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Absence of Malice

『スクープ・悪意の不在』


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:1981
監督:Sydney Pollack
地域:フロリダ州
出演:Paul Newman、Sally Field、Bob Balaban、Melinda Dillon、Barry Primus、Wilford Brimleyほか
範疇:メディア/故意の捜査資料漏洩による報道操作/事実と真実/報道による犠牲/ロマンス/復讐

私の評価 :☆

【Part 1】

1981年、フロリダ州マイアミ。六ヶ月前に行方不明になった港湾労働者組合指導者の捜査は行き詰まっており、司法省の調査官Bob Balaban(ボブ・バラバン)は焦っていた。給料の手前も、何か捜査が進展している風を装わねばならない。彼が白羽の矢を立てたのは、地元の酒類輸入業者Paul Newman(ポール・ニューマン)だった。彼の父は五つの州の酒の流通を牛耳っていて、高利貸しも兼ね、かつ彼の存命中15年間も港湾労働者の組合結成を阻んで来た。その父のあとを継いだPaul Newmanは組合指導者を殺害するか拉致するに相応しいというわけだ。よしんば彼が下手人でなくとも、Paul Newmanは知人・友人が多いから、彼を叩けば何か情報が得られるかも知れないという狙いもあった。

たまたまネタ探しに司法省事務所を訪れた地方紙の新聞記者Sally Field(サリィ・フィールド)は、秘書からターゲットはPaul Newmanであるという情報を得て、新聞のバックナンバーからPaul Newmanについて調べ始める。彼女が元のボーイフレンドで、現在は調査官Bob Balabanの元で働いているBarry Primus(バリィ・プライマス)に探りを入れると、「この件は忘れろ」と警告される。

Sally Fieldはこの件にスクープ(特ダネ)の匂いを嗅ぎ付け、司法省のBob Balabanのオフィスを訪れる。彼はPaul Newmanの一件書類を机の上に置いておき、わざと部屋を離れてSally Fieldが書類を盗み読むように細工する。彼女はまんまとBob Balabanの策に乗り、帰社して「組合指導者失踪の捜査はPaul Newmanが焦点に」という記事を書き始める。情報源については"knowledgeable source“(事情通)とぼかすことにする。ふと彼女は、「何故、調査官Bob Balabanは“オフレコ”ということで話してくれなかったのか?」と疑問を持つ。念のため、社のお抱え弁護士に記事を見せる。彼の意見は「先ずPaul Newmanと連絡を取るべきだ。彼が面会を拒否したり、この件について話したがらないとすれば、彼は記事の誤りを正すことを拒んだことになる。彼に接触出来ないとしても、少なくとも『われわれは努力した』と弁解出来る。その結果、われわれに記事が事実に反するという知識がなければ、われわれには悪意はなかった(原題"Absence of Malice")と主張出来る」と云う。

しかし、Sally FieldはPaul Newmanに連絡しないまま記事を印刷させた。Paul Newmanが新聞社に乗り込んで来る。Sally Fieldは慌ててコーフィー・カップを倒し、机の上をびたびたにする。お抱え弁護士が剣もホロロの応対をし、Paul Newmanはなす術も無く憤然と帰って行く。

数日後、Sally FieldはPaul Newmanに「あなたサイドの話を聞きたい」と持ちかける。彼女は服に隠し録り用のマイクロ・カセットコーダーを仕込み、隠し撮り用のカメラマンを尾行させてPaul Newmanに会いに行く。しかし、彼は一枚上手だった。レストランでの食事ではなく、彼のボートで外洋に出て(尾行は不可能)、彼が知りたいことを聞き出すまでSally Fieldを帰さない作戦で、録音機の存在すらも見破ってしまった。彼は「新聞が誰かを有罪だと云うと、皆信じる。しかし、新聞が誰かを潔白だと云っても誰も気にもとめない」と云う。

