公開：1970年
監督：John Frankenheimer
地域：テネシー州
出演：Gregory Peck、Tuesday Weld、Estelle Parsons、Ralph Meeker、Charles Durningほか
範疇：原作もの／シェリフ／老らくの恋（不倫）／密造酒作りの一家／保安官補の疑惑

私の評価 ： ☆

【Part 1】

監督はJohn Frankenheimer（ジョン・フランケンハイマー）、主演男優はアカデミー賞受賞のGregory Peck（グレゴリィ・ペック）、助演女優にもアカデミー賞受賞のEstelle Parsons（エステル・パースンズ）、そして主演女優はTuesday Weld（チューズデイ・ウェルド）、音楽監督はC&WのスターJohnny Cash（ジョニィ・キャッシュ）で、劇中彼の歌がふんだんに聴ける…とくれば、当然食指が動く一編。

Gregory Peckは、テネシー州の山の中にある小さな町の保安官。彼がダムの近くで休憩していると事務所からの無線で呼び出され、パトカーで町へ帰る。途中、小さな男の子が運転している小型トラックを見つけ、停止を命ずる。男の子は薮の中に逃げ込み、同乗していた十代の姉Tuesday Weldが詫び、「二度と運転させない」と約束する。

Tuesday Weldの家は密造酒を作っていて、ヤバくなると引っ越しを繰り返している流れ者である。彼女の父は保安官がトラックに積んでいた砂糖の袋を見たか？とか、ウィスキーの臭いを嗅がなかった？などと問い質す。

Gregory Peckは妻と12歳ぐらいの娘、そして自分の耄碌した父と暮らしている。

連邦政府の役人（多分、財務省酒類タバコ税貿易管理局捜査官）がやって来て、この町の密造酒摘発を推進することになる。役人はGregory Peckに密造酒作りの連中のリストアップを命ずる。Gregory Peckは「密造酒作りの連中は害を及ぼさない」と、あまり乗り気でない。

夕刻、Tuesday Weldが役場にやって来て「この前の（見逃してくれた）お礼を云いに来たの」と云う。Gregory Peckは彼女にDr. Pepper（ドクター・ペパー）を奢り、無人の裁判所の電気を点けて見せたり…とサーヴィスする。Gregory Peckは彼女をパトカーに乗せて家まで送る。着いても彼女は下りない。Gregory Pecknoを見つめながら"It's alright."（いいのよ）と云う。彼が「何も考えてないよ」と云うと、Tuesday Weldは再び"It's alright."（いいんだってば）と云う。この愛らしい娘が気に入っていたGregory Peckは、彼女にキスし、二人は熱いディープ・キスを交わす。

Gregory Peckの妻Estelle Parsonsがベッドで夫にすり寄るが、彼は相手にしない。

ある夜、Gregory PeckはTuesday Weldの家を訪れ、二人はキスし、ベッドで抱き合う。彼女が「嬉しいわ。メモを見てくれたのね」と云う。「何のメモだ？」と彼。「あら、パトカーのワイパーに『今夜来て』って紙を置いといたの」と彼女。「それはおれの車じゃない！」Gregory Peckは慌てて飛び出し、町に戻って保安官補の車を点検する。保安官補Charles Durning（チャールズ・ダーニング）が自宅の窓からそれを見ている。

Tuesday Weldの父と兄は連邦政府の役人の摘発を怖がっている。Gregory Peckは蒸留装置を全部川に捨てろ」と忠告するが、彼らは聞き入れない。

Gregory Peckの妻Estelle Parsonsは夫の気持が分らなくなり、Reader's Digest『リーダーズ・ダイジェスト』誌で読んだことの受け売りで夫の気持を確認しようとする。Gregory Peckはそんな妻の態度にうんざりする。

Gregory PeckとTuesday Weldは川辺でデートし、激しくキスし合う。Gregory Peckは「二人で町を出よう」と云う。Tuesday Weldは「あたし、他の州へ行ったことないの。シカゴに行きたいわ」と云う。Gregory Peckは「カリフォーニアでもカナダでもいい。二人で行こう！」と熱心に云う。

Tuesday Weldは父と兄弟二人に食事を給仕しながら「保安官は冗談ばかり云うの。二人でカリフォーニアに行こうなんて」と云う。父は「お前を連れて行くんなら、おれたちのためにコックを雇ってくんなきゃ駄目だ」と大笑いする。

ある晩、Gregory Peckは家に帰らず、Tuesday Weldと二人、裸でベッドの上で抱き合っている。

朝帰りした夫に、妻Estelle Parsonsは若い娘との浮気を疑い、「真剣にならないで」と諌める。

いよいよ、連邦政府の役人のリードで密造酒摘発が開始されることになる。Gregory Peckは保安官補と別々の地域を捜査することにし、自分はTuesday Weld一家が住む地域を担当することにする。内々、Gregory PeckとTuesday Weldの仲を疑っていた保安官補Charles Durningが驚くべき事実を連邦政府の役人に漏らす…。

以上の物語前半でお解り頂けるように、これは'Roman Holiday'『ローマの休日』(1953)や'To Kill a Mockingbird'『アラバマ物語』(1962)などで健全で良心的な男を演じて来たGregory Peckが、よくも出演を引き受けたものだと驚くような内容です。ただし、ベッドシーンはあってもTuesday Weldの背中が見えるだけで、二人とも下半身はシーツに隠していますし、抱き合っているだけでセックスの動きはしません。

この映画が作られた時、Gregory Peckは57歳、十代に見えるTuesday Weldは27歳でした。実年齢で30歳の隔たりがあり、役柄の上では40歳近い年齢差の組み合わせです。

素直に自分に憧れ好いてくれるTuesday Weldの可愛さに有頂天になり、妻子も職も投げ打って駆け落ちしようとまで考える男のひたむきさをGregory Peckは必死に演じています。老いた男の一人として、この男の気持は非常によく解ります。その愚かさも。この物語が目出度し目出度しに終るわけがないことは火を見るよりも明らかなので、私は辛くて一気に観られず、苦い薬を服むような思いで少しずつ観ることになり、一週間もかかってしまいました。

後にアクターズ・スタジオの演技監督となるEstelle Parsonsは、ここでも哀しい主婦をリアルに好演しています。

（November 22, 2011）

Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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