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公開:1975
監督:Robert Altman
地域:テネシー州
出演:Lily Tomlin、Henry Gibson、Ronee Blakley、Keith Carradine、Karen Blackほか
範疇:ドラマ/カントリー&ウェスタン
私の評価 :☆
【Part 1】
ここの「アメリカ映画“南部もの”大全集」の収録本数が70本に達した頃、私が勝手に相談役と決めて御助言を頂いている井原さんに「1970年代の“南部もの”がヤケに少ないのですが、どうしてでしょう?」とお伺いしたら、「事情は色々考えられますが、でも結構ありますよ。例えば…」と仰って出されたのが、この'Nashville'『ナッシュビル』です。「“南部もの”大全集」には音楽物が少なかったので丁度いいかと思ったのですが、監督名を聞いてガックリ。Robert Altman(ロバート・アルトマン)なんです。既に'Cookie's Fortune'『クッキー・フォーチュン』と'The Gingerbread Man'『相続人』を観て、ダラけた映画作りに呆れ「もうこの監督の映画は観ない!」と宣言したばかりだったのです。
そもそも彼は朝鮮戦争を背景にしたハチャメチャ・コメディ'M*A*S*H'『マッシュ』の成功で“一流監督”に叙せられたのだそうですが、私は'M*A*S*H'を全然評価していませんでした。井原さんも「この人ほど毀誉褒貶と浮き沈みの激しい有名な米国の映像作家は珍しいではないでしょうか」と仰っておられます。さらに悪いことに、私はカントリー&ウェスタン(以下C&W)に全く興味がありません。私の町のCATVにはC&Wの専門チャネルがあり、一日中歌ったり踊ったりしていますが、「邪魔っけだなあ」とすぐ飛ばしてしまいます。
しかし、井原さんのお薦めも無視出来ないし、「大全集」と銘打っている以上、やはり観るしかないと覚悟しました。しかし、当市の図書館、レンタル店のどこにもこのヴィデオは見当たらず、オークションで購入しようとしたら、ヴィデオ二巻で合計2時間40分なんだそうです。ゲッ!です。そもそもは8時間(!)だったそうで、それを6時間に短縮、これでも長過ぎるということで3時間30分、そして最後に2時間40分に落ち着いたとか。まあ8時間じゃなくて良かったと天に感謝すべきなのでしょう。
この映画は単にC&Wのメッカであるテネシー州ナッシュビルの出来事を描いたものではなく、ヴィエトナム戦争やウォーターゲイト事件当時のアメリカの縮図を狙ったものなのだそうです(製作・監督であるRobert Altmanの言)。そのため、様々な境遇、性格、背景を持つ24人もの登場人物(政治活動家、歌手たちとその家族、歌手志望者たち、C&Wファンなど)が交錯します。彼等を一本にまとめるのは、大統領選挙に出馬する候補が、C&Wのスター達を人寄せの道具として使う大集会の企画です。その大集会へ向けての五日間に、24人が互いに翻弄し、翻弄されて行くという筋立てです。
一日目。先ず、Henry Gibson(ヘンリー・ギブソン)演ずる地元のC&Wの大御所のレコーディング風景。Geraldine Chaplin(ジェラルディン・チャップリン)演ずる“BBCのリポーター”と自称する女性が闖入し、大御所の命令でつまみ出される。隣りのスタジオでは黒人コーラス隊をバックに白人ゴスペル・シンガーLily Tomlin(リリー・トムリン)がレコーディング中だった。
ナッシュヴィル空港。続々と歌手、歌手志望、ファンたちが到着する。Henry Gibsonが、Ronee Blakley(ロニー・ブレイクリー)演ずるC&Wの女王を迎えに出る。半袖の軍服を着た陸軍上等兵Scott Glenn(スコット・グレン)もいるが、彼の存在はちと異様である。大統領候補支持集会を統括する活動家のNed Beatty(ネッド・ビーティ)とMichael Murphy(マイケル・マーフィ)もRonee Blakleyの出演交渉のために馳せ参じている。しかし、彼女は地元の歓迎に感謝する挨拶をした後、急に失神して倒れてしまい、数日の休養を余儀なくされる。空港からダウンタウンへ向うハイウェイで玉突き事故が起り、沢山の車が立ち往生。ここで、さらに数名の登場人物が紹介される。
