったそうです。

(June 27, 2002)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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