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Manderlay

マンダレイ


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:2005
監督:Lars von Trier
地域:アラバマ州
出演:Bryce Dallas Howard、Isaach De Bankolé、Danny Glover、Willem Dafoe、Lauren Bacallほか
範疇:三部作の一つ/女性もの/人種間交流/奴隷解放/理想主義/綿花農園/アンチ・リアリズム

私の評価 :☆

【Part 1】

奇妙な映画です。巨大なスタジオにシンプルで抽象的なセットを組み、見えないドアを開け閉めしたり(音はする)、リノリウムの床を鍬で耕したりします。"USA - Land of Opportunities"(チャンスの国アメリカ)という三部作だそうですが、Nicole Kidman(ニコル・キッドマン)主演の前作'Dogville'『ドッグヴィル』(2003)は“南部もの”ではないので未見。

1933年。Bryce Dallas Howard(ブライス・ダラス・ハワード)の父Willem Dafoe(ウィレム・デフォー)はギャングの親分。彼と子分たちはコロラド州デンヴァーを離れ、新たなシマ(領分)を求めて南下しアラバマ州を通過中、Manderlay(マンダレイ)という綿農園の前で小休止する。突然、屋敷から黒人女性が走り出て来て、Bryce Dallas Howardに「お嬢さん、無実の男が鞭打たれます。助けて」と頼む。

Bryce Dallas Howardは驚く。もう70年前に奴隷は解放されたのに、この農園では黒人をまだ奴隷として扱っているのだ。彼女は鞭を奪い取って投げ捨て、銃を持った子分たちに命じて黒人の縄を解かせる。そこへ農園主の老女Lauren Bacall(ローレン・バコール、あのローレン・バコール)が散弾銃を構えて出て来るが、病弱のため倒れてしまう。

Lauren BacallはBryce Dallas Howardに「本を焼いてくれ」と謎めいた言葉を遺して死ぬ。執事のDanny Glover(ダニィ・グロヴァー)は「奴隷は朝7時に朝食を摂った。これからは何時に食べればよいのか。これから先が心配だ」と云う。Bryce Dallas Howardは「自由な男も女も、お腹が空いたら食べるのよ」と云って去ろうとする。Danny Gloverは「みんなに会わせたい」と彼女を引き止める。白人の男が黒人たちに契約書を配りサインさせようとするが、それは以前の奴隷の状態と何ら変わらない契約であった。

Bryce Dallas Howardは父に「手下の中の弁護士を貸してくれ」と頼む。父は娘の酔狂に憤慨するが、親馬鹿なので弁護士と手下数名を残して去って行く。Bryce Dallas Howardは黒人たちに「弁護士と私たちはあなた方のコンサルタントとなります。最初の綿の収穫まで留まりましょう」と云い、黒人たち全員がManderlay共同体の構成員となり、綿農園の収益を公平に分配することに同意する契約書を作成する。しかし、黒人たちは自由の身となっても以前と何一つ変わらないように振る舞い、トランプの賭け事に遊び呆けていた。Bryce Dallas Howardが問い質すと、もう畑を鋤き、種を蒔く時期はとっくに過ぎているという。彼女は誰も自分から働こうとしない黒人たちに呆れる。しかし、Danny Gloverの賛同を得て、彼女は黒人たちを農作業に駆り出し、農園の木で集会場を建設させるまでに至る。

一人冷ややかに傍観する黒人がいた。彼女が鞭打ちから助けたIsaach De Bankolé(アイザック・ド・バンコレ)である。彼は「あんたの皮膚が白く、子分が数人いるからといって騙されたりしない。あんたはおれたちに人間としての興味など持ってやしない」と云う。彼女は「私たち白人は黒人に借りがある。私たちが奴隷を作ったからだ」と応じる。

Bryce Dallas Howardは黒人たちに民主主義を教える。彼らが抱える問題(盗った、盗られたとか、うるさく喋る奴がいて眠れないなど)を多数決で採決して行く。

砂嵐が襲来し、綿の苗を砂で埋め尽くす。食物倉庫の屋根が飛び、食物も払底する。黒人たちも白人たちも、ギャングたちまでも公平に食べ物を分けることになる。肺炎になる者も出て来る。

収穫の望みがなくなって絶望のどん底に落ちた一同だったが、Isaach De Bankoléが「砂の下から50%の苗を助け出し、いい品質で育てれば高く売れる。やろうじゃないか」と呼びかけ、人々は仲良く作業に精出す。農場はうまく回転し始めたが、Bryce Dallas Howardは孤独感を抱き始める。黒人男性たちが入っている浴場の周りをうろうろし、その黒い皮膚や黒い性器を想像して眠られず、密かに自らを慰めるのだった。

肺炎になった少女の食べ物を盗んだ廉で老女が捕まる。当人も罪を認め、少女の親たちは老女の死刑を求める。多数決で老女の死刑が決定する。Bryce Dallas Howardは、老女を殺そうとする少女の父親を制止し、「復讐はいけない。私がやります」と宣言する…。

農園主Lauren Bacallは黒人たちに足枷こそ嵌めなかったものの、塀をめぐらし、門を閉ざし、金を与えず、多分ラジオもTVも許さなかったのでしょう。'Mam's Law'(Mamは主人のLauren Bacallを指す)という一冊の本に記されたルールで、この“鎖国”的農園を仕切って来たのだそうです(それにしては、映画の初めで開いている門から黒人女性が走り出て来るのは妙ですが)。この時代錯誤の農園の“奴隷”を解放し、自由を与えようという女性の物語。

自由を追求する映画なんだから何をやっても自由だとばかり、手持ちカメラをぐらぐらさせ、TVニュースみたいにカットを乱暴に継ぎはぎし、ワンカットの中で照明の色温度まで変えて平然としているというふてぶてしさ。それに何らかの意味があり効果を上げていれば結構ですが、単に「誰もやらないことをやってやれ」という感じに思えました。

脚本・監督のLars von Trier(ラース・フォン・トリアー)はデンマークの生まれで、一度もアメリカを訪れたことはなく、この映画の撮影も主にスウェーデンのセットで行なわれました。ですから、アラバマ州が舞台とは云っても、実はどこでもいいようなものです。全てはLars von Trierの空想の産物なのです。私が住んでここ十年、南部の砂嵐というのは聞いたことがありません。砂漠じゃないですからね。これもLars von Trierの空想なのでしょう。

全体の映画は「第一章」、「第二章」という風に分割されていて、さらにナレーターがかなり長い説明をかぶせます。アメリカのCATV 'History Channel'(歴史チャネル)のドキュドラマを観ている感じというか、超長編映画の抜粋版を見せられているような感じでもあります。

(March 02, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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