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The Simple Life of Noah Dearborn

(未)


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1999
監督:Gregg Champion
地域:ジョージア州
出演:Sidney Poitier、Dianne Wiest、Mary-Louise Parker、George Newbern、Bernie Caseyほか
範疇:TV映画/老大工/土地開発/精神科医/老黒人と白人女性の友情

私の評価 :☆

【Part 1】

日本で劇場公開されたこともなく、日本語版DVDも出ていない映画を取り上げてどうするのか?という疑問もあろうかと思います。特にTV映画と来れば俳優も小粒でスケールが小さいというのが通り相場。日本の方がわざわざ観ようという気にならないのは保証付きでしょう。実は、私としては日本の読者だけを対象に映画紹介をしているつもりはないのです。アメリカに留学している方、駐在中の方、永住されている方も対象です。そういう方々が「へえ、そういう映画もあったのか」と借りてみる気になられるかも知れません。

もう一つの要素として、別に映画を観る気にならないまでも、映画の背景となっている時代や地域、事件などをお話として読みたいという読者の存在を期待していることもあります。“南部もの”300本を通読されれば、南部の慣習や名物、歴史などにも詳しくなれるかも知れません。そういう意味では、何か紹介したいポイントさえあれば、日本語版DVDが出ていないTV映画でさえも取り上げる価値はあると思います。

そこでこのTV映画'The Simple Life of Noah Dearborn'(ノア・ディアボーンの簡素な生活)ですが、上の要件を満たしているか?というと、あまり自信はありません。主人公のNoah Dearbornを演じるSidney Poitier(シドニィ・ポワティエ)は作品を選ぶ人ですから、たかがTV映画でもきっといい作品だろうと思ってDVDをレンタルしました。佳作には違いないのですが、“南部もの”として何か書けるかどうか、ちと心配な作品です。

ジョージア州の片田舎。お役所の玄関の改修工事が行なわれていて、大勢の作業員が働いている。入り口を飾る化粧板の釘を打った大工が板を真っ二つに割ってしまい、現場監督は困り果てる。特別注文の板なので、取り寄せる日数がかかるからだ。そこへ「おれに任せろ」と老黒人Sidney Poitierが道具箱を下げてやって来る。現場監督が「いつ出来る?」と聞くと、老人は「今だ」と答える。大工が「あれは誰?」と聞くと監督は「大工の神様さ。しかし、今日の作業終了までにあと二時間しかない」と案じる。いつの間にか工事関係者たちは老人が二時間で板を作れるかどうか賭けを始めていた。「あと五分!」老人は悠々と梯子に乗り、化粧板を据え付けた。割れたものと寸分違わなかった。人々は彼の名を連呼して褒め讃えた。

Sidney Poitierは少年時代から伯父の大工仕事を見つめて育ち、物心ついてすぐ大工になった。今は14ヘクタールの土地を持ち、牛や馬を飼い、納屋のような家に一人で住んで、夜明けとともに起き、日没まで働いて暮らしていた。町や村の人々は、彼にテーブルやドアの補修を頼み、彼は喜んで引き受けた。

ある日、若い男George Newbern(ジョージ・ニューバーン)がやって来て、Sidney Poitierの土地を買いたいと云う。「おれの土地は売り物じゃない」と拒絶すると、男はみるみるうちに40万ドルも言い値を更新した。しかし、Sidney Poitierの返事は変わらない。

George Newbernはこの町に新しいショッピング・モールを作るための会社の先乗り要員で、土地買収担当の一人だった。彼がSidney Poitierの反応を話すと、スタッフの一人が「あるカウンティでは、そういう年寄りが精神異常であるという診断を得て買収に成功した例がある」と話す。George NewbernのガールフレンドMary-Louise Parker(マリー=ルイーズ・パーカー)は、大都市で精神科のクリニックを開業しているドクターだった。彼は彼女に「来て手伝ってくれ」と頼む。

George Newbernは車でやって来たMary-Louise Parkerにネックレスをプレゼントし、早速セックスする(画面には出ませんけどね)。依頼を聞いた彼女は「出来るかしら?」と半信半疑。ともかく彼女はSidney Poitierの家に出向くが、全く相手にされない。彼女が都会の警察の友人にSidney Poitierの犯罪歴を問い合わせるが、彼の記録は綺麗なものだった。彼女はSidney Poitierが1908年生まれの91歳であることを知って愕然とする。まるで50数歳にしか見えないのに。Mary-Louise Parkerは長寿についてインターネットで調べ始める。