その夜、素人歌手が参加出来るライヴ・ハウスで、Gwen Welles(グウェン・ウェルズ)演ずる空港カフェのウェイトレスが歌手としてデビューする。ライヴ・ハウスのオーナー兼バーテンは、歌はひどいがセクシーな彼女を、大統領候補の寄付金集めの"smoker"(男性オンリーのパーティ)に最適と主催者に推薦する。
Ned Beattyの妻は、例の白人ゴスペル・シンガーLily Tomlinである。二人の耳の不自由な子を持つ彼女は、家庭では平凡な主婦。その彼女に、Keith Carradine(キース・キャラダイン)演ずるフォーク・ロック・グループ'Tom, Bill and Mary'のTomから誘惑の電話が入る。彼女が「家に来て夫にも会って」と云うと、電話は切れる。
陸軍上等兵Scott GlennはC&Wの女王Ronee Blakleyの病室に侵入し、椅子に座って彼女を終夜“護衛”する。
二日目。'Tom, Bill and Mary'のTomは“BBCのリポーター”Geraldine Chaplinと一夜を明かしたところ。彼女の前で、彼はゴスペル・シンガー/主婦Lily Tomlinに二度目の電話を入れる。彼女の夫が盗み聞きする。
大御所Henry Gibsonの別荘でのパーティ。Henry Gibsonが「政治家への応援は断る」と云うのに対し、Michael Murphyは「大統領候補はあなたを州知事にしたがっている」と殺し文句で口説く。Elliott Gould(エリオット・グールド)が本人自身としてやって来て、座を盛り上げる。
OpryLand(オプリィランド)のショーに、トップを目指すKaren Black(カレン・ブラック)が入院中のRonee Blakleyのピンチ・ヒッターで登場する。病院のラジオで中継を聞いているRonee Blakleyは苛つく。
'Tom, Bill and Mary'のTomの部屋では、夫であるBillの目を盗んでCristina Raines(クリスティーナ・レインズ)演ずるMary(メアリ)がTomとベッド・インしている。
…とまあ、こんな風にC&Wの実演と物語がない交ぜになって展開します。他の主要な人物も紹介したいところですが、多過ぎますので省略。
何といっても、この映画がユニークなのは俳優が自作した曲を自演していること。Karen Blackがあんな立派な曲を作ったというのは信じられませんが、IMDbデータによれば、ちゃんと"Original music by Karen Black"となっています。Karen Blackの役がConnie White(黒→白)というのはふざけています。他には、Ronee Blakley、Keith Carradineの名もあります。Keith Carradineの'I'm Easy'はアカデミー歌曲賞を獲得しました。作詞だけ担当した人としては、監督のRobert Altmanを始めHenry Gibson、Lily Tomlinの名も出ています。 皆さん、多芸多才ですね。聞くところによれば、この映画の出演料は全員一律だったそうです。歌を作った人はサントラ・レコードの印税で稼いだという感じなのでしょう。
Keith Carradineの'I'm Easy'もいい曲だし、パフォーマンスもいいですが、その前に'Tom, Bill and Mary'トリオでCristina Raines(=Mary)が歌う'Since You've Gone'もいい曲です。
'The Vertical Limit'『バーティカル・リミット』(2000)で年老いた山岳ガイドを演じていたScott Glennの初々しい20代の顔が見られます。音痴のウェイトレスGwen Wellesが、男性達からのブーイングで、仕方なく歌を止めてストリップ・ショーに転ずる姿が哀しい。Jeff Goldblum(ジェフ・ゴールドブラム)が三輪バイクで町中を走り廻り、あちこちで手品を披露します。
(May 04, 2001)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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