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The Member of the Wedding

(未)


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1952
監督:Fred Zinnemann
地域:南部のどこか
出演:Ethel Waters、Julie Harris、Brandon De Wilde、Arthur Franz、Nancy Gatesほか
範疇:原作もの/戯曲の映画化/思春期の少女の苛立ち/兄の結婚/ドラマ

私の評価 :☆☆

【Part 1】

'Miss Firecracker'『ミス・ファイヤークラッカー』 (1989) は、31歳のHolly Hunter(ホリィ・ハンター)が18か21ぐらいの娘を演じた映画で驚きでしたが、こちらは27歳のJulie Harris(ジュリィ・ハリス)が、何と12歳の少女を演じています。どちらもブロードウェイの舞台で好評だった役を映画で再演しているのが共通点。Julie Harrisの演技はこの年のアカデミー賞候補になりました。

Julie Harrisと云えば'East of Eden'『エデンの東』(1954)での登場が印象的でしたが、突如出現したわけではなく、この'The Member of the Wedding'の舞台での数年の活躍と映画主演があった二年後が'East of Eden'に結びついたわけです。どこからともなく現われた女優ではなかったんですね。

この映画の他の重要な役は黒人家政婦のEthel Waters(エセル・ウォーターズ)と、隣家の少年Brandon De Wilde(ブランドン・ダ・ウィルダ)ですが、Brandon De Wildeは'Shane'『シェーン』(1953)の可愛い少年によって彼の存在を世界に印象づけました。彼の場合も彗星のように出現したのではなく、Julie HarrisとEthel Watersと数年間同じ舞台で活躍し、さらに引き続きこの映画に出演し、その翌年が'Shane'となるわけです。ちゃんと実績があって大きな映画に出ているんですね(当然ですが)。“突然”現われたように見えたのは、日本人にとってだけだったようです。【註:IMDbの紹介によれば、De Wildeの発音はduh-WIL-duhと説明されていますので、日本で定着している「デ・ワイルド」は正確な発音ではありません】

南部の町のある年の八月。Julie Harris(12歳)に母はなく、家族は雑貨店主の父と軍人の兄だけだったが、父は一日中店に行っているし、兄は同居していなくて、間もなく結婚する予定だった。

Julie Harrisの兄が婚約者を連れて来る。可愛いく成熟した女性で、Julie Harrisに親しい笑みを見せてくれる。Julie Harrisは"sister-in-law, sister-in-law"(義姉)と何度も繰り返し、「何て素晴らしい響きなんでしょう!」と云いつつ、義妹をうちわで煽ぐ。

Julie Harrisはお転婆娘で、髪型に気を使うこともなく、しょっちゅう肘や膝小僧に傷を作っているだけで何の特技もなく、町の若い女性のサークルにも入れて貰えない。そういうわけで、彼女の日常は家政婦の黒人Ethel Watersと隣家の少年Brandon De Wildeと三人で、お喋りしたりブリッジをしたりすることが多かった。Brandon De WildeはJackとQueenのカードを手放さず、咎められると「だって、可愛いんだもの」などと云う。

Julie HarrisはEthel Watersに、兄と兄嫁は「今まで見たこともない素敵なカップルよ」と云うが、同時に何か奇妙な心持ちがすることも告白する。「嫉妬じゃないの?」というEthel Watersに、Julie Harrisはきっぱり否定する。ヒステリー症状を起したJulie Harrisは警察に電話したり、からかうEthel Watersに向かってナイフを投げたりする。

Julie Harrisが自分で選んだ結婚式の日の衣装を着て、Ethel WatersとBrandon De Wildeに見せる。少年は「綺麗!」と云うが、Ethel Watersは「あんたには似合わない」と否定する。肘に痣を作っていて鋏でジョキジョキ切ったような髪の娘が、ミス・ユニヴァースみたいなドレスを着てもしょうがないと諭す。Julie Harrisは「兄の結婚式が済んだら、私は町を出てもう帰って来ない。世界中を飛び回って有名人とも知り合いになる」などと夢を語る。Julie HarrisはEthel Watersの胸に抱かれて泣き、Brandon De WildeもEthel Watersの肩にもたれる。Brandon De Wildeが賛美歌を歌い出し、Ethel Watersが引き継いで歌い上げ、最後に三人の合唱で歌い終える。

いよいよ結婚式当日。家に牧師と知人を呼んでの、ささやかな式。Julie Harrisはごく普通のワンピースで参列している。新郎新婦の誓いの言葉が終る前にJulie Harrisはトランク片手に家を抜け出し、兄たちが新婚旅行に出る車に乗り込んで待つ。「どこへでもいいから、一緒に連れてって」と云うJulie Harrisに、兄と義姉はびっくりする。父がJulie Harrisを引き摺り出す。

その夜、Julie Harrisはトランクを持って家出する…。

舞台劇というのはアクションは少なく、台詞のやり取りで物語を進行し、台詞で役者の見せ場を作ります。私のような者の耳には台詞の半分も理解不能ですので、この映画の善し悪しを云うことは出来ません。以下をお読みになる際は、そこのところをお忘れなく。

27歳のJulie Harrisは12歳の役に挑戦してよくやっています。クロースアップにも堪えています。少なくとも十代に見える演技はしています。それには、彼女のスリムなボディ(特にペチャパイ)が貢献しています。

Ethel Watersは扇の要になる役ですが、彼女の親しみやすい外見(太った身体に可愛い顔)、見事な歌声などで重責を果たしています。彼女に勝る最適の女優はいないだろうと思わせる、素晴らしい演技です。

Brandon De Wildeは彼の番が来る度に場面をさらってしまいます。彼は水着美人の歩き方を真似たり、天使の衣装を着たり、Ethel Watersの帽子や靴を身につけたり、何故かよく分りませんがとにかく女装趣味の傾向があり、いつもわれわれを笑わせてくれます。

白黒映像で、暑い南部の気候をJulie Harrisの顔や身体に湧き出ている汗で表現しています。彼女一人だけ汗をかいているのは、ちと妙ではあるのですが。

原作はCarson McCullers(カーソン・マッカラーズ)の小説で、作者自身が戯曲にしたものを下敷きにしています。メイン・タイトルでは"A Stanley Kramer Company Production"というクレディットが出ます。あのStanley Kramer(スタンリィ・クレイマー)が噛んでいるわけです。

(February 03, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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