公開：1969
監督：François Truffaut
地域：インド洋リユニオン島
出演：Jean-Paul Belmondo、Catherine Deneuve、Nelly Borgeaudほか
範疇：原作もの／ロマンス／ミステリ／犯罪

私の評価 ：☆

【Part 1】

これは失敗。この映画は“南部もの”ではありませんでした。

フランス人映画監督が“南部もの”を撮った前例（'The Southerner'『南部の人』(1945)）があるし、主人公が煙草会社の社長というのをタバコ・プランテーションだと解釈したのが間違いの発端。

'Mississippi Mermaid'（ミシシッピの人魚）というタイトルは前から記憶にあり、気になっていたのです。フランス語の原題は'La Sirene du Mississippi'というもので、"siren"（セイレーン。サイレンの語源）は「ギリシア神話に出て来る半女半鳥の海の精で、歌声で航海中の船人を誘っては難破させた」と云われるもの。この映画の"Mississippi"は単なる客船の名前でした。まとめると、「ミシシッピ号のセイレーン」ということになります。

モーリシャス島の東にある仏領リユニオン島で煙草製造会社を経営するJean-Paul Belmondo（ジャン＝ポール・ベルモンド）は、文通によってある女性と結婚する決意をした。いよいよその女性が客船ミシシッピ号でやって来る日、彼は港に出迎えに行く。しかし、写真の女性は降りて来なかった。がっかりした彼に、女の声がかかる。Catherine Deneuve（カトリーヌ・ドヌーヴ）演ずる金髪女性は「私があなたの婚約者。幻滅させないために姉の写真を送ったの」と云う。

Jean-Paul Belmondoにとって写真より美しく愛らしい女性は何よりだった。すぐさま結婚式を挙行。指定された通りに作った結婚指輪のサイズが、かなりきつい。紅茶しか喫まない筈なのに、コーヒーを喫む。妻の姉から「妹はどうして手紙一通くれないのか。すぐ連絡するように伝えて」という手紙が届く。解せないことばかりだった。

Catherine Deneuveは天真爛漫だった。駐車したオープンカーの中で立ち上がって着替えをしたりする。もろだしのオッパイに見とれた対向車が木に激突する。

Catherine Deneuveを深く愛するようになったJean-Paul Belmondoは、銀行で全財産を二人の共同名義の口座に移す。数日後、ほとんど全額を下ろした妻は失踪する。妹を訪ねて来た姉は、写真を見て「これは妹じゃない」と断言する。彼女の妹はミシシッピ号で殺され、Catherine Deneuveが替え玉になったのだ。Jean-Paul Belmondoは私立探偵を雇い、Catherine Deneuveの捜査を依頼する。

失意のどん底で、ビジネスに身が入らない彼は南仏ニースに保養に出るが、飛行機の中で失神し、そのまま入院。快方に向ったある日、TVのローカル・ニュースに映ったナイトクラブの踊り子は、なんとCatherine Deneuveだった…。

この原作はコーネル・ウールリッチ（ウィリアム・アイリッシュ）の『暗闇へのワルツ』です。2001年8月公開のアメリカ映画'Original Sin'『ポワゾン』は、同じ原作を使い、舞台をキューバに移しています。主演はAntonio Banderas（アントニオ・バンデラス）とAngelina Jolie（アンジェリーナ・ジョリー）。

Jean-Paul Belmondoは惚れた女に尽くし、何をされても愛することを止めない男を淡々と演じています。復讐心からとはいえ、ホテルの三階の女の部屋に軽々とよじ登っていく時だけは、男らしいJean-Paul Belmondoになります。スタントマン無し、編集無しでワン・シーン、ワン・カットで見せます。Catherine Deneuveの成熟した美しさは最高。

この項に限り【Part 2】はありません。

(Aug 02, 2001)

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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