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All the King's Men

『オール・ザ・キングスメン』


[Poster]


・原題をクリックするとamazon.comのInternet Movie Databaseの詳細データが見られます。邦題をクリックすると「allcinema」のデータが見られます。

・Part 2は普段は隠れていて、クリックするとJavaScriptによるウィンドウにて表示されます。取り扱いには十分お気をつけ下さい。

公開:2006
監督:Steven Zaillian
地域:ルイジアナ州
出演:Sean Penn、Jude Law、Anthony Hopkins、Kate Winslet、Patricia Clarkson、James Gandolfiniほか
範疇:原作もの/リメイク/州知事/弾劾/ドラマ

私の評価 :☆☆

【Part 1】

[the South]

これは'All the King's Men'という小説の二度目の映画化です。1950年のアカデミー作品賞、主演男優賞、助演女優賞を獲得した白黒版(1949年製作)については、そちらの紹介をお読み下さい。2006年版は当代一流の俳優たちを揃え、しっとりしたカラーの撮影によって表面的には前作を凌いでいますが、映画としての出来映えがどうかはまた別な話。なお、こちらの脚本・監督を担当したSteven Zaillian(スティーヴン・ゼイリアン)は前作を観ず、原作小説から直に脚本を執筆したそうです。その真偽はともかく、政治ものとしてよく出来ていた前作(しかもアカデミー賞受賞作)を観ていなかったとすれば、逆に映画人として勉強不足であるということになるでしょう。

ルイジアナ州。Jude Law(ジュード・ロウ)は地方紙の記者。編集長の指示でMason County(メイスン郡)の収入役Sean Penn(ショーン・ペン)を取材に行く。彼は学校建設に人種問題が絡んで、郡上層部と結託した特定の業者が不正に落札したと批難する。そのせいで教師の妻は解雇され、彼自身も今後は収入役に就けないだろうと語る。

ところが、件の学校で欠陥工事が原因となって三人の児童が死亡するという事故が起き、にわかにSean Pennにスポット・ライトが当たる。James Gandolfini(ジェイムズ・ガンドルフィニ)が資金援助を申し出て、Sean Pennは知事選挙に打って出る。彼の選挙戦に随行して取材していたJude Lawは、Sean Pennの妻Patricia Clarkson(パトリシア・クラークスン)とデキてしまう。ショックを受けたSean Pennは、自棄で演説原稿を捨て、彼自身の素朴な考えを「おれたちレッドネックの田舎者は…」という口調で、富める者をこき下ろし、貧しい者の権利を主張し始め、次第に黒人・白人の貧民層の支持を得て行く。

Sean Pennは大差で当選し、知事に就任する。James Gandolfiniは副知事となる。新聞社の意向に逆らってSean Penn寄りの記事を書いて、編集長から疎まれていたJude Lawは新聞社を辞め、Sean Pennの誘いで彼の右腕として雇われる。

Sean Pennは石油会社や建設会社に高額の税金を課し、それを道路、学校、病院などの建設費に充てる。それは大衆には賞賛されたが、富裕層、大企業経営者たちからは憎まれる結果となり、知事弾劾の動きが鮮明になって来る。

Jude Lawの母は夫亡き後、夫の友人だった判事Anthony Hopkins(アンソニィ・ホプキンズ)と再婚していた。Anthony Hopkinsには息子で医者のMark Ruffalo(マーク・ラファロ)とKate Winslet(ケイト・ウィンセット)という子供がいた。Anthony Hopkinsは父親代わりにJude Lawを育ててくれ、子供同士三人は仲良く育ったのだった。しかし、知事弾劾の決め手となったのは、人望のあるAnthony Hopkinsで、Jude Lawは知事と義父の間で板挟みとなる。

知事の命令で、Jude Lawは義父Anthony Hopkinsの汚点を探すことになる…。

DVDには、この原作のモデルとなったルイジアナ州知事Huey Long(ヒューイ・ロング)についてのドキュメンタリーが収められています。それによれば、時間経過は別として、公職に関する表面上の大きな流れは映画とほぼ似ているようです。もちろん、知事が夜中にストリップ・ショーを観ていたり、自分のホテル内ペントハウスに女性プロ・スケーターを泊めるなどの部分はフィクションでしょう。しかし、彼が弾劾され、それを回避し、自分が病院長に任命した男に議会で射たれて死亡したのは事実です。非常にドラマチックな知事だったわけです。

映画はJude Lawのナレーションで進行し、過去現在が微妙に交錯します。ちと説明的な過去の回想になっていて、解りにくくはありませんが、こなれているとも云えません。アカデミー脚本賞受賞の'Schindler's List'『シンドラーのリスト』(1993)や、同賞候補になった'Gangs of New York'『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002)などを手掛けた脚本家とも思えません。

知事の絶頂期に歌をレコーディングしている場面が出て来ますが、クレディット・タイトルによれば、その'Every Man a King'という歌は、映画のモデルHuey Longが実際に作ったキャンペーン・ソング(選挙運動主題歌)だそうです。

現在のルイジアナ州知事はこの映画に協力を惜しまず、州議会議事堂内の撮影ばかりでなく、知事執務室も撮影のために明け渡したそうです。映画の中の知事は決して誉められた存在ではないのですが、だからと云って「州の恥だ」などと云わないわけです。全編ルイジアナ州ロケを敢行してくれた映画への感謝からかも知れません。

(January 28, 2007)



Poster shown above is a courtesy of Nostalgia Factory.
なおIMDbはamazon.com、「allcinema」は株式会社スティングレイの登録商標です。




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