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公開:2009年
監督:Werner Herzog
地域:ルイジアナ州ニューオーリンズ
出演:Nicolas Cage、Eva Mendes、Val Kilmer、Xzibit、Brad Dourifほか
範疇:リメイク/悪徳刑事/殺人事件捜査/麻薬売人捜査/麻薬中毒
私の評価 : ☆1/2
【Part 1】
ニューヨークを舞台にしたHarvey Keitel(ハーヴェイ・カイテル)主演の'The Bad Lieutenant'『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』(1992)を、ハリケーン・カトリナ来襲後のNew Orleans(ニューオーリンズ)に移したリメイク。
ニューオーリンズ市警のデカ長Nicolas Cage(ニコラス・ケイジ)は、ハリケーンによる洪水で溺れ死にしかけている独房の中のチンピラ囚人を見つける。$55もする絹の下着を泥水で台無しにすることを恐れたNicolas Cageだが、囚人を助けるため階下に飛び降りて腰を痛める。腰の痛みは堪え難いものだったが、おかげで人命救助により警部補に出世出来た。
アフリカからの不法移民の一家五人が惨殺され、Nicolas Cageが捜査主任となる。彼は腰の痛みを抑えるため、痛み止めを服みコカインを吸入する。彼には高級コールガールのガールフレンドEva Mendes(エヴァ・メンデス)があり、二人で麻薬を楽しむ。彼は下っ端の若い警官を使って、証拠品保管庫からコカインを盗み出させていたのだが、その警官から「もうやりたくない」と断られる。仕方なく彼はヤクを買ったばかりの若者たちからヤクを押収して自分のものにし始める。
殺された一家五人の主婦が、その日食料品店から何か配達させたことが分った。Nicolas Cageは配達した15歳の黒人少年を探す。少年は殺人事件の主犯である黒人の麻薬売買の大物Xzibit(ジビット)とその子分二人を目撃していた。市警の全力を挙げてその三人を追うことになる。
Nicolas Cageはフットボールの賭け事にも入れ込んでいる。彼は常にセインツの勝ちに掛けるが、いつもポイント数が当たらず負け続け、現在$3,000も借金がある。
麻薬中毒が亢進し、Nicolas Cageは幻覚を見るようになる。張り込みの現場にイグアナ(大きな爬虫類)がいるように錯覚したりする。
麻薬の売人Xzibitが「逮捕出来るものならやってみろ」と弁護士と共に警察にやって来る。市警はXzibitが目撃者の少年を殺害するのを恐れ、少年を24時間保護することになる。少年を車に乗せ、ガールフレンドEva Mendesの稼ぎ先のギャンブル都市Boloxi(ビロキシ)へ行ったNicolas Cageは、そこで彼女を殴った若い男から金を奪って叩き出す。男は「俺の親父には恐〜い知り合いが大勢いる」と凄む。その後、Nicolas Cageは少年を見失って愕然とする。
少年の雲隠れに焦ったNicolas Cageは、少年の祖母と、彼女がナーシング・ホームで世話をしている老婦人の二人を脅して少年の行方を聞き出す。しかし、その老婦人には国会議員の息子がいた。老婦人の訴えで市警倫理調査局がやって来てNicolas Cageを尋問する。またもフットボールの賭けに失敗し、借金は$5,000に増え、やいのやいのの催促を受ける。悪いことは重なるもので、Boloxiで金を奪った男の知り合いのヤクザがガールフレンドEva Mendesのアパートに手下二人と現れ、Nicolas Cageに「$5,000払え。払わなきゃ手下二人に女を犯させる」と脅す。Nicolas刑事絶体絶命の危機…。
Nicolas Cageはますます禿頭病が悪化し(Bruce Willisほどひどくはないですが)、しかもモミアゲを剃っているというヘアスタイルなので、異常な感じがします。彼がラリって妙な目つきで興奮して怒鳴り散らすのも気味が悪い。このヤク中の演技がしたくて、こんな役を引き受けたのか?と思わせるほど熱が篭っています。
Val Kilmer(ヴァル・キルマー)は“賛助出演”とでも云ったほうがいいほどの“ちょい役”で、芝居のしどころもありません。
賭けの仲介役の男を演ずるBrad Dourif(ブラッド・ドゥーリフ)は、'One Flew Over the Cuckoo's Nest'『カッコーの巣の上で』(1975)で、最も若い精神異常者を演じていた俳優。ここでも奇妙な味を出して好演しています。
警察署長を演ずるVondie Curtis-Hall(ヴォンディ・カーティス・ホール)は、歳取ってなかなかいい味の役者になって来ました。Nicolas Cageの警部補を可愛がっている様子がよく出ています。
この映画も、ニューオーリンズ災害復興対策の一つとしての映画・TV撮影に関する税優遇政策の恩恵を蒙るため、舞台をニューヨークからニューオーリンズに移したようです。映画製作者たちは最高25%の税の払い戻しと、地元で雇うスタッフ・キャストのギャラのディスカウントが得られます。製作者たちにとってこれはウハウハ的条件です。ですから、ニューオーリンズでなくてもいいお話なので、残念ながら特に“南部もの”らしいところはありません。
強いて云えば、道路でアリゲーター(鰐)と衝突した自動車事故が出て来るところぐらいでしょうか。私は道路端で死んでいるアリゲーターをマイアミ近くのフロリダ州の田舎で見たことがあります。ですから、映画のような事故もあり得ないことではないと思います。ルイジアナ州の湾岸部の湿地帯にもアリゲーターが沢山棲息しており、「船から鰐を見るツァー」もあって、船長が鰐を呼び出してくれます。
Nicolas Cageが老婦人たちを脅したことで、Public Integrity Bureau (P.I.B.)が査問を行ないます(「市警倫理調査局」は私の造語)。P.I.B.はニューオーリンズ市警独自の自浄組織で、市民から警察官の行き過ぎと思える行動に対して苦情申し立てがあれば、部内で調査し厳しい対応を取るというものです。
副題の"Port of Call - New Orleans"ですが、"port of call"とは船舶が目的地へ着く以前に荷の積み降ろしや、燃料・食料補給のために立ち寄る「寄港先」のことだそうです。映画の最後の方で、「まだお巡りなのか?」と聞かれたNicolas Cageが"Port of call still New Orleans."と答えますが、「New Orleansは昔も今も寄港先だよ=相変わらずさ」という意味だと解釈します。
(May 02, 2010)
Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
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