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公開:2001
監督:Marc Forster
地域:ルイジアナ州
出演:Billy Bob Thornton、 Halle Berry、Peter Boyle、Heath Ledger、Mos Defほか
範疇:人種を越えたロマンス/元刑務所看守/死刑囚の未亡人
私の評価 :☆☆
【Part 1】
実はこれはDVDを見始めてから“南部もの”だと気付きました。知っていれば劇場で観たことでしょう。封切り時、当地の劇場では二週間で上映を打ちきり(多分、観客動員が一定数以下だった)、アカデミー賞候補になってから、再度一週間だけ上映しました。私は「そのうち観よう」と思っていて、ついに観るチャンスがありませんでした。
映画が始まって7分ぐらいしたところで、Halle Berry(ハリー・ベリー)が息子を連れて死刑囚である夫の最後の面会に刑務所を訪れます。その刑務所の入り口の映像を見て、私は思わずポーズをかけてしまいました。見覚えがあったのです。いえ、私が入っていた刑務所というわけではありません:-)。南部地方のゴルフ情報誌のカヴァーに、この入り口の写真が載っていたのです。映画のゲートでは"State Penitentiary"となっていますが、本当のゲートは"Louisiana State Penitentiary"です。映画製作者は舞台となる土地を特定したくなかったようです。
その刑務所はルイジアナ州の終身刑の囚人が入るところで(受刑者5,108人)、ここへ入ったらまず出て来れません。所在地はルイジアナ州中東部のAngola(アンゴラ)と云い、刑務所だけの町と云ってもいいくらいで、そこで働く看守、医師、調理人など1,800人だけが住む町なのです。何故、この刑務所がゴルフ情報誌のカヴァーになっていたかというと、ここに主に刑務所従業員のためのという珍しいゴルフ場が出来たからです(囚人はプレイ出来ません)。Prison Viewという、たった9ホールのコースですが、ある歯科医が設計し、州の助成金は一切貰わず従業員たちの基金と募金を元に、囚人たちの労働主体で完成させたそうです。今後のメンテナンスも囚人の役目ですが、日に当たる健康的な作業ということで刑務所側は自賛しています。
映画は、先ず、Billy Bob Thornton(ビリー・ボブ・ソーントン)一家の日常の紹介で始まる。彼も、彼の息子Heath Ledger(ヒース・レッジャー)も刑務所の看守で、彼の父も引退した看守だった。彼の父Peter Boyle(ピーター・ボイル)は掛け値なしの人種差別主義者で、孫を訪ねて来る黒人の子供たちまで毛嫌いするので、Billy Bob Thorntonはショットガンで子供たちを脅かす始末。
ある黒人死刑囚の死刑執行が近づく。その妻Halle Berryは夫に愛想を尽かしているが、息子が父思いなので仕方なく最後の面会にやって来る。Billy Bob Thorntonたち看守一同は電気椅子のテストをしたり、準備に余念がない。執行当日、父の後見のもと、Heath Ledgerが初めて執行責任者となる。黒人死刑囚は趣味の似顔絵で時間をつぶし、Heath LedgerとBilly Bob Thorntonの顔を描く。時間となり、Billy Bob ThorntonとHeath Ledgerが死刑囚の両脇を固めて長い廊下を歩く。人の好いHeath Ledgerは途中で嘔吐してしまう。
死刑執行後、Billy Bob ThorntonはHeath Ledgerをなじり、激しく責める。家に帰ってもBilly Bob Thorntonの攻撃が続く。Heath Ledgerは拳銃を取り出し、「あんたはおれが嫌いなんだろ!」と聞き、Billy Bob Thorntonが「ああ、ずっと嫌いだった」と答えると、「おれはあんたが好きだった」と云って、いきなり自分の心臓めがけてぶっ放す。息子の死後、Billy Bob Thorntonは看守の仕事が嫌になり、退職する。
Halle Berryが息子とドライヴしている最中、車がエンコする。仕方なく、二人が雨の中を歩いていると、息子が車に撥ねられる。通りかかったBilly Bob Thorntonが手伝って病院へ担ぎ込むが、息子は死亡する。Billy Bob ThorntonはHalle Berryを家まで車で送る。
Halle BerryはBilly Bob Thorntonが行きつけの軽食堂のウェイトレスだった。彼は閉店時間に彼女を家に送る。家の前に停めた車の中で、二人は長話する。「なぜ、私を助けたの?」とHalle Berryが聞き、Billy Bob Thorntonは「おれも丁度息子を亡くした。おれはいい父親じゃなかった。何か、いいことをしたかったんだと思う」と正直に答える。Halle Berryは「家に来る?」と誘う。
Halle Berryはウィスキーの小瓶をラッパ飲みするのが好きだ。二人で飲んでいる時、Halle Berryは亡き夫が描いた似顔絵を見せる。Billy Bob Thorntonは一切を悟るが、自分が看守だったことは口にしない。やがてHalle Berryは「いい気持にさせて!」とBilly Bob Thorntonにしがみつく…。
アカデミー・オリジナル脚本賞を獲得しただけあって、骨太の、というか骨しかないが、しっかりした骨を残して贅肉をそぎ取ったような物語展開です。しかも監督が小手先のカット割りを避け、俳優に時間をかけて芝居をさせる演出方針だったため、主演者たちの表情、目の動き、台詞の強弱とタイミングなどが、惚れ惚れするような出来栄えとなっています。この映画で初の黒人による主演女優賞を獲得したHalle Berryは、この監督の演出方針に感謝しています。
この映画にはセックス・シーンが四回出て来ますが、どれもリアルで生々しい。Halle Berryは"Swordfish"『ソードフィッシュ』(2001)に続いて胸やお尻を公開し、さらにBilly Bob Thorntonからcunnilingusを受けて喜悦していくさまを熱演しています。必見です:-)。
そもそもHalle Berryの役は、先ずVanessa L. Williams(ヴァネッサ・ウィリアムズ)にオファーされたそうですが、上のように身体を露出するのが問題で断られ、理由は不明ですが(多分同じ理由でしょう)Angela Bassett(アンジェラ・バセット)も断ったそうです。
原題'Monster's Ball'(怪物の舞踏会)は映画を象徴するいいタイトルとは云えません。原題の意味は映画の中でBilly Bob Thorntonが説明するように、英国では死刑執行前夜、死刑囚を囲んでパーティを催し、それが"monster's ball"と呼ばれるのだそうです。これは日本人には伝わりません。それにしても『チョコレート』という邦題はひどい。まるで『ショコラ』(2000)の類似品みたいじゃないですか。それに、Halle Berryが注文するのは「チョコレート・アイスクリーム」であって、「チョコレート」ではありません。こういう無神経さには腹が立ちます。どうしてもいい案がなかったのなら、せめて「アイスクリーム」にすべきだったでしょう。これはBilly Bob Thorntonの役が無類のアイスクリーム好きであり、エンディングでも二人がアイスクリームを食べるのでぴったりです。
(July 25, 2003)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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