Mary-Louise ParkerはやっとSidney Poitierの家に入れて貰う。外観は納屋だが、その中の二階は素晴らしいレイアウトのログ・ハウス・スタイルの部屋で、ピカピカの美しい木工家具で埋め尽くされていた。しかし、電気はなくアルコール・ランプに薪ストーブという驚くべき簡素な生活である。Mary-Louise Parkerは矢継ぎ早に質問する。「ビートルズ知ってます?」「ノー」、「金門橋?」「ノー」、「プレスリー?」「オー、イヤー」、「病気になったことは?」「病気してる暇なんぞない」

George Newbernに会ったMary-Louise Parkerは、「まさに奇跡よ!現代の生活にまるで汚染されてないの」と云う。そこへ、Sidney Poitierのところへ買収交渉に行ったスタッフの一人が来て、「仕事を辞めてカリフォーニアでワイン作りをすることにした」とGeorge Newbernに告げる。George Newbernには理解出来なかったが、その男は金儲けよりも、好きなことに打ち込む人生というものがあることをSidney Poitierから学んだのだった。

George Newbernの差し金で、「Sidney Poitierは精神異常である」という手紙が裁判所に寄せられ、警察がSidney Poitierを拘引し病院に送り届ける。医師たちが愚にもつかぬ質問でSidney Poitierの精神状態を診断し始める。事態を知ったMary-Louise Parkerが、ドクターの肩書きを利用して彼を奪回すべく駆けつける…。

足踏みで木を削ったりヤスリをかけたりする木工道具を始め、色々な木工シーンが出て来ます。そういうものが好きな方にはこたえられない映画でしょう。

Sidney Poitierは頭のいい人物を演じることが多いようですが、ここでは働くことだけが生き甲斐の素朴な老人を好演しています。91歳で50数歳に見える役ですが、この映画製作時の彼は72歳でした。Mary-Louise Parkerは美しさと素直な性格を兼ね備えた女性を魅力的に演じています。彼女は'Fried Green Tomatoes'『フライド・グリーン・トマト』(1991)で薄幸の女性を演じていました(カフェの持ち主二人の優しい方)。出番がそう多くないDianne Wiest(ダイアン・ウィースト)がMary-Louise Parkerより先にクレディットされますが、彼女は二度もアカデミー助演女優賞を獲得した有名人だからでしょう。

脚本の良さなのか監督の演出なのか判別つけにくいのですが、心憎いシーンがいくつかあります。それらがこの小品を肉付けし、後味のいい佳作にしています。そのいくつかはPart 2で触れたいと思います。

日本の建設・工事関係については詳しくないのですが、こちらの事情について触れておきます。日系自動車部品工場建設の入札に関連して、ある上下水道配管・暖冷房を扱う会社(当市のアメリカ人経営)に雇われたことがあります。"General contractor"(ゼネコン)は間組だったのですが、いくら頼んでも工場の仕様や青写真を送ってくれないので、「こりゃ日本人同士で話させなきゃ駄目だ」となったらしいのです。結局、様々な変更があって青写真はなかなか出来上がらなかったというのが真相だったのですが、私は入札までの間ずっと当市の会社と間組との間の連絡係を務めました。多分、間組も入札でゼネコンの資格を得たのだと推察しますが、彼らはその予算内で工事を完成させるべく、土木関係、建物関係、電気関係、配管関係、内装関係に分けて、下請け業者に入札させ、最も低価格の業者を採用します。

カミさんが母親の家の一部を改造したことがあります。台所とダイニングの間に仕切りのドアを付け、洗濯室の一角にトイレを増設しました。大した工事ではないのですが、直接大工や鉛管工を雇うことは出来ず、先ず"contractor"(請負人)を選ばなくてはならなかったそうです。その"contractor"が大工や鉛管工を雇うのです。

この映画の冒頭に出て来る人物を「現場監督」としましたが、"contractor"とするのが正しい筈です。現場だけ監督するわけではなく、契約・出来映え・納期など全てに責任を持つ人物ですから。

Mary-Louise ParkerはSidney Poitierの生き方に感銘を受けながらも、彼が読書などしていないことを心配します。そして二冊の古本を買って渡します(91歳の老人に一般教養をつけさせようという凄いプロジェクト)。その一冊は彼女の好きな『嵐が丘』。もう一冊は何と(じゃーん!)『宮本武蔵』(もちろん英訳)!どういう組み合わせなんだ、一体:-)。

(July 31, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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