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Natalee Holloway



[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:2009年
監督:Mikael Salomon
地域:アラバマ州、カリブ海のオランダ領アルバ島ほか
出演:Amy Gumenick、Tracy Pollan、Grant Show、Sean Cameron Michaelほか
範疇:TV映画/実話の映画化/高校の卒業旅行/娘の失踪/殺人?/親の捜索活動

私の評価 : ☆1/2

【Part 1】

これは私にとっては実に身近な事件の映画化なのです。行方不明となった女子高生Natalee Holloway(ナタリー・ハロウェイ)は母親、弟と継父と共にアラバマ州に住んでいましたが、彼女の実父はミシシッピ州の私の住む町Meridian(メリディアン)で働いている会社員なのです。ですから、Natalee Hollowayが行方不明となった時は私の住む町の新聞もTVも大騒ぎしました。2009年製作のこの映画には含まれていない、2010年の新事実も報道されました(後述)。

これはNatalee Hollowayの母親が出版した'Loving Natalee'という本に基づいた映画で、家族名も容疑者名も全て実名で描かれています。

2005年。アラバマ州北方の大都市Birmingham(バーミングハム)の近くにある町Mountain Brook(マウンテン・ブルック)。卒業を目前にした高校四年生(アメリカの高校は四年制で、最終学年は四年生)のその年の卒業旅行は、カリブ海にあるオランダ領のAruba(アルバ)島への五日間の旅行だった。Amy Gumenick(エイミィ・ガメニック)演ずるNatalee Hollowayも他の124名の生徒(+7名の付き添い係)と共に参加することになった。彼女は旅行のために、ドレスや水着をいくつも買い揃える。

Aruba島。Nataleeは仲良し四人組とホテルで同室になって、みんなではしゃぐ。彼らは早速ホテルの歓迎のアルコール入りの飲み物を振る舞われる。四人はカジノへ行く。彼らはオランダから遊びに来ている学生と称する若者と親しくなる。Jacques Strydom(ジャック・ストリドム)演ずるその男の名はJoran Van Der Sloot(ジョラン・ヴァン・デル・スルート)と云った。四人組とJoranは若者向けのナイトクラブに行く。

JoranはNataleeに「"two shots"は呑める?」と聞く。周囲の男たちは目配せし合って眉をひそめる。彼女は"two shots"が何かも知らずにOKする。Joranが何かを飲み物に入れる(デイト・レイプ用の薬品の注入を思わせる演出)。彼女はJoranに"Body shot"をリクエストする。それは女のお臍に注いだ酒を男が飲むという遊びだ。彼女は完全に酔っぱらって、Joranの友人たちと一緒の車に乗り、仲良しの三人に「ホテルに帰る」と云って去る。しかし、彼女は帰って来なかった。

Tracy Pollan(トレイシー・ポーラン)演ずるNataleeの母親Beth(ベス)と現在の夫(Nataleeの継父)がArubaに飛行機でやって来る。ホテルの警備員がNataleeと一緒だったJoranを見ていたという証言で、一同は刑事たちと共にJoranに会いに行く。Joranは酔っているNataleeをホテルへ送り、そこで別れたと云う。Joranの父は弁護士で、警察が家宅捜索など出来ないことを知っている。

ArubaのTVリポーターがBethに「助けて上げよう」と接触して来る。アメリカ政府代表の女性も会いに来る。

Nataleeの母親Bethは、商店や街路樹に「尋ね人」のポスターを貼って廻る。Nataleeの実父とBethの友人たちがArubaに到着する。Bethは友人に情報提供者への報奨金の金策を頼む。Nataleeの居場所を教えてくれて、彼女が無事に戻れば$100,000(約一千万円)、居場所の情報だけなら$50,000(約500万)支払うと公表する。

Beth夫妻はホテル玄関前の保安用ヴィデオをチェックする。娘が乗った車は到着していなかった。

夫妻はJoranの父親が警察のお偉方と親し気に握手しているのを目撃し、Arubaの警察に不信感を抱く。

世界中の目がArubaに集まっていたが、次第に警察の無能力が批判され始める。体面を気にしたArubaの首相の圧力で警察はJoranを逮捕する。Joranは車に同乗していた二人の友達(スリナム人で21歳と18歳の兄弟)について証言する。その二人も逮捕されるが、それぞれの証言は食い違う。警察は二人の友達を釈放した。Bethは「この二人を国外追放せよ」というステートメントをマスコミに向かって読み上げ、Arubaの人々の反感を買う。市民が集まり"Beth Go Home!"と叫び始める…。

上の荒筋では省略しましたが、三人の容疑者たちの証言がドラマ化されて随所に挿入されています。Nataleeの母親の活動だけ見せる映画ではありません。この後の物語は、事実に即した物語だというのにまるで映画のような(『スパイ大作戦』のような)展開を見せます。決して地味な映画ではありません。

私はこの事件を知っていましたが、まさかTV映画にまでなっているとは知りませんでした。当地の新聞には予告があったのでしょうが見逃したようです。

「Nataleeの母親が書いた本に準拠している」という前提があるので、本が名誉毀損で訴えられていない以上、映画も大丈夫という判断で容疑者たちの実名を出しているのでしょう。

確かに当地の新聞で報道されていたAruba警察のやり方はかったるく、Joranの逮捕→釈放→再逮捕→釈放→尋問→釈放…という感じでついに迷宮入りになってしまいました(他の二人の容疑者は三回逮捕されて釈放)。容疑者はJoranしかいないという状況なのに、告訴出来る決め手を見出せなかったわけです。Nataleeの遺体が見つからなかったのがJoranに幸いしたというしかありません。遺体から彼のDNAを持つ精液が発見されていれば一発で特定されたでしょうから。

しかし、いくら飲酒年齢に達したからといって、また、いくら卒業旅行で羽を伸ばしていいからといって、Nataleeは酒を呑み過ぎ、男への警戒心がなさ過ぎ、無謀極まりない娘だったようです。もちろん、誘拐し他国へセックス奴隷として売ったか、レイプし殺してしまったかした犯人はいくら憎んでも憎み切れませんが、隙だらけだったNataleeにも責任がないとは云えません。

Nataleeの母親Bethはミシシッピ州中西部にあるClinton(クリントン)で前夫Dave(デイヴ)と結婚したのですが、1993年に離婚。その後、Daveは私の住む町Meridian(メリディアン)で保険のブローカーをしています。Bethは2000年に再婚したものの、娘の失踪事件後、2006年に離婚しています。理由は「完全なる性格の不一致」だそうです。このBethは気性が激しいだけでなく、思い込みも激しかったようで、Joranと二人の友達が娘を輪姦して殺害したと決めつけ、他の可能性については全く考えていないとされています。

このTV映画は女性向けのCATVチャネルLifetime Movie Networkで2009年4月19日に放送されましたが、内容の出来・不出来は別として、同チャネルのそれまでの11年間の最高の視聴率を獲得したそうです。

2010年3月30日、ペルーのリマ市のホテルで21歳の女子学生が死んでいるのが発見されました。死後三日経っていました。その部屋はJoran Van Der Slootの名で借りられていました。彼はチリで逮捕され、即日ペルーに護送され、取り調べを受けました。殺しの動機は、被害者が無断で彼のラップトップ・コンピュータにアクセスし、彼がNatalee Holloway失踪事件の関係者だと知ってしまったのでカーッとなったからだそうです。しかし、彼は嘘の証言の常習犯ですから、これが本当かどうかは誰にも分りません。

この映画にPart 2はありません。

(October 06, 2010)


Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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