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My Louisiana Sky

(未)


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:2001
監督:Adam Arkin
地域:ルイジアナ州
出演:Juliette Lewis、Kelsey Keel、Shirley Knight、Amelia Campbell、Chris Owens、Karen Robinsonほか
範疇:TV映画/原作もの/思春期の少女/知的障害者の家族/ドラマ

私の評価 :☆

【Part 1】

1957年頃のルイジアナ州の田舎。この頃はまだ白黒TVも一般的ではなく、公民権運動が盛んになる以前だった。映画は祖母Shirley Knight(シャーリィ・ナイト)を中心とする一家の物語。主人公の12歳の少女Kelsey Keel(ケルシィ・キール)の両親は知的障害者だった。母親Amelia Campbell(アメリア・キャンベル)は6歳の時に木登りをしていて転落し、その時脳の発達が止まってしまった。だから娘とは友達みたいに触れ合う。父親Chris Owens(クリス・オーウェンス)も、やや知恵おくれで、吃る。しかし、彼は近くの種苗場でちゃんと働き、一家の家計を支えていた。

祖母の誕生日。父は仕事先から見事な白椿の鉢をプレゼントとして持って来る。祖母が自分で作ったチョコレート・ケーキをみんなで食べる。

翌日、少女の叔母(母の妹)Juliette Lewis(ジュリエット・ルイス)が赤い高級車でやって来る。若く美しい彼女は、ルイジアナ州の州都バトンルージュに住み、忙しく働き、高給を得ていた。彼女は一家にTVをプレゼントする。画面に映し出されるレスリングを真似て少女とその母親が取っ組み合いをする。父親も娯楽番組に目を輝かす。しかし、祖母は娘の無駄遣いが気に入らない。娘が都会でメイドを雇って家事をさせていることにも嫌味を云う。祖母はTVのことを"noise box"(雑音箱)と呼ぶ。

父親の雇い主(種苗場経営者)の息子Michael Cera(マイケル・セラ)は、少女Kelsey Keelが好きで、彼女としょっちゅう遊びたがる。「キミはこの辺随一の強打者だよ」とバットを持たせ、ボールを抛る。

Kelsey Keelの生理が始まった。祖母はそれを“災いの因”と云い少女を怖がらせるが、母親は「それは素晴らしいことよ!」と娘を祝福する。少年Michael Ceraが少女の頬と唇にキスする。Kelsey Keelは眠れなくなり、祖母のベッドに行き、「お祖母ちゃん、初めてキスしたのはいつ?」などと聞き、祖母を面食らわせる。

翌日、少年がKelsey Keelに「ごめんね、ちょっと突然だったかも」と謝る。そこへ母親の悲鳴。駆けつけると、祖母は心臓麻痺で倒れていた。自分の母を失ったAmelia Campbellはベッドで泣き暮らし、誰とも話そうとしない。叔母のJuliette Lewisは、主婦代わりとして自分が雇っている黒人メイドKaren Robinson(カレン・ロビンスン)をしばらく派遣することにし、姪Kelsey Keelに大都市の生活を数日経験させることにする。Kelsey Keelは叔母の住む高級アパートの豪華な部屋に驚き、メイドKaren Robinsonにも躾けられたりする。映画雑誌で見たAudrey Hepburn(オードリィ・ヘプバーン)の髪型に魅せられ、お小遣いでお下げを切ったりする。

数日後、Kelsey KeelはメイドのKaren Robinsonと長距離バスに乗り、両親の待つ家に戻る…。

TV映画とは知らずにレンタルしてしまいました。TV映画で日本未公開(VHSもDVDもなし)と来れば、日本の読者にはほぼ無縁の存在でしょうから、事前に知っていれば取り上げるつもりはありませんでした。これまで取り上げたTV映画は、1) 私が気に入っているもの('Freedom Song'など)、2) 有名な作者のもの('A Painted House'など)、3) “南部もの”として欠かせないもの('The Rosa Parks Story'など)となっています。この'My Louisiana Sky'はそのどれにも該当しないのですが、DVD宅配レンタルのNetflixでも高い評価を得ているほどで、そう捨てたものでもありません。

何よりも知的障害者がお涙頂戴の材料ではなく、健常者である祖母や主人公と拮抗するヒューマンな存在として描かれていることが特徴。南部の超田舎の暮らしと、都会(と云っても大都会ではありません)の生活が過不足なく描かれているのも魅力です。クライマックスは、経営者が出張に出ていて種苗場を任されている父がハリケーンの来襲を察知し、手塩にかけた椿の苗を守るシーン、そして、父を手伝った主人公Kelsey Keelが嵐をついて家路を辿り、心配した母親と森の中で互いに呼び合うシーンです。

特筆すべきは黒人メイドKaren Robinsonの存在です。2001年製作ということもあるでしょうが、この黒人メイドが非常に聡明で、あたかも長老のような知恵者に描かれているのです(ちょっと理想的過ぎる気もしますが)。黒人が差別されていた時代でも'The Song of the South'『南部の唄』(1946)の黒人の老人Uncle Remus(リーマス爺や)のような知恵者の存在もありましたが、そう多くはありません。そんなKaren Robinsonが、同伴者のKelsey Keelと離れてバスの後部座席に行かなくてはならないというナンセンスが、さりげなく描かれています。

(April 02, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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