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公開:1997
監督:Adrian Lyne
地域:ルイジアナ州ニューオーリンズほか
出演:Jeremy Irons、Melanie Griffith、Frank Langella、Dominique Swainほか
範疇:原作もの/ドラマ/ロリータ・コンプレックス
私の評価 :☆
【Part 1】
これは1962年に作られたStanley Kubrck(スタンリィ・キュブリック)監督作品の原作のリメークです。イギリスでは直ちに公開されましたが、アメリカでは配給会社が現われず一年以上もおクラになっていました。CATVが版権を買い取った後、MGMによって小規模に劇場公開されました。原作はVladimir Nabokov(ウラジミール・ナボコフ)で、12歳の少女に恋する中年男というテーマは、小説も映画も当時大反響を呼びました。私がStanley Kubrck版を観たのかどうか、記憶にありません。公開当時青年だった私には中年男と少女という組み合わせが魅力的に思えず、主演のJames Mason(ジェイムズ・メイスン)もあまり好きじゃなかったので、多分観なかっただろうと思います。
1921年、カンヌ(フランス)。Jeremy Irons(ジェレミー・アイアンズ)は14歳の時に、同じ14歳の少女に恋をした。しかし、彼女は知り合って四ヶ月後に病死。彼は彼女の下穿きについていたリボンを、未だにブックマークにして離さない。
1947年、40歳になったJeremy Ironsはイギリスからフランス語教師としてニューイングランドのある町へやって来る。下宿探しでMelanie Griffith(メラニー・グリフィス)演ずる未亡人の家を訪れるが、あまりの乱雑さに辟易してキャンセルしようとする。その時彼の目に飛び込んで来たのは、裏庭の芝生の上に腹這いになり、散水器の水を浴びてびしょ濡れになって身体のシルエットが丸見えの少女の姿だった。「美しい!」彼はこの家に下宿することに決める。
Dominique Swain(ドミニク・スウェイン)演ずる少女Lolita(ロリータ)は14歳だった。赤ん坊のように無邪気で、幼女のように天衣無縫、娼婦のように蠱惑(こわく)的だった。Jeremy IronsはLolitaの一挙手一投足を天使でも見るように見つめた。
未亡人はLolitaを躾けるため、寄宿学校に入れる。LolitaはJeremy Ironsに「愛している」とラヴ・レターを寄越す。Jeremy Ironsは未亡人と結婚した。しかし、ある日、妻はJeremy Ironsの日記を盗み読みし、彼女を「太った牛」にたとえ、娘に恋していることを知ってショックを受ける。家から駆け出した彼女は車に轢かれて死ぬ。
Jeremy Ironsは寄宿学校からLolitaを引き取る。二人でホテルに泊まるが、Jeremy Ironsはベッド一つの部屋を一つしか頼まない。この宿で、二人は不思議な男に出会う。Lolitaは男の犬に戯れて、彼が彼女に好意を持っていることを知る。Jeremy Ironsは食後の夕涼みでこの男に話しかけられる。「どこであの子を手に入れたんだ?」「あれは私の娘だ」「嘘をつけ」(図星!)「もう、行かなくちゃ」「楽しむんだね…」(ギク!)これが、顔の見えないこの男との運命的な出会いだった。
ベッドで、LolitaがJeremy Ironsに何か囁く。「私はLolitaの最初の男ではなかった」
Lolitaは母の死を知って悲しむ。二人はアメリカのあちこちを旅して廻るが、Jeremy Ironsも彼女には教育が必要であることを悟り、ニューオーリンズの進学予備校に入れる…。
これはポルノ映画ではありません。LolitaのDominique Swainも、単に端正な顔立ちというだけであって、こぼれるような色気があるわけではありません。また、Jeremy Ironsもギラついた目でLolitaを見るわけではなく、彼女の全存在を容認し愛するという、透き通った表情で一貫しています。つまり、肉欲ではなく精神的な少女愛が先行しているわけです。しかし、全世界的に未成年の青少年をセックスの対象として描くことはタブーになっていますから、この映画でもセックス・シーンは暗示されるだけに留まっています。Dominique Swainの姿態を描く場合でも、舐め回すような描写ではなく、非常に抑制されています。必ずJeremy Ironsの賛嘆するような表情と同じバランスで編集されています。
1962年のStanley Kubrck版では、“謎の男”をPeter Sellers(ピーター・セラーズ)が演じ、ブラック・ユーモアのオブラートにくるんで世論の攻撃を回避しました。このリメークはブラック・ユーモア的要素を排除し、LolitaもJeremy Ironsもストレートに愛を模索する存在になっています。
(June 02, 2001)
【追記】
Stanley Kubrick版の'Lolita'(1962)を観ることが出来ました。この映画では二人はニューオーリンズへやって来ず、“南部もの”には入りません。
これは傑作です。リメイク版と題材は同じなので、何度も観たくなる傑作とは申しませんが、リメイクの軽さに比べれば大傑作ですし、一度観るには値する名作と云って過言ではありません。
先ず、タイトルバック。腹這いになった若い女の足が写され、やおらそれに手を伸ばしてマニキュアを始める男の手。エロティックで、映画の核心を衝いた映像です。
何よりもJames Mason(ジェイムズ・メイスン)の演技が素晴らしい。表情、所作の隅々にまで神経が行き届いています。主人公が異常な男でなく普通の人間であるという存在感を見せます。Lolitaの母親を演ずるShelley Winters(シェリィ・ウィンタース)も、James Masonにひけを取らない拮抗した存在を演じています。
Quiltyを演ずるPeter Sellers(ピーター・セラーズ)は、七つの顔の男・多羅尾伴内も顔負けの変化を見せます。かといって、それぞれを真面目に演じていて、ふざけた役ではありません。多分、この役と演技が同じ監督との'Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb'『博士の異常な愛情』(1964)に繋がったのだと思われます。
さらに、Stanley Kubrickの演出、編集が絶妙。特にShelley WintersがJames Masonの日記を読んでしまう前後のカッティングには惚れ惚れします。
もし、レンタル・ストアにこの旧版があれば、迷わずこちらを選ぶことをお薦めします。
(December 15, 2001)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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