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Manhunter

『刑事グラハム/凍りついた欲望』


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1986
監督:Michael Mann
地域:ジョージア州、アラバマ州、フロリダ州
出演:William Petersen、Brian Cox、Dennis Farina、Tom Noonan、Joan Allen、Kim Greistほか
範疇:原作もの/スリラー/精神病質的連続殺人鬼/FBI捜査官/精神病質的捜査法

私の評価 :☆1/2

【Part 1】

'Red Dragon'『レッド・ドラゴン』(2002)と同じ原作ですが、その16年前に作られていた作品。『レッド・ドラゴン』は、このシリーズの悪役をAnthony Hopkins(アンソニイ・ホプキンス)で統一するために再映画化されたもの。

FBI捜査官William Petersen(ウィリアム・ピーターセン)は、殺人鬼の心理になって捜査するという独特の手法で成功していた。しかし、Brian Cox(ブライアン・コックス)演ずる殺人鬼Hannibal Lector博士(ハニバル・レクター、註参照)を逮捕した際に、殺人鬼と同レヴェルの精神状態に陥ったことと、Hannibal Lectorから半死半生の目に遭わされたことがトラウマとなり、FBIを辞して妻と息子とフロリダの海岸べりの家で引退者の生活を送っていた。

【註】後にヒットしたシリーズでは"Lecter"となっているが、この作品では"Lector"というスペルになっている。

FBIの元上司Dennis Farina(デニス・ファリナ)がやって来て、「並の捜査官では解決出来そうにない連続殺人事件が発生した。助けてくれ。事件はいつも満月の日に起っており、次の満月まで三週間と数日しかない」と頼む。事件はジョージア州とアラバマ州で起っており、いずれも子供たちを含む家族が皆殺しになっていた。妻には「現場を調査して証拠を掴むだけだ。犯人を逮捕しようとしたりはしない」と云い、先ずジョージア州アトランタに向かう。

William PetersenはSONYのマイクロ・カセットコーダーで現場の印象を録音し、オリンパスのフラッシュ内蔵の小型カメラで新発見の証拠を撮影する。警察の調査では犯人の指紋は皆無だった。William Petersenは、犯人が美しい被害者の女性に触れぬ筈はないと考え、死んだ女性の目を開けたり、足に触ったりしたのではないかと推理する。FBIの指紋採取のエキスパートに被害者女性の身体を調べるよう、依頼する。

William Petersenは以前の鋭敏な感性を取り戻すべく、刑務所のBrian Cox(レクター博士)に会いに行く。Brian Coxは事件の詳細を記したファイルを読ませてくれれば、捜査に協力する」と云うが、同時に「あんたが何故おれを捕らえられたか知っているか?あんたがおれと同類だからだ」と云い、図星を指されたWilliam Petersenは逃げるように走って刑務所を出る。

William Petersenはアラバマ州バーミングハムの被害者宅に赴く。家の裏手の林には子供が木登りするためのロープが下がっている。それを昇ると、木の股に座れるようになっていて、家の窓が見通せた。そして、家族が寝静まるのを待ちながら犯人が刻んだと思われる漢字の「中」の文字があった。

刑務所の精神科医が、犯人からBrian Cox宛の手紙を発見し、FBIに知らせて来た。Brian Coxは某全国紙の三行広告で返事をすると推測された。William Petersenは先手を打ち、その新聞の記者に特ダネとして彼が考える犯人像(母親と近親相姦している男性と思われる)を書かせる。それは怒り狂った犯人が攻撃して来るのを待つWilliam Petersenの囮作戦だったが、犯人Tom Noonan(トム・ヌーナン)は新聞記者を血祭りにあげた。

筆跡鑑定の専門家は、Brian Cox宛の手紙の破られた部分にWilliam Petersenの自宅住所が書かれていたことを突き止める。Brian Coxのファンである犯人は、Brian Coxの意を汲んでWilliam Petersenの妻子を殺す予定なのだ…。

以前TVで観たことがあり、一応“南部もの”の候補にはしてあったのですが、『レッド・ドラゴン』(2002)に較べて地味な印象だったのと、Brian Coxのレクター博士もAnthony Hopkins(アンソニイ・ホプキンス)ほど不気味さがないため、最終的に取り上げないことにしたのでした。

何故、それを取り上げる気になったかというと、一冊の本を貰ったのが契機でした。それは'501 Must-See Movies'(Bounty Books, 2004)『必見映画501本』という英国で出版された544ページの本です。毎ページに映画のスチルがあり、簡単な筋と解説があるという構成。その「ホラー映画」の章にこの'Manhunter'が選ばれていたのです。当然'The Silence of the Lambs'『羊たちの沈黙』(1991)もあるのですが、『レッド・ドラゴン』(2002)はありません。私は驚きました。501本の中に入っているのなら取り上げなくてはなるまい。で、DVDをレンタルしたのです。

今度観直してみると、FBIの指紋調査官や筆跡鑑定など、鑑識の仕事ぶりが興味深いものに思われました。

主演のWilliam Petersenは、トラウマを持った捜査員ということで、終始無表情な演技に徹しています。逆に、それが彼の潜在意識に殺人犯と同じ精神構造があるという(追うものと追われるものが同類の獣であるというのに似た)不気味さを醸し出しています。なお、彼にとってこの映画は映画デビュー三作目のようです。

Brian Coxは、当時もう無数の映画に出演しているヴェテランです。上記の本では「この映画の彼の演技は、どの部分をとっても印象的である」と書かれているのですが、Anthony Hopkinsの芝居を先に観てしまうと、さほど印象的には思えません。殺人鬼Tom Noonanは、フランケンシュタインの怪物に似た顔が不気味ですが、性欲と殺人の妄想で恍惚となる表情が素晴らしい。

Joan Allen(ジョーン・アレン)の盲目の演技はあまりうまくありません。『レッド・ドラゴン』(2002)のEmily Watson(エミリィ・ワトスン)は盲目の女性の表情を完璧に演じていました。盲人の目の動きなど普通見られませんから、Emily Watsonの演技は「観客が想像する盲人らしい表情」に過ぎないのかも知れませんが、それでも説得力があったと思います。

殺人鬼Tom Noonanは『レッド・ドラゴン』同様背中一面に入れ墨を施し、ちゃんとそれも撮影されたそうですが、監督Michael Mann(マイケル・マン)は編集段階でそれらをばっさり捨ててしまったそうです。理由は「やり過ぎだ」と思ったからだそうです。『レッド・ドラゴン』が入れ墨をポスターにした正反対の考え方です。

この映画に出て来るいくつかの事柄はもう「今は昔」のことになっています。William Petersenはどこでもお構いなく煙草を吸います。エレヴェーターの中でさえも。殺人鬼Tom Noonanは8mmフィルムの現像所に勤めていますが、デジタル・ヴィデオ全盛の今、もうそういう職場は無くなってしまいました。オリンパスのフィルム・カメラもデジカメのせいで日陰者となっています。

この項にPart 2はありません。

(February 28, 2009)


Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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