港のPaul Newmanの倉庫に港湾労働者組合の役員がやって来て、「組合指導者の行方不明に関与した奴のために働くな」と労働者たちにストライキを命じ、ピケット・ラインを作るように指導する。労働免許を取り上げると脅され、労働者たちは仕方なく作業をやめる。

Sally Fieldに、Paul Newmanの幼なじみの女性Melinda Dillon(メリンダ・ディロン)が接触する。組合指導者が失踪した日、Paul NewmanはMelinda Dillonと一緒にアトランタにいたと主張するが、名前は出せないし証言も出来ないと云う。「それでは新聞記事にならない」と去りかけるSally FieldをMelinda Dillonが引き止め、「アトランタへは堕胎手術に行ったの。カソリックの私が堕胎したなんて知られたら親戚・友人から爪弾きになるから地元では出来なかった。三日間、Paul Newmanが付き添って行ってくれたの」と打ち明ける。

翌朝、Melinda Dillonの記事は一面に実名入りで掲載された。Sally Fieldのもとに、Melinda Dillon自殺の報が入る。Sally FieldがPaul Newmanの倉庫を訪ねると、彼は幼なじみMelinda Dillonの死に衝撃を受け、憤激していた。彼は「彼女は新聞にレイプされたように感じた筈だ。こんな風に」とSally Fieldを床に押し倒し、彼女のブラウスを引き裂く…。

…と書くとPaul NewmanがSally Fieldをレイプしたように見えますが、彼がそんな役を選ぶ筈はありません。この後、Paul Newmanは徒手空拳、彼の頭脳だけを頼りに権力への復讐を試みます。

Paul Newmanはこの映画撮影当時56歳、白髪で16歳の娘がいる男やもめを好演し、アカデミー主演男優賞候補になりました。Sally Fieldは当時35歳。目の周りの濃いメイクが一寸気になりますが、脚本で描き込まれた役柄を彼女流に肉付けして存在感を高めています。Melinda DillonはSally Fieldと容貌が似ているので妙なキャスティングだと思いますが、幼なじみPaul Newmanを助けようとする薄幸な女性を印象的に演じています。彼女はこの役でアカデミー助演女優賞候補になりました。

司法省の調査官を演ずるBob Balabanも、保身のために小狡く策を弄してPaul Newmanを陥れて恥じないという小悪党を巧みに演じています。映画の最後に現われる彼の上司Wilford Brimley(ウィルフォード・ブリムリー)は、破天荒な司法省役人(司法長官補佐・組織犯罪部門担当)を演じて映画のクライマックスを納得出来るものにする儲け役を楽しそうに好演しています。

1981年の映画となると今から26年前なので、登場人物たちが煙草を吸うシーンがふんだんに出て来ます。家の中でも外でも役所でも。スモーカーには懐かしい時代です。ただ、Paul NewmanがMelinda Dillonの煙草を取り上げて消したり、Sally Fieldの「もう止めようと思ってる」という台詞などが、時代の変わり目であることを示しています。今やアメリカの公的建造物(役所・病院等)では全面禁煙ですし、カリフォーニア州のレストランでは十数年前から屋外のテーブルですら禁煙となっています。2007年夏、ディズニイは「今後、煙草を吸う場面を含む映画は製作しない」と宣言しました。アメリカ南部はまだまだ遅れていますから、レストランには喫煙席も存在します。しかし、私の住む町でも昨年「レストランでの禁煙」が市議会役員たちによって可決されそうになりました。市長の拒否権発動で廃案となってしまったのですが、市長は折角誘致した多数のレストランの反撥や閉鎖・他都市への移転などを恐れたようです。現在の市長が変わればまた提案が復活することでしょう。

「報道の自由」が人を破滅させることもあるという事実と、その「報道の自由」を悪用する権力の恐ろしさという二つのテーマが提示されています。お硬いテーマですが、うまくドラマ仕立てにすることに成功しています。

マイアミの高層ビル群、ダウンタウン、港の風景なども適宜織り込まれ、地方色も出ていますし、Paul NewmanとSally Fieldのロマンスもあり、全てが過不足無く描かれている佳作です。

(August 13, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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